EVENT COVERAGE

グランプリ・静岡2017秋

観戦記事

準決勝2:チーム Chew/Lee/Dezani vs. チーム 石井/菅谷/小堺

By Yohei Tomizawa

 チーム戦は絆と決断のゲームだ。だから左右に座るチームメイトの助言を聞いた上で思考し、自身が決断を下さなければならない。

 マジックの試合自体は個人とデッキに委ねられるものではあるが、それさえもチームメイトともに取捨選択し、決断の上に成り立つ。そのためチーム戦は絆と決断の上に進行する。

 そこに相違があったとしても時は巻き戻らず、進んだ未来は甘んじて受け入れなければならない。

 たらればは存在しない。全てはチームの絆と決断だ。

 だけどいつだって勝利は掴み取ることができる。

 未来を切り開くのは、3人の絆と決断だから。


 グランプリ・静岡2017秋、決勝ラウンドへ勝ち残っているのはいずれも引けを取らない4チーム。

 その中で、スイスラウンドを2位で通過したレベルプロ3人組、ケルヴィン・チュウ/Kelivin Chew、リー・シー・ティエン/Lee, Shi Tian、ジェレミー・デザーニ/Jeremy Dezaniと、

sf_team_chew_lee_dezani1.jpg

 3位で通過した十数年のマジック仲間同士がタッグを組んだ石井 泰介、菅谷 裕信、小堺 透雄が、

sf_team_ishii_sugaya_kozakai1.jpg

 準決勝で対戦する。

(各プレイヤーのプロフィールはこちらのページでご覧いただける。)

 今回はデザーニのドラフトピックを追いかけつつ、周囲のデッキの色も合わせて見てみよう。

 ドラフトの席順は3人のチームメイトが交互に座るため、チュウ→小堺→リー→石井→デザーニ→菅谷→(チュウ)。

sf_draft_team_lee_team_sugaya.jpg

ピックの進行

sf_draft_dezani.jpg
1パック目

他候補:《見習い形成師》、《薄暮まといの空渡り》、《空の恐怖

他候補:《難破船あさり》、《風雲艦隊の紅蓮術士

他候補:《見張りによる消散

他候補:《プテロドンの騎士》、《海賊のカットラス》、《裕福な海賊

 初手に現れた爆弾レア《川の叱責》から一貫して青のカードをピックし、2色目を探している。白へと進みたいようだが、上家の石井は緑白。部族による住み分け、反転する2周目に注目しよう。

 1パック目を終え、卓内の色配置は下記のとおり。

 チュウ(白黒)→小堺(赤黒)→リー(赤)→石井(緑白)→デザーニ(青)→菅谷(赤白恐竜)

2パック目

他候補:マガーンの鏖殺者、ヴォーナ、《縄張り持ちの槌頭

他候補:《轟く棘背びれ》、《血潮隊の聖騎士

他候補:《プテロドンの騎士

他候補:《翡翠の守護者

 なんと初手で強力な神話レア《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》をスルー。嘘だと言ってよデザーニ!

 事実、デッキ構築の際チームメイトに《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》を流したことを告げると、チュウ(《マガーンの鏖殺者、ヴォーナ》をピックした石井の対戦相手)から「どうやって勝つんだよ」と愚痴とも冗談ともとれる一言が。

 白のカードを取りつつ、青の飛行クリーチャーも確保。青白の伝統芸、地上を止めつつ飛行で勝ちにいくデッキのようだ。

 2パック目を終え、卓内の色配置は下記のとおり。

 チュウ(白黒吸血鬼)→小堺(赤黒海賊)→リー(赤黒海賊恐竜)→石井(白緑ミッドレンジ)→デザーニ(青白)→菅谷(赤白恐竜)

3パック目

他候補:《稲妻の一撃

他候補:《板歩きの刑》、《順風

他候補:《吸血鬼の士気

 3パック目もデッキに足りない飛行クリーチャーとバウンスをピックしデッキを補強。カットすべきカードがないのか、カット自体をしないのか、淡々と自身のデッキを強化していく姿が印象的であった。

 全てのピックを終え、各プレイヤーのデッキは下記の通りになった。

 チュウ(白黒吸血鬼)→小堺(赤黒海賊)→リー(赤黒海賊恐竜)→石井(白緑ミッドレンジ)→デザーニ(青白フライング)→菅谷(赤白恐竜)

 デザーニ、石井が青、緑をそれぞれ独占しており、デッキも強力な仕上がりだ。鍵を握るのはB席に座るリーと菅谷の、赤を基調としたデッキ同士になりそうである。

(各プレイヤーのデッキリストはこちらのページでご覧いただける。)


A卓 チュウ(白黒吸血鬼) vs. 石井(緑白ミッドレンジ) ゲーム1

 石井の《イクサーリの卜占師》が最初の(土地でない)パーマネントととして登場、探検に成功しパワーは1に。

 チュウはクリーチャーではなく《アルゲールの断血》を設置し、リソースゲームへと持ち込む。

 石井は3、4ターン目にクリーチャーを出せず、プレッシャーをかけることができない。

 その隙にチュウは悠々と《アルゲールの断血》の能力でドローを進めるが、4枚目の土地、もっと言えば2色目である《平地》が引けない。

 石井は5枚目の土地を置くと、初手でピックした《勝者の戦旗》をキャストし、恐竜を指定する。

 チュウはメインでライフを支払いつつドローするが、土地ではない。キャストした《強迫》により、石井の手札に《巨大な戦慄大口》がいると分かり苦しいか。

 石井は《巨大な戦慄大口》を召喚しつつ、《勝者の戦旗》でドローを進める。

 チュウはこのクリーチャーを《板歩きの刑》で除去し、力強く《平地》をセット。

 石井は地上を止めるため、《聳えるアルティサウルス》を召喚するが、チュウは《弱者成敗》。

 ここまでチュウは2枚の除去を使用。それを狙っていたのだろうか。石井は《突き刺すケラトプス》。

 石井は恐竜を唱えるたびにドローし、そのドローが恐竜という好循環が続き、使えども使えども手札は尽きない。

 チュウは事故からは立ち直るが、2、3マナと軽いクリーチャーを展開するのみ。

 石井はチュウがクリーチャーを横に並べ、土地がフルタップのタイミングで《突き刺すケラトプス》へ《創発的成長》を唱えて攻撃、《塁壁壊し》も合わさり、パワー12・二段攻撃のクリーチャーで一撃のもと切り伏せた。

チュウ 0-1 石井


B卓 リー(赤黒海賊恐竜) vs. 菅谷(赤白恐竜) ゲーム1

 マリガンした菅谷の土地は《》3枚から伸びず、リーが《深海艦隊の扇動者》から《巧射艦隊の拷問者》と海賊を召喚しつつ殴っていく。

 菅谷が最初に召喚したクリーチャーは、現状攻防に加わることができない《ティロナーリの肌変わり》。

 リーがダメ押しとばかりに《猛竜の群れ》を2連打すると、菅谷は悔しそうにカードを畳んだ。

リー 1-0 菅谷


C卓 デザーニ(青白フライング) vs. 小堺(赤黒恐竜海賊) ゲーム1

 口火を切るのはデザーニの《見習い形成師》。

 小堺は《小綺麗なスクーナー船》を配置すると、《猛竜の群れ》を搭乗させ、ダメージレースでは先行する。ライフはデザーニ16、小堺18。

 デザーニは土地が3枚で止まってしまい、パーマネントを増やすことはできずにターンを返すのみだが、小堺が唱えた《激情の猛竜》を《見張りによる消散》で打ち消し、《猛竜の相棒》で機体を牽制。盤面の有利は手放さない。

 さらにデザーニは《源流の歩哨》を召喚し、地上のクリーチャーからのダメージを完全に断っている形だ。

 ならばと小堺は打開策を求めて《かき回すゴブリン》で手札の質を高め、《火炎砲発射》で《セイレーンの見張り番》の除去に成功、《見習い形成師》をブロックするため《立ち枯れの守り手》を召喚する。

 こうなるとお互いクリーチャー出し合うのみとなってしまうが、小堺が《焼熱の太陽の化身》を叩きつけると、勝負は決まったかに見えた。

 しかしデザーニは慌てない。

 6枚目の土地をセットすると、初手から持っていた切り札、《川の叱責》を唱える。

 必殺技を必殺技で返し、デザーニが先勝した。

デザーニ 1-0 小堺


B卓 リー(赤黒海賊恐竜) vs. 菅谷(赤白恐竜) ゲーム2

 菅谷は2ターン目に《猛竜の幼生》を召喚し、リーの地上クリーチャーを牽制。

 リーの初動は《猛竜の群れ》から。

 菅谷は《稲妻の一撃》で《猛竜の群れ》を除去するが、どうもおかしい。《》3枚で止まり、《猛竜の幼生》が1点のダメージを刻むのみとなっている。

 リーは4マナから《凶兆艦隊の侵入者》、探検で公開の《》を置くと、《火の祭殿の守り手》を召喚し、ぴったりマナを使い切る。

 リーが召喚した2体のクリーチャーは威迫持ちのため、《猛竜の幼生》をすり抜けて攻撃が開始される。

 菅谷の土地はいまだに《》3枚。もう1体クリーチャーを召喚することができれば戦線を維持することができるのだが、その1体があまりに遠い。

 そしてリーは《弱者成敗》を《猛竜の幼生》へ唱え、全てのクリーチャーをレッドゾーンへ。

「ごめん。」

 菅谷は短く言い、3枚の《》を片付けた。

リー 2-0 菅谷


A卓 チュウ(白黒吸血鬼) vs. 石井(緑白ミッドレンジ) ゲーム2

 菅谷が土地を片付けた時、石井は、

「しゃーない」

 と一言返すと、対戦相手へ鋭い視線を投げかけた。

 その言葉の先には「でも俺が取り返すから」と声に出さない言葉が力強く聞こえた。

 チュウは土地がなくダブルマリガン、石井もメインカラーの《》がなくマリガンスタートとなる。

 チュウは《アダントの先兵》から《女王湾の兵士》を追加し、5点クロック。

 一方の石井は土地3枚でもターンエンド。

 チュウの《強迫》で公開された石井の手札から、《イクサランの束縛》が捨てられる。

 石井は《血潮隊の聖騎士》、《薄暮の賛美者》と展開し、ライフを守るためブロッカーを確保する。

 チュウの土地はいまだに2枚。そこを文字通り《襲撃》され、《勝者の戦旗》が吸血鬼を指定し、攻守が入れ替わる。

 《アルゲールの断血》に望みを託しつつ、《板歩きの刑》で《薄暮の賛美者》は除去し、膠着を目論むが、血に飢えた吸血鬼の群れを前にするのには、チュウのライフはいささか少なすぎた。

 恐竜、吸血鬼と2部族を従えた石井がチュウを下し、チームスコアはタイに。

チュウ 0-2 石井


C卓 デザーニ(青白フライング) vs. 小堺(赤黒恐竜海賊) ゲーム2

 デザーニは《猛竜の相棒》から《風雲艦隊のスパイ》と綺麗な動きが見えるが、それに待ったをかけるのは小堺の《猛竜の幼生》。

 小堺はゲームを決めた飛行クリーチャーへの回答として、《継ぎ当ての翼》を出しておく。

 デザーニは《セイレーンの見張り番》、《駆り立てる僧侶》、小堺は《猛竜の群れ》、《自暴自棄の漂流者》とクリーチャーを展開し、がっぷり四つに組み合う。

 小堺は《継ぎ当ての翼》を装備した《猛竜の群れ》で5点のダメージを刻み、このゲームで初めてライフが動くが、デザーニはここで4枚目の土地を引き、《崇高な阻止》で《猛竜の群れ》を無力化しつつライフを回復。

 こうなると小堺はクリーチャーを展開するに留まり、土地事故から抜け出したデザーニは効果的に《座礁》、《水罠織り》で小刻みにダメージを与えていく。

 小堺の《深海艦隊の殺し屋》は《見張りによる消散》で打ち消され、《闇の滋養》は《セイレーンの嵐鎮め》で牽制されている。

 それでも小堺にできることは全てやったはずだ。人事を尽くしてトップデッキを待つ。

 その希望を打ち砕くのは《川の叱責》。

デザーニ 2-0 小堺

チーム チュウ/リー/デザーニ Win!

試合後

 どちらともなく固い握手を交わすと、互いの健闘を称え合った。

「おめでとう」、「ありがとう」、「がんばって」

 チュウ/リー/デザーニは共に決勝戦へ進み、石井/菅谷/小堺は友と帰路へ着く。

 4部族が時を同じくする『イクサラン』の世界のように、時には戦い、時には笑い、時には悔し涙を流しながらも同じ時間を共有できる、マジックの世界には新たな友との出会いと絆が待ち受けている。

 未来を切り開くのは、君自身の決断だ。

  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索