By 宮川 貴浩

　グランプリ・京都2016で旋風を巻き起こしたあのチームをまた見ることができる。前回のチームシールドで見事トップ４に入賞しプロツアーの権利を獲得した原根、松本、平見の３名がイクサランの地で求める秘宝は、もちろん『優勝』ということになるだろう。

　日本選手権2017で日本王者のタイトルを獲得し、ノリにノっている原根を擁するというのは、チームにとってまさに順風満帆。また、グランプリ・京都2016の際は本番前日に初めて一堂に会したという３人のチームワークも、格段にパワーアップしているだろう。

　台風の目から本命へ。チーム 原根/松本/平見、いざ上陸。

デッキ構築

　ありったけの夢が詰め込まれたパックからは、どんな魅力的なカードが飛び出したのか。そんな余韻に浸る間もなく、３人は構築開始のアナウンスとともに慣れた手つきで素早やくカードを仕分け始めた。

　担当は原根が白と赤、松本が青と黒、平見が緑、多色、アーティファクト。この時点で、すでにある程度色の組み合わせを見据えていることが伺える。各色のカードがマナ・コストごとにクリーチャー、呪文と見やすく並べられるころには、アンプレイアブルなカードの選り分けもほぼ完了していた。

「じゃあ、まずは青緑マーフォークから」

　松本の一声で本格的な構築が始まった。史上初の、新エキスパンション発売週末でのチームシールドとなった今回のグランプリだが、プレリリース・イベントやMagic Onlineなどでの経験もふまえ、早くもプレイヤーの間には「種族推しのイクサランはアーキタイプ環境」という共通見解が浸透している。

　組めそうなアーキタイプを一通り検討してみて、３人がざっとつけた５段階での評価は以下の通り。

• 青緑マーフォーク：３
• 白黒吸血鬼：２寄りの３
• 赤白恐竜：3.5
• 赤緑恐竜：２
• 白緑恐竜：3.5（後に実際組んでみて３に）
• 赤黒海賊：４
• 青黒海賊：3.5
• 青赤海賊：３

　これらの候補の中で間違いなくエースとなるのは、赤黒海賊だ。《凶兆艦隊の船長》、《遺跡の略奪者》、《荒くれ船員》、《凶兆艦隊の荒廃者》、《焼熱の太陽の化身》と非常に強力な乗組員が揃っており、２枚の《海賊のカットラス》、除去呪文に火力呪文と、武器や積み荷も上々だ。

　結局、構築時間内でさまざまなデッキが試される中、この赤黒海賊は最後までほとんど形を変えることはなかった。

　次にフォーカスするのは青緑マーフォーク。有力アーキタイプではあるものの、今回３人に与えられた駒を見る限り有力なレアがあるわけでもなく、インパクトに欠ける。搦め手が強みの一つとなるこのアーキタイプにしては、呪文がバウンス２～３枚程度しかないのも痛い。

「中途半端だね。これじゃ勝てない」

　３人とも同一の結論に達する。そこで視点を変え、マナ・クリーチャーや重いカードを活かす方向でデッキを組み直してみると......

松本「うん、こっちのほうがしっくりくる。3.5はあるね」

　松本の声のトーンが上がった。クリーチャーのサイズが頼もしくなり、俄然２枚の《襲撃》も輝いてくる。青緑ランプでデッキの方向性が定まると、３人は細部の調整に舵を切った。

原根「２枚目の《裕福な海賊》より《風を跨ぐ者》の方が頼りになりそうかな。上から殴れるしね」

松本「あと１枚抜くならどれ？ やっぱり《新たな地平》はいらないかな？」

平見「宝物結構出るし、《新たな地平》はなくても《輝く報復》タッチできそうだね」

　未踏の地イクサランでも彼らの羅針盤は狂うことなく、納得の青緑ランプが組みあがった。

　組むべきデッキは残り１つ。この最後のデッキの構築にも、十分な時間を割くことができた。

　恐竜デッキになることは確定しているが、白緑にすべきか、赤白にすべきか。それが問題だ。他のデッキとの兼ね合いも考慮し、最終的に恐竜担当・ダイナソー原根が選んだのは、赤白だった。

原根「フラッド受けがあんまりないのが気になるけど、フラッドする前に押し切る方針かな」

　その言葉の通り、《空の恐怖》を筆頭に、《向こう見ず》２枚、《継ぎ当ての翼》とアグレッシブなデッキに仕上がった。これには、チームメイトも「原根君らしいデッキになったね」と太鼓判を押す。

　このアグレッシブな構成なら、予定通り《輝く報復》を青緑デッキに回せる。赤黒海賊と重複する赤の呪文も、やりくり上手の原根が調整してみせた。サイドボーディング用のカードの分配にもぬかりはない。

　これで、彼らと運命を共にする３隻の船が完成した。

　ほぼ時間ぴったりにデッキ登録を終えると、３人は９回戦という長い航海へと旅立った。

デッキリスト