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グランプリ・上海2015
デッキテク:八十岡 翔太の「猛禽の隆盛」
Chapman Sim / Tr. Tetsuya Yabuki
2015年5月16日
会場の噂によると、どうやら世界ランキング17位の八十岡 翔太が面白いデッキを使っているらしい。いや、「また」面白いデッキみたいだ。彼のデッキはいつだって面白いじゃないか?
それにしても、その噂には驚かされた。なんと彼が使っているのは「青黒コントロール」系のデッキではないという。そう、青黒は彼にとっての心のオアシスのはずだ。直近のプロツアー『タルキール龍紀伝』で彼を準優勝まで導いたこの色の組み合わせから離れるなんて、一体どういうことだろう?
「八十岡 翔太が使うデッキはみんなが知りたがっている。どのトーナメントでもだ」 私は自分自身に問いかける。「これは緊急事態だぞ!」
私はあのお馴染みの顔を求めて会場内を探し回った。私のジャーナリスト魂がスクープと美味しいニュースを求めてうずく。私の目はまるで、サバンナで野ウサギを捕える鷹のように鋭くなっていた。
ところが、ようやく彼を見つけたのも束の間、何のデッキを使用しているのか頑なに教えてくれないのだ。彼は、2ラウンド待って聞いてくれ、そのとき居たら帰ってふて寝してないだろうから、と答えた。私は、それじゃあネタの鮮度が落ちちゃうじゃないか、と食い下がるものの、彼は秘密のヴェールを外さない。軽く私を小突くようにすると、本当に困っている様子を含みながらも笑い飛ばしたのだった。
八十岡「はい解散! デッキについて話すことはないよ!(笑) いやこのデッキたぶんダメだから!」
このやり取りを見て、中村修平など周りにいる日本人プレイヤーも笑わずにはいられなかったようだ。八十岡は私の押しについ恥ずかしくなったのか、それともそのデッキは本当に驚くべきものなのか! 誰にでもお茶目な一面があるわけだ。
そして今、八十岡が6勝1敗という成績を収めているところを見ると、どうやら彼のデッキはうまくいっているようだ。彼の手がけた傑作を、またひとつご紹介しよう!
1 《森》 1 《島》 1 《平地》 3 《吹きさらしの荒野》 2 《溢れかえる岸辺》 4 《開拓地の野営地》 1 《豊潤の神殿》 1 《奔放の神殿》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 1 《戦場の鍛冶場》 4 《マナの合流点》 -土地(21)- 4 《爪鳴らしの神秘家》 4 《森の女人像》 3 《棲み家の防御者》 4 《死霧の猛禽》 -クリーチャー(15)- |
3 《トーモッドの墓所》 4 《撤回のらせん》 1 《群の祭壇》 3 《予期》 3 《神々との融和》 2 《テイガムの策謀》 4 《ジェスカイの隆盛》 4 《時を越えた探索》 -呪文(24)- |
3 《アラシンの僧侶》 2 《層雲の踊り手》 1 《棲み家の防御者》 1 《予知するスフィンクス》 1 《白鳥の歌》 2 《勇敢な姿勢》 1 《否認》 3 《大地の断裂》 1 《揺るぎないサルカン》 -サイドボード(15)- |
八十岡の使う「《ジェスカイの隆盛》コンボ」デッキは、同じ「MTG Mint Card」のチームメイトであるリー・シー・ティエン/Lee Shi Tianが広めた形に手を加えたものだ。
八十岡は《爪鳴らしの神秘家》が採用されているそのデッキに、《死霧の猛禽》と《棲み家の防御者》のパッケージを追加した。
「《ジェスカイの隆盛》の効果で《死霧の猛禽》を捨てて、それから《爪鳴らしの神秘家》や《棲み家の防御者》を表向きにすると、捨てた《死霧の猛禽》が戻ってくる、という動きができるよ」
「《棲み家の防御者》は、《思考囲い》や《強迫》からの防御に役立つ。それから、コンボの鍵となるカードを墓地から拾ってくれる。それに攻撃での勝ち手段も獲得したから、100%コンボに頼らなくてもよくなった」
おお、これが天才か。まさに狂気と紙一重だ。
「《ジェスカイの隆盛》」コンボには、必須パーツとして《神々との融和》が採用されていた。デッキのエンジンである《ジェスカイの隆盛》を探し出す助けになるからだ。そして、これと《死霧の猛禽》が合わさることで、まさに一石二鳥の働きを見せてくれる。八十岡はさらに《テイガムの策謀》も追加し、スゥルタイ・デッキと同じくらい安定して《死霧の猛禽》を探し出せるようにしているのだ。
「無限コンボに使う0マナの呪文は、《霊体のヤギ角》ではなく《トーモッドの墓所》を採用した。対戦相手の《死霧の猛禽》に効果的だからね」
八十岡がそれを見据えていたのは間違いない。「《ジェスカイの隆盛》コンボ」デッキは、元来「アブザン」系のデッキを食う側のデッキなのだ。リー・シー・ティエンの言を借りるなら、「緑系のデッキとはぜひ当たりたい」。
現在のメタゲームの中心が「エスパー・ドラゴン」から離れたのは、紛れも無い事実だ。「《龍王オジュタイ》」を用いるデッキは死に絶え、「《死霧の猛禽》」を駆使するデッキが人気を集めている。「赤緑ドラゴン」デッキは元々除去が少なく、「アブザン・アグロ」デッキもまた《英雄の破滅》の枚数を減らしている。
サイドボードには《層雲の踊り手》が2枚搭載され、「大変異」のテーマを支えている。また、《大地の断裂》は、赤単系に恐れられることだろう。そして他のカードがすべてダメだったときのために、彼は《予知するスフィンクス》をサイドボードに収めているのだ。
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