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グランプリ・京都2013

戦略記事

チームドラフトの戦略概論

By Sugiki, Takafumi

 今回のグランプリは、1日目9回戦、2日目5回戦の計14回戦のチームシールドによりトップ4のチームを決めた上で、その4チームによるチームドラフトのシングルエリミネーションで優勝チームを決定する。

 ここで、プレミアイベントでもあまりプレイされたことのないフォーマットであるチームドラフトについて説明するとともに、普通の8人ドラフトと形式が異なることによる戦略的要素を簡単にご紹介したい。きっとこのフォーマットの奥深さを感じていただけるとともに、遊んでみたいと思われるはずである。

 8人ドラフトのルールをご存知であることを前提とした記事になることについては、ご了承いただきたい。

draft_strategy_1.jpg

チームドラフトとは?

 手順1.3人チームを2組用意する。

  チームは3人であり、また3組以上のチームでは対戦することはできない。

 手順2.2チームの6人が交互になるように円形に座る。座る席はランダムである。

 手順3.ここからは、通常の8人ドラフトのようにピックを行う。

 手順4.ドラフトが終了したら、チームで相談しながらデッキの構築を行う。

 手順5.全員がデッキの構築を終了したら、対戦を行う。対戦相手はランダムで決定する。

 手順6.3人のうち2人がマッチに勝利したチームが勝利チームとなる。

 このような手順となる。

 公式には上記のとおりであるが、手順5.手順6.については、総当りして全9回戦のうち5勝したチームが勝利としても良いかもしれない。

チームドラフトと通常の8人ドラフトの違いからくる戦略的要素

 上記のような通常のドラフトとはのルールの差異で、戦略的に重要な意味を持つ要素について紹介する。

1.6人で行う。

 チームドラフトは6人で行われる。そのため1手目で見たパックが流れてくるのは7手目となる。通常のドラフトより2手早くパックが流れてくるので、いわゆる「返しのピック」への見通しが立てやすく、このパックから次に何を取るのかといったところについて、いつもより少し深く考えた上でピックを行う必要が出てくるということである。

2.隣のプレイヤーは対戦相手となる。

 隣のプレイヤーと自分が対戦する確率は1/3、チームメイトまで含めれば必ず対戦相手となるため、カットは積極的に行うことになる。ちなみに8人ドラフトの場合は、回戦数が多いスイスドローであったとしても隣のプレイヤーに当たる確率は3/7である。

3.隣の隣のプレイヤーはチームメイトである。

 仮に隣の相手チームプレイヤーのドラフトしているデッキの色が判明しているとしよう。その相手プレイヤーが使っていない色の強力なカードを隣に流すことは、そのプレイヤーへカットを強いることになる。相手プレイヤーがその強力なカードを流した場合には、チームメイトに強力なカードが渡ることになる。

4.対戦相手の初手ピック以外はチームメイトの共有情報である。

 チームドラフトの場合、出ているカードプールの中でチームメイトの誰も知り得ないカードはたったの9枚、対戦相手チームのそれぞれのパックの初手ピック×3人分である。これにより、デッキ構築中にチームメイトと入念な情報交換を行うことにより、対戦相手のピックのほぼすべて並びに、デッキの姿形は判明する。例えば、相手のチームの全員が飛行クリーチャーを入れていると分かった場合、8人ドラフトではサイドボードに収まっているような《切り裂く風》がメインデッキへと昇格することとなる。

5.自分たちのチームの初手ピック以外はすべて対戦相手チームの共有情報である。

 これは4.の全く裏返しである。相手に知られていないカードがチーム全体でもたったの9枚であり、それら9枚のカードをプレイした際の対戦相手に与える意外性は計り知れない。盤面をひっくり返すようなインスタント呪文であれば、それはなおさらである。

理論と実践

 先述した戦略を準決勝で見事に実践したのがアレクサンダー・ヘインである。

SF_Hayne.jpg

 そこでヘインのピックを振り返りながら、どのピックがそれにあたるのかを解説する。まずはピックだけを記載するので、どこがチームドラフトならではのピックかをご自身で考えてみていただきたい。

 以下、ピック順.ピックしたカード:迷ったカードたちの順に表記する。

 さて、このピック譜を見て、チームドラフトならではのピックではないかと言える箇所に見当がついただろうか。なお、これから私なりの解説をさせて頂くが、もちろんこれは私の見解であり正解であるというわけではない。

 しかし、チームドラフトの戦略と実践の橋渡しになるとは思われる。

1−2

 ここは単純なカードパワーだけで考えれば《霧裂きのハイドラ》をピックするところかと思われるが《鞭の一振り》をピックした。

 これは、下の色を固定することで、その後のカット戦略を立てやすくする狙いがあったと思われる。2.の戦略の下準備といったところだろうか。

1−3

 ここでのピックは《食餌の時間》。これが早速先ほどのピックを活かすこととなる。これは、自分で緑をとって上からかぶせるものだ(色をかぶせることによって、自分のデッキを強くするピックがそのまま下のプレイヤーへのカットになる)。

 また、《捕海》と《蒸気の精》の2枚を流すことは、2つ下のチームメイトにこのいずれかのカードが届く、3.の戦略の実践ともいえる。

2−2
  • ピック:《百手巨人
  • 他の候補:《悪意の幻霊
  • コモン抜け(上がピックしたレアリティはコモンである)

 ここで流れてくる《百手巨人》は、自分の右隣の斎藤が白をやっていた場合流すと非常にリスクがあるので2.に従い積極的にカット。また、これは自分の左隣の八十岡が白をやっていないことを意味しているに等しいという重要な情報をもたらした。

3−1

 ここで《羊毛鬣のライオン》を流す選択ができたのは、下のプレイヤーが白をやっていないことが2−2のピックで分かっていたからと言える。さらに《天馬の乗り手》も3.の戦略のスルーパスとして機能する。

(実際、下の八十岡は《羊毛鬣のライオン》をカット気味にピックし、青白英雄的デッキのホーエンに《天馬の乗り手》が届いた。 ※ただし八十岡は《羊毛鬣のライオン》を緑青デッキにタッチして投入した。)

3−2

 ここも2−2のピックでの情報に従い、3.の戦略を実践。1枚でゲームを決めてしまう《威名の英雄》を2つ下のホーエンへのスルーパスとして八十岡へと渡した。

(八十岡は時間ぎりぎりまで悩んで、《威名の英雄》をカット。スルーパスは失敗したが、それでも八十岡のピックを1つカットに使わせた意味は大きい。 ※ただし八十岡は《威名の英雄》を緑青デッキにタッチして投入した。)

 私がチームドラフトならではのピックと感じたのは上記の箇所であるが、ピックに込められた本当の意思については、ヘイン本人に聞いてみないと分からない。まるで、文章を読ませて作者の思いを書きなさいという国語の問題のようであるが、是非ピック譜を眺めながらそのピック譜に込められた物語性についても思考を巡らせてみられてはいかがだろうか。

draft_strategy_2.jpg

チームドラフト FAQ

 では、最後によくあると思われる質問に回答して終わりとしたい。

Q. ドラフト中にチームメイト同士で意思疎通はできるの?

A. 手話等を含めあらゆる意思疎通はできません。

Q. チーム内でピックしたカードは共有するの?

A. ピックしたカードは共有できません。各自ドラフトした42枚でデッキを構築します。

Q. チーム戦に引き分けは存在するの?

A. 3人のうち1人が勝ち、1人が負け、もう1人が時間切れなどの場合は引き分けです。

 チームドラフトは実際にプレイしてみると思っていた以上にその面白さが感じられるフォーマットだと思う。友達とわいわい遊びたいとき、通常のドラフトではちょっと物足りないときなど、趣向を凝らしてチームドラフトにチャレンジしてみてはいかがだろうか。

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