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グランプリ・神戸2017

戦略記事

高尾 翔太の「ブラックバス」~その魚、特定外来生物につき~

By 森安 元希

(本記事はグランプリ本戦1日目第7回戦を終えたあとに取材した内容をもとに作成しています。)

 デッキビルダーとしてその名を知らしめる高尾 翔太が今回持ち込んできたのは、青黒型のマーフォークデッキ。フィーチャーマッチで今日1敗目を喫したばかりだが、快く取材を受けてくれた。

 先日のグランプリ・バルセロナ2017で活躍した「赤黒エルドラージ」のみならず、彼自身をグランプリ・静岡2014での準優勝にまで導いた「エスパー人間」といった、部族をフィーチャーしたデッキのビルディングに関しては右に出るものはいない高尾の最新・自信作だ。

 その高尾自らつけた名は、「ブラックバス」。

高尾 翔太 - 「ブラックバス」
グランプリ・神戸2017 / モダン (2017年5月27~28日)[MO] [ARENA]
4 《
1 《湿った墓
2 《溢れかえる岸辺
2 《沸騰する小湖
2 《霧深い雨林
4 《闇滑りの岸
1 《忍び寄るタール坑
4 《変わり谷

-土地(20)-

3 《呪い捕らえ
4 《アトランティスの王
4 《真珠三叉矛の達人
4 《銀エラの達人
3 《潮流の先駆け
4 《メロウの騎兵
2 《ヴェンディリオン三人衆
4 《波使い

-クリーチャー(28)-
4 《霊気の薬瓶
4 《致命的な一押し
4 《広がりゆく海

-呪文(12)-
2 《潮縛りの魔道士
2 《造物の学者、ヴェンセール
3 《儀礼的拒否
2 《墓掘りの檻
2 《大祖始の遺産
2 《呪文貫き
2 《集団的蛮行

-サイドボード(15)-

 《霊気の薬瓶》戦法を中心に、《アトランティスの王》8枚体制など基本的なコンセプトは従来のマーフォークだ。

 《致命的な一押し》を得て、いわゆる「マナクリ戦法」(《貴族の教主》など)への耐性が著しく強化されたという。青白型の《流刑への道》や青単色の《蒸気の絡みつき》、《死の影》を確定では対処できない《四肢切断》など採用実績のあるカードたちを蹴散らし、スタンダード由来の強烈な1マナ除去がその座についた形だ。

 そのために採用している黒マナは他の用途にも流用されている。

 追加の《変わり谷》ともいえる《忍び寄るタール坑》は色の噛み合いのみならず、エレメンタルというクリーチャータイプを持ち、《波使い》によって強化されるのだ。

 最初、Magic Onlineで調整中だった高尾の目の前に4/3というサイズの《忍び寄るタール坑》が現れたときは「なんだこら?と思った」という言葉が口をついたという。これはマーフォークデッキであり、またエレメンタルデッキでもあるのだ。

deck_takao_a.jpg

 直前のバーン戦を振り返ながら、デッキを解説してゆく高尾。

 対バーンの2ターン目は、《広がりゆく海》を貼るべきなのか、はたまたクリーチャーを展開するべきなのか、判断が難しいようだ。《波使い》まで戦線を保てれば逆転に繋がるものの、《焼尽の猛火》の上陸モードを受けるのは避けたい。

 そのために現状では高尾自身は《広がりゆく海》プレイ寄りの意見だが、最終的な判断はまだとのことだ。

 その《広がりゆく海》を含め、比較的固定パーツの多いマーフォークだが、《呪い捕らえ》が3枚に絞られている。

 サイドアウト率が高いこと、また重複しても弱く、「ロード」が枯れても弱いため、最低限の枚数とのことだ。

 その代わりに追加されている《忍び寄るタール坑》がタップインすることで、実質的な1ターン目のアクションを担っている。

対して、当初2枚から調整を始めた《メロウの騎兵》は明確にデッキを支えるほど強く、2枚から3枚、3枚から4枚となっている。

「除去耐性はめっちゃ低いんだけど、生き残ったときのリターンがデカすぎる。すぐ勝てる。」

 高尾の《メロウの騎兵》への評価は、おそらくデッキの中でも最高峰のものだ。

 《潮流の先駆け》との「タップ→バウンス」のシナジーも厚くとられていて、軽中量級同士では随一の戦闘力を誇る。


 フリースロットとしては、《ヴェンディリオン三人衆》が2枚採用されているのも見どころだ。

 「タイタン・シフト」や「カウンター・カンパニー」に対して、キーカードを抜く動きで対応しやすくなったという。

 他に候補としては《大いなる玻璃紡ぎ、綺羅》などがあったが、《歩行バリスタ》に弱い点などで現状は厳しいという判断を下している。


 デッキ自体の選択理由についても語ってくれた。

 モダンは現状「死の影」「トロン」「カンパニー」の3大メタがあるが、スタンダード以上にその他のデッキタイプに膨大な数がある。

 その中で「幅広く対応したい」という気持ちがあり、軽いクリーチャーに触りやすくなったこの青黒型マーフォーク「ブラックバス」は、好感触だったという。

 それ以上に、「部族のビートダウンが好き」というのものある様子だ。


 ただ、他のデッキも回していたようだ。

 1~2週間前に触っていた「緑黒トロン」は思いのほか土地のプレイが繊細であり、調整時間が足りないという理由で断念している。

 他にも《リーヴの空騎士》や《反射魔道士》を採用した「4色人間」もしばらく回していたが、やはり《歩行バリスタ》への耐性の低さから諦めたようだ。


 その点、「ブラックバス」に関してはサイドも煮詰められたという自信を持っている様子だ。

 3枚採用している《儀礼的拒否》も、トロンデッキ全般や親和などにサイドインできるとして最近評価を上げているカードだ。

 2枚割いている《造物の学者、ヴェンセール》も、「ランタン・コントロール」の《罠の橋》を1ターン回避したり、本来避けようのない《至高の評決》などにも対応できるように、アンチカードへのアンチ性能が高い。《波使い》と入れ替えることで、火力に強いカードと全体除去との入れ替えがしやすくなっているという。

 またモダンでは墓地対策カードの枚数も多く、そのチョイスは個人の判断に委ねられているところもある。

「《墓掘りの檻》と《大祖始の遺産》を2枚ずつ」というのは、やはり「カウンター・カンパニー」を重くみて、ライブラリー対策でもある《墓掘りの檻》の枚数を増やした結果のようだ。

 笑い話として、「死せる生」相手に《墓掘りの檻》を入れて、何の阻害にもならなかったことがあった。寝ぼけてたのかな。と話してくれた。

(※《死せる生》は追放領域から唱えられ、追放領域を経由して墓地のクリーチャーを戦場に戻すため、墓地から「直接」クリーチャーを戻せなくする《墓掘りの檻》では止まらない。モダンをプレイする上では必要とされているルール情報だ。)

 ちなみにグランプリ前日にあたる金曜、昨日の会場での出来事らしいが、本番でやらなくて良かったとポジティブだ。

 その《死せる生》相手への正しいサイドボードとしては、もちろん《墓掘りの檻》は入れず、《大祖始の遺産》を《呪文貫き》などのカウンターでバックアップしていく形とのことだ。


 その上で、高尾はこの「ブラックバス」をお勧めのデッキと呼ぶことはないという。

 それは自らのデッキへの不安ではなく、モダンという広大なプールでは何を使うにしてもお勧めできるものはないという達観によるものだった。

 事実、謙虚にも「今日の目標は6勝3敗だったので、達成できてよかったという気持ちしかない」と笑っている。


 しかし「エスパー人間」然り、彼が青黒カラーのデッキを持ち込むとき、何かが起きることを我々は知っている。

deck_takao_b.jpg
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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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