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グランプリ・神戸2015

観戦記事

第11回戦:諸藤 拓馬(福岡) vs. Chan Sze Hang(香港)

By 矢吹 哲也

 グランプリの戦いは続く。

 2日目に進出した293人はわずか8つの席をめぐって負けられない戦いへ身を投じているため、自然とその表情も固く引き締まっているように見える。香港から参戦のチャン・シー・ハン/Chan Sze Hangもまた、やや緊張した面持ちでフィーチャー・マッチ・エリアへとやって来た。

 と、そこへ、彼の対戦相手も到着した――その相手の顔には、柔和な笑顔が浮かんでいた。

 日本選手権2005優勝、世界選手権2005団体戦優勝と、一時代を築いた強豪、諸藤 拓馬。そこから10年が経った今も、彼は変わらぬ笑顔でマジックを楽しんでいる。

 諸藤がわくわくした様子でデッキをシャッフルし、楽しそうに話かけると、チャンの緊張が少しずつ解けていく。チャンが落としてしまったダイスを一緒に探し、それが見つかる頃には、口元から歯が見えるようになっていた。


諸藤 拓馬(アタルカ・レッド) vs. Chan Sze Hang(エスパー・ドラゴン)

ゲーム展開

 ダイス・ロールの結果にもオーバーな反応を見せた諸藤は、先手のチャンがマリガンを宣言した後もしばらく手札を吟味し、やがてはにかむように「マリガン」を宣言。「マリガン仲間」となった両者は思わず頬を緩める。

 しかし試合が始まれば一転、諸藤は真剣な面持ちで《稲妻の狂戦士》を戦場に送り、2ターン目に3点で攻撃した。

 対するチャンは土地を並べるのみでその攻撃を受けた。諸藤が繰り出す《ケラル砦の修道院長》には《シルムガルの嘲笑》を当てて、受けの姿勢だ。

 諸藤は《稲妻の狂戦士》での攻撃を続けるが、そこへ《究極の価格》が差し向けられると、展開が止まってしまう。チャンの《ヴリンの神童、ジェイス》は《焦熱の衝動》で対処したものの、続けて繰り出された《龍王オジュタイ》を前に1マナの火力では太刀打ちできない。

 さらにその手札を《強迫》で暴かれると、諸藤は困った表情を見せた。チャンは諸藤の手札から《アタルカの命令》を抜き去り、じっくりと外堀を埋めていく。

 チャンはマナをしっかり立たせた上で、《龍王オジュタイ》での攻撃を始めた。《焦熱の衝動》と《乱撃斬》で《龍王オジュタイ》の除去を試みる諸藤だが、その望みは無情にも、《シルムガルの嘲笑》で砕かれた。

「アタルカ・レッド」には致命的なマナ・フラッドも諸藤を追い詰め、続くドローも土地であることを確認すると、「あちゃー」と諸藤はカードを片付けた。


慎重にゲームを進め、確実に勝利を掴むチャン

 諸藤としてはややフラストレーションを感じるゲームとなったが、しかし彼はにこやかにサイドボーディングを進めた。「あと3枚も抜かなきゃいけないのかー」とつぶやく彼の表情は、カード1枚1枚への愛が感じられる。

 2ゲーム目は、先攻の諸藤が《鐘突きのズルゴ》で先手を打った。2ターン目には《ドラゴンの餌》と続け、快調なスタートを切る。

 チャンの《アラシンの僧侶》がその攻勢を阻みにかかるが、それを《引き裂く流弾》で除去すると、さらに《アタルカの命令》で一挙10点。チャンも自身が受けるダメージを再確認し、ふたりで数えて「10点」と声を揃えた。

 しかし、チャンはすぐに2枚目の《アラシンの僧侶》。この強力な赤アグロ対策を前にしても諸藤は攻撃を続け、《カラデシュの火、チャンドラ》を盤面へ追加した。

数々の赤アグロを苦しめる対策カードにも、諸藤は「それ強いですよねー」と柔らかく対峙する。

 《黄金牙、タシグル》で防御を固めるチャンだが、残りライフはひと桁。諸藤は《ケラル砦の修道院長》から《ケラル砦の修道院長》をめくって盤面を作り、除去で《アラシンの僧侶》を再び墓地へ送ると、全軍攻撃で押し切ったのだった。


この魅力的な笑顔もまた、諸藤の大きな武器だ。

 3ゲーム目、諸藤は《僧院の速槍》で1ターン目から攻勢を仕掛けた。対するチャンも2ターン目《アラシンの僧侶》と安定の動き。諸藤はそれを《引き裂く流弾》で除去すると《僧院の速槍》での攻撃を続け、さらに《軍族童の突発》で横に広く展開した。

 それに対応して《忌呪の発動》で《僧院の速槍》を除去したチャンだが、「No Dragon」と苦笑。ライフの回復には失敗する。諸藤は2枚目の《軍族童の突発》でゴブリンの群れを生み出すと、チャンの繰り出した《黄金牙、タシグル》も《焙り焼き》で対処し、さらに《強大化》で勝負に出た。

 だがそれはチャンの《払拭》に阻まれ、驚きをあらわにする諸藤。それでも彼は、除去とトークンを生み出す呪文を次々と放ち、盤面を押していく。《アラシンの僧侶》で抵抗を試みるチャンだが、この状況をひっくり返す手段を引き込めない。

 チャンのささやかな抵抗も、諸藤の《焙り焼き》が断ち切った。祈るように最後のドローを見たチャンは、ふうっとひとつ息を吐き、それでも笑顔で手札を開示して投了を宣言したのだった。

 大活躍から10年。諸藤の「天才」とうたわれる実力も、ここぞというときの運も、そして勝負の場であることを忘れさせるような笑顔も、まだまだ健在だ。

諸藤 2-1 チャン

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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