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グランプリ神戸11
決勝: 八十岡 翔太(東京) vs. 三原 槙仁(千葉)
By Tomohiro Kaji
グランプリ・神戸、その掉尾を飾るのはマッチアップはフェアリー対オーメンヴァラクート、プレイヤーは八十岡と三原だ。
プロツアーチャンプ兼プレイヤー・オブ・ザ・イヤー、そして世界チャンプ。
これでもうこの二人の紹介は省略させてもらってもいいだろうか?
・・・と、ひとつだけ付け加えると、何故か八十岡はプレイヤー・オブ・ザ・イヤー以外の個人タイトルを持っていない。
観客の声が聞こえる。
これは面白そうなマッチだ、どっちが勝つのかわからない、ってかそもそも相性ってどうなの?
会場のプレイヤー達は、一つだけ残された唯一のフィーチャー席の準備が整うのを待っている。
そろそろ決勝戦が始まる。
これをもって、八十岡が綿密に練ったゲームプランが明らかになる。
もし、カードアドバンテージを欲張るならば、《変わり谷》を含む土地3枚の状態から《呪文づまりのスプライト》を出せば、2マナの呪文を打ち消すことができた。
しかし、八十岡はそうしなかった。《コジレックの審問》で見た手札には打ち消すべき呪文がないことを知ると、ダメージクロックを高めることでタイムリミットを突きつけたのだ。
逆に、三原の手札が軽いカードばかりだとしたら、《思考囲い》と《変わり谷》からの《呪文づまりのスプライト》で、アドバンテージ寄りのプレイングを合わせることもできた。
ここまでのプランを、八十岡は初手を手にしたときに想像していたのだ。
実際には、フェアリーと《変わり谷》とであわせて4点のダメージを刻み、三原のライフは15へと落ち込むこととなった。
明確に「クロック」プランをとり、緑マナが1つしかないうちに仕留めてやるぞ、と無言だが行動で表現する八十岡は、さらに続くターンも《変わり谷》を起動してフェアリーと一緒にアタックする。打ち消し呪文のマナなど立てず、あるマナすべてを土地へ注ぐ。
一応4色のマナは出せるものの、三原は《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》を置いてエンドするのみ。
さらに八十岡は《忍び寄るタール坑》を起動し、フェアリーと一緒にアタックで打点を5点へ上げる。またも三原は土地を置いてエンドしかできない。
そこへ満を持して登場する《饗宴と飢餓の剣》、《呪文づまりのスプライト》に即、装備させてアタックへ。
今使ったはずの土地がすべてアンタップすると、ターンを終えながら最後の1枚の手札をテーブルに伏せて置いた。
三原はドローを確認して投了する。
もちろん、八十岡が伏せたカードは《謎めいた命令》。
八十岡 1-0 三原
高橋優太は、Top8が決まったとき、こう言っていた。
「八十岡さんとTop8に残ってフェアリーのミラーマッチがしたかった。絶対楽しいのに。」
高橋にそう言わせるほどのフェアリー使いだ。
《霧深い雨林》から《つぶやき林》をフェッチする三原に、またも八十岡は《思考囲い》を突き刺す。
《定業》《探検》《謎めいた命令》といったカードが手札に残された。
続くターン、《溢れかえる果樹園》を置いた三原は、《探検》を使わずにあえて《定業》を唱える。
普通なら手なりで《探検》を唱えてしまうだろう。しかし三原の手札は単体で青マナの出る土地がなく、《探検》から続けて《定業》をプレイできない。
そして、1マナの呪文はこの先《呪文づまりのスプライト》で容易に打ち消されてしまう。それをケアしての、《定業》先打ちプレイだ。
こういった細かいプレイを積み重ねることが、グランプリという長丁場では成績に大きく関わってくるだろう。
話をゲームに戻すと、このままでは八十岡には不利な展開だ。
ダメージクロックがない状態のフェアリーは、出来そこないのパーミッション。純粋なコンボパーツしか入ってない三原のデッキをすべて対処しきることはないからだ。
しかも八十岡は土地が3枚で止まってしまった為に、すぐ行動回数に差が出てきてしまう。ここは動くよりない。
三原の第4ターン、ドロー後に《ヴェンディリオン三人衆》をキャストする八十岡。《探検》《魔力変》《謎めいた命令》を確認し、そのままにする。
《謎めいた命令》を使うタイミングをなくすためのプレイなのだが、三原も八十岡の意図と状況を読み、メインで即座に《魔力変》経由で《謎めいた命令》をドロー+バウンスモードでキャスト、3/1を手札に戻す。
これで状況はまた戻ってしまった。
このプレイは八十岡にとってかなり辛い。
すでに土地が4枚並んでしまった以上、次にメインで動けばコンボを決められるかもしれない。かといって三原のエンドに動けば《謎めいた命令》の餌食になるかもしれない。だが動くより他にないことには変わりはない。
ここで八十岡はもう1枚の《ヴェンディリオン三人衆》を引いた。
これにより、もう1枚の《謎めいた命令》を持たれているならば仕方ないと、マナを立てて待ち構える三原に、《ヴェンディリオン三人衆》を飛び込ませた。
案の定《謎めいた命令》がこれを打ち消し、ドローを与える。そして三原は《難問の鎮め屋》を出す。
だが、八十岡も負けずに、エンドに2枚目の《ヴェンディリオン三人衆》。3点のクロックを得ると同時に相手のハンドを再確認する。三原には先ほど見えた以上には致命的なカードはなく、動きもソーサリータイミングだ。さらに《難問の鎮め屋》を無視して、4枚目の土地をトップデックから《霧縛りの徒党》、マナを縛ると一気にライフを攻め立てる!
この瞬間に、文字通り攻守が入れ替わった。
ここからはもうフェアリーの真骨頂、《難問の鎮め屋》を即除去、ダメージクロックも一気に上げ、逆に動かざるを得なくなった三原の全力《戦争門》も《瞬間凍結》であしらう。
そして三原の《風景の変容》へ、最後のカードを公開する。
言うまでもなく、《謎めいた命令》。
三原は笑顔で握手を求めた。
八十岡 2-0 三原
彼のプレイングや戦績に対して、世間の評価がなぜか低い。
準決勝でカバレージを担当していた津村も彼のプレイを改めて間近に見てそう感じたと言っていた。
彼の実力は思われている以上に、高く、深い。
優勝出来なかった高橋優太を煽れば、「悔しいのう、悔しいのう。」と答え、
小室修は「もう、胴上げの為にみんな集まってるよ!」とプレイヤーを集め、
中村修平はいつものようにしゃしゃり出て、空気を読まずに「このカメラで写真撮って、撮って!」
八十岡の優勝が決まったとたん、彼を祝福しにプロプレイヤーたちが集まってきた。
みんな待ってたんだよ。
「ヤソおめでとう、やっと優勝できたな。こっからの名古屋、期待してるからな!」
Game 1
八十岡は2枚の《呪文づまりのスプライト》に《コジレックの審問》《思考囲い》、《島》《沼》《変わり谷》という初手を余り悩まずキープした。 しかし、その分この与えられた7枚のカードをシャッフルしながらゲームプランを綿密に練る。 緊張感が極限まで高まり、八十岡の《コジレックの審問》でゲームが始まった。 ここで公開された三原のハンドは、 《海辺の城塞》《山》、《不屈の自然》、2枚の《戦争門》、《ムル・ダヤの巫女》《風景の変容》。 捨てさせたいカードは《不屈の自然》ただ1枚。 このハンドは八十岡にとって吉報だった。 色マナが不十分で、実質残されたすべてのカードが機能していないからだ。 三原は、今引いた《探検》を唱えるが色マナが見つからない。 それがわかると、八十岡は2ターン目終了時に即《呪文づまりのスプライト》をキャスト、1点だがダメージクロックを作り出す。 カードアドバンテージに欲は出さず、切り詰めてライフへのプレッシャーをかける。それだけのように見える。 三原が再度引いた《不屈の自然》に、2枚目の《呪文づまりのスプライト》が突き刺さった。八十岡 翔太 |
Game 2
三原 槙仁 | |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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