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グランプリ神戸11
Round 12: 八十岡 翔太(東京) vs. 三田村 和弥(千葉)
By 金 民守
強豪ひしめく1敗ラインの中でも一際輝くこの一戦。
もはや説明不要、文句なしのスタープレイヤー対決に、フィーチャーマッチエリアには多くのギャラリーが集まった。
八十岡が駆るは長年の愛機である青黒フェアリー。それに対する三田村は青黒赤のクローシスコントロール。スタンダードの青黒コントロールを彷彿とさせる、《墓所のタイタン》をフィニッシャーとして採用した、ハンデスあり、カウンターあり、除去ありのボードコントロールデッキである。
寡聞にして、このタイプのデッキが現エクステンデッド環境でどのような立ち位置にいるのか筆者は把握していなかったので三田村にフェアリーとの相性をたずねてみると、「不利じゃない。フェアリーの使い手次第だけど全然戦える」という返答が返ってきた。
不敵に笑う三田村。三田村のデッキデザイナーとしての腕、そして八十岡のフェアリー使いとしての資質が問われる一戦になるだろう。
注目のサイドボーディングだが、それはデッキのバランスを崩さないことを重視し、1~2枚の微調整のみに留められたものだった。
三田村は1枚だけ《喉首狙い》を《思考囲い》に。八十岡は2枚の《見栄え損ない》を《思考囲い》と《くぐつ師の徒党》に入れ替えた。
お互いメインボードに相手に対して無駄になるようなカードがないこと、そして自分のメインボードの完成度に全幅の信頼をおいていることが伺えるサイドボーディングだ。
2ゲーム目は八十岡の先手で始まった。
《忍び寄るタール坑》をセットしあう立ち上がりから、2ターン目に八十岡の《思考囲い》が三田村を攻める。
公開されたハンドは《セドラクシスの死霊》《火山の流弾》《謎めいた命令》《精神を刻む者、ジェイス》《喉首狙い》、土地2枚。
少考の末八十岡が選んだのは・・・《喉首狙い》! なんと強烈な選択だろうか! 八十岡はクロック0の状態から三田村の強烈な攻め手を一切無視して防御手段をたたき落としたのだ!! 筆者の驚きをよそに、八十岡の攻め手はその後も苛烈さを加速する。
土地を置くのみで三田村がターンを終える。
八十岡の土地がアンタップし、《ヴェンディリオン三人衆》が三田村の手札を襲う。ハンドを公開した三田村が《セドラクシスの死霊》を指すと八十岡がうなずく。一般的に決して簡単な選択ではないと思うのだが、このトッププレイヤー二人にとっては一択であるようだ。《火山の流弾》《謎めいた命令》《精神を刻む者、ジェイス》が手札に残され、八十岡の場に最初のクロックが登場する。
攻め手を奪われた三田村が再度土地を置くのみでターンを終える。
再び八十岡のターン。アタックを宣言し《火山の流弾》が妖精を撃ち落とす。八十岡がマナを立てたままターンを返す。
八十岡の思考の囲い方を見ている三田村は、《マナ漏出》を構えて受けに回る。八十岡が再び《ヴェンディリオン三人衆》をキャストして三田村がカウンターする。
八十岡にターンが返る。
《ヴェンディリオン三人衆》を差し出して手に入れた、この、スペルが通ることが保証された貴重なターンに、八十岡は幸運にも《精神を刻む者、ジェイス》をトップデッキした。
最高のカードを最大限に活用するために八十岡の手が止まる。三田村の場には《忍び寄るタール坑》が、手札には《精神を刻む者、ジェイス》があることが分かっている。選択肢はブレインストームをした上で三田村にフルタップを強要するか、どちらかのライブラリーを検閲した上で対消滅するか。
少考の後、八十岡はブレインストームが弱かった時のリスクを重く見て対消滅を強要すべく+2能力を使用した。対象は自分。トップは《思考囲い》だった。そのままでターンを返す。
三田村にターンが返されるが、三田村に選択肢はない。三田村の場に初めて現れた土地以外のパーマネントは、予定調和的に対消滅していった。
再び八十岡のターン。またも八十岡は三田村の思考を囲いにかかる。するとさっきまで見なかった《墓所のタイタン》をそこに見つけた。八十岡の目つきが変わる。指定は《墓所のタイタン》。
その後ドローゴーし合う数ターンをはさみ、ゲームを動かしたのは三田村のアクションだった。《セドラクシスの死霊》をキャストされ、八十岡が《謎めいた命令》でカウンターを試みる。三田村はそれを《マナ漏出》する。無人の荒野に死霊が舞い降りる。
最序盤から息つく暇もなく続く八十岡の攻撃。そしてそれを受け切った三田村の場に登場した《セドラクシスの死霊》。だれもが勝利の天秤が三田村に傾くのを感じた。
しかし八十岡は待っていた。必殺の一撃を確実に決めるチャンスを眈眈と待っていた。
三田村がエンドを宣言し八十岡のターンになる。八十岡はクリーチャーをキャストする。三田村の場に着地した3/2飛行クリーチャーに対抗するかのように、八十岡のキャストしたそれも3/2の飛行クリーチャーだった。ただ八十岡の使う3/2は、三田村のものとは違っていた。八十岡がキャストした3/2は死霊ではなくフェアリーだった。
そのフェアリーの名は《くぐつ師の徒党》。
八十岡の場に三田村の墓地に眠っていた《墓所のタイタン》が現れる。
目を丸くする三田村を尻目に《墓所のタイタン》は三田村に襲いかかり、その跡には八十岡の場に4体の死体の群れが残る。八十岡がその職人的な微調整の威力をみせつけた瞬間だった。
八十岡 翔太 1-1 三田村 和弥
先手三田村の《思考囲い》で3ゲーム目が始まる。
《饗宴と飢餓の剣》《喉首狙い》《見栄え損ない》《ヴェンディリオン三人衆》×2、土地×2というハンドから《ヴェンディリオン三人衆》が落とされる。
囲い返すことができない八十岡は、土地を置くのみでターンを返した。
2ターン目。三田村は《定業》を打ち、今後のプランを練ってターンを返すと八十岡の場に《苦花》が登場する。
これには流石の三田村も悲鳴をあげた。これくらいの勝負強さがなくてはやってられないとでも言うように、いたずらっぽく笑いながら軽口をたたく八十岡。
青黒赤の三田村は根本的にこのカードを除去することはできず、ゲームの軸をライフ勝負に持っていかざるをえなくなった。
しかし三田村はつい数十分前にそれをやってのけたのだ。三田村の3ターン目のアクションは1ゲーム目のリプレイかのような《セドラクシスの死霊》だった。
ターンが返って八十岡は考えていた。選択肢は二つ。《饗宴と飢餓の剣》か、《ヴェンディリオン三人衆》か。
しばらく考えた後、八十岡はそのままターンを返した。三田村の手札を確認することを優先したのであろう。お互いのプレイヤーレベルが高ければ高いほど情報確定のインセンティブは上がる傾向にある。
三田村のドロー後に公開されたハンドは《セドラクシスの死霊》《謎めいた命令》×2《精神を刻む者、ジェイス》《火山の流弾》土地というもの。たっぷり悩んだ末に八十岡が選んだのは「一番強いカード」だった。《精神を刻む者、ジェイス》がライブラリの底に置かれる。
三田村は4マナ目をセットし《謎めいた命令》をバウンス+ドローのモードで使用する。対象は《ヴェンディリオン三人衆》。その上で《セドラクシスの死霊》でアタックを敢行すると、苦花トークンがその身を呈して八十岡を守った。
再びハンドに《ヴェンディリオン三人衆》を抱えた八十岡は土地を置くのみでターンを返す。場には《苦花》によってトークンが追加される。
三田村のターン。《セドラクシスの死霊》が再度アタックをすると
八十岡は《見栄え損ない》によってこれを除去する。お互いがリソースを潰しあう総力戦だ。
ただ一つだけ差があった。八十岡の場には《苦花》が残っていた。三田村がカードを消費して場にインパクトを与えても、数ターンするうちにこのただ一枚のカードが生み出したトークンたちによってそのアドバンテージが相殺されてしまうのだ。
必然的に息切れを起こすのは三田村の方だった。そして三田村の攻め手が止むと同時に、八十岡は受けの態勢を捨てて《変わり谷》とトークンによるビートを開始する。このアタック宣言で空気が変わった。二人のトッププレイヤーがゲームの終了を予感しているのが伝わってきた。
そして次のターン。八十岡の場に《饗宴と飢餓の剣》が着地すると、装備を待たずに三田村は投了を宣言した。
八十岡 翔太 2-1 三田村 和弥
Game 1
高速だった。 冷静に振り返ってみると試合時間としては決して短いわけではなかったが、単位時間内にやりとりされる情報があまりにも膨大なため、自分の情報処理スピードとこの二人のトッププレイヤーの情報処理スピードの差に、見る人は思考が振り落とされそうになるのだ。 ゲームは後手2ターン目の八十岡が《苦花》の開花に成功するところから加速する。 「出てくるかぁ~ヤソクラスになると出てくるかぁ~」と軽口を叩く三田村だが、返しでキャストした《セドラクシスの死霊》を前に八十岡も眉をしかめる。 その八十岡の取った次のアクションは《思考囲い》だった。《謎めいた命令》×2《火山の流弾》土地というハンドから《謎めいた命令》を墓地に送ってターンを返す。 三田村の第4ターン、《セドラクシスの死霊》がアタック。八十岡は《思考囲い》を捨てる。 三田村のハンドにある2枚目の《謎めいた命令》の重要度。リソースとしての自分の残りライフ。《苦花》環境下で後に控える《火山の流弾》のプレッシャー。これらの問題を考慮した上での《思考囲い》ディスカードという選択。この選択を、この重大な選択を八十岡は半秒の逡巡もなく行う。 死霊のアタックが解決されると、三田村は4マナを構えてターンを返す。 八十岡は《苦花》設置後二度目のアップキープを迎え、死霊を迎え撃つに足る態勢を整えてそのままターンを返す。土地が3枚で止まるが、気にもとめるそぶりのかけらもない。 プロが、プロであるのには理由がある。1ライフ、1マナ、カード1枚の後先で決まるトッププレイヤー同士の対戦において、考えて解決しない問題に割くようなリソースの余裕は彼らにはないのだ。無駄に困る時間は検証可能なリスク管理に回す。全ては、勝利のために。 八十岡は2秒を待たずに自分のターンを終える。 しかし三田村は動かない。瞬きもせず場を見つめながら、場の検証と八十岡のハンド内容の検証をすすめる。今後のゲームプランに2体の妖精が及ぼす戦略的価値はいかほどか? 死霊の価値はどうなのか? 次のターンの死霊アタックを通す価値と《謎めいた命令》の価値は? 4マナを構えるために支払う潜在テンポ損失は? 三田村がだした答えが何なのか。その全てを私たちが理解することは叶わないが、三田村がこのターン立てた4マナを無駄にするテンポ損失を重く受け止めたということだけは確かだった。三田村が《謎めいた命令》のプレイを宣言する。モードの選択で数秒悩む間に八十岡が《マナ漏出》を見せて2枚の土地を傾ける。 三田村のターン。アクティベートされた《忍び寄るタール坑》と《セドラクシスの死霊》がレッドゾーンに送り込まれる。トークン2体とカード1枚の予定調和的な交換がなされ、八十岡のライフは10に。ブロック不可能の3点クロックが《思考囲い》と《苦花》のライフ損失の上から重くのしかかる。 八十岡のターン。ドロー。そこに《忍び寄るタール坑》への解答はない。ターンを返す。 三田村のターン。巨漢のトッププロが最も効率のよい行動を取り、無慈悲に八十岡のライフが失われる。 八十岡のターン。ドロー。それは《忍び寄るタール坑》への解答ではない。 今まで八十岡の脳は、彼我の戦力差を分析し、場の《苦花》とハンドの《霧縛りの徒党》から残された勝ちにつながる数パターンを求めて高速で回転していた。その脳が平常モードにギアチェンジした。 八十岡の顔色が一変し場の空気が弛緩する。 八十岡「負けたぁ~先手後手がな!」 三田村「そうそう」 筆者「やっぱ先手後手?」 三田村「逆だったら死霊リークされて苦花マウント」 八十岡「うん」 トッププロと話すのは、脳が疲れる。 八十岡 翔太 0-1 三田村 和弥Game 2
三田村 和弥 |
Game 3
八十岡 翔太 | |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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