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グランプリ・千葉2016

観戦記事

第10回戦:青木 太志(東京/アメリカ) vs. 宮部 浩一(長野)

By 宮川 貴浩

 過酷なサバイバルを乗り越えた精鋭たちが集う2日目。幕開けは昨日も紹介した全勝プレイヤー同士の対決をお届けする。

 弱冠17歳の逆輸入プレイヤー青木が持ち込んだのは、《雷破の執政》や《雷口のヘルカイト》を擁するドラゴン・ストンピィ。《焦熱の合流点》も採用されており、8人だけとなった全勝者たちの中でもひときわ目を引くアグレッシブなデッキだ。青木はこの大舞台にも緊張している様子はなく、早くも大物の風格を感じさせる。

 この若武者を待ち受けるのは、長野の熟練プレイヤー宮部。デッキは一見レガシーでは定番のミラクルだが、メインから《基本に帰れ》が取られており、その本質は異なるものだと宮部は教えてくれた。以前から使い続けて各所に改良を加えたデッキとのことで、他にもシークレットテクがいくつも潜んでいるようだ。

 青木が勢いそのままにドラゴンデッキで一気に宮部を打ち砕くか。それとも経験豊富な宮部が巧みに龍を手なずけるか。


和やかに言葉を交わしながら、ゲームは開始された。
ゲーム1

 青木が1ターン目に置こうとした《金属モックス》を先手の利を生かして宮部が《呪文貫き》で打ち消したところから、ゲームは始まる。青木は続けて早々に《虚空の杯》で宮部の動きを封じようとするが、宮部はこれも《意志の力》で打ち消した。

 一息つきたい宮部は《渦まく知識》を重ねて手札を循環させていくが、青木は攻撃の手を緩めない。再びの《猿人の指導霊》から唱えられたのは、《罪を誘うもの》。ダメージ、アドバンテージの両面から多角的に攻めてくるこのクリーチャーに、宮部は少考ののち惜しみなく《意志の力》を切る。3枚目の《猿人の指導霊》から繰り出された《月の大魔術師》も《対抗呪文》で弾くことに成功した。

 こうなると、試合は宮部に傾いてゆく。2枚の《》で止まった青木を尻目に土地を4枚まで伸ばし、盤石の態勢で《精神を刻む者、ジェイス》を着地させる。悠々と《精神を刻む者、ジェイス》の[+2]能力を起動し続ける宮部に対して、青木はノーアクションのターンが続く。これでゲームは決まった――かに思われた。

 青木は待望の《裏切り者の都》で一気に2マナを手に入れると、《雷破の執政》を戦場に送り出す。バウンスしようにも除去しようにもその能力で《精神を刻む者、ジェイス》に3点を飛ばしてくるこの飛行戦力に対して、宮部は《至高の評決》で対処した。

 X=2で《虚空の杯》を設置された宮部は、《精神を刻む者、ジェイス》で青木に5枚目の土地を引かせないように動きつつ、《ゴブリンの熟練扇動者》には《剣を鍬に》で対応する。このときの青木の手札には《三なる宝球》、《焦熱の合流点》、そして《雷口のヘルカイト》があり、宮部の判断は正しいと言えるだろう。

 いよいよ次のターンには《精神を刻む者、ジェイス》の奥義が放たれゲームが終わる。その段階になって、青木はゲーム開始時点から手札に持っていた《焦熱の合流点》をついにキャストする。これが解決され、《精神を刻む者、ジェイス》に一挙6点。奥義はぐっと遠くなったが、《精神を刻む者、ジェイス》は依然高い忠誠度で戦場に残り続ける。

 お互いに手札がほぼ尽き、余力がなくなってくる。《師範の占い独楽》でライブラリー操作を繰り返す宮部は、《雷破の執政》を《終末》でライブラリーボトムに返し、逃げ切り態勢に入る。

 しかし、ここで青木のもとに駆けつけたのは、《反逆の先導者、チャンドラ》!

4つの能力がどこか《精神を刻む者、ジェイス》を彷彿とさせる。扱いはやや難しいようだが、アドバンテージ、火力、マナ加速を1枚で賄うプレインズウォーカーが弱いわけがない。

 《反逆の先導者、チャンドラ》の着地により、《精神を刻む者、ジェイス》の[+2]能力で不要カードをトップに積んでも、それは火力に変えられてしまう。宮部は《精神を刻む者、ジェイス》の[+2]能力を自分を対象に起動する戦略に切り替え、《雷口のヘルカイト》、《ゴブリンの熟練扇動者》、《罪を誘うもの》という強烈なクリーチャーたちをいなしつつ、《反逆の先導者、チャンドラ》への解答策を探しに行く。

 しかし、答えが見つからないままついに青木の《反逆の先導者、チャンドラ》の奥義が炸裂すると、青木の呪文にはすべて打ち消されない5点火力がおまけでついてくる状態に。宮部が立て直す前にきっちり土地以外のカードを引き続けた青木が、両者手札を使い切る激しい消耗戦を大逆転で制した。

宮部 0-1 青木

 ゲーム後、《精神を刻む者、ジェイス》の[+2]能力で間違ったカードを一番下に送り、相手に5枚目の土地を引かせてしまったと振り返った宮部。気持ちを切り替えて、ゲーム2に臨む。

ゲーム2

 青木のファーストアクションは、《裏切り者の都》経由で2ターン目に唱えた《月の大魔術師》。宮部はこれを《対抗呪文》で打ち消し、《相殺》でプレッシャーをかけ返す。《ゴブリンの熟練扇動者》は、《議会の採決》による理不尽な投票で墓地に送られた。

 しかし、青木の2枚目の《月の大魔術師》が宮部のカウンターをかいくぐって戦場に舞い降りると、宮部の《Tundra》は《》に。これでは《天使への願い》の奇跡が起きても、宮部の祈りは天使たちに届かない。

 《槌のコス》をきっちり《呪文貫き》で撃ち落とした宮部は、《瞬唱の魔道士》をブロッカーとして呼び出し、《月の大魔術師》と相打ちさせる。これが好判断だった。

 足枷を外した宮部が《天使への願い》で3体の天使たちを降臨させることに成功すると、青木の地上戦力では宮部の航空戦力を受け止めることができず、宮部が2ゲーム目を取り返す展開となった。


ミスを自覚していたようで、「落ち着け」と頬を叩き気を引き締めながら戦う宮部

宮部 1-1 青木

ゲーム3

 運命の3ゲーム目。青木はX=1の《虚空の杯》と《精神を刻む者、ジェイス》を指定した《ファイレクシアの破棄者》で強烈に宮部の動きを制限しにかかる。ここに《月の大魔術師》や《血染めの月》を追加されてはたまらない。宮部はきっちりとケアし、1ターン目からフェッチランドを並べていく。


大一番でも実に落ち着いたプレイングが印象的な青木

 3枚目の土地がない青木は、貴重な《猿人の指導霊》を使い、《ゴブリンの熟練扇動者》で早期決着を狙う構え。しかし、宮部は《造物の学者、ヴェンセール》で《虚空の杯》を戻しながらこれに《剣を鍬に》を見舞い、《僧院の導師》で逆に攻勢に転じた。

 《師範の占い独楽》が機能し始めると、宮部の戦場には次々とモンク・トークンが呼び出されていく。青木はようやく《》を引くが、宮部の戦場には2枚目の《僧院の導師》が追加されており、時すでに遅い感は否めない。

コントロールデッキだからと油断していると、あっという間に試合を支配してしまうフィニッシャー。

 しかし、ここで青木が唱えたのは《唐突なる死》! これが通れば、宮部のクリーチャーたちは一気に流されてしまうことになる。これには宮部も「なんだって......」と予想外の表情。だが、《師範の占い独楽》を回すとそこにあったのは......《対抗呪文》!

 由緒正しき打ち消し呪文で逆転の2ゲーム連取を決め、宮部が壮絶なマッチに幕を引いた。

宮部 2-1 青木

 宮部、全勝四天王の一人となり、第11回戦へ。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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