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The Finals 2019

観戦記事

第1回戦:岡井 俊樹(東京) vs. 山本 賢太郎(埼玉) ~繁殖池は+1能力で鹿の夢を見るか~

村上 裕一
岡井 俊樹(写真左) vs. 山本 賢太郎(写真右)

 今年もThe Finalsの季節がやってきた。

 『灯争大戦』、『基本セット2020』、『エルドレインの王権』……。

 《死者の原野》、《王冠泥棒、オーコ》を筆頭に、新セットたちが送り込んだ数々の強力なカードが、人々の記憶に強い印象を残した1年だった。

 圧倒的な力を持ったデッキたちが退場を余儀なくされ、年末に至るまで混迷を極めたスタンダードのメタゲーム。

 その混乱を掻き分け、今年の日本の「構築最強」の座に座るプレイヤーは誰で、そのデッキは何なのか――。

 戦いの口火を切る第1回戦は、昨年のThe Finals 2018で決勝に上り詰めた岡井俊樹と、チーム「武蔵」の山本賢太郎の対戦をお送りする。今年は思うような成績に恵まれなかった両名だったが、最後の大会に爪痕を残すのはどちらだろうか。2人は、ほぼ無言で着座して、目を合わせることもなくデッキのシャッフルを始める。

 と、岡井がシャッフル中にうっかりデッキからこぼしたカードが盤面にひらり。

 《繁殖池》である。

 この時点で岡井が持ち込んだデッキが「シミック・フラッシュ」か「シミック・ランプ」、あるいは「スゥルタイ・サクリファイス」であることが明らかになった。

 失敬。とりあえずシミック絡みであることが明らかになった。

 最新のメタゲームにおいても「三強」の一角を占めるシミック。

 岡井が持ち込んだのはそのいかなるバリエーションなのだろうか。

ゲーム1

 ダイスロールに勝利した山本、1マリガンにてゲームをスタート。最初のプレイは《神秘の神殿》。初戦からシミック・ミラーになってしまった!

 とはいえシミックにもいくつかのバリエーションがある。どうなることかはまだ分からない。そうかと思うとターンをもらった岡井も鏡打ちで《神秘の神殿》。ターンが戻ってくると山本、《》を置いてGO。そして岡井も《》を置いてGO。完全なるミラーである。

 展開が変わってきたのは3ターン目。山本が《繁殖池》をタップイン。3マナの動きが無いことを示唆するも、2マナの打ち消しが睨みを効かせている。岡井もそれを知りつつではあるが、2マナで仕方なく《楽園のドルイド》をプレイ。予定通りであるかのように、これに山本は《霊気の疾風》を合わせる。

 しかしながら、2ターン目に2マナのクリーチャーを展開できなかった山本、なんとなくテンポの悪い雰囲気である。その雰囲気は確かだったのか、《》を置いて土地を4枚にした後、X=2で《ハイドロイド混成体》をプレイ。

 『ラヴニカの献身』の看板として猛威を奮ったカードだが、X=2ではドローできるのも1枚のみ。かなりの回りの悪さを感じさせる。

 対する岡井、自分の手番に《繁殖池》をアンタップインすると、このターンは特段の対応をすることもなく山本にターンを返す。

岡井 俊樹

 とはいえそろそろ明らかだが、岡井が駆るデッキは、先日のミシックチャンピオンシップⅦでブラッド・ネルソン/Brad Nelsonらトッププロ3名が独自に調整し、見事3名全員がトップ8に乗り込んだ「シミック・フラッシュ」である。

 そして、次のターンに山本が唱えた《枝葉族のドルイド》によって、山本のデッキが「シミック・フラッシュ」ではなく、「シミック・ランプ」であることが明らかになる。

 フラッシュとランプはどちらが有利なのだろうか?

 ひとまず言えることは、山本のターンエンドに岡井が唱えた《夜群れの伏兵》を山本が《霊気の疾風》で妨害した結果、山本の土地はフルタップとなり、そして岡井は5マナを揃えることができたということである。

 「シミック・フラッシュ」が5マナを揃えたということは。

 《世界を揺るがす者、ニッサ》が登場するということを意味する。

 それからの展開は一方的なものだったと言える。

 岡井はニッサの[+1]能力で土地を3/3のクリーチャーにすることを毎ターン繰り返す。

 2/2の《ハイドロイド混成体》ではこれを受け止めることができない。

 その間、起きた他の出来事は以下のようなものである。

 山本が唱えた《破滅の終焉》を岡井が《火消し》。

 山本が唱えた《世界を揺るがす者、ニッサ》を岡井が《悪意ある妨害》。

 岡井がニッサで増えたマナを利用してX=6の《ハイドロイド混成体》をキャスト。

 山本は投了した。

ゲーム2

 再び先攻だが、1ゲーム目とは異なり7枚の初手をキープできた山本。

 2ターン目に《枝葉族のドルイド》を展開し、順調な滑り出しを見せた。

山本 賢太郎

 しかし、山本の3ターン目に劇的なプレイが起きる。

 山本が《発現する浅瀬》をキャストすると、岡井は立っている2枚の土地から《成長のらせん》をプレイ。ドローとともに《繁殖池》を置くと、生じた1マナから《神秘の論争》をプレイ。

 土地と打ち消しのいずれかがトップデッキだったのだろうか。ともあれ、瞬く間に先手後手が入れ替わってしまった。

 4マナを揃えた岡井は、《夜群れの伏兵》を匂わせながらターンエンド。山本が珍しいカードである《爆発域》をプレイすると、予定通りに《夜群れの伏兵》が唱えられ、これまた予定通りであるかのように《霊気の疾風》が当てられる。

 既視感のある展開である。マナを使い切った山本に対し、次の土地で5マナに到達する岡井。

 果たして展開は同じ筋道をたどり、岡井は《世界を揺るがす者、ニッサ》を唱えて土地をクリーチャー化した。

 山本、3/3のクリーチャーを受け止められる《茨の騎兵》をプレイするも、あえなく《霊気の疾風》を当てられる。

 それで生じた1ターンの間に、こともあろうに岡井は、《世界を揺るがす者、ニッサ》で追加の3/3を生み出した後、《世界を揺るがす者、ニッサ》の張り替えを行って3/3をさらに追加してしまう。

 一瞬で生じた9点分のクロックが山本のライフを削り、残りは8。

 最後の望みをかけて再び《茨の騎兵》を召喚するも、岡井の《神秘の論争》にあえなく咎められ、彼は敗北を認めるのだった。

岡井 2-0 山本

岡井 win!

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