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エターナル・ウィークエンド・アジア2019

観戦記事

ヴィンテージ第8回戦:草川 直人(神奈川) vs. 吉田 健二(宮城)~ダーウィンのヴィンテージ~

Hiroshi Okubo

 ヴィンテージ選手権、スイスラウンドの最終戦。

 120名を超えるプレイヤーが集まった本大会だったが、決勝ラウンドへと駒を進めることができるのはわずかに8名のみ。ここで取り上げるのは、そんな決勝ラウンド進出を懸けたいわゆる「バブルマッチ」だ。

 「呼ばれる気がした」と言いながらフィーチャーマッチテーブルにやってきたのは、草川 直人と吉田 健二の2人。ここでの勝利が意味するところも理解しているため、こころなしか表情も硬い。

 草川の使用しているデッキは「墓荒らし」だ。『モダンホライゾン』で得た《レンと六番》を筆頭に、《死儀礼のシャーマン》や《覆いを割く者、ナーセット》といった強力なカードを詰め合わせたグッドスタッフデッキである。

 1~2ターンキルも横行しているヴィンテージ環境においては、いわゆる上振れが発生しない「墓荒らし」のようなデッキはイージーウィンが発生しにくい分だけ他のデッキに比べて一歩落ちるという評価が一般的だったが、『灯争大戦』以降に得たものが多く、圧倒的なカードパワーにさらなる磨きがかかったことで、一躍ヴィンテージ環境のトップメタに躍り出た。いわば現在最注目のデッキと言えよう。

 吉田のデッキは「サバイバル」。その名を関する往年の強力カードである《適者生存》(英語名:Survival of the Fittest)と、モダンの「ブリッジヴァイン」でもお馴染みの《復讐蔦》+《虚ろな者》のコンボを組み合わせる、爆発的な展開力を武器にしたデッキだ。

 また、繰り返しクリーチャーをサーチできるという性質から、メインデッキやサイドボードにさまざまなデッキへの対策手段を盛り込むことができるのも魅力だ。《適者生存》さえ引くことができれば、盤面の状況に合わせたクリーチャーをサーチすることができるからである。デッキには《虚ろな者》とのシナジーもありながら《適者生存》を探すことのできるカードとして《Bazaar of Baghdad》も採用されている。

 このマッチアップは言い換えればグッドスタッフ vs. シナジーデッキの対決と言えるだろう。広大なカードプールを使用できるヴィンテージという環境で、より強力なデッキはどちらなのか?

 
草川 直人 vs. 吉田 健二
ゲーム1

 先攻の吉田はトリプルマリガンに見舞われることになるも、《Bazaar of Baghdad》から《日を浴びるルートワラ》を「マッドネス」する快調な動き出し。この《日を浴びるルートワラ》こそ《精神的つまづき》されるも、続く《虚ろな者》を着地させることに成功する。

 対する草川は《Mox Emerald》をプレイしながら第1ターンに《Time Walk》。パワー9を実質的に《探検》として運用する豪気なプレイを見せつける。

 吉田はさらに《Bazaar of Baghdad》でカードを引くが、続くターンの草川の《不毛の大地》がこのドローソースを奪うと、さらに《タルモゴイフ》をプレイして《虚ろな者》へのブロッカーとする。

 
草川 直人

 トリプルマリガンの憂き目と《Bazaar of Baghdad》を破壊されてしまったこともあり、なかなか動き出すことのできない吉田の前に《レンと六番》を並べ、《不毛の大地》+《レンと六番》の土地ハメが開始される。

 じりじりと脅威を増していく《レンと六番》を前に吉田は何もできず、草川はその間にも《死儀礼のシャーマン》や《夢を引き裂く者、アショク》を並べてゲームを掌握する。

 怒涛の《不毛の大地》ラッシュに加えて《夢を引き裂く者、アショク》によって事実上フェッチランドの起動さえ封じられ、吉田に盤面を返す力はない。盤面を片付け、第2ゲームへと望みを託すことを選択した。

草川 1-0 吉田

ゲーム2

 再びマリガンの不運に見舞われる吉田だったが、今度は第1ターンに《Ancestral Recall》を唱えることでアドバンテージを一気に回復する。

 対する草川は第1ターンを土地を置くのみで終え、吉田はその間に《適者生存》を設置。草川が吉田の土地を《不毛の大地》で破壊するが、構うものかと吉田は《適者生存》によって《虚ろな者》を探し、徐々に臨戦態勢を整えていく。

 続くターンには《日を浴びるルートワラ》を「マッドネス」しながらさらに2枚目の《虚ろな者》をサーチ。さらにディスカード・ステップに2枚目の《日を浴びるルートワラ》を「マッドネス」でプレイする。

 ここまでじわじわと吉田にリードされてきた草川だったが、ようやく2枚目の色マナソースにたどり着き、《突然の衰微》で吉田の《適者生存》を破壊し、吉田がプレイした2枚目の《適者生存》には《意志の力》。なんとかワンサイドゲームだけは防ぐ。

吉田「マジで土地引かないぞ……」

 ここまで来ると草川の序盤の《不毛の大地》が効いてくる。2枚目の土地が置けないうちは《日を浴びるルートワラ》による貧弱なクロックで地道に攻めることしかできず、《死儀礼のシャーマン》をプレイしても、墓地に土地がないためマナを得ることもできない。

 ヴィンテージとは思えぬ地味な攻防だったが、先に動き出すことに成功したのは吉田だった。3枚目となる《適者生存》にたどり着き、手札に温存していた《Mox Sapphire》によって土地と合わせて2マナを得てこれを戦場に叩きつける。さらに《Black Lotus》で緑マナを3点得て連続起動し、次々に《復讐蔦》を捨てていく。

 
吉田 健二

 最序盤に吉田が《虚ろな者》を手札に加える姿を見ていたため、草川はこの後の展開もよく理解している。《復讐蔦》の能力の誘発を待たずして投了を宣言した。

草川 1-1 吉田

ゲーム3

 吉田が再びのダブルマリガン。《Bazaar of Baghdad》か《適者生存》に頼るデッキなので、どうしてもキーカードを引くまでマリガンが必要になることが多いが、とはいえこのマッチの中で一度も7枚の手札をキープできていないという事実に苦々しい表情を隠せない。

 そんな吉田に対し、草川は第1ターンに《死儀礼のシャーマン》を差し向け、吉田の《Ancestral Recall》には《精神的つまづき》。続く草川のターンには《夢を引き裂く者、アショク》を着地させる。

 吉田は《Bazaar of Baghdad》を経由して2枚の《虚ろな者》をプレイしたと思えば、草川はそれらに《活性の力》を撃ち込み、《レンと六番》まで並べ立てて苛烈にマウンティングしていく。

 《夢を引き裂く者、アショク》によって墓地も追放されてしまった上にサーチもできず、反撃の手立てを失った吉田。草川はこの間にも《レンと六番》によって延々とアドバンテージを獲得し続け、ついにその[-7]能力にたどり着く。

 さて、草川の墓地には《Time Walk》がある。この意味するところとは、以降の草川にとって手札にある土地はすべて《Time Walk》に相当するということだ。

 つまりゲームの終焉は目前だった。

草川 2-1 吉田

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