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EVENT COVERAGE
エターナル・ウィークエンド・アジア2018
レガシー決勝:斉田 逸寛(東京) vs. 髙橋 勝貴(群馬)
今では信じられないが、かつてレガシーはマイナーなフォーマットだった。
25年の歴史を誇るマジックにあって、その最初期から存在したわけではなく、2000年代中盤になって制定された、比較的新しいフォーマットなのだ。
そのため、レガシー誕生からしばらくの間は日下部恭平が語っていたように、トーナメントが成立する8名ギリギリであったりとプレイヤー自体が少なかったのだ。
だが、情熱があるところに人は集まる。
このフォーマットの魅力に気づいた人々は根気よくイベントを開催し続けた。
関東で、関西で。そしてその輪は全国へ広がり、数多くのプレイヤーが次第にレガシーへと惹かれて行った。
いつしかプレイヤーの中にはこのフォーマットを専門に楽しむプレイヤーたちが現れ、レガシーを愛する人々のコミュニティを作り上げた。
このアジアにやって来たエターナル・ウィークエンドは、彼らがレガシーに注いできた愛があるからこそ実現した大イベントなのだ。
その大一番となる土曜日。この会場には626人ものプレイヤーが集結した。
かつてほとんど人が集まらなかったこのフォーマットは、かつてのグランプリを凌ぐほどのファンを手に入れたのだ。
そして、決勝に勝ち上がって来た髙橋勝貴もそんなレガシーを愛するプレイヤーの一人だ。
髙橋が手にする「ANT」デッキ。彼は2008年にマジックに復帰し《むかつき》が印刷されてからレガシーでずっとこの愛機を使い続けているという。さらに、この決勝ラウンドが始まるまでの間にはヴィンテージ選手権に参加しており、まさに筋金入りのエターナル好きなのだ。
対する関東の強豪プレイヤーであり、BIG MAGICの所属プレイヤーである手練、斉田はレガシーの経験こそ少ないものの、『オンスロート』からマジックをほぼ途切れずにプレイしてきている。
斉田「《議会の採決》が《真の名の宿敵》に有効か確認するくらいにはレガシー素人なんですよね(笑)」
自虐的に語るが、マジック25周年記念プロツアーで活躍した「青黒・死の影」デッキに《コジレックの審問》《苦花》を組み込み、ここまで勝ち上がってきたのは間違いなく彼がマジックに費やしてきた愛と時間があってこそだ。
形は違えどもマジックを愛するプレイヤーふたりによる、アジア初のエターナル・ウィークエンド レガシー選手権王者を決める戦いが開始された。
決勝戦、斉田 逸寛(写真左) vs. 髙橋 勝貴(写真右) |
ゲーム1
さっと7枚を手に取る斉田に対し、1枚1枚めくるように手札を確認していく髙橋。
先手の斉田がダブルマリガン、さらに5枚の手札にも《不毛の大地》しかなく悩むがこれ以上は手札を減らせないとキープ。占術は《Volcanic Island》をトップに。そして、2ターン目には《思案》で3枚目の土地も手に入れ、髙橋を迎え撃つ体制が整い始める。
だが、後手髙橋は《定業》から2ターン目に《思考囲い》を斉田へと突き刺す。
斉田の手札は《渦まく知識》《目くらまし》《苦花》《汚染された三角州》。
ここからドローソースである《渦まく知識》を抜きとり、後は《目くらまし》をケアしながらコンボを成就させるだけとなる。
斉田は《秘密を掘り下げる者》《苦花》とプレイしひとまずクロックの設置には成功する。
髙橋が手札を整えているうちにこの《秘密を掘り下げる者》が《意志の力》をめくって変身しクロックは加速する。だが、手札は《目くらまし》と《意志の力》の2枚。
当然それが分かっている髙橋は《渦まく知識》を挟んで《強迫》を突き刺し《目くらまし》を抜き去る。
髙橋勝貴がコンボ成就をロックオン |
《陰謀団の儀式》2枚でマナを増やし《ライオンの瞳のダイアモンド》から《冥府の教示者》をプレイ。スタックで《ライオンの瞳のダイアモンド》を起動し「暴勇」状態で《炎の中の過去》をサーチ。これを唱え「フラッシュバック」を持った《強迫》で残る《意志の力》まで奪い去り、最後は墓地の《冥府の教示者》から《苦悶の触手》をサーチし、斉田のライフを吸い尽くした。
斉田 0-1 髙橋
ゲーム2
斉田が《秘密を掘り下げる者》スタート。髙橋は後手1ターン目にいきなり《水蓮の花びら》をプレイし、《強迫》を斉田に向ける。
斉田の手札は《湿地での被災》《コジレックの審問》《狼狽の嵐》《思案》《秘密を掘り下げる者》というもの。
ここから髙橋はなんと《湿地での被災》を抜き……斉田が「ああー! そうか……」と漏らす。
髙橋は斉田のリアクションに頷きながら《暗黒の儀式》《ライオンの瞳のダイアモンド》と続け、そして《冥府の教示者》からストーム5の《巣穴からの総出》!
なんと1ターン目にしてゴブリン・トークンが12体!!
「さーあ! これで優先権は全部パスです」と手札を使い切った髙橋が声を上げる。
斉田は「引くしかないか……」と呟いて《思案》をプレイ。この状況を打破できるカードは2枚。サイドボードから投入されているであろう、いや、《湿地での被災》をサイドインしている斉田であれば間違いなく投入している《瞬唱の魔道士》と《電謀》だ。
斉田逸寛は可能性に賭ける |
そして、《思案》はシャッフル……ドローしてエンド。
髙橋は当然、攻撃。斉田の《秘密を掘り下げる者》はブロックにすら向かわない。
そして、迎える斉田のターン。《渦まく知識》に最後の望みを託す。
これまで斉田は祈るようにカードをめくっていく。
1枚目、違う。
2枚目、違う。
そして、運命の3枚目……!
……斉田は2枚のカードをライブラリーに戻すまでもなく、右手を差し出しレガシー選手権の王者に祝福の意を示した。
斉田 0-2 髙橋
試合後、カメラを向けると髙橋は誇らしそうに、そして何より嬉しそうに笑顔を向けてくれた。
髙橋「9年以上続けてきましたから……」
レガシーの10年選手、それもただ1つのデッキを愛し続けた男の歓喜の瞬間だ。おめでとう、髙橋勝貴。間違いなくあなたはこの大イベントの王者にふさわしい。
そして、惜しくも決勝で敗れた斉田は感想戦に応じながらも捲土重来を誓った。
斉田「今回はデッキが強かっただけですから……でもグランプリ・静岡(2018)もあるので練習して、またいい成績を残せるよう頑張ります」
そう、今年11月30日から12月2日の日程で行われるダブル・グランプリ、「グランプリ・静岡2018」ではレガシーが採用されているのだ。
レガシーに関わってきた人々はこれからも愛をもって大イベントを作り上げていくだろう。
だから、レガシーに愛情を注ぎ続けた髙橋がこのアジア初となるエターナルプレイヤーのための祭典で戴冠したことは、もちろん髙橋自身の、そしてレガシーを愛する人々の糧となり、これからも歴史を積み重ねてくれることだろう。
髙橋勝貴、アジア初のエターナル・ウィークエンド レガシー選手権優勝おめでとう!
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