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チャンピオンズカップファイナル サイクル1

観戦記事

第1回戦:行弘 賢(東京) vs. Jeong, Hyunwoo(韓国) ~魔法にかけられて2~

Hiroshi Okubo
 

 人類とCOVID-19との戦いの影響により、地球上のほぼあらゆるリアルイベントは中止や規模縮小、オンラインシフトなど、その形を変えることを余儀なくされてきた。もちろんマジックとて例外ではなく(代替としてMTGアリーナによるオンラインでの競技イベントが開催されてきたとはいえ)、グランプリなどリアルの大型イベントは軒並み中止になったり、マジックのイベント史でも最大の、長く険しい冬の時代が訪れていたと言えるだろう。

 しかしながら、雌伏の日々を続けてきた甲斐あって雪解けの刻はやってきた。2020年初頭より現在までのおよそ3年弱の時を経て、ついに開幕したチャンピオンズカップJAPAN&KOREA サイクル1(以下、チャンピオンズカップ)。久方ぶりとなるリアルでの大型イベントの開催に、会場であるAichi Sky Expoは熱気に包まれていた。

 各地で開催された予選を勝ち抜き、見事本大会への出場を決めた強豪たちがしのぎを削る本大会。その第1回戦でフィーチャーマッチテーブルへと呼ばれたのは、行弘 賢(東京)チョン・ ヒョヌ/Jeong, Hyunwoo(韓国)の2人だ。

 チョンの操るデッキは現行パイオニア環境の三大巨頭の一つと目される「イゼット・フェニックス」。ルーティングや手札を捨てるコストを駆使して《弧光のフェニックス》を墓地に貯め、ドロー呪文を連打することで一気に攻撃に転じるコンボ・アグロデッキである。

 『ラヴニカのギルド』が使えたスタンダード環境では当時から人気のあったデッキだったが、パイオニアで『ニューカペナの街角』の《帳簿裂き》と出会うことで、一層デッキの安定感が増している。ドローとコスト無視という、マジックにおいて強力とされる動きがデッキの主動力になっている点が強みだ。

 対する行弘といえば、2年半前にこのAichi Sky Expoで開催されていたプレイヤーズツアー・名古屋2020のファイナリストでもある、日本が誇るトッププレイヤーだ。とりわけオリジナリティあふれるアイディアをデッキリストの形に昇華する名デッキビルダーとして知られ、今大会でも複数の日本人プレイヤーたちで調整したと見られる独自のデッキ「セレズニアオーラ」を持ち込んでいる。

 チャンピオンズカップの第1回戦、見事に緒戦を制するのは、果たしてチョンになるか行弘になるか?第1ゲームは行弘の先攻で、試合の火蓋が切られた。

行弘 賢(東京) vs. チョン・ ヒョヌ(韓国)
Game1

 行弘は第1ターンに《林間隠れの斥候》、続く第2ターンに《照光の巨匠》と、オーラの付与先となるクリーチャーを並べていく。対するチョンは《弧光のフェニックス》をコストにした《稲妻の斧》で《照光の巨匠》を破壊し、まずは行弘の攻め手を削ぐ。

 しかし行弘もここまでは織り込み済みということか、差し向けられた《稲妻の斧》に静かに頷きながら《照光の巨匠》を墓地に置き、続くターンに《皇の声、軽脚》をプレイ!さらに《グリフの加護》をエンチャントし、《天上の鎧》をサーチ。わずか3マナから5/4飛行という強烈なスタッツのクリーチャーを繰り出した。

 チョンは少考しつつ、しかし2枚目の《稲妻の斧》で《皇の声、軽脚》を的確に処理。続いて《航路の作成》で手札を繰り、キーカードである《弧光のフェニックス》を墓地に置く。

 こうなると苦しいのが行弘だ。2枚続けて主戦力を除去されてしまい、その手札は1マリガン後ということもあって残り1枚。1/1の《林間隠れの斥候》でこまめにダメージを与えていくが、もちろん1点クロックなどチョンにとってはさほどの脅威ではない。返すターンには《帳簿裂き》をプレイしつつ、計3枚の《選択》でドローを進め、《弧光のフェニックス》までも揃えて着実に盤面をリソースで満たしていく。

チョン・ ヒョヌ(韓国)

 行弘も後手後手に回りながらも《楽園のドルイド》をプレイし、《林間隠れの斥候》に《グリフの加護》を付けるが、チョンの軽快なプレイには数段およばない。対するチョンは最凶のドロー呪文である《宝船の巡航》で一気に手札を回復し、溢れんばかりの手札から《弧光のフェニックス》を捨て、圧倒的な戦力差で行弘の挽回の芽を摘み取っていく。

 チョンの航空戦力によるクロックに残るライフもほとんどなくなってしまった行弘は、最後のドローを確認するとチョンに先勝を譲った。

行弘 0-1 チョン

Game2

 第1ゲーム同様《林間隠れの斥候》を繰り出す行弘。第2ターン、第3ターンには土地こそ置けなかったものの、2枚の《無鉄砲》をプレイしてチョンのライフを削っていく。

 対するチョンは2枚の《選択》と《パズルの欠片》でドローを進め、序盤から一気呵成に攻め立てる行弘とは対照的に静かな滑り出しを見せる。しかし、その間にも着実に墓地に2枚の《弧光のフェニックス》を送り、《第三の道の偶像破壊者》をプレイし、行弘の呪禁オーラとダメージレースを挑むための抗戦体制を築いていく。

 だが、ここでチョンが痛恨のミス。なんと行弘の《林間隠れの斥候》がトランプルを持っていることを見落としていたようだった。行弘が「トランプル、トランプル」と指さした先にあったのは、往年の超強力オーラである《怨恨》の亜種とも言える、『兄弟戦争』の新カード《無鉄砲》。

 このカードの存在により、《第三の道の偶像破壊者》のトークンによるチャンプブロックが実質的に無意味となってしまった。これまでの攻撃によって残りライフ4まで削られていたチョンは、《林間隠れの斥候》の攻撃を防ぎ切ることができず、第2ゲームは行弘の猛攻に沈んだ。

行弘 1-1 チョン

Game3

 第1ゲーム、第2ゲームと同様に、先に動きだしたのは行弘だった。《林間隠れの斥候》をプレイし、攻撃の担い手を用意する。対するチョンは第2ターンのアクションなし。代わりに行弘の《無鉄砲》を《呪文貫き》で打ち消し、クロックの増大を食い止めた。

 《林間隠れの斥候》は火力で処理することができない以上、サイズが膨れるのを防ぐしかない。《林間隠れの斥候》の1点クロックを許しながらも、チョンも《パズルの欠片》でドローを進める。

 だが、2枚目の土地を得た行弘は《安らかなる眠り》! フルタップの隙を突いて行弘が通したキラーカードに、チョンは一呼吸の間固まる。

 イゼットフェニックスは、《弧光のフェニックス》をキーカードとする性質上、戦略の主軸を墓地に大きく依存する。また、これによって《宝船の巡航》のような「探査」呪文も実質的に役割を失うこととなる。

 仕方なしに4マナを支払って《弧光のフェニックス》をプレイするが、もはやその持ち味を大きく削がれた「イゼット・フェニックス」になすすべはない。さらに行弘は《持続のルーン》と《無鉄砲》によって《林間隠れの斥候》を育て、一挙10点の猛打を加える。

行弘 賢(東京)

 《持続のルーン》によって付与された絆魂によるライフゲインで敗北の目もほとんどなくなった行弘に対し、チョンはじっくりと手札を見返す。そこにあったのは《稲妻の斧》と《棘平原の危険》。《林間隠れの斥候》に対してあまりに無力なそのカードたちをチョンは静かに片付け、行弘が第1回戦の勝者となった。

行弘 2-1 チョン

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