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アジア・エターナル・ウィークエンド2022

観戦記事

2022 Asia Eternal Weekend Legacy 決勝:永田 幸輝(広島) vs. 宮本 太郎(愛知) ~好きだということ~

Seigo Nishikawa

 会場が静まり返っている。

 プレイヤーズコンベンション愛知2022、2日目。他のすべてのイベントに先駆けて始まった2022 Asia Eternal Weekend Legacyは、またプレイヤーズコンベンションの閉幕も告げる役目も担うことになった。

 あれだけの喧騒に包まれていた会場は嘘のように静かになり、一部では撤収作業も開始されている。レガシーの大型大会はいつもそうである。

 しかしそれは「寂しい場」ということを示すわけではない。最後の舞台を迎える両雄の周りには人が集まり、その一角だけは別世界のように賑やかだ。会場の誰よりも多い試合をこなしてきた2人は、口々に今日という一日がいかに楽しかったかを振り返り、時折笑い声も漏れている。これが予選スイスラウンドから通じて12試合目だというのに、その表情からは疲労などを感じさせることは無い。

「そろそろいきましょうか」

 頃合いを見計らいヘッドジャッジが声をかける。刹那、2人の顔は一気に引き締まった。

ゲーム1

「ここまで来れたのは望外の結果」

 予選ラウンドを8勝1分け(1位)、つまりは無敗でこの決勝戦へとたどり着いた自分を、永田幸輝はこのように評している。この規模の大規模大会での決勝戦の席ももちろんのこと、自身の試合が観戦記事になるということも初めてとのことだ。

 しかしそれは決してフロックや幸運の結果生じたものではなく、間違いなく彼自身の実力で勝ち取ったものであることを、彼はこの試合で示してみせた。

永田 幸輝

 対戦相手の宮本太郎が使用するデッキは、自他ともに認めるレガシー現環境のトップメタデッキである「青赤デルバー」。これに対して「赤単ストンピィ」を使用する永田が求めるものは、相手を阻害することができる妨害を1ターン目から展開する手段だ。

 初手は《血染めの月》をはじめとする強力無比な3マナのカード3枚と赤マナを生み出す土地3枚、そして《猿人の指導霊》という7枚。これを永田は即座に却下。今度は《三なる宝球》が見えるものの、それを唱えられるのは再び2ターン目になりそうな手札であり、先手を得ている有利を生かし切れないと判断してこれも破棄。

 そして改めて開いた7枚には、待ち望んだ《古えの墳墓》と《虚空の杯》が含まれていた。永田の想いはここで結実。これをもってゲームをスタートすることを宣言する。

 一方の宮本の思考に転じてみよう。

 宮本は永田の「マリガンします」という宣言を受け、相当に考え込んだ。永田の繰り出してくる置物はその全てがクリティカルに自身のデッキに突き刺さるもので、目の前の対戦相手は今まさに「置物を探している」。この手札は果たしてそれに対抗しえるものであるのか。対抗したとして、その上で自身の展開も進めていけるものなのだろうか。

 宮本はじっと手札を眺め、思考し、結果としてその7枚と走り出すことを選択した。

 永田は当然《古えの墳墓》から《虚空の杯》を唱える。

 悩みぬいた宮本の手札が明かされる。即座にこれを《意志の力》で打ち消すと、自身のターンには《不毛の大地》で《古えの墳墓》を破壊してみせる。永田は《鎚の山道、髑髏砕き》をタップインするのみでターンを終えると、宮本は《》から《思案》を唱えた。

 3枚を確認すると再び思考の海に潜る宮本。

 ここまでの展開、完全に宮本の想定通りに事が運んでいるように感じられる。しかし現実として宮本は悩んでいる。その理由はどこにあるのか。

 永田は《金属モックス》《バグベアの居住地》をセットすると、続く脅威《ゴブリンの熟練扇動者》を繰り出した。これはダブルマリガンの結果《虚空の杯》と合わせて得ることができていた2発目の弾丸。

 これを打ち消せない宮本は、再びの《思案》で解決策を求め《邪悪な熱気》でゴブリンの親分そのものを除去すること選択する。しかしここで宮本がセットした土地は《蒸気孔》。赤マナを捻出するためにライフ2点を必要としたことがじわりと圧し掛かる。

 初手を、そして《思案》に宮本が悩んでいたのはここにあった。

 ここで理想の展開を追い求めた永田にデッキが最高の答えを返す。引き入れたのは《古えの墳墓》だ。これにより一気に2マナが調達されると《バグベアの居住地》がクリーチャーに転じ、宮本に重い5点のダメージが叩き込まれた。

 宮本は《秘密を掘り下げる者》で応じる構えを見せるが、端から永田に止まる意思はない。再び攻撃を宣言し、これで宮本のライフは5。

 《秘密を掘り下げる者》は《意志の力》をめくる形で変身に成功。しかし永田がその手に持つのは《血染めの月》と《激情》。

 《激情》が想起で唱えられると、どうやっても宮本のライフは残らないことが明らかとなった。

 永田が決意のダブルマリガンから、一気の寄り切りを見事に決めて見せるのだった。

永田 1-0 宮本

ゲーム2

「名残惜しいですね」

 決勝戦の卓についた宮本はデッキをシャッフルしながらこう語った。

 時計は20時半を回っている。本大会の開始は8時半、すでに12時間を経過し、宮本自身もここまで11試合の激闘を潜り抜けている。それでも終わってしまうことが「名残惜しい」。まだまだマジックをやっていたいし、願わくばこの時間が終わらないでほしい。

宮本 太郎

 彼はどこまでこのゲームを愛しているのだろう。

 残されたわずかな時間を味わうかのように、宮本は三度じっくりとゲームプランを検討。《汚染された三角州》をセットすることで思考がまとまったことを示す。

 《金属モックス》《古えの墳墓》を備え、3マナアクションを十分に取れそうな手札をキープしている永田。まずは《血染めの月》で宮本の思考に探りを入れる。当然宮本はフェッチランドを《》へと変換し《渦まく知識》を使用。《血染めの月》には許可の返事を出した。

 宮本は続くターンの永田の《虚空の杯》に《意志の力》を当てた後、《厚かましい借り手》の出来事《些細な盗み》で《血染めの月》をバウンス。自身のターンには矢継ぎ早に《濁浪の執政》を5/5で召喚する。

 ここまで流れるようにプレイを続けてきた永田の手が初めて止まる。

 今一度、先ほどまで見ていた宮本のデッキリストを思い返す。

 小考の後、方針をまとめた永田。まずは《裏切り者の都》をセットすると、これと《古えの墳墓》《金属モックス》から{C}{C}{C}{C}{R}を手に入れ《血染めの月》を再度唱える。その後、山となったもう1枚の《古えの墳墓》から{R}を得ると、《死亡+退場》の《退場》で《濁浪の執政》を宮本の手に押し返す。

Dead+Gone

 実は宮本のデッキに《》は1枚しか含まれていない。《血染めの月》の環境下において、再召喚は非常に苦しい状態となってしまった。

 アクションの無い宮本に対して、永田は《軍勢の戦親分》と《未認可霊柩車》を矢継ぎ早に使用。前者は《邪悪な熱気》で排除されるのだが、後者は無事に着地。もう二度と《濁浪の執政》は着地させないという構えだ。

 続くターンにはさらなる《血染めの月》そして《猿人の指導霊》を戦場へと向かわせた。

 本来であればマナ源として使用されるこの1匹の類人猿。これが「召喚」されるということは、赤ストンピィ系のデッキがあらゆるリソースを失った結果、最後に繰り出す窮余の一策というイメージが強い。2/2というボディはあまりにか細い。

 いや……強かった、と言い換えねばなるまい。

 戦場では《未認可霊柩車》という心強い乗り物が運転手を待っていた。《猿人の指導霊》は搭乗する資格を保持している。

「こいつ……乗れる……」

「こいつ……乗れる!」

 宮本は、そして永田自身もそのように考えたと、この場面を振り返る。

 しかし宮本もただ手をこまねいて思考とターンを進めてきたわけではない。逆転の目を模索し動きだす。まずは2回目の《些細な盗み》と《水流破》で目の前の最大のガンである《血染めの月》を排除。マナの自由を取り戻すと、今度は《神秘の聖域》で使用したばかりの《水流破》を回収した。

 永田が再度《血染めの月》を唱える。これに対して並んでいる土地をすべて倒して6マナを得ると、そのうちの《Volcanic Island》を手札に戻す形で《目くらまし》を使用した。

 この動きを訝しむ永田だが、《古えの墳墓》から{C}を支払うことで、再び戦場を《血染めの月》が照らす。そして残された1マナを使用してダメ押しとばかりに《虚空の杯》。

 これが通ることで、目論見が外れるどころか次のターンのドローが全く意味をなさないものとなってしまった宮本。後は2枚の《厚かましい借り手》でのライフレースに全てをかけることになった。

 だがしかし、先にスタートを切っていたのは地上を走る《未認可霊柩車》。このスピードに《厚かましい借り手》は一歩及ばず、《猿人の指導霊》はゴールラインを切り、永田に勝利をもたらすこととなった。

永田 2-0 宮本

「せめてもう1枚《》を入れておくべきでしたね」

 手札で出番を待ち続けた《濁浪の執政》に目をやる宮本。敗れはしたもののそこから得た結果をすぐに経験値へと変える。今日の大会はこれで終わったが、明日以降も彼はこのゲームを愛し、楽しんでいくのであろう。

 勝負が決した最終ターン、実は永田のライフは2であった。すなわち、どこかで一度でも多く《古えの墳墓》が起動されていれば、勝敗はひっくり返っていたということになる。

「今回のデッキを選択した理由は?」

 試合後そのように問われた永田は、間髪入れずに「このデッキが好きだからです」と満面の笑顔で答えた。

 好きだから使い続け、磨き上げ、相手への対抗策を頭に叩き込む。その作業を怠らなかったらこそ、最後にライフを2残すことができたのではないだろうか。そう思えてならない一場面であった。

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 Asia Eternal Weekend Legacy 2022 優勝は永田幸輝! おめでとう!

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