2020年9月14日

（編訳注：埋め込み動画は英語実況のものです。）

　まさに歴史的な大会となった「2020ミシックインビテーショナル」も、ついにこのときを迎えた。160名が競い合った予選ラウンド14回戦。勝者側、敗者側いずれのブラケットでも激戦が繰り広げられた、トップ８による決勝ラウンド。長きにわたる戦いの終着点、それがこのチャンピオンシップマッチだ。ヒストリックで行われる決戦の勝者がどちらであれ、歴史に名を残すことは間違いない。

　この大一番が殿堂顕彰者同士の対戦になったのも、きっと必然なのだろう。

　ガブリエル・ナシフは３日目のトップ８勝者側ブラケットを戦い抜き、ひと足先にタイトルマッチの席を確保した――自身３度目の優勝トロフィー獲得に絶好のポジションだ。３度目の優勝を狙うのはセス・マンフィールドも同じだが、彼がここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。３日目の初戦で敗れたマンフィールドは敗者側ブラケットへ落とされ、そこからナシフが待つ舞台へ再び上がるには４連勝が必須条件だったのだ。だがマンフィールドはその信じられない偉業をやってのけた。そして今、華やかな戦績に彩られた２人のプレイヤーが、2020ミシックインビテーショナル王者の座を懸けて２マッチ先取の最終決戦に挑む。

　マジックの歴史にその名を刻むために。

　このレベルの大会で３回以上優勝しているプレイヤーは、歴史上４名しかいない。2020ミシックインビテーショナルではどちらが勝っても３度目の優勝となるが、それはカイ・ブッディ/Kai Buddeが誇る「７回」という大記録は打ち破れないものの、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosaやジョン・フィンケル/Jon Finkel、ディルク・バベロウスキ/Dirk Baberowskiという伝説のプレイヤーたちと肩を並べることを意味する。現時点でもすでに最高のマジック・プレイヤーである両者にとって、この上ない優勝賞品になるだろう。

　さあ、決着のときだ。

チャンピオンシップマッチ

　長期戦になることは、両者とも覚悟していた。決して一筋縄ではいかない「ジャンド・サクリファイス」と「スゥルタイ・ミッドレンジ」による戦いが、少なくとも２マッチ行われるのだから。

　しかしこの試合でナシフは、序盤からクリーチャーでダメージを与えていく戦略をとった。一方のマンフィールドは《成長のらせん》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》でマナを伸ばしながら、脅威を繰り出す準備を整えていく。

　「ジャンド・サクリファイス」と「スゥルタイ・ミッドレンジ」はともに、ゲーム後半に強くなるよう設計されている。だがこの試合ではマンフィールドが受ける側に立ち、《波乱の悪魔》や《戦慄衆の解体者》、《血の芸術家》、《悲哀の徘徊者》、《忘れられた神々の僧侶》といったカードが詰め込まれたデッキが放つ爆発的な一撃を生き残ろうとしている。

　第１ゲームは、まさにナシフの計画通りに進んだ。マンフィールドはマナ加速呪文ばかりの手札を進展させるのにつまずき、育ち続ける《戦慄衆の解体者》への回答を用意できなかった。ナシフの盤面に２体目の《悲哀の徘徊者》が加わると、開幕１勝目はこのフランス人プレイヤーのものになった。

　マンフィールドが第１ゲームを落とすのは、これで３マッチ連続だった。まだ敗退は決まらないが、ロープ際まで一歩近づいた。だが彼はそのプレッシャーの中で、今大会最もエキサイティングなゲームを見せてくれた。

　第２ゲームの後半、マンフィールドが動き出す。ナシフの盤面は、「ジャンド・サクリファイス」が成し得る限りの最高の状態に仕上がっていた。だがアンタップを迎えたマンフィールドは、そこからナシフの盤面を壊滅させ、そのまま第１マッチをも完全に掌握してみせた。その一連の流れは必見だ。

　勢いを得たマンフィールドは、第３ゲームでサイドボード・プランを完璧に遂行した。ナシフのクリーチャーに除去を連打しつつ脅威と回答をバランス良く繰り出し、第２ゲームと同様の展開で戦いを進めていったのだ。ナシフが序盤に用意したクリーチャーを除去し、《世界を揺るがす者、ニッサ》で反撃に出る。歴代でも最強の一角に数えられるこの強力なプレインズウォーカーだが、今大会ではゴブリンの群れに話題をさらわれていた。しかしトップ８の舞台でついに、マンフィールドの手によってその輝きを存分に見せつけたのだ。

　こうして、マンフィールドは再び１ゲーム先取されてからの逆転勝利を成し遂げた。だが彼がその名を歴史に刻むには、もう１マッチ勝利しなければならない。第１マッチの最後のターンには明らかに表情を曇らせていたナシフだが、気を取り直して次なる試合に臨む。しかし不運にも、第１ゲームはマンフィールドの強烈な動きに食らいつけず、ナシフはギアを上げ続けるマンフィールドに３ゲーム目の連敗を喫することになった。

　立場は完全に逆転した。

　土曜日の時点では、ナシフは無敵だった。だが最終日を迎えた今のマンフィールドは止められる気がしなかった。それでもナシフは、《集合した中隊》を外してもなお、「３度目の優勝」の夢を諦めきれなかった。だから反撃の手を止めなかった。

　だがしかし、この週末を締めくくる今日という日はマンフィールドのものだった。翌日に30歳の誕生日を控える彼に、ひと足早く王者としての誕生日がやって来た。マジックの歴史に名を残すプレイヤーの中でも本当にひと握りの、至高のプレイヤーに仲間入りする記念日が。

　そして「Team Envy」所属プロ、セス・マンフィールドは――この記念すべき日にも誕生日ケーキを食べたのだった。（リンク先は英語）

　セス・マンフィールド、2020ミシックインビテーショナル優勝おめでとう！

(Tr. Tetsuya Yabuki)