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2020年シーズン・グランドファイナル
2020年シーズン・グランドファイナル メタゲームブレイクダウン
2020年10月8日
いよいよこの日がやって来た――10月9日午前9時(日本時間翌10日午前1時)に開幕する「2020年シーズン・グランドファイナル」では、「2020プレイヤーズツアーファイナル」の上位16名と「2020ミシックインビテーショナル」の上位16名が競い合う。参加者たちは賞金総額250,000ドルを懸けて、スタンダードとヒストリックの2フォーマットを戦うことになるが、その両フォーマットでは『ゼンディカーの夜明け』のあるカードがデッキの「創造の座」に就いていた。
スタンダードメタゲーム分析
今大会初日と2日目にはそれぞれ3回戦のスタンダード・ラウンドがあり、最終日の決勝ラウンドもスタンダードで行われる。メタゲームの様相は以下の通りだ。
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
オムナス・アドベンチャー | 19 | 59.4% |
オムナス・ランプ | 4 | 12.5% |
ラクドス・ミッドレンジ | 4 | 12.5% |
グルール・アドベンチャー | 3 | 9.4% |
ディミーア・ローグ | 1 | 3.1% |
ティムール・アドベンチャー | 1 | 3.1% |
「オムナス・アドベンチャー」と「オムナス・ランプ」を合わせると、今大会のスタンダード部門では《創造の座、オムナス》の使用率が72%を占めることになった。全体の人数が少ないことを加味しても、競技の舞台でこの数字は驚異的だ。参考までに、「2019ミシックチャンピオンシップⅥ(リッチモンド)」における《王冠泥棒、オーコ》の使用率は69%、2020プレイヤーズツアーファイナルにおける《成長のらせん》の使用率は68%だった。72%を占める《創造の座、オムナス》が現行スタンダードにおける「倒すべきカード」であることは間違いないだろう。
では、なぜ《創造の座、オムナス》がここまで支配的なのか?
これには2つの要素が絡んでいる。1つは、《寓話の小道》や《僻境への脱出》のおかげで1ターン中に「上陸」を2回誘発させるのが難しくないこと。2回目の上陸能力が解決されれば、《創造の座、オムナス》はマナもカードも失わずにより強力な効果が得られる《ロクソドンの教主》と化すのだ。
もう1つは、《創造の座、オムナス》のコストが多くの色を必要とするにも関わらず、思ったよりも唱えやすいこと。「小道」サイクルや「トライオーム」、《寓話の小道》、そして《豆の木の巨人》や《水蓮のコブラ》といったマナ加速手段によって、マナ基盤を犠牲にしなくても《創造の座、オムナス》を安定して唱えられるのだ。
さて、オムナス・デッキは倒せる相手なのだろうか? わからないというのが正直なところだが、今大会の参加者のうち72%は「倒せなさそうだ」と判断したようだ。
序盤から攻勢をかけてオムナス・デッキが準備を整える前に倒そうにも、《創造の座、オムナス》が毎ターン4点ものライフをもたらすため、アグロ・デッキが削らなければならないライフは20点では到底済まない。リソースを奪う戦略をとっても、一見効果的に見える《レッドキャップの乱闘》や《無情な行動》のような回答ですらマナとカードの面で不利になり、厳しい戦いを強いられるだろう。そしてより強力な動きで上回るためにはこちらもランプ戦略をとることになり、それはつまり《創造の座、オムナス》を使用することを意味する。倒すどころか、仲間に加わっているではないか。
オムナス・デッキを倒すための最善策は恐らく、《創造の座、オムナス》を打ち消してとにかく通さないことだろう。しかし打ち消しに重点を置いたコントロール戦略をとると、今度は《創造の座、オムナス》を使うプレイヤーの多くが「オムナス・アドベンチャー」であるため《エッジウォールの亭主》や《幸運のクローバー》を相手に苦労することになる。以上のように、オムナス・デッキの攻略法を見つけるのは一筋縄ではいかないのだ。
だがそれでも、100%と72%とでは大違いだ。今大会では、9人の勇敢な選手が《創造の座、オムナス》なしのデッキでこの4色の脅威へ立ち向かうことを決意した。きっと、それに足る何かがあるのだろう。全デッキリストは第1回戦開始時にイベントページにて公開予定なので、お楽しみに。
それでは、2020年シーズン・グランドファイナルにおけるスタンダード部門のアーキタイプを見てみよう。
オムナス・アドベンチャー(使用者19名):多くのプレイヤーが、《創造の座、オムナス》をうまく使うなら「ティムール・アドベンチャー」にタッチする形が一番だという結論に至った。このデッキの核となるのは、《エッジウォールの亭主》と《幸運のクローバー》、《願いのフェイ》だ。サイドボードにはバラエティ豊かに1枚挿しが採用されており、判断力とプレイ手順の組み立てに優れたプレイヤーに有利に働く。このデッキにおける《創造の座、オムナス》の役割は、すでにデッキと噛み合っている《豆の木の巨人》や《僻境への脱出》とのシナジーでそれらの力をさらに引き出すことだ。それだけでも、タッチするに値するということだろう。
オムナス・ランプ(使用者4名):こちらは、《エッジウォールの亭主》や《幸運のクローバー》なしに《創造の座、オムナス》を使っている。代わりに目指すのは、2ターン目《水蓮のコブラ》から3ターン目《創造の座、オムナス》、そして4ターン目にはデッキ内の戦力を一気に繰り出す爆発的な動きだ。《僻境への脱出》や《発生の根本原理》によって「上陸」を誘発させれば、《水蓮のコブラ》と《創造の座、オムナス》が大量のマナを生み出す。うまくいけば、またたく間に戦場を制圧できるだろう。
ラクドス・ミッドレンジ(使用者4名):この「ラクドス・ミッドレンジ」は比較的新しいデッキだが、興味を引かれる一作だ。ミッドレンジらしく単体除去や手札破壊を採用しているほかに、墓地をうまく活用しているのがこのデッキの特徴と言えるだろう。《ティマレット、死者を呼び出す》は、主な勝ち手段である《死の飢えのタイタン、クロクサ》を「脱出」させる準備に大きく寄与する。また、《ぬかるみのトリトン》や《マグマの媒介者》も墓地を利用するゲームプランと噛み合っている。それから、純粋なドロー手段は備えていないものの、モードを持つ両面カードを大量に採用することでマナ・フラッドを防いでいる。
グルール・アドベンチャー(使用者3名):これが今大会唯一のアグロ・デッキだ。《エッジウォールの亭主》によってある程度は長く戦えるものの、出来事を持つ呪文はそれほど採用されておらず、主な戦略はクリーチャーを展開して早い段階で《エンバレスの宝剣》を繰り出すことにある。このアーキタイプ自体は1年ほどスタンダードに存在しているが、今大会でオータム・バーチェット/Autumn Burchettとエマ・ハンディ/Emma Handy、ルイス・サルヴァット/Luis Salvattoが登録した形は実に刺激的だ。例えばメインデッキ入りの常連だった《探索する獣》が、《水晶壊し》に換えられている。現在のメタゲームではプレインズウォーカーよりも《幸運のクローバー》の方がよく見受けられるため、効果的な判断だろう。また、序盤に展開するクリーチャーとして、《水晶壊し》や《恋煩いの野獣》との相性が良い《山火事の精霊》と《石とぐろの海蛇》を採用している点にも注目だ。宝剣の再建と貢献に、期待せずにはいられない。
ティムール・アドベンチャー(使用者1名):グジェゴジェ・コワルスキ/Grzegorz Kowalskiが登録したこのデッキは、《創造の座、オムナス》の代わりに《神秘の論争》を採用した「オムナス・アドベンチャー」とも言えるだろう。コワルスキいわく、「《創造の座、オムナス》よりも、安定した動きと優れたマナ・カーブの方が強いと確信した。だから《創造の座、オムナス》を使うより、それを1マナで打ち消すことを選んだんだ」とのこと(参考:英語)。結論を出すのは早計だが、ミシック・ランキング1位を達成した彼の言葉は正しいのかもしれない。
ディミーア・ローグ(使用者1名):「ディミーア・ローグ」の中でも異彩を放つこの形は、今大会で最も刺激的な一作だ。驚くべきことに、このデッキには《盗賊ギルドの処罰者》と《空飛ぶ思考盗み》しかならず者が採用されておらず、そのため《トリックスター、ザレス・サン》に依存していない。代わりに《ヴァントレスのガーゴイル》や《物語への没入》、《湖での水難》といったカードで「切削」テーマが強調されており、さらにクリーチャーを低コストにまとめることで《夢の巣のルールス》を相棒として採用できるようになっている。このデッキが《創造の座、オムナス》に対してどのような戦いを見せるのか楽しみだ。
ヒストリック・メタゲームブレイクダウン
今大会初日と2日目にそれぞれ3回戦行われるヒストリックもまた、『ゼンディカーの夜明け』の導入で激変を迎えていた。これまでは「ジャンド・サクリファイス」、「赤単ゴブリン」、「スゥルタイ・ミッドレンジ」が3大デッキとして権勢を誇っていたが、新セットの登場で環境はかき回され、今大会のメタゲームは以下のようになった。
アーキタイプ | 使用者数 | 使用率 |
---|---|---|
オムナス・ランプ | 11 | 34.4% |
ジャンド・サクリファイス | 7 | 21.9% |
4色ミッドレンジ | 6 | 18.8% |
ネオストーム | 3 | 9.4% |
アゾリウス・コントロール | 2 | 6.3% |
ラクドス・アルカニスト | 1 | 3.1% |
赤単ゴブリン | 1 | 3.1% |
バント・コントロール | 1 | 3.1% |
良いニュースは、《創造の座、オムナス》の使用率が「わずか」34%であること。悪いニュースは、《創造の座、オムナス》がヒストリックでも強力であるという事実だ。とはいえ、《創造の座、オムナス》と《水蓮のコブラ》の他にも環境に影響を与えた『ゼンディカーの夜明け』のカードはある。例えば「スゥルタイ・ミッドレンジ」は《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》をタッチして「4色ミッドレンジ」へ姿を変え、《海門の嵐呼び》の登場によってまったく新しい《新生化》コンボ・デッキも成立した。
スタンダードのデッキリストと同じく、ヒストリックの全デッキリストも第1回戦開始時にイベントページにて公開予定だ。参考までに、以下に各アーキタイプを簡単にご紹介しよう。
オムナス・ランプ(使用者11名):これは、スタンダードの「オムナス・ランプ」の強化版と言って差し支えないだろう。《探検》や《自然の怒りのタイタン、ウーロ》といったヒストリックで使用できるカードを加えることで、毎ターン《創造の座、オムナス》の能力を複数回誘発させたり、《発生の根本原理》を前倒しで唱えたりといった動きがずっと簡単に実現できている。その結果、ヒストリックで《創造の座、オムナス》を使うプレイヤーは「アドベンチャー型」よりも「ランプ型」を選ぶことになった。
ジャンド・サクリファイス(使用者7名):《波乱の悪魔》と《大釜の使い魔》、《魔女のかまど》が生み出す強力なシナジー満載のエンジンを擁するサクリファイス・デッキも、いまだ健在だ。このデッキは緑のカードによってゲーム中盤にも力を維持できるが、そのアプローチについては大きく二分されている。使用者7名のうち3名が《パンくずの道標》を採用し、4名が《集合した中隊》を選択しているのだ。
4色ミッドレンジ(使用者6名):このデッキには赤が抜けているため、《創造の座、オムナス》は採用されていない。「4色ミッドレンジ」は「スゥルタイ・ミッドレンジ」の派生であり、白をタッチして《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》を採用した形だ。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》の常在型能力によって、「ジャンド・サクリファイス」はクリーチャーを生け贄に捧げて《悲哀の徘徊者》や《魔女のかまど》の能力を起動できず、「赤単ゴブリン」は宝物・トークンを起動できず、《ファイレクシアの塔》や《スカークの探鉱者》も機能しなくなる。《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》が猪であることからこのデッキはすでに「ターボ・ピッグ」という愛称で呼ばれているが、使用者の誰かが勝利を掴めば、その名は広がっていくだろう。
ネオストーム(使用者3名):ティムール3色で構成されたこのコンボ・デッキは、《海門の嵐呼び》の登場によって実現した。このデッキのプランは、《海門の嵐呼び》が戦場に出たときの能力を誘発させ、その後《新生化》で生け贄に捧げるというものだ。《新生化》のコピーで《海門の嵐呼び》を生け贄に捧げて《二重詠唱の魔道士》を持ってくれば、それでスタック上に残る《新生化》をコピーできる。そのコピーで再び《二重詠唱の魔道士》を持ってきてコピーを繰り返し、《二重詠唱の魔道士》を使い切ったら今度は《玻璃池のミミック》がそれを引き継ぐ。するといつの間にか戦場に7体の3/3が並び、最後は大本の《新生化》で《タクタクの瓦礫砦》を持ってきてクリーチャーに速攻を与え、致死量のダメージを突然与える。2枚で成立する強力な4マナ・コンボは、「オムナス・ランプ」がライブラリーのカードを戦場に繰り出すより先に勝利を手にできるだろう。4ターン目までに土地4枚と特定のカード2枚を揃えるのは当たり前にできることではないが、《ヴァラクートの覚醒》によって安定性は高くなっている。
アゾリウス・コントロール(使用者2名):《ドミナリアの英雄、テフェリー》に《神の怒り》、《検閲》が核となり、伝統的なコントロール戦略が形を成している。特筆すべきは、使用者の2人とも現在のメタゲームに効果的な《墓掘りの檻》をメインデッキに採用している点だ。これ1枚で《自然の怒りのタイタン、ウーロ》に《大釜の使い魔》、《新生化》、《死の飢えのタイタン、クロクサ》、《上流階級のゴブリン、マクサス》を止められるため、ミラー・マッチ以外には極めて有効なのだ。
ラクドス・アルカニスト(使用者1名):ヒストリックで最もうまく《思考囲い》を使えるデッキと言えば、シナジーを持つ《若き紅蓮術士》や《戦慄衆の秘儀術師》を擁する「ラクドス・アルカニスト」だろう。このデッキは、《死の飢えのタイタン、クロクサ》を《縫い師への供給者》で墓地へ落とし、《立身 // 出世》や《夢の巣のルールス》で戦場に戻す動きを絡めた手札破壊を得意としている。
バント・コントロール(使用者1名):基本的な部分は「アゾリウス・コントロール」と同様だが、こちらは緑をタッチして《自然の怒りのタイタン、ウーロ》と《成長のらせん》を採用している。一方で《墓掘りの檻》は自身の《自然の怒りのタイタン、ウーロ》が止まってしまうため、採用が見送られている。
赤単ゴブリン(使用者1名):2020ミシックインビテーショナルでは圧倒的人気を誇った「ゴブリン」デッキだが、その勝率は平均を下回る結果に終わり、その影響か人気も急落したようだ。しかしながら、《スカークの探鉱者》から3ターン目《上流階級のゴブリン、マクサス》の動きは健在だ。《ゴブリンの酋長》と《群衆の親分、クレンコ》を引き当てれば、一気に致命打を与えられるだろう。
いざ決戦へ!
集計すると、スタンダードかヒストリックのどちらかで《創造の座、オムナス》を使用するプレイヤーは20名、両方のフォーマットで《創造の座、オムナス》を使用するプレイヤーは7名いた。そしてどちらでも《創造の座、オムナス》を使用しない勇者は5名いた。私としては勇者たちの勝利に期待したい。
大会の模様はtwitch.tv/magic(英語。日本語放送情報は下記)にて10月9~11日に各日とも午前9時(日本時間翌日午前1時)より生放送でお届けする。果たして「ラクドス・ミッドレンジ」や「グルール・アドベンチャー」、「ディミーア・ローグ」はスタンダードを支配する《創造の座、オムナス》を打ち倒すことができるだろうか。「ネオストーム」のコンボは、ヒストリックで通用するだろうか。32名の素晴らしいプレイヤーたちが披露する高い技術と、新たな王者の誕生をお見逃しなく!
2020年シーズン・グランドファイナル 日本語版放送ページ・放送日程
日本語版放送出演者
- 実況(1~3日目):石川朋彦(@katuobusi717)
- 実況(1日目):須田泰生(@kaicho_beda)
- 実況(2・3日目):ブルナー実久(@mksnake007)
- 解説(1・2日目):市川ユウキ(@serra2020)
- 解説(1・3日目):津村健志(@KenjiTsumura)
- 解説(2・3日目):八十岡翔太(@yaya3_)
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