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戦略記事

ReConstructed -デッキ再構築-

「いかにしてデッキを構築するか」

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「いかにしてデッキを構築するか」

Gavin Verhey / Tr. Tetsuya Yabuki / TSV testing

2013年7月9日


「デッキってどうやって作ったらいいですか?」

 これが、私が受けるたくさんの質問の中でも、特に多い質問のひとつだ。この質問が多くなるのも無理はない――デッキ構築というものは、得てして困難な作業になりがちなのだ! どうやって、持っているカードすべての中から、デッキに入れるものを選ぶべきか? それは実に悩ましいことだろう。

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 デッキ構築のより細かいところに焦点を当てた記事がたくさんある一方で、基本的な部分というのは一番解説が難しい。

 学生時代に受けていたコミュニケーションの授業を思い出すよ。教授が生徒たちに10分間の課題を与えた。椅子から立ち上がり、部屋の反対側まで歩いて再び腰を下ろすという動作についての説明書を書きなさい、というものだった。生徒の多くがくすくすと笑い声を漏らした。この課題の何が難しいんだろう? ただ歩くだけだっていうのに!

 よし、良い機会だし、ちょっとメモ帳を開いて立ち方と歩き方の説明書を書いてみてくれ。うまく説明できるかな? 歩くという行為のプロセスを、一体どこから説明するんだい?

 生徒たちがそれぞれ解答を書くと、教授はその中から何枚かランダムに選び、書いてある通りに動いてみせた。ひとつだけうまくいったものがあったが――他はすべて教授を面白おかしく転ばせたり、彼がなぜ両足を同時に浮かすことができないのかを証明したりするだけだった。

 結局今日の記事では何を言いたいのかって? そうだな、比喩的に言うなら「歩き方」だ。マジックでは、それはつまり「デッキの組み方」ということになる。本日は、デッキ構築における5つのステップを書いていこう。

 始める前に、デッキ構築のやり方は人それぞれ違う、ということを言っておきたい。使える土地を確認するところから始める人もいれば、個々のカードの相互作用から作っていく人もいるだろう。デッキ構築に間違ったやり方は無く、誰もがそれぞれのやり方で取り組んでいるのだ。すでに自分に合ったやり方を見つけている人は、それを続けるのがいいと思う。それでも、どこから始めればいいかわからないという人には、これから書く5つのステップが、しっかりとしたデッキを組む道しるべとなってくれるだろう。

 よし、それじゃあ始めよう。

ステップ1:デッキ理念を築く

 そのデッキで何がしたいのか?

「カードの寄せ集め」と「デッキ」の間には明確な線引きがあり、常にその後者を目指し実現させたいところだ。

 ベスト・アルバムを作ろうとしよう。ザ・ビートルズのような特定のバンドにこだわるものではなく、「90年代ロック」のようなジャンルで固めるものでもなく、はたまた『Now!』シリーズのように最近のヒット曲に留めるものでもなく、もっと幅広く収録したアルバムを想像して欲しい。言うならば、『グレイテスト・ヒッツ:古今東西』だ。

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 収録曲は本当にスゴいものばかりだから、君たちはそのアルバムを買った(もちろんデジタル音源だ)。さて、君たちが音楽好きならば、結果的にこの『グレイテスト・ヒッツ:古今東西』は君たちの趣味に合わないんじゃないだろうか?

 アルバムを聴き始めると、いきなりバッハからマドンナに変わり、『アメイジング・グレイス』の次は『江南スタイル』が流れ、バックストリート・ボーイズの官能的な調べが聴こえてきたかと思えば、キョクアジサシの甲高い鳴き声が響く。これじゃあ一緒に収録した意味がまるで無い!

 しっかりとした目標を持たずに取り組むと、デッキ構築でもこれに似た惨状を引き起こすことになる。ただ赤のカードと緑のカードを片っぱしから詰め込むだけでも、赤緑デッキにはなるだろう――しかし、それにまとまりがあるとはとても言えないのだ。

 そのまとまりを持たせてくれるのが、デッキの基本方針、つまりデッキ理念だ。

 デッキ構築の際に私が最初にやるのは、そのデッキの目標を見つけることだ。デッキの目標というのもデッキ理念のひとつと言える。デッキを組むということは、そこにはたぶん何かしらの根拠があるだろう――デッキ理念とは、いわばその根拠の部分だ。

 デッキ理念には、そのデッキが全体的にどんなデッキなのか、そしてゲーム中何を目指すのか、ということを含めなければならない。デッキへ入れるカードの選択に迷ったときいつでも振り返ることができて、目指すべき道を示してくれる天の声、それがデッキ理念なのだ。もしよかったら、デッキ理念を紙に書きつけてデッキ・ボックスに入れておくといい。あるカードがデッキ理念に沿っていない場合は、なぜそのカードを採用したいのか、自らに問い直すことが必要だろう。

 以下に良いデッキ理念の例をいくつか挙げよう。

「これは赤緑のアグレッシブなデッキである。できるだけ早く勝負を決めるため、序盤にクリーチャーと火力呪文で大打撃を与えたい」

「これは手札破壊デッキである。軽い手札破壊呪文を駆使して序盤から対戦相手の手札を削り始め、相手のとれる選択肢を狭めたい」

「これは《獣相のシャーマン》によるアドバンテージをフル活用するデッキである。クリーチャーと、墓地から効果を持つカードを多く採用したい」

「これは《やっかい児》と《鏡割りのキキジキ》によるコンボを中心に組むデッキである。ゲームに勝つため、この2枚を集める手段を探したい」

「これは青黒コントロール・デッキである。ゴブリン・デッキと《やっかい児》/《鏡割りのキキジキ》コンボ・デッキに狙いを定めて構築したい」


 逆に、役に立たないデッキ理念の例は以下の通りだ。

「これはゲームに勝ちたいデッキである」

「これは赤緑デッキである」

「これはスタンダードのデッキである」

「これは全部私の持っているカードで構築したデッキである」

「私はセイウチだ。」


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 オーケー、みんなそれぞれのデッキ理念を持てたかな? それじゃあ次のステップに行くぞ!

ステップ2:カードを選別する

 さて、それぞれのデッキ理念を持ったら、次は実際にデッキを組み始めよう。

 デッキ理念に合った特定のカードや相互作用を中心に構築する場合、ついその中心から始めて外側へ広げるように構築したくなるだろう。だがしかし、そこで心に留めておくべきことがある。これはほとんどのデッキに言えることだが、しっかりとしたプランBを用意するのが肝心だ。仮にデッキの核となるカードを引けなくても、デッキがきちんと機能するようにすべきなのだ。

 例えば、先ほど例として挙げた《獣相のシャーマン》を中心にしたデッキ構築の場合、《獣相のシャーマン》があるときだけ強くなるように力を注ぐわけにはいかない。《獣相のシャーマン》をすべてのゲームで引くことはないだろうし、2ターン目に出すとなれば尚更だ。さらに、たとえ戦場に出ても2/2というサイズでは簡単に除去されてしまう。《獣相のシャーマン》があれば手のつけられないデッキにしたいのはやまやまだけれど、手札へ来ないときに慌てふためくことのないようにしたい。

 ただしこれには例外もある――例えば、《やっかい児》と《鏡割りのキキジキ》のように2枚揃えばすぐにゲームが取れる組み合わせなら、これだけに特化する価値があるだろう――とはいえ、大抵の場合は他に勝ち手段を追加したいところだ。

 ある特定の戦略を中心に構築しようとするなら、まずはその戦略に合ったカードを取り挙げるところから始めるのがいいだろう。例えば、赤緑のアグレッシブなデッキを目指す場合は、手持ちのカードの中からマナ・コストの低い赤と緑のクリーチャーすべてに目を通すのが良いスタートだ。ついでに、クリーチャーを引き立たせる軽いスペルも見ておこう。

 持っているカードに限らずデッキを構築し、環境にあるすべてのカードを調べることから始めるなら、そんな君たちにうってつけのやり方があるぞ。私がよくやるのは、Gathererで作りたいデッキの色や欲しいパーツのヒント(例えば「エルフ」)を検索にかけて、その中から使えそうだと感じたものをすべて書き留めておく、というものだ。

 では、実際にデッキへ残すものを選ぶにはどうすればいいだろう? よし、次のステップへ進もう......

ステップ3:デッキを磨く

 こうして君たちは、デッキに入り得るカードを選別した。ここからはそれを整える時間だ――デッキを磨き上げるぞ。

 デッキ枚数は60枚以上なら何枚でも良いことになっているけれど、まあ60枚より多くしたいということはまず無いだろう。デッキ枚数が増えれば増えるほど、欲しいときに欲しいカードを引き込むチャンスが減る。普通なら、私は常識にしたがって次のように言わせてもらう。60枚より多くするのはやめておくべきだ。(《機知の戦い》を使っているなら話は別だ。とことんまで突っ走ってくれ)。

 また、土地の枚数は構築するデッキの種類によってだいたい23枚から26枚の間で決めたいところだ。(通常、よりアグレッシブなデッキでは軽いカードが多くなるので、必要な土地は少なくなる)。したがって、土地以外のカードは34枚から37枚ということになるだろう。

 さて、その枠をどうやって選ぶ?

 私が普段やるのは、まずステップ2で書き留めたものにすべて目を通し、このデッキで「本当に」使いたいものはどれか自分に問いかけることだ。最高のシナジーを生み出すのはどの組み合わせか? 最も強力なカードはどれか? そうしているうちに何枚か削られていく。

 全部抜くカードに迷ったら、ステップ1で築いたデッキ理念を思い出す。大局的に見て戦略に合っていなければ、抜いてしまうのだ。

 続けて、マナ・カーブ順に並べる。これが非常に重要で、そのデッキが毎ターン何をするのか確認する手助けになってくれる――詰まっているマナ域があるかどうかも確認できるぞ。

 マナ・カーブ順に並べるのは簡単だ。カードの点数で見たマナ・コストを見て、1マナ域を先頭に左から右へ順番に並べていく。本来のコストとは違うコストで唱える予定のカードについては、そちらに合わせて並べるといい。(例えば、《マラキールの門番》は基本的に2マナで唱えないし、《ジョラーガの戦呼び》も1マナで唱えないし、そして《マイアの処罰者》も7マナで唱えないだろう)。

 それから――マナ・カーブ順に並べる際、見落としやすい大切なことがある。(主にインスタントやソーサリーの話だが)汎用性が高く、必ずしもマナ・コスト通りのターンに唱えるものではないカードはそこに含めず、もうひとつ別のマナ・カーブを作るべきだ。(例えば、《破滅の刃》や《剛力化》を2ターン目に使うことは少ないので、それらは実質2マナ域のカードではない。一方、《耕作》や《予言》はそのマナ・コスト通りのターンに唱えることが多いので、クリーチャーと同じマナ・カーブに残すのがいいだろう)。汎用性の高いカードは基本的に元のマナ・カーブでは扱わないけれど(コントロール・デッキを組んでいて、毎ゲームマナ・カーブ通りに呪文を唱えるつもりなら話は別だ)、こちらもコスト順に並べることで、余ったマナでできることのアイデアをくれるのだ。

 以上のことをすべて行うと、こんな風になるはずだ。

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(クリックで拡大)

 こうしてすべてのカードを並べたら、カードが多すぎるマナ域がないか確認しよう。例えば、言うまでもなくマジックにはより高いマナ域に魅力的なカードがたくさんあり、ついそういうカードでデッキを埋めたくなるものだ――ところが、そうすると重いカードが手札に溜まってしまうだろう。悪いマナ・カーブの例を挙げよう。

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(クリックで拡大)

 たとえすべてが超強力なカードでも、いずれはダンボール箱に入ったかわいい子たちの中から選び抜かなければならない。このように4マナ域に偏ったマナ・カーブのままだと、マナを効率的に使うことができず、初手は4マナのカードで溢れてしまうだろう。

 いくらマナ・カーブがデッキによって大きく違い、例外があるとはいっても、私の経験に基づいて言わせてもらおう。4マナ以上のカードは合わせて10枚を超えることのないようにしたい。アグレッシブなデッキでは特にマナ・カーブが低くなるので、4マナ以上のカードは多くても7枚に留めたい。(そして、ダメージを序盤に稼ぎ始められるように1、2マナ域をたくさん採用しよう)。

 私の経験則からもうひとつ、基本的にひとつのマナ域に入れるのは12枚までにしよう。理想を言うなら、マナ・カーブが右へ行くにつれて曲線を描くように枚数を減らしていきたい――それでマナ・「カーブ」と呼ばれるわけだ。(1マナ域は例外で、ほとんどのデッキにとって良い選択肢がそこまで多くない)。1、2マナ域を使うには早く手札に欲しいけれど、同時に高マナ域のカードを引き込むチャンスもたくさん欲しいのだ。

 このステップがうまくいけば、デッキは大きく削られて、本当に欲しい強力なカードが残るだろう。枠が少し余るくらいが理想だ――そこが次のステップの役目なのだ。

ステップ4:開いた穴を埋める

 ここまでデッキ理念を築き、そのデッキ理念に基づいてカードを選別し、見直してきた。次は残った隙間を埋める番だ。デッキを眺めてみよう――不十分な点が見られるのはどこだろうか?

 このステップで加えるのは、主にインスタントやソーサリーだ。例えば、最も補うべきものはおそらく除去の不足だろう。ここで追加の除去を見ていくことになる。アグレッシブなデッキを組んでいて、最後の数点を奪う手段に乏しい場合、直接火力強化呪文の採用を検討したい。

 このステップはまた、別に並べたマナ・カーブ――スペルの部分――を見ていくところだ。除去の多くが重い? それなら《火柱》や《破滅の刃》を入れて、ゲーム序盤に除去を持てるようにしよう。マナをタイミング良く効率的に使うことが、勝利への鍵だ。軽い呪文はターンを重ねても使えるのだ。

 とはいえ、これはスペルに限った話ではない。

 ステップ3で並べたマナ・カーブは、そのまま置いてあるかな? いいね。それじゃあ序盤のマナ域(1マナ域は省いてもいいかもしれない)で薄いところはあるかな? 私はここで手持ちのカードやステップ2で書き留めたリストへ立ち返り、薄いマナ域に合ったカードを見つけにいく。

 より強くコストの重いカードを抜いて、それより弱いとわかっている3マナ域を採用する場合は、ちょっと妥協したくなるものだ。しかし、充実した毎ターンを送れるようにするのが先決だ。3マナの《国境地帯のレインジャー》は、4マナの《練達の生術師》と比べれば弱いかもしれない。でも、4マナ域は12枚あって3マナ域が無い場合、私は《国境地帯のレインジャー》を4枚採用するだろう。

 そして、シナジーを生むカードが追加できるかどうか確認する。このデッキに合っていて、他のカードと良く噛み合うものはあるだろうか? 例えば、デッキのクリーチャーの多くが飛行持ちであることに気づいたら、たぶん《順風》が欲しくなるだろう。

 それぞれのカードを何枚入れればいいのか気になるかい? それもまたデッキ構築において非常に難しい部分だ。デッキに入れるべきカードの枚数について知りたいなら、ここDailyMTGで私が書いた最初の記事に詳しく書いてあるぞ。「Crunching Numbers」の見出しを読めば、その答えがわかるだろう。

ステップ5:とにかく土地

 実は、マジックのデッキで一番大切なのはマナ基盤だ。

 すべての呪文は、唱えるすべが無ければ何の意味もない。黒赤デッキに入っている土地が全部《平地》では、カモのいないカモ池のようなものなのだ。土地の影響を過小評価するのは簡単だ。しかし実際のところ、多くのフォーマットにおいて、ハイレベルなデッキ構築の場で私が初めに手をつける場所は使える土地の確認かもしれない!

 通常なら、まずデッキの色を安定させられる土地――《繁殖池》や《氷河の城砦》のようなカード――を探して、そこからその欠点(例えばタップ状態で戦場に出ることなど)を評価しつつマナ基盤の構築に入りたいところだ。あまり動きを阻害しないものを使いたいけれど――大抵のスタンダード環境では(と言っても、私がこれを書いている時点の環境である『ラヴニカへの回帰』環境は、マナを安定させるものが詰め込まれているので除く)、デッキの色を安定させてくれる土地ならなんでも欲しいと思うだろう。

 大抵のスタンダード環境では3色より色を増やすのは難しく、また私もそれはお勧めしない。デッキを支えるマナが不十分なら、デッキを見直し、本当にすべてが必須なのか問い直すべきだ。例えば、4色デッキに赤いカードが6枚しか入っていないなら、それらを抜いてマナ基盤を安定させるべきだろう。

 最後に、デッキに入れるべき土地の枚数を決める必要がある。私は「土地は少ないより多い方が良い」派だ。なぜなら呪文を唱えられるというのは素敵なことだし、安心してキープできる手札も増えるからだ。もう一度言っておこう。アグレッシブなデッキでは23枚か24枚、コントロールやミッドレンジでは26枚(場合によっては27枚)が私の基準となる枚数だ。

 加えて、今は呪文のように使える素晴らしい土地が多く印刷されている。《変わり谷》や《浸食する荒原》のようなものは、マナを生み出す以外にもたくさんの機能性を持った土地だ。君たちが土地を多く入れる側に属しているなら、《変わり谷》のような土地を安定して運用でき、土地を引き過ぎてもやることが無くなるという風にはならないだろう。

デッキ構築の妙

 こうして君たちは、デッキ構築のための5ステップを手にした。私の作るデッキの大半は、この確実な方法を軸に組まれている。ときには別の方法――最も一般的なマナ基盤から始めるやり方――から始めることもあるけれど、普段はこのやり方だ。君たちがマジックのデッキを組み始めるときに、これが役に立てば嬉しいな。

 サイドボードについても知りたい? それはまったく別の話になるね。サイドボードの複雑さについて1本まるまる書いている記事もあるので、そちらを読んでサイドボード構築の助けとしてくれ。今回の記事とサイドボードについての記事のふたつで、トーナメント・レベルのデッキを組むのに必要となる基本的なツールはすべて揃ったと言えるだろう。


(今週(7/23)のデッキ募集はありません。 編集)

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