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Making Magic -マジック開発秘話-

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よろしく共闘

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年10月24日

原文はこちら

 『統率者(2016年版)』プレビュー特集へようこそ。今週は、間もなく発売される『統率者』シリーズの最新作についての特集となる。私は、この商品のテーマがどのようにして決まったか、そしてどんな問題を解決しなければならなかったかについて語ろう。そのテーマを示すプレビュー・カードも2枚用意してある。その前に、いつもの通り、『統率者(2016年版)』のデザイン・チームを紹介しよう。

イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer (リード)
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 イーサンが『統率者』シリーズに関わったのはこれが4回目で、リードを務めたのは2回目となる(『統率者(2014年版)』と『統率者(2016年版)』でリードを務めた。イーサンは偶数年が好きなのだろう)。イーサンが開発部で職を得たのは、第2回グレート・デザイナー・サーチに優勝したからである。そして、彼は4年間開発部に所属している。その間に、『ニクスへの旅』や『ゲートウォッチの誓い』でリードを務め、『アモンケット』(来年前半に発売される大型セット)では私と共同リードを務めている。イーサンは非常に発明力のあるデザイナーで、彼や彼の率いるチームの作品にはいつも驚かされる。『統率者(2016年版)』もその例外ではなかった。

サム・バーレイ/Sam Burley
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 開発部で働く中でクールなことのひとつは、デザインが自分の本業でなくてもデザインに関わることができる機会があるということだ。サムはクリエイティブ・チームで働く、コンセプト・アーティストであり、コンセプトをより具体的なアイデアにする助けとして、新しいセットや世界を視覚的に具体化するのが仕事である。その後、クリエイティブ・チームはそのアイデアをもとにして世界を作り、社内の他の部署と将来のセットや世界について話し合うのだ。我々はデザイン・チームに異なる視点を導入することに尽力しており、その一環として通常のデザイナーやデベロッパーと違う立場からの人材を招いている。サムは熱心でアイデアに溢れており、デザイン・チームにとって素晴らしい増援となった。

アリ・メドウィン/Alli Medwin
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 アリはサムと同じような状況にあった。彼女も奈落の住人だが、彼女の業務はマジックのデザインではなく『Magic Online』のエディターである。ただし、彼女は余暇にマジックのカードのデザインを楽しんでいて、デザイン・チームに参加することを強く望んでいた。『統率者(2016年版)』はその機会だったのだ。アリは期待を裏切ることなく、このプロジェクトに全力を尽くし、多くの記憶に残るカード・デザイン(と、このセットの中心メカニズムのテンプレート)を作り上げたのだ。

ケン・ネーグル/Ken Nagle
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 ケンは開発部随一の、統率者戦の支持者であり、『マジック:ザ・ギャザリング――統率者』(2011年に発売された最初の『統率者』セット)のリード・デザイナーを務めた。第1回グレート・デザイナー・サーチの次点だったケンも、今では多くのデザイン・チーム(『ワールドウェイク』『新たなるファイレクシア』『ラヴニカへの回帰』『神々の軍勢』『運命再編』『異界月』。さらに、2017年秋に発売される『Ham』では私と共同リードを務める)でリードを務めたベテランのデザイナーとなっている。ケンはアイデアの泉で、いつでもデザイン・チームには欠くことのできない存在だ。これから見ていく通り、ケンは『統率者(2016年版)』のデザイン上大きな課題を解決する上でもその能力を証明している。

ロバート・シュースター/Robert Schuster
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 アリと同様、ロバートも『Magic Online』の担当である。『Magic Online』のTumblrにアクセスしたことがあれば、彼の作品を目にしたことだろう(私のHead-to-Headで、カード同士を競わせるときの画像も作ってくれている)。ロバートは楽しく洞察力に富んでおり、『統率者(2016年版)』のデザイン・チームに独特の視点をもたらしてくれた。

4人の登場人物

 統率者戦には足りないものがいくつもあるが、その中でも最も話題になっているのは4色統率者である。1色、2色、3色、5色の統率者には多くの選択肢があるが、現時点では4色の統率者というのは存在していない。実際、マジック全体を見渡しても、4色のクリーチャーというのは『ギルドパクト』のネフィリム・サイクル1つしか存在していないのだ(完全に後知恵だが、これを伝説のクリーチャーにしておくべきだったと思う)。

 最初の『統率者』商品のテーマを決めたとき(当時は夏の改革的商品の一環で、シリーズではなかった)、4色デッキというのは有力な候補に上がっていた。最終的には、チームは3色をテーマとして選ぶことになった。その理由は、過去16000枚のカードの中で1度しか4色のクリーチャーを作っていなかったのと同じで、4色のカードをデザインするのは本当に難しいのだ。1色が欠けているということに注目されてしまい、結局ごった煮で明確な定義のないものになってしまいがちなのである。

 『統率者』が毎年恒例のシリーズとなって、我々は次々とテーマを取り上げることが必要になった。そして、4色デッキが議題にのぼるたび、デザイン・チームはそれ以外の選択肢を選び続けてきた。断片、楔、単色、敵対2色、と、4色以外のあらゆる選択肢を選んできたのだ。そして、『統率者(2016年版)』で、我々はついに4色を成立させる方法を探すことにした。

 イーサン率いるチームは、デザインの初めに4色のでッキを成立させるあらゆる方法を検討することにした。試したものの一部が、以下のようなものである。

4色の伝説のクリーチャー

 チームはサイクル1つを作ることができた(その成果は各デッキに1枚ずつ入っている)。しかし、4色クリーチャーのデザイン空間はやはり不安定なものだった。デザイン・チームはもう1枚作ろうとしたが、最終的に採用されたサイクル以外に満足のいくものはできなかったのだ。

色違いの起動コストを持つ、3色の伝説のクリーチャー

 デザイン・チームは、3色の伝説のクリーチャーをデザインすることができることはわかっていた。過去の『統率者』シリーズの2つで、3色をテーマにしている。4色の固有色を持たせるために必要なのは、4色目となる色違いの起動コストを持つ能力を持たせることだった。コンセプト的には興味深く見えても、カードを実際にデザインしてみるとそうでもないアイデアというものは存在する。これもそんなアイデアの1つだった。

色違いの2色混成の起動コストを持つ、2色混成の伝説のクリーチャー

 赤緑のクリーチャーで、赤と緑の両方に相応しいサイズと能力を持つクリーチャー(例えば4/4のトランプルつきクリーチャー)を想像してもらいたい。次に、それと異なる混成マナを起動コストとする起動型能力(例えば白黒で、ターン終了時までそのクリーチャーに絆魂を与える)を想像してもらいたい。この実装にはいくつかの問題がある。1つ目に、最初のクリーチャーには問題なくとも、その2色の混成に許されたデザイン空間は狭く、すぐに使い切ってデザインするのが難しくなるということ。2つ目に、固有色というのは難しいものなのに、混成マナが絡むとテスト中にもかなりの混乱が生じるということである。

ファイレクシア・マナを使ったアーティファクト・クリーチャー

 これは、かなり乱暴なアイデアの1つである。伝説のクリーチャーをアーティファクトにして、さまざまな色のファイレクシア・マナ・シンボルを使うのだ(示された色のマナを支払う代わりに2点のライフを支払うことができる)。こうすれば、プレイヤーはそのすべての色を出せるようにデッキを組まなくても、そのクリーチャーに固有色を持たせることができる。このアイデアには幾つものデベロップ上の問題があった。

 イーサン率いるチームは苛立っていた。難しい問題に取り組んでいることはわかっていたが、何も解決策がなかったのだ。そんなとき、ケンはこの問題に取り組む新しい方法を提案したのだった。

分割評決

 話は『ラヴニカへの回帰』のデザイン時期に遡る。『ラヴニカへの回帰』のデザイン・チームは、ラヴニカのどの要素を再録すべきで、どの要素を再録すべきでないのかを決定しなければならなかった。戻す要素については、そのメカニズムが初登場時になぜ楽しいものになっていたのかを再検討し、調整する余地があるかどうかを確認する必要があった。

 旧『ラヴニカ』ブロックでは、分割カードが使われていた。そこで、(そのセットのリード・デザイナーだった)ケンは分割カードを再録するかどうか考えていた。そして、ケンは分割カードの(通常通り)どちらか半分を唱えるか、両方を唱えるかを選べるようにするという調整を思いついた。ケンは分割カードをプレイしたとき、常々その選択肢がほしいと思っていたのだ。この融合能力は最終的に『ドラゴンの迷路』のために温存されることになったが、ケンの考えは止まらなかった。

 このメカニズムのサイクルの1つは、片方が2色で、もう一方がそれと1色重なる別の2色になっていた。ケンは、これに2つのギルドが協力しているというフレイバーを感じたのだ(興味深いことに、我々が旧『ラヴニカ』ブロックでネフィリムを作ったとき、私はギルド2つが協力しているというフレイバーを提案していた。ただし、このサイクルがギルド構造になじまないプレイヤーにも楽しめるものにするという意味付けを持ったことで、私はこの4色ネフィリムをギルドに結びつけるのをやめたのだ)。


《砂丘生みのネフィリム/Dune-Brood Nephilim(GPT)》 アート:Jim Murray

 話は『統率者(2016年版)』のデザインに戻る。明確な4色デザインはうまく行かなかったので、チームは創造力を働かせた。ケンは融合分割カードを思い出し、呪文でなくクリーチャーで同じようなことをする方法はないかと考えた。カード1枚ではうまくいかなかったので、ケンはひらめいた。カード2枚を使えばどうだろう。カード1枚に入れるのではなく、異なった2色のカード2枚をメカニズムで組み合わせたらどうだろう。こうして共闘能力に繋がるアイデアが生まれたのだ。

 共闘能力の処理はこうだ。統率者を選ぶときに、伝説のクリーチャー1体を選ぶのではなく、両方が共闘能力を持つ伝説のクリーチャー2体を選ぶことができる。『統率者(2016年版)』に入っている、共闘能力を持つ伝説のクリーチャーはすべて2色で、友好色のものも敵対色のものもある。実際のテキストは、「共闘(両方が共闘を持つなら、あなたは2体の統率者を使用できる。)」となっている。

 デザイン・チームはまず各デッキごとに共闘持ちの伝説のクリーチャーを2体作った。1体は友好2色で、もう1体は敵対2色のクリーチャーである。4色の伝説のクリーチャーとこの共闘クリーチャーのペアがあることで、各デッキには統率者のパターンが2つずつあることになる。

 『統率者(2016年版)』のリード・デベロッパーを務めたベン・ヘイズ/Ben Hayesは共闘能力をいたく気に入り、共闘クリーチャーの数を増やすことを提案した。敵対色の共闘持ち伝説のクリーチャーをもう1体増やしたのだ(敵対色を選んだのは、友好2色の伝説のクリーチャーは敵対色のものに比べて大量に存在するからである)。これによって、各デッキには統率者の選択肢が3つずつあることになった。4色のクリーチャーか、共闘クリーチャー2体(友好色の1体と、敵対色の2体のうちどちらか1体)の組み合わせである。

フレイバーの味わう

 イーサンの『統率者(2016年版)』の展望にはもう1つの要素があった。イーサンはマジックのストーリーの大ファンであり、『統率者(2014年版)』を作ったときにはクリエイティブ・チームと協力して、マジックの歴史上カード化されていない登場人物を、可能な限り多く伝説のクリーチャー(や、『統率者(2014年版)』の主なテーマであるプレインズウォーカー)にしたのだ。『統率者(2014年版)』のこの要素は非常にうまくいったので、イーサンは今回もそうしようと考えた。今日の私のプレビュー・カードのうち一方は、私が長年に渡りカード化しようと試みていた人物である。

 私は、(以前ウィザーズにいたミカエル・ライアン/Michael Ryanと)2人でウェザーライト・サーガを作った。その主な登場人物が、ジェラードという男性だった。ジェラードはファイレクシアの脅威を打ち倒す上で重要な役割を果たすと予言されていたので、彼の両親は彼を安全なところに隠す必要があった。彼らはその役目を、シダー・コンドという男性に委ねることにした。シダーは「指導者」という意味である。コンドは彼のグループのリーダーだったのだ。コンドはジェラードを養子に迎え、実子であるヴュエルとともに子供として育てた。ジェラードとヴュエルの間で状況は悪化し、ヴュエルはついに彼の父親を殺して遁走し、後に敵役のヴォルラス(「ラースのヴュエル/Vuel of Rath」)になったのだ。

 シダー・コンドは『Vanguard』(初期ライフ総量や初期手札枚数を変化させてゲーム中に使える能力を得るカードを使う、特殊フォーマット)のカードにはなったが、通常のマジックのカードになったことはなかったのだ。

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 私は『時のらせん』のときにシダー・コンドのカードを作ろうとしたが、クリエイティブ・チームのリーダーはコンドの知名度が低いと感じ、アイデアを却下したのだ。私はこの話をイーサンにしたことがあった。その後、『統率者(2016年版)』にあたって、イーサンは緑白の伝説のクリーチャーに相応しい登場人物を探していた。彼は私に、コンドが緑白で問題ないかと尋ね、私は問題ないと答えたのだった。

 さて、いよいよ『統率者(2016年版)』の1枚目のプレビュー・カード、《ジャムーラのシダー・コンド》をお披露目しよう

 イーサンが《ジャムーラのシダー・コンド》に側面攻撃を持たせたのは、先制攻撃が初登場した『ミラージュ』ブロックの舞台であるジャムーラ出身だからである。指導者なので、2つ目の能力は味方を強化する助けとなるものだ。

 新しく作られた2色の伝説のクリーチャーのすべてについて、イーサン率いるデザイナーはクリエイティブ・チームと協力し、マジックの歴史上に存在する、そしてまだマジックのカードになっていない、クールな登場人物を探した。4色の人物は新しく作られたが、それぞれが既存のマジックの世界出身である。敵対色の伝説のクリーチャー2体は、お互いにつながりがあるように作られた。私の2枚目のプレビュー・カードは、そのつながりがあるうちの一方である。

 プレイヤーがカード化を求めていた人物の1人が、イニストラード世界のマッド・サイエンティスト、ルーデヴィックである。ルーデヴィックは『統率者(2016年版)』で青赤の伝説のクリーチャーになっている。彼は今日のプレビュー・カードではないが(今週中にプレビューされる予定である)、代わりに《ルーデヴィックの名作、クラム》をご紹介しよう

 まとめると、『統率者(2016年版)』には5つのデッキが存在する。それぞれのデッキは4色に焦点が当たっている。それぞれのデッキには新カードが15枚入っている(新カードの中には、複数のデッキに入っているものもある)。その15枚の中には、次のようなものがある。

  • 4色の伝説のクリーチャー(既存の世界からの新しい人物)。神話レア。
  • 友好2色で共闘を持つ伝説のクリーチャー(マジックの歴史上の、まだカード化されていなかった人物)。神話レア。
  • 敵対2色で共闘を持つ伝説のクリーチャー2体(マジックの歴史上の、まだカード化されていなかった人物で、お互いにクリエイティブ的に関わりがある)。1枚は神話レア、1枚はレア。
  • そのデッキのメカニズム的テーマに関連した様々なカード。

 それぞれのデッキに、共闘を持つ伝説のクリーチャーが3体入っており、共闘の組み合わせには3種類ある(ただしその中の1つは2色しか使えない)。5つのデッキすべてを購入したら、共闘を持つ伝説のクリーチャーは15体になり、105種類の共闘の組み合わせが存在することになる。

 リード・デザイナーの展望からデザインがどのように作られていったかの詳細については、この記事と同じく今日公開されるイーサンの記事(英語)を読んでみてくれたまえ。

「4!」

 4色統率者には長い間かかったが、うまくできるタイミングで時間をかけたのだと考えている。そして、『統率者(2016年版)』こそがその商品なのだ。私に4色統率者を求める声を届けてくれていた諸君には、ぜひ楽しんでもらいたいと思う。

 いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。新しい4色統率者について、共闘メカニズムについて、『統率者(2016年版)』について、このプレビュー記事について、何か意見があれば、肯定的であれ否定的であれ、考えたことをメール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、諸君からの『カラデシュ』に関する質問に答える「こぼれ話『カラデシュ』」の第3回、最終回でお会いしよう。

 その日まで、4色統率者の選択肢があなたに楽しみをもたらしますように。

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