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Making Magic -マジック開発秘話-

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色の協議会

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年8月22日

原文はこちら

 今回、私は諸君に「色の協議会/the Council of Colors」をご紹介しよう。そう聞いて諸君は「色の協議会なんて聞いたことがない」と思うことだろう。ここに到るまで私は一度も公言したことがないのだから、それは当然だ。実際のところ、誰もこれについては公言していない。これは1年以上前にデザイン・チームが作ったものだが、存在も公表されていなかったのだ。今回、この協議会がいい仕事をしていて、それを世界に知らせたかったので、公表することにした。

天空のパイ

 はじめにリチャード・ガーフィールド/Richard Garfieldがマジック:ザ・ギャザリングを作ったとき、中心にあったのは3つの天才的なアイデアだと私は考えている。遠い昔、私はそれらをまとめて「黄金の三本柱」とあだ名した。すなわち、トレーディング・カードゲームというアイデア、マナのシステム、そしてカラー・パイである。マジックの健全さという中には、この3つの概念を監視し、実効性のあるものに保つことが含まれているのだ。

 トレーディング・カードゲームを維持するために、我々は我々が使っている媒体を最大限に引きだしているか自問自答し続ける必要がある。何年もに渡り、我々は様々なことを変更してきた(神話レアの追加、セット枚数の変更、新世界秩序の導入、など)。しかしその一方で、マジックをその根幹から離さないようにもしている。マジックは現在も、1993年に発売された時と同様に、ダイナミックなトレーディング・カードゲームなのだ。

 マナのシステムを維持するために、我々はそのバランス調整に尽力している。それを回避するようなことをすることは警戒しなければならない。我々はマナ・カーブとパワー・レベルを監視しなければならない。これは手のかかる仕事だが、主席デベロッパーのエリック・ラウアー/Erik Lauer率いるチームが中心でやってくれている。

 カラー・パイを維持するために、我々は穏やかな進化と絶え間ない変化のための変動を認めながら中間にバランスを取らなければならない。単体で見て、カード個別の小さな判断を大量に積み重ねていった結果、気づかないうちに大きく道を外れてしまうことは非常によくあることなのだ。

 何年も前になるが、私は、カラー・パイが重要な理由に関する記事(リンク先は英語)を書いた。この記事は古く、幾つかの点で時代遅れになっているが、全体としてはカラー・パイの重要性をうまく説明している。最近(10年以上前ではなく2~3年前)、ポッドキャストでもカラー・パイの重要性について説明している。正確に言えば、黄金の三本柱について語った三部作だ(トレーディング・カードゲームカラー・パイマナのシステム)。ポッドキャスト版のほうが新しく、ずっと詳細な内容を語っているので(ポッドキャストまる1本使って語っているのだから)、興味がある諸君は機会があれば聞いてみてもらいたい。

 私は、カラー・パイこそがマジックの中心だと強く信じている。フレイバーも、すべてのメカニズムも、それを軸にしているのだ。マジックのエトスであり、マジックに個性を与えているものであり、マジックの独自性のまさに中心なのだ。私は、カラー・パイ、各色の理念、色同士の関連、重なりあい、そして対立について、さらに各色それぞれについての記事()など、カラー・パイに関する記事を大量に書いてきた。

 そのため、私はこの20年以上の開発部での仕事の中で、カラー・パイの守護者たらんと考えるようになっていた。誰かがその色に相応しくないと思われるようなことをするカードを作ろうとしたときに、私が介入するのだ。しかしこの数年、問題が生じるようになった。新しいカードが含まれる商品の数が増えているのだ。また、周知の通り、2ブロック構造への移行とともに新商品のサイクルも早まっている。私はこれまでになく忙しくなっており、我々はこれまでになく多くの商品を作っているのだ。私は、カラー・パイの守護者という地位を返上することにした。

《混沌のねじれ》、君のことだ。

知は力なり

 私は、この問題を解決するための最初の一歩は教育だと判断した。例えば、上述の、マナのシステムを維持することはデベロップのほうが専門である。エリックはコストやパワー・レベルの扱いについて彼が考えていることをすべて体系化した。そして、デベロップ・チームの全員がそれに関する質問に答えられるように教育したのだ。その結果、例えば私があるカードのコストをどうするか知りたかったら、わざわざエリックに尋ねなくてもデベロッパーに聞けばよくなったのだ。では、カラー・パイについても同じようにしたらどうなるだろうか。

 デザイン・チームは週例の会議を行っているので、その会議の中で私はデザイン・チームにカラー・パイを説明していった。(通例会議ごとに1色を)その色で何ができるか、それがどうメカニズム的に反映されているかを深く掘り下げて語った。また、色の理念、どの色が何を使うかというメカニズム的判断がどう各色の理念との一致に基づいているかについても語った。色のペアごとに、何が共通していてメカニズム的にどう差別化しているのかということも語った(例えば、黒は「ブロックできない」で赤は「可能なら攻撃する」。緑の《巨大化》効果は白よりも強力で、白はクリーチャーが戦闘で有利になるようコンバット・トリックに特化している、など)。

 目的は単純だった。私は、デベロッパーがコストに熟達しているのと同じように、すべてのデザイナーがカラー・パイに熟達するようになってほしかったのだ。そうすれば、開発部に、カラー・パイの疑問が生じたときのボトルネックがなくなったと言える。誰かが何かに問題がないか知りたかったら、デザイナーの誰かに尋ねればいいのだ。理論上は、このアイデアはうまくいきそうに思えた。しかし、実際のところ、私は重要なことを見落としており、さまざまな問題が生じることになったのだ。

曲げることと破ること

 私が好んで口にすることの1つに、デザインは芸術でデベロップは科学だ、というものがある。つまり、一番最初の工程、何かを0から作り出すときには、アーティストが白いキャンパスに向かう時と似た方法で問題に取り組むことになる、ということである。0から何かを作るには、直感的な飛躍が必要なのだ。対照的に、最後の工程では数字を調整することになる。環境のバランスを取るためにはかなりの数学が必要であり、科学に近いシステムになっていくのだ。

 この話をしたのは、カラー・パイが科学よりも芸術に、数学よりも心理学に近いからである。何かが筋が通っているかどうかはほとんど完全に感覚の問題で、数値的な話ではないのだ。もし私が複数のデベロッパーに同じカードのコスト付けを依頼したら、どの答えも±1の範囲に入ることになるだろう。一方、複数のデザイナーに新しいメカニズム空間について尋ねたら、答えはそれほどまとまらないだろう。

 もう1つの問題が、カラー・パイの使われ方である。コストには、それほど曲がりはない。確かに場合によってカードを強くすることはあるが、コストを決めるにあたっての幅は非常に狭いものだ。対照的に、カラー・パイは常に曲げられるものである。テーマを選び、そのテーマに合わせてデザインを曲げるのは日常の一部なのだ。しかし、すべての色で曲げたい方向のことが自然にできるとは限らない。そうなると、テーマにそぐうようにするために特定の色を少し曲げることが必要になるのだ。例えば、墓地テーマのセットを作るとしよう。黒、緑、白は、自然に墓地を扱うことができ、青と赤はずっと少ない。しかし、墓地テーマのセットでは、青や赤でも墓地を扱う方法を探さなければならない。そうなると、通常の範囲からはみ出す方向へ少し押すことになるのだ。

 さらに加えて、セットごとにそれまで扱っていなかった空間を掘り下げており、つまり我々は常に新しいものがカラー・パイのどこに位置するのか考え続けるということになる。これは、新しいコストやコスト軽減を扱うときにも起こることではあるが、頻度は比べ物にならない。カラー・パイに関する疑問の多くはより広い話になり、今まで体験したことのない空間では遥かに多く発生することになるのだ。これらすべての結果として、私が満足するほど定まった答えは生まれなかった。ファイルの中で疑問に思うようなカードを見つけて、それを私以外のデザイナーが承認しているということがしばしばあったのだ。状況は改善しているが、まだやるべきことは残っていた。

協議会の誕生

 私の記憶によると、責任を色ごとに分割するというアイデアを提案してきたのはマーク・ゴットリーブ/Mark Gottliebだった。すべての新カードを監視するのはかなりの仕事だ。当時、デザイン・チームはマークと私を除いて5人いる。5色、5人。そしてマジック開発部の上席ディレクターにして私の上司でもあるアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheは将来のマジックに集中するためにもっと時間を空けるように強く要求してきていた。私がカラー・パイの監視をしなくなれば、かなりの時間が空くことになる。

 マークは、カラー・パイを監視するチームを作るというアイデアを私に示してきた。その構成には詰めるべきところがあったが、アイデアは気に入った。私は承諾し、翌週のデザイン・チームの会議の席上でこの議題について議論することにした。おおまかな構造は次のようなものだった。デザイナー5人それぞれに1色を割り当てる。その最初の監視にはそれぞれが責任を持つ。その後、見つかった懸念をマークや私も含む全員が参加する会議に提出し、詳細まで話し合う。その後、我々の考えはそのセットのリード・デベロッパーに伝えられ、問題のあるカードを修正する助けになる。より大きな問題については、カード技術の会議(デザインとデベロップ、さらにマジック開発部の他の部署からの代理が参加して行われる週例の会議)で議題に取り上げる(詳細については後ほど)。

 次の問題は、誰が各色を担当するかということだった。以下が、5人のデザイナーである。

  • ケン・ネーグル/Ken Nagle
  • イーサン・フライシャー/Ethan Fleischer
  • ショーン・メイン/Shawn Main
  • ガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verhey
  • ジャッキー・リー/Jackie Lee

 我々は各デザイナーに、1がもっとも担当したい色、というように、担当したい順に色を選ばせた。2番目に重要視したのが先任性である。2人が同じ色を同位に選んだ場合、デザインに長く従事しているほうを優先したのだ。その結果が、以下の通り(先任順)。

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ケン・ネーグル ― 緑

 この手順の中で結果がわかっている部分があったとしたら、ケンが緑魔導師になるということだろう。知らない諸君のために説明すると、ケンは緑に惚れ込んでいるのだ。ケンは緑を体現しているのだ。他のデザイナーも緑に興味はあっても、誰もケンほどには執心していない。実際、もし制限をかけなければ、ケンのリストは緑を1番にして、他の4色は5番に押し込んでいたことだろう。ケンは最先任のデザイナーでもあるので、彼は第一希望を叶えることになった。

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イーサン・フライシャー ― 青

 イーサンとショーンは同日に働き始めたが、イーサンが第2回グレート・デザイナー・サーチに優勝して得たインターン資格はデザイン部門で、ショーンはデジタル部門だった。そのため、イーサンのほうがデザインでは先任ということになる。この2人が選んだ色は異なっていたので、問題にはならなかった。イーサンは青魔導師になることを選んだ。

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ショーン・メイン ― 赤

 一方、ショーンは赤を選んだ。赤は他のデザイナーも上位にあげていたが、1番に選んだ中で最先任だったのがショーンだったのだ。

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ガヴィン・ヴァーヘイ ― 黒

 ガヴィンは何色かに興味を示していて、その中の1色が黒だった。他の色は既に選ばれていたので、ガヴィンは黒魔導師になることになった。

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ジャッキー・リー ― 白

 当時最も新人のデザイナーだったジャッキーは最後の色を選ぶことになった。幸いにも、彼女は白を他の誰よりも高位に選んでいて、結局白魔導師になった。

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ジュール・ロビンス/Jules Robins ― 無色

 この最後の担当は、数回の会議の後で決まった。ジュールは夏のインターンとして働き始めたばかりで(その後、フルタイムのデザインの仕事を掴み取っている)、これに関わりたいと思っていたのだ。彼は、有色だけしか網羅されておらず、抜けがあると指摘し、そして無色のカードを監視したいと志願してきた。多くの場合はアーティファクトと土地だけだが、当時エルドラージが登場するセットの製作が近かったのだ。

 「色の協議会」という呼び名は、チームを構成することについて議論した最初の会議で命名したものだったと記憶している。

協議会開催中

 協議会の具体的なやり方は、設立当初からずっと進化し続けている。実際、先月も会議を開き、チームの仕事の構成法について大きな飛躍を決めたところなのだ。広い範囲で、色の協議会が現在どのようにカラー・パイを監視していて、会議がどのように行われているのか詳しく説明してみよう。

第1段階:色の協議会が新セットに割り当てられる

 デベロップの途中、セットがほぼ固まってはいるがまだ変更が可能な時点で、協議会はセットを監修するように公式に依頼される。それぞれの色のカード1枚ごとに(多色のカードは複数の協議会メンバーが監修する)、チームで第1から第4分類に分類する。

1:色の枠内

 このカードは完全にその色の通常のカラー・パイの範囲内である。この分類に入ったカードはそのままファイルに残る。

2:許容できる色曲げ

 このカードは通常のカラー・パイをはみ出したことをしているが、許容できる範囲内である。通例、この範囲にはセットのテーマと、そのテーマ内のものにその色をどう適用するかが含まれる。この分類に入るカードは、色の理念には従っているがメカニズム的にその色が伝統的にやってこなかったことをやっているということが多い。この分類に入ったカードはそのままファイルに残る場合もある。

3:許容できない曲げ

 このカードは通常のカラー・パイをはみ出したことをしており、許容できる範囲ではない。通例、この分類に入るカードはテーマ内のことをしようとしているが、そのためにその色に相応しいとは到底感じられないカードになっていたり、その色が扱うべきだとは考えられない範囲に踏み込んでいたりすることが多い。この分類に入ったカードは、いくらかの調整を経て第2分類に入れることになる。

4:色破り

 このカードはその色がすべきでないと考えられることをしている。この分類に入るカードは、その色の弱点を補ってしまっているか、色の理念に真っ向から対立しているかのどちらかであることが多い。この分類に入ったカードは削除されるか、あるいは大きく修正されることになる。

第2段階:色の協議会がお互いの作業を確認する

 すべてのカードの分類が終わったら、第2分類以降に分類されたすべてのカードが含まれたファイルができることになる。評議会のメンバーは、それぞれ自分の担当でない色のカードを分類していく。これによって、そのカードを変更する必要があるかどうか、より広い見識が得られることになる。

第3段階:色の協議会の会議を行なう

 協議会の全員、マーク・ゴットリーブ、私が揃って会議を行なう。その会議で、我々は第2分類より上に分類されている(1人以上の評議会メンバーが、そのまま印刷すべきではないと考えている)すべてのカードを、最も問題のある(分類番号の平均が一番大きい)ものから順に監修していく、また、最初の分類とチームの分類の乖離が激しいものについても見ていく。最もよくあるのは、担当の評議会メンバーが問題があると判断したが、他のメンバーは誰もそう思わない、ということである。

 我々はカード1枚ごとに議論し、評議会全体として、カードをそのまま印刷できるとするか、変更の必要があるとして許容できない部分を示すかのどちらかの提言を行なう。後者の場合、そのカードをどう調整するべきかという提案も添えることが多い。この情報は、そのセットのリード・デベロッパーに提出されることになる。

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第4段階:色の評議会からカード技術への提示

 これらの会議はデベロップの後期にあるセットで個別のカードに関する問題を扱うものだが、議論の中でより広いカラー・パイ上の問題が見つかることがよくある。その場合、全体の問題だけを議論するために色の評議会の臨時会議を開く。全体の問題が充分集まったら、それをデザインとデベロップの全体に説明することができるカード技術の会議に提示するのだ。

 問題はいくつかの分類に分けられる。


  • カラー・パイの新しいデザイン空間

 我々は新しいものを加えることに興味があり、定期的にそうしようとしている。そして、その新しい効果がどの色に属するのかを明確化する必要がある。最近の「衝動的ドロー」(カードをN枚追放し、そのターン、追放したそれらのカードを唱えることができる)の赤への追加がこの好例であろう。

  • ある効果の色への追加または除外

 効果をある色から他の色へ移したり、単に新しい色に追加したり(色から取り除いたり)する必要がある。この一例が、コントロールしているクリーチャーの数を参照する */* クリーチャー(開発部内の通称は《ケルドの大将軍》にちなんで「ケルド能力」)を緑から白に移したことである。

  • 色が何かをする方法の調整

 その色がメカニズム的にする行動について、方法を調整する必要がある。理念的には同じことをするが、それに関するメカニズムが多少変わることになる。これの例として、青ではクリーチャーをトークンで置き換えるのではなくパワー/タフネスを書き換えるようにしようとしていることが挙げられる。

  • 色の分割

 両方の色で同じことをさせたいが、その色の間に違いを生み出すためにそれぞれのやり方を区別する必要がある。これの例として、青のルーター効果(カードを引いてから捨てる)がカードを引くほうが先で、赤のルーター効果がカードを捨てるほうが先だということがある。

  • 常盤木性

 常盤木にしたり、常盤木でなくしたりする必要がある能力がある。『マジック・オリジン』で威迫、果敢、占術が常盤木となり、威嚇、土地渡り、プロテクションが常盤木でなくなったのがこの一例である。

 通常、色の評議会は勧告を行ない、デザインやデベロップの他のメンバーと変更に関する意見の一致を探ることになる。同意が得られれば変更が行われ、得られなければ変更は行われない。同意が得られなかった場合、我々はいったん戻って、調整した上で再勧告を行なうことがある。

導入の終わり

 さて、親愛なる読者諸君、これが色の評議会だ。今日の記事が諸君に、これまで光の当たってこなかった重要な工程についての見識をもたらしていれば幸いである。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。今日の記事について、あるいは色の評議会についての意見をメール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、今年の「デザイン演説」でお会いしよう。

 その日まで、あなたがカラー・パイについて考える時間があなたとともにありますように。

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