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Making Magic -マジック開発秘話-

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さらなる策略コンスピラシー

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2016年8月15日

原文はこちら

 『コンスピラシー:王位争奪』プレビュー特集だ。まずデザイン・チームを紹介し、それから様々なメカニズムなどのデザインがいかにしてできたかについて語っていこう。その後は、前回『コンスピラシー』のファンがもう一度見たいと思っていたあの愛された人物を描いた、最高にクールなプレビュー・カードをお見せしよう。楽しみにしてもらえれば幸いである。なぜなら、今から始めるのだから。

疑わしい容疑者たち

 いつもの通り、最初にそのセットを実際にデザインした人々を紹介する。サプリメント商品のデザインには私はあまり深く関与しすぎないのが通例だが、今回のデザインに関しては最適な人々に任せることができたと満足している。それでは紹介しよう。

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ショーン・メイン/Shawn Main(リード)

 銀枠セットが私の寵児であるのと同じように、『コンスピラシー』はショーンの寵児である。ショーンは常々ドラフトと多人数戦を愛していて、この2つを組み合わせることに関心が高かった。前回の『コンスピラシー』は、マジック史上踏み込んだことのない部分に踏み込んだら何が起こるかを見る、ショーンによる実験として作られたのだ。開発部では様々なことを実験していて、その中のほとんどの部分は奈落の外に出ることはないのだが、ショーンは彼のアイデアに情熱的で、最適な瞬間と噛み合い、そして『コンスピラシー』が印刷されるに到ったのだ。

 物語はこれで終わりになったかもしれなかったが、そうはならなかった。諸君の多くが『コンスピラシー』をプレイし、そして愛してくれたのだ。そのため、我々は再び『コンスピラシー』を作ることを決めた。歴史的に見て驚くべき速さだった。そして、もちろん、そのリード・デザイナーは決まっていた。新しい『コンスピラシー』を作るに相応しい情熱(そして経験)を持っているのは、ショーンしかいなかったのだ。今日の話は、その試練と、ショーン率いるチームがいかにしてそれを達成したかという話である。

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ニック・ダビッドソン/Nik Davidson

 諸君がニックのことを知っているのは、おそらくクールなマジックのストーリーを多く書いた筆者としてだろう。彼が書いた作品には、例えばオブ・ニクシリスの話タミヨウの話がある。諸君が知らないであろうことは、ニックが長年に渡り開発部でデザインや世界構築といったあらゆることに携わってきたということである。マジックの奇妙な面を楽しみ、デザインの美学に富んだニックは、このデザイン・チームに完璧に相応しい人物なのだ。

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ブライアン・ホーレイ/Bryan Hawley

 デベロッパーとして、ブライアンは最近の多くのデザイン経歴に登場している。彼は『エターナルマスターズ』や『異界月』のデザイン・チームに所属していた。ブライアンの最大の仕事は、『マジック・デュエルズ』のコンテント・リード(すべての内容カード、つまりプレイヤーが手に入れる可能性のあるカードはどれか、どのカードが敵/味方のどのデッキに入るか、について監督する役職)だが、彼は、問題が諸君の目に触れる前に確実に見つけられるように未来をプレイテストするための内部のプレイテスト・リーグであるフューチャー・フューチャー・リーグにも非常に活発に参加している。ブライアンはこのチームではデベロップ代理を務めており、プレイテストがスムーズにできるようにコストやパワー・レベルを監督しているのだ。

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ケン・ネーグル/Ken Nagle

 ケンは歩くカード・デザイン機だ。彼は多人数戦マジックを本当に楽しんでいる。そして前回の『コンスピラシー』のデザイン・チームにも参加していた。この3つを考え合わせると、彼はまさに『コンスピラシー:王位争奪』のデザイン・チームに参加するのに相応しいといえる。デザイナーとしてのケンを考えたときにもっとも素晴らしいことの1つに、新しく掘り下げるべきデザイン空間を見つけるのが本当にうまいことがある。彼に方向を示せば、彼は微に入り細を穿っても斬新なカードを作る方法を見つけようとするのだ。『コンスピラシー:王位争奪』は既に掘ったことのある空間を掘り下げるという難しい仕事になるので、ケンの能力はうってつけである。

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マット・タバック/Matt Tabak

 ほとんどの諸君はマット・タバックのことをマジックのルール・マネージャーとして知っている(実際、彼はほとんどの時間を編集に費やしている)。ほとんどの諸君が知らないことは、マットはいくつものデザイン・チームに所属し、非常に独特なカードのアイデアを生み出すコツを知っているということである(ルールを良く知っていれば、奇妙なところがどこにあるのかを知ることもできるのだ)。マットはショーンやケンと同様、前回の『コンスピラシー』のデザイン・チームに所属しており、機会を見つけて多人数/ドラフトのデザイン空間を掘り下げることに参加したいと思っていたのだ。

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ケリー・ディグス/Kelly Digges

 厳密に言えば、ケリーはデザイン・チームに所属していないが、彼はクリエイティブ代理としてこのセットのフレイバーがこのセットのメカニズムと合致するようにしてくれた。プレイヤーは前回のフィオーラへの探訪を非常に楽しんだので、今回の再訪も同じようにフレイバーに富んだものになるようにしたのだ。

第2幕

 『コンスピラシー:王位争奪』のデザインの話は、前回の『コンスピラシー』が世に出たときにさかのぼる。ショーンがこのアイデアを提示したとき、人々の多くは懐疑的だった。『コンスピラシー』は奇妙で新しい空間を掘り下げていて、ギャンブルに見えたのだ。しかし、『コンスピラシー』が発売されて非常に好評を受けて、それらの不安はなくなった。非常に好評だったので、即座に続編をショーンに作らせるという話が決まったのだった。

 続編というのはデザインするのが難しいものだ。1作目が成功したときにだけ続編の話が出るので、1作目を繰り返しながら同時に新しいところを開拓するように商品を作らなければならない。さらに、続編は機を逃してはならない。つまりショーンはただ作れば良いのではなく、素早く作らなければならないということになるのだ。

 ショーンは、続編を成功させる鍵は2つのことにあると気がついた。

1. 前回の『コンスピラシー』に人気が出た理由の本質は何だったのか

 『コンスピラシー:王位争奪』は前作を踏まえなければならない。つまりショーン率いるデザイン・チームは今回の商品に求められているものを理解しなければならない。前回成功した何を再訪すべきなのか。

2. 進歩させることができる余地はどこにあるのか

 新しいデザイン空間を探すための鍵は、前回行き着いていないものを見つけることである。前回の『コンスピラシー』よりもうまく実行できる空間はどこにあるのか。そここそが、ショーン率いるチームが手を付けて拡張できるデザイン空間である。

 ショーンが『コンスピラシー』について考えたとき、成功の理由は3つの基本的な信条にあると確信した。強い多人数戦テーマ、独特のドラフト要素、そしてフレイバーに富んだ世界である。この3つすべてを再訪せねばならない。

 『コンスピラシー』を批判的に見て、ショーンはテーマやメカニズムが新しい地平を開拓したものの行き着くところまでやり通していないということに気がついた。批判的分析を経て、彼は『コンスピラシー』のやったことをよりうまくやる方法をデザイン・チームが見つけられると感じたのだった。

王位争奪

 最初に、このセットの中心にある新しいメカニズムから始めよう。そのメカニズムを作る上で障害となった問題を説明し、それからプレビュー・カードとともに完成品をお見せする。

 さて、ショーン率いるチームは『コンスピラシー』の成功は多人数戦の醍醐味を伝え、そのフォーマットの弱い部分を補うメカニズムを作ったことが根幹だったと認識した。このことから、1つの疑問が浮かんでくる。フォーマットとしての多人数戦の弱い部分というのは一体どこなのか。その答えは、多人数戦の集団力学からプレイヤーは行動しなくなるということである。脅威だと思われれば、複数のプレイヤーを相手にしなければならなくなり、まず勝ちの目はなくなる。そのため、亀のように潜み、あらゆるリソースで自分を守るのが正しい戦略になることが多いのだ。これはゲームを遅くし、やり取りも少なくすることになる。

 前回の『コンスピラシー』での解決策は、脅威と思われることなくプレイヤーが攻撃できるようにする理由を作るというものだった。例えば、廃位メカニズムは最もライフが多いプレイヤーを攻撃したプレイヤーが有利になるというものだった。これは有利なプレイヤーに戦力を集中させる逆転の要素でもあり、攻撃しなければならない理由付けでもあった(「カードに書いてあるから活用してるだけで、別に個人的な恨みがあるわけじゃないよ」)。


アート:Mike Bierek

 『コンスピラシー:王位争奪』では、ショーン率いるチームは、廃位と同じようにプレイヤーを攻撃的にする新しいメカニズムを探した。その条件には以下のようなものがあった。

1.プレイヤーが攻撃したくなるようなもの

 多人数戦は、プレイヤー間のやり取りがあってこそ面白い。クリーチャー戦闘はやり取りだ。

2.標的をプレイヤーに向けさせるもの

 多人数戦は政治的になりがちである。つまり、行動を説明できるようにしてプレイヤーを狙わなければならない。

3.ダイナミックなプレイを作り出すもの

 多人数戦は雪だるま式にただ膨らむ可能性があるので、このメカニズムがゲームプレイ上何らかの均衡を生み出すのが望ましい。

 最終的に、この問題の答えを見出したのはショーン率いるチームの誰でもなく、「デュエル・マスターズ」を本業とするデザイナーのジェームズ・ハタ/James Hataだった。ショーンとジェームズはデザインについてよく話し合っていて、そんなある日、ショーンは『コンスピラシー』で取り組んでいる問題について話したのだ。

 ジェームズは、プレイヤーが取り合うゲーム要素を提案した。それを持っていると有利になるので、奪い合いの戦闘が起こることになるのだ。持っている間、有利な能力が得られ、他のプレイヤーは自分のためにそれを奪おうとする。ショーン率いるチームはこのメカニズムの初期版を作ってみて、すぐに気に入った。問題が1つだけあって、それは既に将来の大型セットに割り当てられていた。ただし、まだそのデザインは始まってもいなかったのだ。

『Ham』の準備

 我々がセットを作る上で最初にするのは「先行企画」と呼ばれる工程である。我々は何年も先のことを考え、メカニズム的必要性や伝えたいストーリーにもとづいてどんなブロックが必要かを決定し、それから大枠を組み立て始めるのだ。この時点で、ストーリー・チームはストーリーをどうできるかの基本的な枠組みを作り始める。そして私はそれぞれのブロックを見て、そのブロックのメカニズム的な魅力がわかるようにしていくのだ。

 例えば、『イニストラードを覆う影』の場合、次のようなものになる(現在の手順について語っているので、実際に『イニストラードを覆う影』が企画された時とは異なる。さまざまななことが変化しているのだ)。

 このブロックでは、イニストラードを再訪することになる。ゴシックホラーではなく、イニストラードの住人が狂気に陥り変質するというコズミックホラーが中心にる。その問題を引き起こしたのはエムラクールになる可能性が高い。このブロックでは両面カードなどの前回の『イニストラード』ブロックのさまざまなメカニズムを再訪する。我々は狂気と変質というテーマを掘り下げることに注目しており、前者は自分のライブラリーを削ることを、後者は両面カードを、それぞれ検討している。


 見て分かる通り、この予測は最終的なセットの内容と完全に一致はしないが、掘り下げようとしている空間にあたりをつけたものである。これによって、実際にチームを結成し作業を始めるよりもずっと前に基本的な計画を立てることができるのだ。

 ショーンにとっての問題は、今掘り下げている空間が、2017年10月の大型セット『Ham』に向けて私が暫定的に企画しているものと非常に近かったことだった。最大の問題は、『コンスピラシー:王位争奪』は『Ham』の先行デザイン(セットの一番最初のデザイン)が始まるよりも前に終わる予定だということだった。ショーンは私のところを訪れ、そしてどう進めるべきか相談してきた。私はショーンに、そのメカニズムで続けるように、ただし『Ham』に近すぎるとなったときのために他のアイデアを準備しておくように伝えた。そして、1か月後にもう一度会合を持つことにしたのだった。

 そしてショーンはこのメカニズムを仕上げていった。統治者と名付けられたそのメカニズムは、さまざまな人々が支配をめぐって競い合う王座の力を表していた(このストーリーは、先代の王であるブレイゴが幽霊にもかかわらず暗殺されたことから始まるのだ)。統治者メカニズムには2つのことが必要だった。まず、その所有者が得られる効果あるいは能力。そして、他のプレイヤーがそれを盗む条件である。

 チームが先に定めたのは、その後者だった。攻撃する動機を作りたかったので、盗む条件としては統治者であるプレイヤーに戦闘ダメージを与えることが最適だった。最初は、統治者は物品だった(確か王冠だった)でアーティファクト・トークンとして扱われていたが、プレイテストの結果、破壊できるものであることは問題だとわかり、統治者は物品ではなく地位になった。プレイヤーは「統治者になる」のだ。

 統治者に与えられる能力は少しばかり難問だった。自分のアップキープの開始時にカードを1枚引く、というものを試したが、多人数戦では統治者になったあと次の自分のターンまでずっと統治者でいつづけるのは非常に難しいということがわかった。次に試したのは、自分のクリーチャーすべてに+1/+1の修整を与えるというものだった。

 即座に効果は発揮されるが、統治者になるために戦闘は終わっているので、この修整は防御寄りのものになった。次に試したのは、統治者のターンの終了時に自分のクリーチャーをすべてアンタップするというものだったが、これも統治者が亀になる結果を生んだだけだった。チームは、統治者になる価値があるような、即時性のある報奨を探していたのだ。最終的に、最初の報奨、つまりカードを引くことに戻ったが、タイミングが変わった。統治者は、自分のターン終了ステップの開始時にカードを1枚引くことになり、報奨をすぐに得られるようになったのだ。

 ショーン率いるチームはさらに統治者を試し、思い入れを深めていった。予備のメカニズムを探してはいたけれども、どれもプレイ価値、魅力ともに統治者には遠く及ばなかった。私との会合が近づき、ショーンは不安になっていた。統治者は『Ham』と重複するから諦めろと私に言われたとき、どうすればいいかわからなかったからである。結局のところ、統治者の出来が非常に良く、他に代替できるものもなかったので、我々は『Ham』のほうを変更することに決めた。まだデザインは始まってすらいなかったので、何か他を探すことにしたのだ(この話は来年、『Ham』のプレビューで続けることにしよう)。

 次のメカニズムの話にはいる前に、統治者・トークン・カードとともに今日のプレビュー・カードをお披露目しよう。黒薔薇のマルチェッサは『コンスピラシー』で最も人気の高かった人物の1人で、そして彼女は女王になるという信念とともに帰ってきたのだ。世界よ、〈マルチェッサ女王〉をご紹介しよう

 ご覧のとおり、《マルチェッサ女王》は統治者になることと、奪われた統治者の座を取り返すことを助けてくれるのだ。

ドラフトのために

 もう1つショーン率いるチームが決めなければならなかったのが、策略やドラフト関連のカードを進化させるかである。ドラフトのやり取りは前回の『コンスピラシー』の成功の大きな鍵であった。『コンスピラシー』では、策略やドラフト関連カードは誰でも使えるように無色になっていた。この前提を考え直すことが、大きな飛躍だったのだ。

 策略やドラフト関連カードの多くに、固有色があったらどうなるだろうか。効果はより強力にできる。カラー・パイ内の効果が使えるので、様々な効果を使うことができる。誰がプレイするかを分けることができ、プレイしたいプレイヤーまで回るようになる。ちょっとした変更で、このセットは策略やドラフト関連カードの新境地にたどり着いたのだ。

おっと待った、もう少し

 統治者と有色の策略やドラフト関連カード以外にも、このセットには3つの新しいメカニズムが存在する。

会戦

 このメカニズムを持つクリーチャーは、ターン終了時まで、あなたが攻撃したプレイヤーの数ごとに+1/+1の修整を受けるというものである。これによって、プレイヤーはただ一番弱い、あるいは一番強い、プレイヤーを攻撃するだけでなく他のプレイヤーに対してさまざまなやり取りができるようになる。ショーン率いるチームは、会戦メカニズムが通常の多人数戦と異なる動機を生み出すこと、そしてさらなるやり取りを生み出すことが気に入っている。

使そう

 クリーチャーが使嗾されたら、そのクリーチャーはそのコントローラーの次のターンに、使嗾したプレイヤー以外の誰かを攻撃しなければならない。デザイン・チームがこのメカニズムを気に入ったのは、プレイヤーが完全に防御的に振る舞うことができないようにしているからである。これはゲームを進行させ、物事を起こす。そして、行動したプレイヤーを政治的に不利にさせないのだ。

動議

 『コンスピラシー』には、2つの選択肢の中からプレイヤーが投票してどちらかを起こさせる、議決というメカニズムがあった。動議はその調整版である。今回も2つの効果が存在するが、1人の投票だけでその効果が発生する。議決メカニズムでは、効果Aと効果Bが提示され、Aに3票、Bに2票投じられたら、結果は効果Aが一度だけ発生することになっていた。動議メカニズムでは、効果Aが3回、効果Bが2回発生する。ショーンに言わせれば、死票がなくなるメカニズムなのだ。

 見て分かる通り、さまざまなクールなものが存在し、そのすべては前回の『コンスピラシー』と同じようなテーマを扱っているが、ゲームプレイを少し違う方向に向けるような調整が施されているのだ。

秘密が解き放たれる

 本日はここまで。まもなく登場するこのセットを楽しみにしてもらえれば幸いである。ショーン率いるデザイン・チームは素晴らしい仕事をしてくれて、私としては諸君にすぐにでも試してもらいたいぐらいなのだ。いつもの通り、諸君からの反響を楽しみにしている。今日の記事について、あるいは『コンスピラシー:王位争奪』についての意見をメール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、全く新しいチームを紹介する日にお会いしよう。

 その日まで、あなた自身の策略を作り出す機会があなたとともにありますように。

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