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開発秘話

Making Magic -マジック開発秘話-

アンの視点・その2 エレキ・ブーガルー

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アンの視点・その2 エレキ・ブーガルー

Mark Rosewater / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2014年11月10日


 昨年、世に出ることのなかったマジックのセット、『Unglued 2』についての記事を書いた。これは『Unhinged』とは別の商品であるから、混同しないように。『Unglued 2』は、『Unglued』の2年後に発売される予定だった、銀枠のジョーク・セットである。しかし、開発は休止され、二度と再開されることはなかった。しかし、このセットの開発はかなり進んでいたので、我々の手には完全なカード・ファイルと割り当てられたアートが残されているのだ。

 前の記事の評判が非常によかったので、続編を書くことにした。なお、このファイルの中身の多くは『Unhinged』に移行しており、残されたものは時代遅れだったり、持ち越されなかったテーマに合わせたものだったり、6年の間に考えを改めたようなものだったりすることを覚えておいてくれたまえ。つまるところ、これからカードを見るが、それは遠い昔のもので、テンプレートやルールも多少違っている、ということだ。諸君も本来の姿を見ることができるよう、カード・テキストは当時のままにしている(訳注:翻訳は現在のテンプレートに則っています。ご了承ください)。

〈内なる子供/Inner Child〉


〈内なる子供〉 アート:Edward P. Beard, Jr.

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〈内なる子供/Inner Child〉
{1}{W}
クリーチャー ― スピリット
1/1
あなたに関する、他のプレイヤーが知らない情報を公開する:ターン終了時まで、内なる子供は飛行と先制攻撃を得る。
{Tap}:追加の投票を得る。この能力は、投票が宣言されてから投票が始まるまでの間にだけ起動できる。


Creature - Spirit
1/1
Reveal something about yourself another player doesn't know: Inner Child gains flying and first strike until end of turn.
T: You get an additional vote. Play this ability only after a vote has been called but before voting begins.

 このデザインは、1枚のカードでかみ合わない2つのことをしてみるという好例である。1つめの能力はより社会的なもので、プレイヤーが新しい情報を開示し合うというものだ。私がこの発想を『Unhinged』で再び見直したのが《Moniker Mage》で、その際には対戦相手がそのコピーを手に入れたときには開示されていた情報を利用できるようにしたのだ。

 2つめの能力はこのセットの「投票」メカニズムと関連している。問題は、1つめの能力と2つめの能力には何の関係もないということである。2つめの能力が気に入っていた私は、コモンの白のカードで入れられるところを探したのだろうと思われる。そして、理想的な選択肢がなかったので、文章が多すぎなかったこのカードに入れたのだろう。そのころから比べると、今はいくらか成長しているはずだ。うん。

〈イペカックの守り手/Keeper of Ipecac〉


〈イペカックの守り手〉 アート:Kaja Foglio

〈イペカックの守り手/Keeper of Ipecac〉
{1}{W}
クリーチャー ― クレリック
1/3
{Tap}:このターン、あなたが次に毒カウンターを1個得るなら、そのカウンターを置くことを軽減する。


Creature - Cleric
1/3
T: The next time you would get a poison counter this turn, prevent getting that counter.

 前回の『Unglued 2』の記事で書いたとおり、毒はこのセットの重要な要素だった。このカードは、毒に抵抗するために作られたカードの1枚である。(私が『ミラディンの傷跡』で毒を再録したとき、)私は、既に与えられた毒を何とかできるような能力を作りたくはなかったが、このカードはそれが発生する時点で防ぐことができるというものであることに注目してほしい。このカードは《サマイトの癒し手》(『アルファ版』から存在する、タップすることで1点のダメージを防ぐクリーチャー)とほぼ同じだが、このセットにはクリーチャー以外の方法で毒を置く(自分に置くものもある)ものがあったので、他の用法もあったのだ。

〈B反市/White Sale〉


〈B反市〉 アート:Quinton Hoover

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B反市/White Sale
{W}{W}{W}
エンチャント
B反市が戦場に出たとき、6面サイコロを振る。すべての呪文のマナ・コストはその通常のマナ・コストではなくXである。Xはそのサイコロの目に等しい。


Enchantment
When White Sale comes into play, roll a six-sided die. All spells have a mana cost of X, where X is the die roll, instead of their normal mana costs.

 このあたりのカードを見直すたびに、私はこれらのカードのデザインがどこから来ているのかと考える。もちろん、このカードは6面サイコロの新しい使い方を探しているものだ。これはとっぴな白のカードで、軸にしてデッキを組みたくなるような奇妙なものである。楽しいものではあるが、それは一体何をしたいのか考えさせられるからである。ファイルにはまた別のサイコロ・カードもあり、そのことから私がサイコロを予測不能な効果を作るために使う、ということを愛していたことがわかるのだ。

〈マーフォークは普通じゃない/There's No Folk Like Merfolk〉


〈マーフォークは普通じゃない〉 アート:Scott M. Fischer

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〈マーフォークは普通じゃない/There's No Folk Like Merfolk〉
{1}{U}
クリーチャー ― マーフォーク
2/2
マーフォークは普通じゃないが戦場に出たとき、4文字以上の単語を1つ選ぶ。
あなたのアップキープの開始時に、選ばれた単語を含む映画名を1つ指定する。そうしないなら、マーフォークは普通じゃないを生け贄に捧げる。


Creature - Merfolk
2/2
When There's No Folk Like Merfolk comes into play, choose a word with four or more letters.
At the beginning of your upkeep, name a movie whose title contains the chosen word. If you don't, sacrifice There's No Folk Like Merfolk.

 もう1つ銀枠セットを通して存在している小さなテーマが、ミニゲームである。ミニゲームは、カードを使うためにそのカードに記されているちょっとしたゲームをする、というものである。このカードでは、私がハリウッド時代によくやっていたゲームをプレイすることになる。単語を1つ指定し、それからお互いにその単語を題名に含む映画を挙げていくのだ。「the」とか「of」といった単語を指定できないように、このゲームでは4文字以上の単語を選ぶことになっている。このカード名は、ハリウッドでの言い回し「芸能人は普通じゃない」をもじったものだ。

〈ジェパディ!/Jeopardy〉


〈ジェパディ!〉 アート:Phil Foglio

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〈ジェパディ!/Jeopardy〉
{2}{U}
エンチャント
プレイヤーは疑問文で話すよう念を押される。
各プレイヤーのターンのターン終了時に、そのターンに疑問文だけで話さなかった各プレイヤーはそれぞれ毒カウンターを2個得る。


Enchantment
Players are reminded to speak in the form of a question.
At the end of each player's turn, each player who didn't speak only in questions that turn gets two poison counters.

 ここまで見せてきたカードのほとんどは、『Unhinged』に移行されなかったものだ。このカードはその例外である。このカードのメカニズムは、トム・ストッパード/Tom Stoppardの「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ/Rosencrantz and Guildenstern Are Dead」という戯曲による「Questions」というゲームを元にしている。このゲームでは、プレイヤーはお互いに質問だけで会話するのだ。同じ質問を繰り返したり、美辞麗句で文章を変えたり、不合理な質問をしたりはできない。先に疑問文で話さなかったプレイヤーが減点され、合計4点で決着する。このゲームは「質問テニス/Questions Tennis」とも呼ばれ、点数の付け方もテニスを真似ることがある。

 『Unglued 2』では、これはエンチャントになっている。このカードを『Unhinged』に移行した時、エンチャントからクリーチャーになり、そしてこのカードになったのだ。

 イラストにウェザーライト・サーガの登場人物たちを使っているため、時代遅れだった(ウェザーライト・サーガの登場人物の中には『Unhinged』に登場したものもいるが)。そして、プレイヤーを毒で罰するよりも、オーナーを変えるほうがいいと判断した(『Unhinged』には毒は存在しないことも思い出してほしい)。このカードに関しては面白い話がある。

 『Unglued』は英語版だけしか存在しなかったが、『Unglued 2』は英語と日本語で生産する計画になっていた。突然このセットを日本語に訳す必要ができたので、私は翻訳者に(当時の翻訳者はロン・フォスター/Ron Fosterという男で、彼は今組織化プレイで働いている)カード・リストを送った。すると、彼からは大量のメモが送られてきた。その中で、日本ではこの番組が放送されていないないので、この〈ジェパディ!〉というカードは通じない、と書かれていた。この番組のファンでない諸君のために説明すると、この番組では参加者は必ず疑問文で答えなければならないのだ。

〈カード鮫/Card Shark〉


〈カード鮫〉 アート:Randy Elliot

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〈カード鮫/Card Shark〉
{2}{U}
クリーチャー ― マーフォーク
1/1。飛行
1/3。{U}:カード鮫をアンタップする。
6/3。飛行
1/1。飛行
3/3。{U}:カード鮫をオーナーの手札に戻す。
0/1。{Tap}:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード鮫はそれに1点のダメージを与える。
2/2。カード鮫はブロックされない。
1/4。{1}{U}:クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは飛行を得る。
1/1。{U}, カード鮫を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
1/1。{U}, カード鮫を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
0/1。{U}:カード鮫をオーナーの手札に戻す。
3/3。{U}:カード鮫をオーナーの手札に戻す。
1/4。{1}{U}:クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは飛行を得る。
0/1。{U}:カード鮫をオーナーの手札に戻す。
1/3。{U}:カード鮫をアンタップする。
6/3。飛行
0/1。{U}:カード鮫をオーナーの手札に戻す。
0/1。{Tap}:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード鮫はそれに1点のダメージを与える。
1/1。{U}, カード鮫を生け贄に捧げる:カードを1枚引く。
2/2。カード鮫はブロックされない。
2/1
3/3。{U}:カード鮫をオーナーの手札に戻す。
1/3。{U}:カード鮫をアンタップする。
2/1
0/1。{Tap}:クリーチャー1体かプレイヤー1人を対象とする。カード鮫はそれに1点のダメージを与える。
1/4。{1}{U}:クリーチャー1体を対象とする。ターン終了時まで、それは飛行を得る。
2/1
1/1。飛行
2/2。カード鮫はブロックされない。
6/3。飛行


Creature - Merfolk
1/1. Flying
1/3. U Untap Card Shark.
6/3. Flying
1/1. Flying
3/3. U Return Card Shark to its owner's hand.
0/1. T: Card Shark deals 1 damage to target creature or player.
2/2. Card Shark is unblockable.
1/4. 1U Target creature gains flying until end of turn.
1/1. U, Sacrifice Card Shark: Draw a card.
1/1. U, Sacrifice Card Shark: Draw a card.
0/1. U Return Card Shark to its owner's hand.
3/3. U Return Card Shark to its owner's hand.
1/4. 1U Target creature gains flying until end of turn.
0/1. U Return Card Shark to its owner's hand.
1/3. U Untap Card Shark.
6/3. Flying
0/1. U Return Card Shark to its owner's hand.
0/1. T: Card Shark deals 1 damage to target creature or player.
1/1. U, Sacrifice Card Shark: Draw a card.
2/2. Card Shark is unblockable.
2/1
3/3. U Return Card Shark to its owner's hand.
1/3. U Untap Card Shark.
2/1
0/1. T: Card Shark deals 1 damage to target creature or player.
1/4. 1U Target creature gains flying until end of turn.
2/1
1/1. Flying
2/2. Card Shark is unblockable.
6/3. Flying

 前回、『Unglued 2』にはスクラッチ・カードが入る予定だったという話をして、ソーサリーをお見せした。そこで今回はクリーチャーを見せるべきだと思ったのだ。スクラッチ・カードにはそれぞれ3行の隠された行があり、3回使うことができる。それぞれのスクラッチ・カードには10種類ずつあり、そのカードがどの種類なのかは自分でもわからないのだ。1行だけを削っても、それだけでそのカードが10種類のどれかはわからないようにデザインした。もちろん、2行削ってしまえば、10種類全部を覚えているプレイヤーは残りの1行が何であるかわかってしまうのは防ぎようがない。

 スクラッチ・カードは、さらに非常識な無作為化の方法を経て多様性をもたらすために作られたものである。我々は、ブースター・パックにガムを入れることも真剣に検討していた。見ての通り、『Unglued 2』は許容範囲をいろいろな方向に広げていたのだ。計画では、スクラッチがマジックのカードで可能なのか調べるためのテスト印刷も検討していたが、そのテストに入る前に商品自体が中断されてしまったのだった。

〈絶滅危惧種保護法/Endangered Species Act〉


〈絶滅危惧種保護法〉 アート:Randy Gallegos

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〈絶滅危惧種保護法/Endangered Species Act〉
{B}
ソーサリー
投票を宣言する。投票が成功したなら、各プレイヤーはそれぞれ自分の墓地にあるすべてのクリーチャー・カードを自分のコントロール下で戦場に戻す。各プレイヤーはそれぞれ1票と、そのプレイヤーの墓地にあるクリーチャー・カードの枚数が5枚以下であったならさらに1票を持つ。多数の投票が賛成であったなら、投票は成功する。


Sorcery
Call a vote. If vote passes, put all creature cards from all graveyards into play. Each player gets one vote plus an additional vote if he or she has 5 or fewer creatures in his or her graveyard. A vote passes if a majority vote in favor.

 前回の『Unglued 2』に関する記事で、投票カードと相互作用するカードを紹介した。紹介していなかったのは、その投票カードの動きである。投票が宣言されたら、各個人は投票しなければならない。そして、指定された条件に基づいた特定のプレイヤーに追加の票が与えられるのだ。発生する効果は基本的にプレイヤーに有利なものになっているが、全員に影響が及ぶので、結果が有利とは言えないプレイヤーも出てくることが多い。そうなると、そのプレイヤーは反対に投票することになる。ショーンが私に何か『コンスピラシー』で使えるメカニズムの提案はないか、と尋ねてきたときに見せたのがこの投票シリーズだと思う。

 私は特にこのカードが気に入っている。これは大きな影響を与えるものであり、一部のプレイヤーは他のプレイヤーに比べて幸せになる。問題は、この効果はアンコモンに入れるには少しばかり強烈すぎるということである。単体で見たなら、私はこのカードをレアにしていたことだろう。しかし、これはリミテッド向けのアンコモンのサイクルの一部なので、アンコモンになったのだ。

〈ファイレクシアの司書/Phyrexian Librarian〉


〈ファイレクシアの司書〉 アート:Kev Walker

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〈ファイレクシアの司書/Phyrexian Librarian〉
{1}{B}{B}
クリーチャー ― 拷問者
2/2
飛行
対戦相手1人が戦場にある、または唱えている途中のマジックのカードのカード名を言うたび、そのプレイヤーに毒カウンターを1個置く。


Creature - Torturer
2/2
Flying
Whenever one of your opponents says the name of a Magic card in play or being played, that player receives a poison counter.

 このカードは『Unhinged』に入っている――っぽい。『Unhinged』のデザインをまとめるとき、私はデザイン・チームに『Unglued 2』を見直して再利用できるものを探すように言ったのだ。『Unhinged』には毒は入っていなかったので、メカニズム的には、このカードは使えなかった。しかしカード名とアートは捨てるにはもったいないほどの出来だったので、私は〈ファイレクシアの司書〉の考え方を活かしたまったく新しいカードをデザインしたのだ。このカードについて言っておきたいこととしては、特定の言葉を言ったプレイヤーを罰する、というこのカードは、「gotcha!(ゴチ!)」メカニズムの先駆と言える、ということである。

〈夜のカブランカン/Rutabaga of the Night〉


〈夜のカブランカン〉 アート:Heather Hudson

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〈夜のカブランカン/Rutabaga of the Night〉
{2}{B}{B}
クリーチャー ― 野菜
★/★
飛行、先制攻撃、速攻
あなたのアップキープの開始時に、あなたに毒カウンターを1個置く。
[カード名]のパワーとタフネスはそれぞれこれのコントローラーの持つ毒カウンターの総数に等しい。
{2}{B}{B}:[カード名]を戦場に出す。この能力はあなたのアップキープの間で、[カード名]があなたの墓地にある時点でしか起動できない。


Creature - Vegetable
*/*
Flying, first strike, haste
At the beginning of your upkeep, you receive a poison counter.
CARDNAME's power and toughness are each equal to the number of poison counters its controller has.
2BB: Put CARDNAME into play. Play this ability only during your upkeep and only if CARDNAME is in your graveyard.

 このカードは、このセットに入っていた生きる果物の1種である。他の生きる野菜と同様、このカードも毒カウンターに関係している。このカードが毒を与えるのは対戦相手でなく自分ではあるが。気付いていない諸君のために触れておくと、このカードは『ミラージュ』のこのカードのパロディである。

 〈夜のカブランカン〉は『ミラディンの傷跡』のデザインで挑戦して諦めたこと、すなわち毒を置かれていることによって有利を得るようなカード、である。こういったカードをボツにした理由は、相手に毒カウンターを載せるかどうかについて望ましくない緊張が発生するからである。セット内部では、プレイヤーが常時どうするか考えなければならないようにするのではなく、特定の行動をすることを賞賛するようにするべきだ、ということがわかったのだ。

〈これは一体......?/What the...?!〉


〈これは一体......?〉 アート:Randy Gallegos〉

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〈これは、一体......!?/What the...?!〉
{R}{R}{R}{R}
インスタント
ターン終了時まで、すべての文章欄に含まれるすべての数字に3を足す(例えば、全ての1は4になる)。


Instant
Until end of turn, add three to all numbers (in numeral or written form) in all text boxes. (For example, all 1s and "one"s become 4s and "four"s.)

 長年にわたり、私は黒枠世界に数字を変えるカードを作ろうとしてきたが、デベロップは常にそれを止めてきた。その理由は......それはつまり、要は、危険だからなのだろう。ルールが1というものをどう扱っているのかはよくわからないが、銀枠世界なら、何でもありだ! 『Unhinged』を手がけたとき、このカードはちょっとばかりやり過ぎだと判断し、少しまろやかにした《Look at Me, I'm the R&D》を作ったのだった。《Look at Me, I'm R&D》は数字を小さくできるというものであり、対戦相手を止めるために使えるが、〈これは、一体......!?〉はそうではなかった。

 最後にひとこと。私がこれらの銀枠セットのカード名で楽しんでいることの1つに、大量の句読点をカード名に入れるということがある。このカード名には3点リーダ、疑問符、感嘆符が入っているのだ!

〈おっぱい騒動/Udder Madness〉


〈おっぱい騒動〉 アート:Ron Spencer

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〈おっぱい騒動/Udder Madness〉
{2}{R}{R}
エンチャント
各プレイヤーのターンのターン終了時に、各プレイヤーはそれぞれ6面サイコロを振る(引き分けは、勝者が決まるまで振り直す)。もっとも大きい目を出したプレイヤーは、次のターンを行う。


Enchantment
At the end of each player's turn, each player rolls a six-sided die. (Ties are rerolled until there is a winner.) The highest roller takes the next turn.

 通常の黒枠マジックでも、いくらかの混沌をもたらすレアの赤のエンチャントは存在する。さあ、銀枠セットなら、もうちょっとやってもいいだろう。このカードが『Unhinged』に移行できなかった理由は2つある。1つめが、『Unhinged』ではサイコロを使わないということ。そして2つめが、《Goblin Bookie》(赤の『Unglued』のクリーチャーで、ダイスを振り直すことができる)4体と組み合わせるとちょっとばかり強すぎるということが判明したからである。

〈サンタワールのエルフ/Santawar Elves〉


〈サンタワールのエルフ〉 アート:Anson Maddocks

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〈サンタワールのエルフ/Santawar Elves〉
{3}{G}
クリーチャー ― エルフ
2/2
{2}{G}, {Tap}:6面サイコロを1つ選んで振る。6が出たなら、[カード名]を生け贄に捧げる。そうでなければ、ターン終了時までそのクリーチャーは+X/+Xの修整を受ける。Xはその出た目に等しい。


Creature - Elf
2/2
2G,T: Choose and roll a six-sided die. If you roll a 6, sacrifice CARDNAME. Otherwise, that creature gets +X/+X until end of turn where X is the number rolled.

 このカード名は、ある日、ポップカルチャーにはいろいろなエルフがいる、ということに気付いたことからつけたものだ。マジックのエルフ(特に《ラノワールのエルフ》)を他のエルフの中に混ぜたら面白いんじゃないか。いろいろな選択肢(クッキーを焼くとか、夜中にそっと靴を直すとか)はあったが、サンタのエルフを選ぶことにした。

 このカードのメカニズムは、6面サイコロを使って色々やってみた中の1つだ。このカードが『Unhinged』に移行できなかった理由は2つある。1つめは、既に言った通り、『Unhinged』ではサイコロを使わない。2つめが、このカードは『Unglued』の《Free-Range Chicken》に似すぎてしまったのだ。思い出せないのは、なぜこのカードの発想やアートを使って新しいカードを作ることにしなかったのか、である。

〈ブロッコリー/Broccoli〉


〈ブロッコリー〉 アート:Mark Poole

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〈ブロッコリー/Broccoli〉
{1}{G}
クリーチャー ― 野菜
1/1
[カード名]がプレイヤー1人にダメージを与えるたび、6面サイコロを振る。出た目が1か2か3であったなら、そのプレイヤーはその出た目に等しい数の毒カウンターを得る。


Creature - Vegetable
1/1
Whenever CARDNAME damages a player, roll a six-sided die. If you roll a 1, 2, or 3, that player receives poison counters equal to the die roll.

 これはこのセットの中でもっとも賛否両論を巻き起こした概念だ。見ての通り、毒カウンターに関連するクリーチャーは全て動く野菜だったのだ。毒を扱うので、緑と黒に多かった。そして毒カードの中で、ただの野菜であって動くものじゃないカードを1枚作る、という発想を気に入っていた。そして、〈ブロッコリー〉だ。ブロッコリーを選んだのは、子供が嫌う野菜の代表だからである。

 『Unglued 2』では、カードの概念を決めたのは私である。そして〈ブロッコリー〉を作り、アートもできていた。アートを再録するとしたら、見た人は目を瞠り、そしてこれが何かと尋ねるだろう。私はカードを見せるが、見た人は笑うか、あるいは「それはクリーチャーじゃないですよ」と言うに違いない。さらに調査を進めた結果、このカードは非常に意見が分かれるものだということがわかった。とても面白いと思うか、これっぽっちも面白くないと思うか、どちらかなのだ。一般論として、時折そういう意見の分かれる要素を入れることはいいことなので、私はこれをそのまま進めることにした。残念ながらこのセットは発売されなかったので、世間の反応を知る機会は得られなかったのだが。

アンケート:〈ブロッコリー/Broccoli〉は面白いですか、面白くないですか?

〈羊のクローン作成/Sheep Cloning〉


〈羊のクローン作成〉 アート:Ron Spencer

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〈羊のクローン作成/Sheep Cloning〉
{2}{G}{G}
ソーサリー
6面サイコロを振る。その後、その出た目と同数のサイコロを振る。その数に等しい数の、緑の0/1の羊・クリーチャー・トークンを戦場に出す。


Sorcery
Roll a six-sided die. Then roll that many dice. Put a number of green 0/1 sheep creature tokens into play equal to that number.

 『Unglued』では、トークン・カードを作った。私が作りたかったのは、『ビジョンズ』の《羊術師》で使う羊・トークンである。そのために、私は『Unglued』に羊トークンを使うカード、《Flock of Rabid Sheep》を作ったのだ。

 そして、銀枠セットには羊・トークンが必要だと考えて、このカードを作った。後から考えると、なぜ凶暴な羊は2/2にしたのにこの羊は0/1にしたのか思い出せない(凶暴な羊は凶暴だから? ごもっとも)。このカードは大量の0/1羊・トークンを出すので、これを軸にしてデッキを組むことができるだろう。

〈アイアンマン/Iron Man〉


〈アイアンマン〉 アート:Matthew Wilson

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〈アイアンマン/Iron Man〉
{5}
アーティファクト・クリーチャー
6/4
トランプル
アイアンマンが死亡したとき、このカードを千切って破片をゲームから取り除く。


Artifact Creature
6/4
Trample
When Iron Man goes to the graveyard, rip up this card and remove the pieces from the game.

 これも、時と共に消えていったマジック界のジョークだ。かつて、アイアンマン・マジックと呼ばれるフォーマットがあった。そのフォーマットは墓地を使わず、墓地に行くカードは全て千切っていた。つまり唱えた全ての呪文やゲーム中に破壊されたパーマネントは、実際に破壊されるのだ。これをクリーチャーにしたのは、そうすれば数ゲーム生き残るかもしれないからであり、また、昔のコミックにあやかってのものだ。当時、アイアンマンは無名だったということを覚えておいて欲しい。

 このカードが『Unhinged』に移行されなかった理由は、「時代遅れ」というだけでなく、『Unglued』についておこなった市場調査の結果でもある。市場調査で最も嫌われたカード2枚は? 《Blacker Lotus》と《Chaos Confetti》だったのだ。これらのカードは非常に広い層にもっとも嫌われたカードだった。

 市場調査の担当者から、この2枚のカードについて見た全ての情報を検討しても、この2枚のカードがこれほど嫌われている理由は見つからないと聞かされた。アートでもカード名でもフレイバーでもない、と。その回答を聞いた私は笑ったのを思い出した。「ルール・テキストを読んでみたまえ」私はそう答えたのだった。

〈2本目の星霜のスパチュラ/The Other Spatula of the Ages〉


〈2本目の星霜のスパチュラ〉 アート:Melissa A. Benson

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〈2本目の星霜のスパチュラ/The Other Spatula of the Ages〉
{4}
アーティファクト
{4}, {Tap}:[カード名]と、基本土地以外のすべてのUngluedでないカードをオーナーの手札に戻す。


Artifact
4,T: Return CARDNAME and all non-Unglued cards other than basic land cards to his or her owners' hands.

 『Unglued』にはこんなカードがあった。

 これと組み合わせるカードがあったら面白いと考えたのだ。《Spatula of the Ages》は銀枠カードを手札から戦場に出せる。組になるカードはその逆(っぽい)ことをするのだ。銀枠でも基本土地でもないカードを全てオーナーの手札に戻す。なお、このルール・テキストでは、銀枠セットは全て『Unglued』になると考えている。当時、映画のように副題のついた形でナンバリングする予定だったのだ。「Unglued 2:定められた続編」とか「Ungluedの逆襲」とか「Ungluedの息子」とか「Unglued:最終章」とか「Unglued:新たなる始まり」とか。

〈幻影のマスキングテープ/Illusionary Masking Tape〉


幻影のマスキングテープ〉 アート:Mark Brill

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〈幻影のマスキングテープ/Illusionary Masking Tape〉
{4}
アーティファクト
戦場にあるあなたがコントロールするすべてのカードは裏向きである。
あなたがコントロールするカードが1枚、タップされたり、起動されたり、攻撃したり、ブロックしたりするたび、そのカードを公開する。ターン終了時に、そのカードを裏向きの位相に戻す。


Artifact
Keep all cards in play you control face down.
Whenever a card you control is tapped, activated, attacks, or blocks, reveal that card. Return the card to its face down state at end of turn.

 このカードは変異メカニズムよりも前にできたものである。当時、裏向きのカードは、表と同じものだった。関連することが起こるまで、対戦相手にはわからないというだけである。また、対戦相手が知るとは限らなかった。このカードが今あったら、こんなことが起こるだろう。

相手:この裏向きのクリーチャーに《稲妻》。
自分:オーケー。
相手:オーケー?
自分:うん、3点受けたよ。
相手:死なないの?
自分:死なない。

 振り返ってみると、攻撃したときでなくブロックされたときに公開すべきだったかもしれない。そうすれば対戦相手がその裏向きのカードが何であるかわからないまま決定するというおかしさが出ていただろう。今は、ルールが裏向きのカードは必ず2/2だと定めている。

〈ペットの墓地/Pet Cemetery〉


〈ペットの墓地〉 アート:Todd Lockwood

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〈ペットの墓地/Pet Cemetery〉
土地
{Tap}, このゲームであなたの墓地からあなたの手札に戻したことのある各クリーチャーのクリーチャー・タイプをそれぞれ指定する:あなたの墓地にあるクリーチャー・タイプを持つカード1枚を対象とし、それをあなたの手札に戻す。


Land
T, Name the creature type of each creature you have returned from the grave to your hand this game: Return target card of a type from your graveyard to your hand.

 これもまたミニゲームのカードである。〈ペットの墓地〉は、「土産話/I Went on a Trip」というゲームを元にしている。そのゲームは、最初の参加者が旅行中に目にした「A」から始まるものを挙げ、その次の参加者がその「Aで始まるもの」を繰り返した後に「B」から始まるものを挙げる。以下同様に、誰かが全部を思い出せなくなるまで続ける、というものだ。〈ペットの墓地〉はそのコントローラーに、それまでに戻したクリーチャー・タイプを全て思い出すことを求めるわけである。

 これも、発想はよさげに思えたがいくつかの欠点があるデザインだ。1つめに、覚えきれない量のものを覚える必要が出てくるからこそ記憶ゲームが成立するのだが、マジックの場合は覚えきれないほどの量にはならない。また、様々なクリーチャー・タイプのカードを戻すことを仮定してさえそうだが、ほとんどの場合、このカードでは同じクリーチャーを何度も戻すことになるので、覚えるのは非常に簡単になる。それにもまして、このカードは忘れた場合のデメリットが存在しない。忘れたときにこのカード自身を生け贄に捧げる、ぐらいはすべきだったし、『Unhinged』の《Toy Boat》や《Phyrexian Librarian》などのミニゲーム・カードでは実際にそうしているのだ。

『Unglued』よ永遠なれ

 『Unglued 2』に関する2本目の記事を楽しんで頂けたなら幸いである。日の目を見なかったことが本当に残念な面白いことがたくさん詰まっていたので、こうしてお披露目できることは喜ばしいことだ。いつもの通り、この記事への意見を聞かせてほしい。メール、各ソーシャルメディア(TwitterTumblrGoogle+Instagram)で(英語で)聞かせてくれたまえ。

 それではまた次回、マルドゥの3色へのインタビューでお会いしよう。

 その日まで、日の目を見なかったものにあなたが光をあてますように。

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