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Beyond the Basics -上級者への道-

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暴かれた遺産

Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing

2016年9月8日

原文はこちら

 私が14歳だったときのことを、よく覚えている。『神河物語』が発売され、それにはこんなカードも収録されていた。

 《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》は、インターネットで発表されたとたんに注目を浴びることとなる。どんなデッキが《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》を採用できるか、そしてどんな戦略が《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》で否定されてしまうのか、と話題になった。強力な手段となるカードとは常に、攻撃的にも防御的にも用いられるものだ。これは、このセットで高い人気を誇るカードだった。

 私は翌年の大半を、《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》が唱えられるいろいろなデッキを使って過ごした。黒の重コントロールだったり、《沼/Swamp(P02)》をタッチした緑デッキだったりしたけれども、《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》が私のそばを離れることはほとんどなかったよ。

 私は《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》を唱える経験を数多くこなしてきた。

 そこから今までに、私たちは《根絶/Extirpate(PLC)》、《記憶殺し/Memoricide(SOM)》、《無限の抹消/Infinite Obliteration(ORI)》といったさまざまな同類カードを見てきた。《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》より前にも、《撲滅/Eradicate(UDS)》、《ロボトミー/Lobotomy(TMP)》、そして《道化の帽子/Jester's Cap(ICE)》のようなカードがあった。それぞれに長所と短所がある。しかし、核となる考えは同じで、対戦相手の特定のカードを追放する、というものだ。

 私はこのとき以来、プレイヤーとして多くの進化を遂げ、多くを学んできた。思い返してみると、私はあらゆるデッキで《頭蓋の摘出/Cranial Extraction(CHK)》を正しく利用していただろうか? していなかった! では、すべてが間違っていたのだろうか? そうではない! 正しく用いたとき、それは極めて強力なカードとなる――そして用い方が悪いと、まるで効果を得られない。

 『カラデシュ』からもこの系統の新カードが登場する。そのカードは非常に効果的な武器だ――使い方を誤らなければね。

 この遺産の最新作を紹介しよう。

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 ふーむ、カードアートとフレイバーテキストは何を指しているのだろう? キラン・ナラーについてはどこを見ればいいかな? 素晴らしいストーリーチームの成果を提示しておくよ......


《失われた遺産》 アート:Greg Opalinski

 では、このカードについてやっていこう。

 《失われた遺産》のコストは、この種の効果を持つ基本的なカードよりも1マナ少ない。そのため、対戦相手の展開が早かったとしても、機先を制して追放に取り掛かれるだろう。アーティファクトを狙うことはできない――そして『カラデシュ』にはアーティファクトが数多く存在する。しかしおそらくそれらは、《失われた遺産》でカード名を宣言して探したいと考える、狙い目のカードではないんじゃないかな。

 実際に考えなければならない欠点は、相手の手札に指定のカードがあった場合、追放した枚数分のカードを引かせてしまうという点だ――しかし、基本的には問題ない。《失われた遺産》を正しく用いることができたならば、対戦相手の戦略は成り立たなくなるはずなので、相手が何を引いてもかまわないはずだ。

 では、正しく用いるには、具体的にどうすればいいだろうか? じゃあ、この種の効果を評価してみよう。

失われた原因

 この種の効果はとても魅力的に思える。

 3マナで、最も嫌な対戦相手のカードを追放してしまえる。《ゼンディカーの同盟者、ギデオン/Gideon, Ally of Zendikar(BFZ)》に痛い目にあわされた? デッキから全部吹っ飛ばしてやれ!

 しかしながら、この行動には別のコストがかかる。それは、カード・アドバンテージ(訳注:パーマネントや手札のカード枚数における優位)を失うことだ。

 指定するカードが、対戦相手の手札にも墓地にも無いとしてみよう。そうすると、こちらはマナとカードを消費したにもかかわらず、ゲームになんの影響も与えられないという結果となる。盤面状況には一切干渉していない。対戦相手のライブラリーの中身を知ることができたし、ゲームが終わるまで、相手は最高のカードを引くことはできない......それは確かだ。それでも問題は残る。対戦相手は、ギデオンの代わりに、デッキに入っている別の良いカードをあっさり引くだろう。

 ゲームに対する影響という点では、カードを使う価値はない。この手のカードだけを大量に用いても、ほとんどのデッキに対してはカードの枠を割くに値しない結果となるだろう。大抵のデッキには、追放したギデオンと同程度の威力を持つカードがいくつもあるはずだ。

 その上、《失われた遺産》は多くの場合、相手に手札を引き直させる。指定したカードが手札にあっても、その埋め合わせとして対戦相手はカードを引く。《失われた遺産》で、自分も相手も手札が減る、ということはない。

 それでも、先に述べたように、この種の効果は極めて強力だと言おう――間違いなく《失われた遺産》はスタンダードで使われると予想しているよ。

 どうしてかって? では、話を続けよう!

勝利のための遺産

 対戦相手のデッキに脅威が何種類も存在する場合、そこから1種類を追放するために《失われた遺産》のようなカードを「コストを払って」使うのは、最良の使用法ではない。戦場に干渉していないという事実を補うためには、相手のドローを悪化させる以上の何かを必要とする――つまり、対戦相手の戦略そのものを弱体化させなければならない。

 《失われた遺産》は幸いにも、スタンダードのいくつかのデッキに対して、それを行うことが可能だ。

 対戦相手のデッキが特定のカードに依存し、それをすべて追放することで相手の主な勝ち筋を失わせることができる場合、この種の効果は素晴らしいと言える。それがいくつかある勝ち筋のうちの「たった1つ」に過ぎないとしても、立て直しが必要となるだろう。

 古典的な例は、コンボ・デッキ相手に使う時だ。モダンの《死せる生/Living End(TSP)》デッキと対戦する状況を考えてみよう。

 このデッキの全体的なゲームプランは、《死の一撃のミノタウルス/Deadshot Minotaur(ARB)》や《巨怪なオサムシ/Monstrous Carabid(ARB)》のようなサイクリング・カードで墓地にクリーチャーを送りこみ、《死せる生/Living End(TSP)》を唱えてそれらをすべて戦場に戻す、というものだ。

 もし《失われた遺産》で《死せる生/Living End(TSP)》を指定したなら、このデッキは途端に機能しなくなる。モダン環境で素出しされる《巨怪なオサムシ/Monstrous Carabid(ARB)》の群れに殴り倒されるなど、ほぼ無いだろう。

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 このような状況であれば、《失われた遺産》によって別のカードを与えても何の問題もない。盤面に影響を与えていないし、カード・アドバンテージも失ってはいるが、関係ない。対戦相手のゲーム・プランを完全に破壊し、今や相手はこちらにほとんど対抗できない。最も重要な優位性、ゲーム・アドバンテージを獲得したのだ!

 これが、《失われた遺産》が決定的な内部破壊を行える例となる。

 これはモダンでの例だが、どんな環境においても言えることだ。例えば、今のスタンダードでは、唱えることでアドバンテージを獲得できる特定のカードを利用したデッキが多い。このイカれたカードを知っているはずだ。

 これは相手のデッキから特定のコンボ・パーツを全て追放することとは多少違うが、エムラクールをデッキからすべて取り除くことで、そのデッキの主要な戦略を打ち砕くことが可能だ。そこには大きな価値があるだろう。プロツアー『異界月』でトップ8に入賞した行弘 賢の赤緑昂揚のようなデッキから、エムラクールの脅威を取り除くことができれば、対応をする時間が生まれる。おそらくは、他の脅威のほとんどに対処できるようになるだろう。もちろん、複数の《失われた遺産》を用いて、相手のデッキの脅威すべてを追放できることは言うまでもない。また、《失われた遺産》は墓地のカードも追放するため、墓地から繰り返し戻ってくる《世界を壊すもの/World Breaker(OGW)》のようなカードを処理するための方法でもあることを忘れないように!

 この種のカードは、カードを狙い撃ちするという性質上、基本的には素晴らしいサイドボード・カードという位置に納まることが多い。特定のカードに頼った戦略を持たないデッキに対しては引きたくないし、最も効果的なデッキに対してのみ採用したいからだ。そして《失われた遺産》はその要求に完全に応える。黒を利用する、多くのデッキのサイドボードで使われると見ているよ。モダンでは、3マナでコンボに対抗できる効果的なカードとして......そしてスタンダードでは、搭載した特定のカードに頼り切ったデッキに対する有力な選択肢として使われるだろう。

発見された遺産

 《失われた遺産》のようなカードから、どうやって身を守ればいいだろうか? まあ、最も良い方法は、脅威を複数種類に分けることだ。用意しておけば、少なくともサイドボード後に、1種4枚の脅威を2種2枚ずつに分割するという手が使える。

 そういった対策を取っておく必要はあるだろうか? まあ、それはスタンダードの環境次第だ! 『カラデシュ』プレビューに注目して、そこからデッキを構築し始めれば、どうなるかがわかってくるだろう。デッキを構築する場合に、サイドボードに《失われた遺産》が使われることを念頭に置いて組む必要が出てくるとしても、まったく驚かないね。

 《失われた遺産》のお披露目は完了した――願わくば、正しく利用するためのより良い発想があらんことを。うまく使ってくれ!

 何か考えや意見があれば、TwitterTumblrに気軽にメッセージを送ってほしい! BeyondBasicsMagic@gmail.comにメールを送ってくれても構わないよ。(英語で)

 来週、『カラデシュ』の別のプレビュー・カードを紹介しに戻ってくるよ。また会おう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com

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