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岩SHOWの「デイリー・デッキ」
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:死の影ジャンド(モダン)
岩SHOWの「デイリー・デッキ」:死の影ジャンド(モダン)
by 岩SHOW
2016-2017シーズンはモダンがプロツアーの種目から外れたので、モダンというフォーマットで一番強ええヤツを決める舞台は現状グランプリということになる(世界選手権やワールド・マジック・カップは少々毛色が異なるしね)。
多くのモダン・グランプリが、新セット発売から時間に余裕のあるスケジュールで組まれており、それは即ちプロツアーよりも洗練されたデッキが持ち込まれることになる。そんなグランプリで勝つ・優勝するには、適切なデッキ選択が不可欠。モダンなんて多数のデッキが存在するフォーマットでは、そんな簡単なそうなことも大変に難しいものである。
2月に開催されたグランプリ・ブリスベン2017とグランプリ・バンクーバー2017では、どんな選択が正しかったのだろうか。
ブリスベンでは「ドレッジ」がTOP8に2名という結果に。《ゴルガリの墓トロール》禁止も何のその、足りなくなった発掘カードは《ゴルガリの凶漢》で代用だ。まさか「ドレッジ」はこないだろうとガードを下げているプレイヤーが多かったのかもしれない。
話題の「純鋼ストーム」は初日こそ活躍したものの、結局TOP8の頂に達することも叶わなかった。あれだけ目立てばマークされるというもの、プロツアー『霊気紛争』における「コピーキャット」のような立ち位置となったのだろう。狩られる側のデッキを選択してしまうと、勝つことは困難なものとなる。「ドレッジ」との明暗が分かれたわけだ。ちなみにその「ドレッジ」も優勝することは能わず、トロフィーは「ランタン・コントロール」が持ち帰っている。
ではバンクーバーは? こちらは「マーフォーク」「白単エルドラージ」などがその名を連ねる一方で、ついにその姿を世界に見せつけたデッキが圧倒的な勝利を収めた。TOP8で3名が使用している、そのデッキとは......「死の影ジャンド」である。
モダンに精通しているプレイヤーの間では周知のデッキだが、こうやってスポットライトを浴びるのは初めてのことなので知らないプレイヤーの方が多いんじゃないかなと。デッキ名は何やら物騒なものだが、そんなに構えなくても大丈夫。「死の影アグロ」ほどクセは強くはない。ワンパン大ダメージ要素も搭載されているにはいるが、以前よく見られたオールインなコンボチックなデッキというわけではない。
「死の影ジャンド」は前環境より密かに存在したデッキだったのだが、主流だった「死の影アグロ」の文字通り影に隠れているデッキだった。このアグロが1月の禁止改定により《ギタクシア派の調査》を失って大幅にパワーダウン。《死の影》という稀代のサイズを持つ1マナクリーチャーに魅せられたプレイヤーたちは、ここでジャンド(黒赤緑)カラーにまとめられたデッキに乗り換えたというわけである。
「死の影ジャンド」はモダンに古くから存在する「ジャンド」デッキと「死の影アグロ」のハイブリッドと考えることができる。《強大化》+《ティムールの激闘》から離れ、徹底した1マナ手札破壊によるコントロール要素を重視。しかし元祖ジャンドのように土地を伸ばして4マナ以上のパワーカードを使うというアプローチは取らず、1マナ・2マナのカードで序盤からガッシガシ殴ってゲームを終わらせる方向に進化したデッキだ。文章のみでは説明しづらい部分もあるので、とりあえずリストを見てもらうとしよう。
1 《森》 1 《沼》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《血の墓所》 1 《神無き祭殿》 4 《新緑の地下墓地》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 1 《湿地の干潟》 1 《汚染された三角州》 -土地(18)- 4 《死の影》 4 《タルモゴイフ》 1 《ゴーア族の暴行者》 4 《通りの悪霊》 -クリーチャー(13)- |
4 《ミシュラのガラクタ》 4 《コジレックの審問》 4 《思考囲い》 4 《ウルヴェンワルド横断》 3 《致命的な一押し》 3 《タール火》 2 《ティムールの激闘》 1 《集団的蛮行》 2 《コラガンの命令》 2 《ヴェールのリリアナ》 -呪文(29)- |
1 《エーテル宣誓会の法学者》 1 《戦争の報い、禍汰奇》 3 《大爆発の魔道士》 1 《イーオスのレインジャー》 2 《墓掘りの檻》 2 《古えの遺恨》 1 《集団的蛮行》 3 《未練ある魂》 1 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
メインに3マナ以上のカードは4枚のみ(《通りの悪霊》は0マナ、《ゴーア族の暴行者》は2マナ換算)、1・2マナのカードがズラリ。これにより土地は18枚まで削れている。これまでのジャンド観を覆す構築である。そこはやはり《死の影デッキ》というところか。
目指すべきは単純で、自分のライフを減らしながら相手の手札も減らしていく。スムーズな動きを阻害し、こちらのクリーチャーのために除去を叩き落としていく。相手がクリーチャーを出してきたら《致命的な一押し》の加入で大幅強化された除去で捌いていこう。なるべく小さいクリーチャーには《タール火》で対処。わざわざ《稲妻》ではなくこのカードをチョイスしているのはこのデッキの特徴。《強大化》も採用していないのに墓地を肥やすための《ミシュラのガラクタ》も採用されており、初見では???となるかもしれない。
これらのカードがデッキに入っている理由は「《タルモゴイフ》が大きくなるから」だけではない。墓地にさまざまな種類のカードをマナをかけずに落とすことで、速やかな昂揚達成を狙っている。このデッキは、《ウルヴェンワルド横断》のポテンシャルを最大限に発揮するように作られているのだ。
昂揚状態で《ウルヴェンワルド横断》を唱え、《死の影》を持ってくる......これが狙いだ。早ければ1ターン目には昂揚達成し、2ターン目からクリーチャーなり土地なり好きなカードをサーチすることができる......こう聞くと、むちゃくちゃ強そうでしょ?
実際に、これが強いんだなぁ。枚数を減らした土地を安定して運用することを助け、序盤は《タルモゴイフ》で盤面を支える。中盤以降は《死の影》サーチ、トドメの一押し用に《ゴーア族の暴行者》を......と、なんだってできる! このデッキの心臓である。
手札破壊と《ウルヴェンワルド横断》によるサーチ、《死の影》というパンチ力のあるクリーチャー、これらにより構成されたデッキがこの「死の影ジャンド」だ。ライフは惜しまず払っていこう。でも、無意味に《死の影》を大きくし過ぎる必要もない。1マナ6/6なんかになれば、正直十分。自爆にだけは気を付けよう。よく行う動きは、
- 1ターン目:フェッチランド起動で黒い2色土地を持ってきて《ミシュラのガラクタ》起動、《通りの悪霊》サイクリングからの手札破壊
- 2ターン目:《タルモゴイフ》(最低4/5保証)
- 3ターン目:さらに手札破壊、《ウルヴェンワルド横断》から《死の影》サーチし展開
......どうです、この超攻撃的かつ相手をしっかり妨害する動き。《死の影》を3ターン目には出せるように、しっかりとフェッチランドとショックランド(※1)も活用してライフを12以下に持っていこう。
(※1:フェッチランドとは、ライフ1点支払いつつ生け贄に捧げると、特定の基本土地タイプを持ったカードをライブラリーから戦場に出すことができる土地のサイクル。ショックランドはアンタップ状態で戦場に出すと2点のライフを失うが、2つの基本土地タイプを持ち2色生み出すことのできる土地のサイクル。2点受けるので《ショック》土地ということだ。モダンで多色デッキを組むのであれば、持っておきたいセット。フェッチからショックイン(2点受けながらアンタップインすることをこう言う)、《思考囲い》と動けば1ターン目に5点ものライフを失う。だがそれが良い)
このデッキリストは、ジャンドと言いながらも白の要素をサイドボードに多数取っている。コンボ対策・アーティファクトデッキ対策・万能サイドカード《未練ある魂》に加え、長期戦では《死の影》を2枚サーチする壊れっぷりを見せつける《イーオスのレインジャー》も採用。おそらくメイン戦では対戦相手は白いカードのことなど頭にちらつかない。白い土地は1枚だけなので、完全な擬態も可能だ。予想外のサイドカードでギャフンと言わされたプレイヤーも少なくなかっただろう。
上記のリストはプロツアーで5度のTOP8経験もある強豪中の強豪、世界最高のプレイヤーの1人であるジョシュ・アター=レイトン/Josh Utter-Leytonが使用し、自身初のグランプリ優勝を勝ち取ったものであり、同じく強豪ジェリー・トンプソン/Gerry Thompsonも同様のリストを使用して決勝ラウンドに勝ち上がっている。
冒頭でこのデッキの使用者3人がTOP8と述べたが、では残りの1人は?これまた強豪、サミュエル・ブラック/Samuel Blackだ。彼が使用したものは、他の2名と構成が若干異なる。こちらもチェック!
1 《森》 1 《沼》 1 《草むした墓》 1 《踏み鳴らされる地》 1 《血の墓所》 1 《神無き祭殿》 4 《新緑の地下墓地》 4 《血染めのぬかるみ》 2 《樹木茂る山麓》 1 《湿地の干潟》 1 《汚染された三角州》 -土地(18)- 4 《死の影》 4 《タルモゴイフ》 1 《改革派の結集者》 4 《通りの悪霊》 -クリーチャー(13)- |
4 《ミシュラのガラクタ》 4 《コジレックの審問》 4 《思考囲い》 4 《ウルヴェンワルド横断》 3 《タール火》 1 《致命的な一押し》 2 《ティムールの激闘》 1 《突然の衰微》 1 《集団的蛮行》 3 《コラガンの命令》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(29)- |
1 《戦争の報い、禍汰奇》 3 《大爆発の魔道士》 1 《弁論の幻霊》 2 《外科的摘出》 3 《致命的な一押し》 1 《古えの遺恨》 3 《未練ある魂》 1 《イーオスのレインジャー》 -サイドボード(15)- |
白マナをメインから使うようになり《改革派の結集者》を採用。《致命的な一押し》の氾濫により、《死の影》も《タルモゴイフ》も1枚で対処される環境となったことを捉えてのチョイスだろうか。こちらのターンに除去を撃ってくれればそのまま紛争能力誘発、そうでなくともフェッチランドで簡単に紛争させることができるので、3~4枚目以降のフェッチランドはむやみに消費しないのが吉。
自身は《致命的な一押し》をサイド後に増量する形にし、対戦相手の軽量クリーチャーには《最後の望み、リリアナ》で対処。彼女も昂揚を助け、《改革派の結集者》を拾ったりと莫大なアドバンテージをもたらしてくれることだろう。
ドロー手段などはなく、除去や手札破壊を誤った形で用いると、なかなか取り返しのつかない結果になり......個人的には結構難しいデッキと思っている。それでも、世界トップクラスの面々が選んだということは、そして結果を残したということは、これからのモダンを考えていく上で、避けては通れないものである。一度回してみてほしい。手札を落としてデカいやつで殴る、というゲームが好きな人は、ドハマりしちゃうかもね。《ウルヴェンワルド横断》を活かして、他にも何か面白いクリーチャー・土地絡みのパッケージ作れるかもしれない。Let's try!
しかし短期間で進化したデッキだなぁ......僕が最初に触った時とかサイドに《苦花》とったりしてたのに......。
噂のデッキ回してみたけど、ただただしんどいw pic.twitter.com/6Shuom2yoC
— 岩show (@suicidman) 2017年1月16日
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