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戦略記事

岩SHOWの「デイリー・デッキ」

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アドグレイス(モダン)

岩SHOWの「デイリー・デッキ」:アドグレイス(モダン)

by 岩SHOW

 年内最後の実況仕事が終わった。12月4日に開催されたプロツアー『霊気紛争』地域予選がそれだ。喉も本調子ではなかったけども、皆さんのコメントにも支えられながらなんとかやり遂げることができて、ほっと一息。

 プロツアー地域予選(RPTQ)は、日本全国各地のショップで開催された予備予選(PPTQ)にて優勝し権利を獲得したプレイヤーのみが挑むことのできる、ワンランク上のステージ。プロツアーの出場権利を獲得するため、真剣勝負が行われる場所である。このトーナメントにはシルバー・レベルのプロプレイヤーも参加することができる。彼らも年間を通してのプロツアー権利を持っているわけではないので、このチャンスを逃す手はないのだ。というわけで、RPTQはお互いの思いが交錯する激しい戦の場となるのである。実況していて楽しい試合ばかりで、やりがいのある仕事だった。

 今回の関西でのRPTQにおいて権利を獲得した4名が使用したデッキは、「死の影アグロ」「感染」「ジャンド」「御霊の復讐」。ブン回りデッキ×3と、クリーチャーを軸としたデッキに対抗する「ジャンド」という、なんともモダンらしい顔ぶれが権利獲得となった。今日はそんな権利獲得デッキ......ではなく、惜しくも敗れてしまったが、最終戦にて手に汗握る勝負を見せてくれたデッキを紹介しよう。そのデッキは《むかつき》コンボ、「アドグレイス」だ。

 このデッキについて触れるのは初めてではない。以前に「白日むかつき」なるやんちゃ極まるコンボデッキを紹介したが、「アドグレイス」はそれの本家本元。大量のカードを入手できるがライフがすり減る《むかつき》と、唱えたターンに自身が敗北しなくなる《天使の嗜み》orライフが0以下になっても敗北しなくなる《ファイレクシアの非生》を合わせることでライブラリーのすべてのカードを手札に加え、それで一気に勝負を決めるコンボデッキである。

 勝利手段は《稲妻の嵐》と《研究室の偏執狂》だ。《稲妻の嵐》は唱えてからこれがスタックにある間に土地カードを手札から捨てるとダメージを上昇させることができる火力で、ライブラリーがすべて手札にある状態だと20点オーバーのダメージを叩き出すことも可能だ。サブプラン《研究室の偏執狂》は《むかつき》でライブラリーが空になっているので出してすぐ《ギタクシア派の調査》なんかを唱えれば即勝利となる。

 実にコンボデッキらしいコンボデッキで、往年のコンボマニアから最近マジックを始めた若きプレイヤーまで、その独特の動きで多数のプレイヤーを魅了している。

 このデッキは《天使の嗜み》と《ファイレクシアの非生》のようなダメージでの敗北を防いでくれるカードとして用いることができるので、ダメージで勝利を狙うビートダウンなんかにはめっぽう強い。......その一方で、これらのカードでも抑えられない手段での勝利を目指すデッキは苦手だ......毒殺とかね。「感染」は上記2種の呪文でも防ぎようのない「毒」を迅速に10個与えてくる_しかも《呪文貫き》《払拭》といった打ち消し呪文を携えながら。「アドグレイス」が天下を取るのをこの「感染」が阻んでいる、「感染」さえいなければこのコンボデッキを使用するプレイヤーはもう少し増えるのではないかと思える。それぐらい相性の悪い天敵なのだ。

 と、前フリが長くなったが......改めて今日紹介するのはRPTQにて決勝ラウンドまで勝ち上がった「アドグレイス」。このデッキは対「感染」最終兵器を搭載した、決意に満ちた構築が施されたシロモノだった。実際にゲーム内でもそのシークレット・テクが火を噴いて、勝利を収めていた。それではその全容をご覧いただこう。

Noine, Kazuhiro
プロツアー『霊気紛争』地域予選 大阪 6位 / モダン (2016年12月4日)[MO] [ARENA]
2 《平地
1 《
4 《金属海の沿岸
4 《闇滑りの岸
2 《啓蒙の神殿
3 《欺瞞の神殿
4 《宝石鉱山

-土地(20)-

4 《猿人の指導霊
1 《研究室の偏執狂

-クリーチャー(5)-
4 《睡蓮の花
3 《否定の契約
4 《天使の嗜み
4 《血清の幻視
4 《手練
3 《大霊堂の戦利品
4 《五元のプリズム
3 《ファイレクシアの非生
1 《稲妻の嵐
1 《魂の裏切りの夜
4 《むかつき

-呪文(35)-
1 《墓所のタイタン
1 《否定の契約
1 《殺戮の契約
3 《暗黒
1 《思考囲い
2 《安らかなる眠り
1 《残響する真実
1 《ハーキルの召還術
1 《亡霊の牢獄
3 《神聖の力線

-サイドボード(15)-
BIG MAGIC より引用)

 メインデッキに搭載された伝説のエンチャントをとくと見よ! 《魂の裏切りの夜》ッッ!

 このエンチャントはすべてのクリーチャーに-1/-1修整を与える。「感染」のクリーチャーは......《貴族の教主》《ぎらつかせのエルフ》《荒廃の工作員》《墨蛾の生息地》と、いずれもタフネス1、完全にシャットアウトだ。《ヴィリジアンの堕落者》くらいしか生き残れないので、このエンチャントさえ戦場に出れば安泰だ。特にメインデッキからエンチャントに触れるカードを搭載している可能性は限りなく薄いので、貼ってしまえば勝ち、とまで言い切れる。それぐらい突き刺さるエンチャントなのだ。《魂の裏切りの夜》さえ通してしまえば、後はじっくり手札を整えてコンボに持っていくのみである。実際にメイン戦はこの1枚で完封勝ち!

 最終ゲームではザクザクと毒を受けながらも《大霊堂の戦利品》から《魂の裏切りの夜》を探し当てて、いったんリセットに成功するも、それまでに大量のリソースを消費してしまったためコンボを始動できず、エンチャント破壊でこれを突破され負けてしまった。負けたとはいえ、絶望的な相性のマッチアップをどちらが勝ってもおかしくないというゲーム展開まで持っていけたこの構築は注目すべきものだと思い、ここに紹介させてもらった次第だ。

 このエンチャントは「感染」以外にも「親和」のような小型のクリーチャーを展開するデッキに対して効果的だ。ゲームを大幅にスローダウンさせ、そしてコンボを確実に決めるのだ。

 サイドの《亡霊の牢獄》といい、随所に工夫が見られる「アドグレイス」。シークレット・テクが環境の定番となるのか? 今後が見ものである。

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