READING

戦略記事

行弘賢のよくわかる!リミテッド講座

第61回:『霊気走破』ドラフト攻略

行弘 賢


 皆さんこんにちは!行弘(@death_snow)です!

 先週末はプロツアー『霊気走破』が開催され、日本人からは原根さんがトップ8入賞と大盛り上がりを見せた素晴らしい週末となりましたね。僕も参加してまして、10位という好成績で終える事ができました。トップ8タイの成績だったため世界選手権の出場権利も獲得でき、個人的には非常に満足いく結果となりました。

 プロツアー霊気走破の練習を含め、ドラフトの方もいつも通り遊んできましたので、今回も、そこで得た経験を皆さんに共有する記事をお送りしていきます。

 それではまずは環境のポイントから見ていきましょう!
 

1.『霊気走破』ドラフト環境のポイント

 『霊気走破』ドラフトでは、『霊気走破』プレイ・ブースターを3パックを使用します。ブースタードラフトの遊び方はこちらから。

 
環境のポイント1:緑が強力

 今回は「色としての強さは緑が一番強い」という前提のもと環境が回っています。というのも、緑は他の色に比べて除去の質もクリーチャーの質も申し分なく、コモンカードですらほぼ全ての種類のカードがデッキに採用しても文句のないカードになっているため、緑が一番『霊気走破』のリミテッド環境で強力な色となるためです。

 その前提があるため、実際にドラフトをやる際は皆が緑をやりたがるので、自分がどれだけ緑をやるか、緑をやってる人が多い時にどう緑以外を選択するかの基準を自分で決めることが重要になってきます。

環境のポイント2:アーキタイプより質

 このセットの大きなテーマとして、最高速度というものがあります。最高速度をより高める事で効果が大きくなるカードが多く、どの色にもそれは存在します。最近の他のセットであれば各色の組合せでアーキタイプを意識する事が重要だったりしますが、『霊気走破』は最高速度というどの色でも目指せる共通アーキタイプが存在するため、ドラフト中にアーキタイプに寄せきれないような状況ではこの共通アーキタイプである最高速度を目指せばそれなりにデッキになります。

 このことから、アーキタイプに大きく寄せるより、どのアーキタイプでも強力なカードをドラフト中に意識する事で、アーキタイプ寄せするより安定したデッキになりやすいです。例えば強力な除去や、単体で強力なスタッツを持つクリーチャーなど、他のカードと組み合わせなくても機能するカードは優先順位が高くなります。

環境のポイント3:マルチカラーを指針に

 今回はマルチカラーのアンコモンサイクルが強力なものが多く、デッキを構築する際はぜひ採用したいです。

 基本的には序盤は除去やレアをピックしつつ、今までピックしているカードと色が1つ以上合っているマルチカラーのカードが流れて来た場合はひとまず取っておいて、この後のデッキの方向性を決めても良さそうです。

 

 以上の3つのポイントを意識する事でデッキを作りやすくなると思うので、まずはこれらを意識してピックするようにしてみましょう。
 

2.収録メカニズムについて

 それでは続きまして、今回の新規収録メカニズムをおさらいしていきましょう。

エンジン始動!

エンジン始動!(あなたが速度を持たないなら、1から始まる。速度はあなたの各ターンに1回、対戦相手がライフを失ったとき、1上がる。最高速度は4である。)

 エンジン始動!とは、エンジン始動!を持つカードが戦場に出た際、速度を得るキーワード能力です。

 

 速度はエンジン始動!を持つパーマネント・カードが戦場に出た際、誘発などなく即座に速度を得ます。速度はパーマネントが持つ訳ではないので、補助カードなどを用いて数値を管理するのが良いでしょう。

/
カードをクリックで別の面を表示

エンジン始動!

 速度は自分のターンに対戦相手のライフが減った場合に、ターン中に一度だけ1上がります。速度を初めて得たターンから上げる事もできます。4まで上がると最高速度になり、それ以上速度は上がらなくなります。

 最高速度になると、その状態でボーナスを得るカードが数多くあるため、それらを採用している場合は有利です。このことから最高速度でボーナスを得るカードを採用している場合はいかに速度を上げるかが重要になります。

消尽

消尽 — N:~。(消尽能力はそれぞれ1回しか起動できない。)

 消尽とは、そのカードが戦場にある間、そのカードはゲーム中に一度しか起動できない起動型能力です。

 

 基本的には縛りがある起動型能力なだけではありますが、同じ種類のカードが盤面に2枚ある場合はそれぞれが1回ずつ起動できる、ブリンクすれば縛りがリセットされる等、オブジェクトが別の場合はそれ毎に起動できる点に留意しましょう。

搭乗

搭乗N(あなたがコントロールする望む数のクリーチャーを、パワーの合計がN以上になるように選んでタップする:ターン終了時まで、この機体はアーティファクト・クリーチャーになる。)

 搭乗は機体が持つ能力で、指定されたパワーを持つクリーチャーを1体以上タップすることで機体がクリーチャー化する能力です。

 

 逆に搭乗するまでは機体はアーティファクト・カードであり、プレイしたターンにクリーチャー化すると召喚酔いの影響を受けるので攻撃やタップが必要な起動型能力が使えなくなります。

騎乗

騎乗N(あなたがコントロールしていてこれでない望む数のクリーチャーをパワーの合計がN以上になるように選び、タップする:ターン終了時まで、この乗騎は騎乗された状態になる。騎乗はソーサリーとしてのみ行う。)

 騎乗とは、ソーサリー・タイミングで自身以外のクリーチャーのパワーが指定の数以上になるようにタップする事でボーナスを得る事ができるキーワード能力です。

 

 機体の搭乗と挙動は大体同じですが、ソーサリーでしか行えない点が違うのと、騎乗自体には特に効果がある訳ではない点に注意しましょう。

 また騎乗を持つクリーチャーはクリーチャー・タイプ「乗騎」を持っています。乗騎や機体を参照するカードもあるためそれらと組み合わせる際は意識してみましょう。

サイクリング

サイクリング(N, このカードを捨てる:カードを1枚引く。)

 サイクリングはサイクリング・コストを支払い、手札からそのカードを捨てることでカードを1枚引くことができる能力です。

 

 カードによってはサイクリングした際にドローの他に効果を発揮し、ボーナスを得るものもあります。

 基本的には使い道が無いときや、土地が止まって困った時などに次のカードを探すためにサイクリングを使うのが主な用途ですが、今回はカードを捨てた時にボーナスがあるカードがあるため、それらと組み合わせる事もできます。
 

3.『霊気走破』のトップコモン&アンコモン

 さて、続きまして各色のトップコモン・アンコモンを見ていきましょう!

白・アンコモン
 

栄光荒野のオオヤマネコ》:自身が2マナ2/3魂絆と優秀なスタッツかつ騎乗すれば平地サーチもできるため、序盤からゲームを安定させる事にかけてはピカイチのクリーチャーです。

 

勇敢な一撃》:除去できる範囲こそ限られるものの、サイクリング付きなので腐りにくく、インスタントなのが嬉しい優秀な除去です。

 

拘留戦車》:除去内蔵機体かつ、スタッツも6/6と申し分なく、自身のマナコストの重さも状況次第ではサイクリングする事で柔軟に対応できる、あらゆる局面で活躍できる機体です。

白・コモン
 

全損事故》:搭乗や騎乗を含めるとクリーチャーがタップしやすい環境なためコスト軽減の状態でプレイしやすく、追放なので後腐れなく除去できる、非常に優秀な除去です。

 

免れぬ激突》:アーティファクト破壊とクリーチャー除去、どちらのモードも優秀な使い勝手の良い除去です。

 

レオニンの偵察員》:白で最高速度を目指す際に序盤からプレイでき、先制攻撃で攻撃を通しやすい、最高速度を目指す際のキーカードになるクリーチャーです。後半は自身の能力でドローできるのも嬉しいですね。

青・アンコモン
 

棘甲羅の追い立て屋》:バウンス内蔵クリーチャーかつ、自身のスタッツも4/4と不満が無い、強力なクリーチャーです。速度を減らすおまけも相手次第では強力に作用します。

 

食糧補充》:3マナ2ドロー系もここまで強くなったかと思わせられる性能。中盤に土地と何かを探しても良し、終盤で土地以外を探しても良しと、どのターンでプレイしても探してるリソースにたどり着きやすい、強力なドロー呪文です。

 

運送の魔道士》:2/2と最低限のスタッツで盤面をある程度保ちつつ、4か5のマナ総量を持つアーティファクトをサーチできる、デッキの再現性を担保してくれる優秀なクリーチャーです。

青・コモン
 

エンジン水没》:タップさせつつ能力を失わせる事で実質完全除去になる、クリーチャーと機体どちらも対応可能な優秀な除去エンチャントです。

 

機敏な海賊》:消尽効果で手札を整えつつ、自身も育つ為一石二鳥かつ、警戒により攻防で活躍できる非常に強力なクリーチャーです。

 

真夜中の圧搾車》:機体ながら自身の能力でクリーチャー化できるため、押されてる時は優秀な壁役として、攻めてる時は2マナ3/3の優秀なクリーチャーとして、安定感ある活躍が期待できる機体です。

黒・アンコモン
 

屍肉戦闘車》:3マナの機体として最低限のスタッツを持ちつつ、クリーチャーを回収できる、アドバンテージを稼ぎながら盤面を作れる優秀な機体です。

 

甦りし屍執政》:最高速度さえ達成できればコストなしで毎ターントークンを生成する事ができる、環境屈指のシステムクリーチャーです。

 

悲惨な人形》:アーティファクト・クリーチャーなのでアーティファクトシナジーを見込め、毎ターン諜報が可能とシンプルで強力な能力を持つ優秀なシステムクリーチャーできす。

黒・コモン
 

契約人形の恐怖》:アーティファクト寄せの動機になるカード。1点ドレインの能力は最高速度を上げるのにも使えるため、様々なアーキタイプで活躍できるクリーチャーです。

 

スピン・アウト》:インスタントでクリーチャーと機体どちらも除去できる、環境屈指の除去呪文です。

 

ミュータントの偵察員》:エンジン始動!を持ちつつ、自身のパンプ能力により攻撃を通しやすい、黒の最高速度を目指すデッキにおいて非常に重要なクリーチャーです。

赤・アンコモン
 

エンドライダーの棘飛ばし》:3/4到達と盤面を安定させるスタッツかつ、最高速度になれば毎ターンアドバンテージを稼ぐ、ゲームをコントロールする強力なクリーチャーです。

 

路上の暴走》:乗騎や機体でどんどんと打点があがる、1マナでできる仕事とは思えない強力な除去です。

 

忘却を超える速度》:3マナ5点と優秀な除去範囲に、最高速度を上げる事に貢献できる能力と、使い勝手の良い除去エンチャントです。

赤・コモン
 

衝突と炎上》:機体破壊とクリーチャー6点と、大体の局面で完全除去と言っても良い、優秀な除去です。

 

稲妻の一撃》:インスタントかつ2マナ3点と、安定感ある優秀な火力呪文です。プレイヤーにも撃てるので最後の詰めに使えるのも嬉しいですね。

 

雷頭の砲手》:5マナ4/5到達と盤面を落ち着かせる性能かつ、マナやタップをコストにせず手札を入れ替える事ができる、リミテッドの常識を超えて来た、規格外のシステムクリーチャーです。

緑・アンコモン
 

僭王マンモス》:戦場に出ただけで3/3を生成し、その後騎乗すれば毎ターン3/3を生成できる、盤面への影響力が大き過ぎる非常に強力なクリーチャーです。

 

緑地帯の守護者》:消尽により自身が5/5になり、自軍のクリーチャーにトランプルを付与できる、単純明快に強力なクリーチャーです。

 

エルフの補給者》:自分のターンに消尽能力を繰り返し使える能力により、自身や他の消尽カードで毎ターン有利を作れる、優秀なシステムクリーチャーです。

緑・コモン
 

砂丘の危険》:4マナ4/4かつ到達とトランプル持ち、更には消尽でサイズアップも可能なこれでもかと能力を詰め込まれた、コモンとは思えない強力なクリーチャーです。

 

渡りをするケトラドン》:6マナ6/6到達と強力なスタッツかつ、4点ゲインによりライフレースも有利にでき、サイクリングにより自身のマナコストの重さもカバーできる優秀なクリーチャーです。

 

轢殺》:インスタントで一方的にダメージを与えるだけでなく、機体や乗騎ならば1コストでプレイ可能な、使い勝手の良い除去です。
 

4.『霊気走破』ドラフトの注目のアーキタイプ

 続きまして、『霊気走破』の注目アーキタイプを紹介していきます。

注目のアーキタイプ・その1:白青アーティファクト

 「白青アーティファクト」は、《ボヤージャーの急速溶接機》や《ガイドライトの最適化技師》などで高マナコストのアーティファクトをバックアップするアーキタイプです。

 

 重いアーティファクトとしては《船体漂い》や《移動放送機》がコモンとしては優秀で、マルチカラーの《ガイドライトの道拓き》は早いターンに盤面に出ると強烈なインパクトがあります。

 

 青黒もアーティファクト軸になりやすく、特に《ネットワーク呪詛》は1枚でゲームを逆転させる事ができる性能なので、青を軸に柔軟に青白黒の3色からアーティファクト軸を目指すようにしましょう。

 

 3色になる事も考慮してマナベースカードはある程度優先的に取っておくとピックの幅が広がりやすいです。

注目のアーキタイプ・その2:白黒最高速度

 「白黒最高速度」は、《レオニンの偵察員》や《ミュータントの偵察員》などのエンジン始動!のカードで最高速度を目指して、《勝利の刻》や《甦りし屍執政》などの最高速度時に高いバリューがあるカードを活かすアーキタイプです。

 

 白黒はマルチカラーのカードに《不朽の高位僧》があるため最高速度を目指しやすく、《不朽の高位僧》自体も達成時のバリューが大きなカードになります。

 

 エンジン始動!のクリーチャー同士にシナジーがそこまである訳ではないので、クリーチャーの選択に遊びがあり、自由度が高いのがアーキタイプの特徴です。その為、最重要な最高速度で高いバリューのあるカード以外はそこまで構築の制約が無いため、除去等の汎用性の高いカードを取りつつ隙を見て目指せるアーキタイプになります。

注目のアーキタイプ・その3:緑白乗騎

 「緑白乗騎」は、《アラクリアの魂、ラゴリン》等の乗騎や機体と相性が良いカードと、乗騎や機体のカードを組み合わせて戦うアーキタイプです。

 

 緑白はアンコモンのマルチカラーの両方が色の性質とマッチしており、どちらも強力なクリーチャーな為、参入しやすい色の組合せです。

 特に《アラクリアの魂、ラゴリン》は2ターン目に戦場に出たらそのままゲームを決めうる性能をしている為、これをピック出来た時は乗騎カードを優先するよう意識しましょう。

 緑白は優秀なクリーチャーが多い反面、意識しないとクリーチャーばかり集まってしまい、除去が足りなくなりがちなので、アーキタイプとも噛み合っている《轢殺》は優先度を高くピックするようにしましょう。

 
注目のアーキタイプ・その4:青赤ディスカード

 「青赤ディスカード」は、《略奪するアオザメ》や《たかり空エイ》等のカードを捨てる度にボーナスがあるカードを、サイクリングや《雷頭の砲手》等のカードを捨てるカードでバックアップするアーキタイプです。

 

 このアーキタイプの最重要カードは《雷頭の砲手》で、毎ターンマナを使わず手札を捨てる事ができます。これによりサイクリングして引いてきた余分な土地を循環できるだけでなく、捨てる事によりボーナスがあるカードを毎ターンサポートする事ができます。

 

 アンコモンのマルチカラーの両方がカードを捨てる事ができるカードかつ、手札を循環できるため、一度有利になったらそのまま手数を減らさずに攻め切る事ができるのがアーキタイプの特徴です。

 一方で、カードの役割がはっきりしており、それぞれが適正枚数取れないと機能不全してしまうので構築難易度は高めです。とはいえデッキが仕上がった時は環境随一の強さになる事もあるため、流れ次第では狙ってみる価値はあります。

注目のアーキタイプ・その5:緑青消尽

 「緑青消尽」は、《レインジャーズの霊気蜂巣》などの消尽をサポートするカードと消尽を持つカードを組み合わせて戦うアーキタイプです。《エルフの補給者》は自分のターンであれば使用済みの消尽を使えるため、消尽を繰り返し使いたい青緑において最優先カードになります。

 

 赤緑も消尽のアーキタイプであるため、青赤緑の3色になる事もあります。その場合は《輪心のバイク》などの緑のマナサポートを駆使して色を捻出するようにしましょう。

 

 消尽を持つカードは単体の性能が高いカードが多く、それらをピックしてる中でマルチカラーのカードが流れてきた場合に自然とアーキタイプに移行できるのがこの3色の組合せの強みです。

注目のアーキタイプ・その6:黒緑切削

 「黒緑切削」は、《ブルードハート・エンジン》や《道穴のモグラ》などの切削するカードで墓地を増やし、墓地を活用するカードと組み合わせて戦うアーキタイプです。

 

 《ブルードハート・エンジン》は墓地を増やしつつ、自身の起動型能力で墓地から機体やクリーチャーを戦場に戻せる為一枚で完結しており、緑黒切削をやる際は必須ともいえる性能のカードです。《轟雷のブルードワゴン》は特に相性が良く、緑黒はマルチカードが集まれば集まるほど強い色の組合せです。

 

 それ以外の墓地活用としては《キチン質の墓地歩き》のような、墓地のカードの枚数を参照にするカードも相性が良いです。

 

5.最後に

 これで今回の記事は終わりです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が少しでも、皆さんが新環境のドラフトを楽しむ助けになれば幸いです。

 今回は最高速度を目指してくる早いアーキタイプから緑のどっしりとしたアーキタイプまで幅広いレンジの相手をする事になるので、なかなか安定した成績を残す事が難しい環境に感じます。個人的には除去が強い組合せかつ自由度の高い白黒最高速度が好印象なので、良かったら試してみてください。

 それでは皆さん、また次回の連載記事でお会いしましょう!

  • この記事をシェアする

RANKING

NEWEST

CATEGORY

BACK NUMBER