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行弘賢のよくわかる!リミテッド講座
第54回:『エルドレインの森』ドラフト攻略
皆さんこんにちは!
世界選手権開催も目前という事で、大会フォーマットの一つであるブースタードラフトについても皆様の関心が高まってきている時期に、今回の記事を出せて非常に嬉しく思います。今回も事前にMTGアリーナで『エルドレインの森』でドラフトしてきましたので、そこで得た経験を皆さんに共有する記事をお送りしていきます。
- 1.『エルドレインの森』ドラフト環境のポイント
- 2.『エルドレインの森』収録メカニズムについて
- 3.『エルドレインの森』のトップコモン&アンコモン
- 4.『エルドレインの森』ドラフトの注目のアーキタイプ
- 5.最後に
1.『エルドレインの森』ドラフト環境のポイント
それではまずは環境のポイントから見ていきましょう!
『エルドレインの森』ドラフトでは、『エルドレインの森』ドラフト・ブースターを3パック(×人数分)使用します。
環境のポイント1:アーキタイプを意識しよう
この環境は各色の組合せに童話のテーマが存在するのと同時に、アーキタイプのテーマも設定されています。例えば緑黒なら食物、赤白なら祝祭と、色の組み合わせによるテーマを意識するかしないかでカード同士のシナジーが発揮されるかが大きく変わってきます。
後に解説するトップコモン&アンコモンと注目のアーキタイプを見て環境のアーキタイプをある程度把握しておくようにしましょう。
環境のポイント2:強力な出来事を集めよう
今回は出来事を持つカードが単純にカード2枚分として働くだけでなく、シナジーの核となっていたりと重要な存在になっています。
特にマルチの組合せのアンコモンの出来事カードはだいたいが強力で、その色とのかみ合わせも良いものになるので優先的にピックするようにしましょう。
環境のポイント3:除去過多は禁物
この環境はネズミ・トークンの存在や、2枚分の働きをする出来事により単純に消耗戦をして勝つ事が難しくなっています。除去を優先してピックしすぎてアーキタイプへの参入が遅れてしまい、単純に除去と優秀なカードだけで戦うようなデッキになってしまった場合、序盤から上手く攻める形を作れずに長期戦になってしまって相手のネズミ・トークンに仕方なく除去を打つような展開になってしまう事もあります。
もちろん相手のシナジーの核であるクリーチャーや、盤面の脅威を潰す事ができる除去呪文自体は大切な役割を持つため優先度は高い事には変わりませんが、自身のアーキタイプを助けるカードとしっかり比較して取捨選択するようにしましょう。
以上の3つのポイントを意識する事でデッキを作りやすくなると思うので、まずはこれらを意識してピックするようにしてみましょう。
2.収録メカニズムについて
それでは続きまして、今回の新規収録メカニズムをおさらいしていきましょう。
役割
[名称]・役割・トークン1つをそれについた状態で生成する。(あなたがコントロールしている役割がすでにそれについていたなら、その役割を墓地に置く。エンチャントしているクリーチャーは[名称に応じた能力が付与される])
- 怪物/Monster
+1/+1の修整を受けトランプルを持つ。- 魔術師/Sorcerer
+1/+1の修整を受け「このクリーチャーが攻撃するたび、占術1を行う。」を持つ。- 王族/Royal
+1/+1の修整を受け護法{1}を持つ。- 若き英雄/Young Hero
「このクリーチャーが攻撃するたび、これのタフネスが3以下である場合、これの上に+1/+1カウンター1個を置く。」を持つ。- ひねくれ者/Wicked
+1/+1の修整を受ける。このオーラが戦場から墓地に置かれたとき、各対戦相手はそれぞれ1点のライフを失う。- 呪われし者/Curse
基本のパワーとタフネスが1/1になる。
役割とは、上記6種のオーラ・エンチャントを生成するメカニズムです。役割は自分がコントロールしているものはクリーチャー1体に対して1つまでしかつける事ができず、新しいものを付ける場合は元々付いている役割が墓地に置かれることになります。
相手のクリーチャーにつけることが多い「呪われし者」は、“対戦相手がコントロールしている役割が付いた対戦相手のクリーチャー”に付けても元からある役割が墓地に置かれるわけではない点に注意しましょう。その場合、1体に対して2つの役割がつきます。
協約
協約(この呪文を唱えるに際し、アーティファクトやエンチャントやトークンのうち1つを生け贄に捧げてもよい。)
協約とは、協約を持つ呪文を唱える際に追加で生け贄のコストを支払う事で呪文にボーナスをもたらす事ができるキーワード能力です。
協約することでエンチャントを能動的に墓地に落とす事ができるので、エンチャントを墓地に落とす事がシナジーになるデッキの場合は優先的に取る事になります。
祝祭
・祝祭 — このターンに土地でない2つ以上のパーマネントがあなたのコントロール下で戦場に出たことがあるなら、~。
祝祭は、土地でないパーマネント2つ以上が場に出たことがこのターンにある場合に、祝祭を持つクリーチャーがそれぞれボーナスを得る能力語です。
祝祭を毎ターン使用するためには1枚で2枚分のパーマネントを出すカードが必要になってくるため、祝祭を持つカードを多くデッキに採用する際は合わせてこれらのカードも一緒に採用するようにしましょう。
出来事
出来事は、出来事を持つパーマネント・カード(当事者カード)をソーサリーやインスタントといった「出来事」側でも唱える事ができるメカニズムです。
出来事として唱えたカードは解決時に墓地に置かれずに追放され、追放領域から再度クリーチャーやエンチャントとして後に唱える事ができます。1枚でカード2枚分の働きをするため使い勝手が良く、リミテッドにおける重要性が高いメカニズムです。
3.『エルドレインの森』のトップアンコモン&コモン
さて、続きまして各色のトップアンコモン・コモンを見ていきましょう!
白・アンコモン
《ガラスの棺》:3マナ以下のクリーチャーと除去できる幅こそ狭いものの、2マナかつ祝祭と相性の良いパーマネントの除去なので白の戦略と相性の良い優秀な除去です。
《勇敢なパイ使い》:祝祭を達成してない状態でも先制攻撃持ちとして優秀で、祝祭を達成した場合は2段攻撃と、3マナのクリーチャーとしては破格の能力を得る事ができる優秀なクリーチャーです。
《覆われた羊飼い》:戦場に出た際のクリーチャー強化も優秀ですが、強力な出来事も併せ持つ、戦闘に大きな影響を与える事ができるクリーチャーです。
白・コモン
《武器庫のネズミ》:2マナのパワー3と攻めの性能に長けており、祝祭により更にタフネスまで上がる優秀な2マナ域です。
《取り籠め》:マナを支払えば完全除去、かつ祝祭・協約と相性が良い環境屈指の除去です。
《希望ある祈祷》:1枚で祝祭を達成でき、協約とも相性が良い優秀な2マナ域です。
青・アンコモン
《厳寒》:貴重な青の疑似除去かつ、タップシナジーもある優秀な除去です。
《氷造の歩哨》:シナジーが無くとも単体で攻守にわたって活躍できる、非常に優秀なクリーチャーです。
《糸縛りの徒党》:出来事のインスタントの除去と本体の飛行の性能、どちらも優秀な色さえ嚙み合えば見れば取るレベルに強力なクリーチャーです。
青・コモン
《ヴァントレスの変成者》:実質的な疑似除去付きクリーチャーとして機能する、優秀な出来事クリーチャーです。
《オビラの従者》:コンバットトリックとして使った後に出てくる3/4飛行は、どちらがおまけか分からないほどに強力です。
《ベルーナの門番》:序盤暇な時にバウンスしても良し、トークンを戻してアドバンテージ取っても良しと、本体も相手の脅威になる優秀な出来事持ちクリーチャーです。
黒・アンコモン
《おかわり》:盤面を保ちながらアドバンテージを取れる性能は除去に長けた黒の長期戦戦略と噛み合いやすく、エンチャントを能動的に墓地に落とすアーキタイプにおいては協約も噛み合う優秀な呪文です。
《ハイフェイの交渉人》:協約すればライフレースが一気に有利になる、アーキタイプを問わず活躍できる優秀なクリーチャーです。
《ねじれた下水魔女》:ネズミ・トークンがある程度出てくるデッキで使用すれば一気にフィニッシャークラスの活躍を見せる、単体性能だけでも十分な活躍ができる優秀なクリーチャーです。
黒・コモン
《がぶりんご飴》:2マナ除去ながら範囲が広く、協約によりシナジーも見込める優秀な除去です。
《大釜への給餌》:除去できる範囲こそ狭いものの、食物・トークン生成によるライフレースへの貢献やシナジー形成が光る優秀な除去です。
《大食の害獣》:ネズミ・トークン生成とクリーチャー死亡時の自身の強化、どちらも噛み合った能力であらゆるデッキとシナジーする優秀なクリーチャーです。
赤・アンコモン
《イモデーンの徴募兵》:出来事を含めると1枚で勝てる性能をしてるだけでなく、中盤以降の本体のみのプレイにも十分な圧がある、環境屈指のクリーチャーです。
《双頭の狩人》:二段攻撃付与も本体もどちらも強力な、アーキタイプを選ばず活躍できる優秀な出来事クリーチャーです。
《魔女跡追いの激情》:インスタントかつ5点と幅広い範囲を除去する事ができ、コスト軽減能力も今までに無いほどの性能をしている環境屈指の除去呪文です。
赤・コモン
《乱入》:除去としての性能の高さと、役割付与による盤面への影響が非常に大きな優秀な除去です。
《塔の点火》:1マナと軽く、協約も込みで見れば3~4マナ域まで除去する事ができる、ゲームの主導権を取りやすくなる優秀な除去です。
《ネズミ捕りの見習い》:インスタントの祝祭を達成できる性能だけでなく、1枚で3枚分のクリーチャーとしてカウントできる、トークン戦略の要ともいえる優秀なクリーチャーです。
緑・アンコモン
《絡み架かりの見張り》:オーラが出るたびにカードを引くという、強力すぎるアドバンテージソースとして優秀なシステムクリーチャーです。
《甘歯村へようこそ》:1枚で複数のパーマネントを展開できるだけでなく、強力な食物シナジーも見込める優秀な英雄譚です。
《堅いクッキー》:食物生成と自身の生け贄能力によりライフレースに強く、起動型能力は一気にゲームを決めうる非常に強力な2マナクリーチャーです。
緑・コモン
《凶暴な人狐》:出来事も本体も相手へのプレッシャーが大きな、優秀な出来事クリーチャーです。
《小村の大食い》:サイズによる除去耐性と、一枚でゲームを決めうる性能の高さ、協約による早期ターンの着地と、緑のコモンの中でも際立つ存在です。
《根乗りのフォーン》:マナ加速として優秀な性能かつ、色マナ変換能力により強力な多色の出来事持ちカードを無理なく使う事ができる優秀なマナクリーチャーです。
4.『エルドレインの森』ドラフトの注目のアーキタイプ
続きまして、『エルドレインの森』の注目アーキタイプを紹介していきます。
注目のアーキタイプ・その1:白青タップ
「白青タップ」は、《麻痺海溝のシャレー》や《孤高の聖域》等の対戦相手のクリーチャーをタップ状態にする事でボーナスがあるカードを《氷造の歩哨》等のタップさせるカードでバックアップし盤面をコントロールしながら攻め切るアーキタイプです。
上記に挙げた3枚のカードはもちろん非常に強力なのですが、コモンに目を向けるとシナジーがあるカードが少なく、参入障壁は非常に高いです。上記の3枚を複数取れた場合のみ意識してアーキタイプに参入したほうが無難な、難しいアーキタイプになります。
注目のアーキタイプ・その2:白黒協約
「白黒協約」は、《倉庫の虎猫》や《アショクの死神》などのエンチャントが墓地に置かれる際に効果が誘発するカードを《望み無き悪夢》や《希望ある祈祷》などの使い勝手の良いエンチャントや、役割などを協約呪文でコストにして墓地に落とす事でバックアップしつつ協約のボーナスも得ていくアーキタイプになります。
白黒という色の性質上除去には長けているのですが、短期決戦するには向いてないのでどうしてもじわじわと相手を攻める事になり、そのため盤面に長期的に活躍できるシステムクリーチャーが必要となってきます。《倉庫の虎猫》や《アショクの死神》など白黒で活躍できるカードは比較的遅い手順でもピックできる事があり、これらを上手く活かせる構成が白黒になります。
バランス良く各種カードが必要になるため組み上げるのが難しいアーキタイプではありますが、完成系の強さは環境屈指です。
注目のアーキタイプ・その3:赤白祝祭
「赤白祝祭」は、《大餐会の客人》や《武器庫のネズミ》等の祝祭持ちクリーチャーを《レッドキャップの盗賊》や《ネズミ捕りの見習い》などの1枚で祝祭を達成できるカードでサポートして盤面を常に強く圧をかけていくアーキタイプです。
比較的コモン中心でもシナジーがあり、環境屈指のカードである《イモデーンの徴募兵》と色と能力全てがかみ合っている為、アーキタイプとして参入しやすく個人的にイチオシのアーキタイプです。
注目のアーキタイプ・その4:青緑ビッグ5
「青緑ビッグ5」は、《豆の木をのぼれ》や《度胸ある冒険者、トロヤン》などのマナ総量5以上のカードとシナジーがあるカードと、マナ総量5以上のカードを組み合わせ圧倒していくアーキタイプです。
《小村の大食い》などの単純にマナ総量5以上で強力なカードとは別に、《ベルーナの門番》や《豆の木のワーム》といったマナ総量5以上でありながら出来事で序盤から動けるカードはこのアーキタイプにおいて重要な役目を果たす為、これらを意識的にピックするようにしましょう。
除去が少なく使いづらそうな印象がある色の組合せではありますが、今回はマナ加速、重いカードどちらも強力であることから有力なアーキタイプの一つとなります。
注目のアーキタイプ・その5:黒緑食物
「黒緑食物」は《甘歯村へようこそ》や《堅いクッキー》など食物とシナジーあるカードを食物・トークンを生成する各種カードでバックアップし、大量のライフゲインソースと重圧な緑のクリーチャー、黒の除去とで王道的なゲームをすることができるアーキタイプです。
黒緑は《甘歯村の断罪人、グレタ》と《お菓子を狩る者》どちらも強力で、特にシナジーが無くとも優秀な除去とクリーチャー、食物によるライフゲインでも十分戦えるため比較的やりやすい色の組合せになります。
食物・トークンは協約とも相性がいい為、《小村の大食い》など優秀な協約カードも優先的にピックするようにしましょう。
注目のアーキタイプ・その6:赤緑出来事
「赤緑出来事」は、赤の宝物を生成するカードや緑のマナサポートカードで、赤と緑のクリーチャーかつ他の色の出来事を持つカードも使える、出来事をふんだんに使えるアーキタイプです。
ただでさえ出来事カード自体カード2枚分であるので強力なのですが、《吼えたける突風牙》はそれとのシナジーもあるので是非見かけたら採用するようにしましょう。
また、赤緑はパワー4以上で効果を発揮するカードも多いので、できるだけこのシナジーも取り入れてデッキを組むようにしたいですね。
5.最後に
これで今回の記事は終わりです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。この記事が少しでも、皆さんが新環境のブースタードラフトを楽しむ助けになれば幸いです。
今回は個人的には赤と緑が強く感じています。そのうえで他の色も十分戦えるためバランスが良い環境だと思います。色々なアーキタイプの引き出しで勝率に差が出る環境だと思いますので、是非たくさん遊んで見てください!
また、今週末は「第29回マジック:ザ・ギャザリング世界選手権」が開催されますので、プロの方たちのドラフトを見るのも良い勉強になるかと思います!
それでは皆さん、また次回の連載記事でお会いしましょう!
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