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なかしゅー世界一周
なかしゅー世界一周2012・第6回:メキシコ上陸、テオティワカン
読み物
木曜マジック・バラエティ
2012.03.29
なかしゅー世界一周2012・第6回:メキシコ上陸、テオティワカン
By 中村 修平
だいぶ解っていたつもりではありましたが、それでも不可解なのが飛行機の旅券。
アメリカ滞在中に「1週間前に値段の壁がある」というのを身をもって味わった結果、だいたい2週間前には旅券を取ることにしていたのですが、今度はそれが裏目に出てしまいました。
インディアナポリス→シカゴ→ナッシュビル
私がシアトル滞在中に取得した航空券はこんな感じ、
しかし前回の冒頭で書いていたとおり、既にシカゴに来てしまっているので、隣の州のインディアナポリスに戻るのはとても面倒、
ならば、インディアナポリスからシカゴの部分だけキャンセルすれば万事解決・・・
できませんでした。約款によるとそういうことらしいです。
ということで1日かけてインディアナポリスにバスで戻り、空港近くのホテルを取ってからナッシュビルに移動というかなり面倒なことをしてから、次のグランプリ開催地であるナッシュビルへ到着しました。
グランプリ・ナッシュビル
1人旅の良いところは身の軽さです。
自分自身に対してのみ責任を負えればいいので、例えば思いついたら即行動できます。
同行者がいる旅ではこうはいきません。
まず旅程についてある程度まとまった計画が必須ですし、変更に際してはそれを明示して同意を求める必要があります。
アクシデントに遭遇すれば自分の選択に巻き込んでしまう可能性が常にあります。
私の場合は同行者のメンバーとその性格から取りまとめポジションにいることが多く、アクの強い面子ばかりだったということがあるかもしれませんが、楽しい半面、それなりに苦労事も多くありました。
どちらのほうが良いということではなく、どちらにせよ良いところも悪いところもあります。
そんなことを、かつて斎藤友晴、渡辺雄也、そして三田村和弥と来た迷宮のような巨大ホテル、ゲイロード・オープリーランドに向かう道すがら、タクシーの車窓から考えていました。
何気なく外の景色を眺めていると桜らしきものが咲いています。そういえば何時の間にやら風は温かみを持ったものに変わっています。
まさかアメリカで春を迎えることになるとは。
旅の期間を考えれば予測できていて然りなのですが、実際にこうやってコートでは少し暑いくらいの外気に触れるまでは、見当もつきませんでした。
なんて感傷に浸ったいたはずなのですが、すぐに何時もどおりの風景と、夜行バスにナップサック1つを手に飛び乗ったというルイス・スコット=バルガスとご対面。
なんというか若いですね。いや、実際によく忘れることなんですが、年下なんですけどね。
そんなナッシュビルは8位。プロポイント4点でした。(→英語カバレージ)
トップ8ドラフトは完全に失敗していただけに、まあ仕方がないといったところですかね。この旅が良かったものだと言うためには、まだもう少しプロポイントを稼がなくてはいけませんね。
トップ8敗退後、同じく準々決勝に敗れてしまった面々+αと晩餐、が何時の間にやらかなり大所帯で大宴会とかしつつ、いったんアメリカ合衆国とはお別れです。
メキシコへ
たしか前回の結びに「アメリカのどこかで」なんてことを言ってましたが、大嘘をついてしまいました。
今週いるのはメキシコシティ。
アメリカ合衆国のお隣、メキシコ合衆国の首都に滞在しているのです。(記事執筆時点)
もちろん週末に開催されるグランプリ・メキシコシティに参加するためですが、このメキシコ行はこれまでのお気楽1人旅とは少し勝手が違います。
私にしては割と珍しい、同行者としてのツアー参加なのです。
事の発端は1月のグランプリ・オースティンでした。同じく参加していたラファエル・レヴィから、
『3月のメキシコグランプリ、行く?』
と尋ねられたことです。
ほぼ毎週のアメリカほどではないですが、ヨーロッパでもそれなりの数のグランプリが開催されています。
レヴィのスケジュールはグランプリ・ナッシュビルに参加、その後にメキシコに移動して現地で1週間滞在、グランプリに再び参加して、翌週はイタリアで開催されるグランプリがあるので帰るというもの。
一方私はといえば、その当時はとりあえずアメリカ行き帰りの旅券だけ取って、あとは滞在中どのように過ごすかを考えていた段階なので、一、二もなく飛びついた感じ。
先々週あたりから具体的な話に入り、レヴィからフライトスケジュールを送ってもらって、ナッシュビル→メキシコシティ行きの同じ便を自分で取って合流するという形がベストという形で話がまとまったのがインディアナポリスにいたあたり。ついでに帰りの方は別口でメキシコに行くことを決めたベン・スタークとラスベガスに1週間滞在するか、という話になりようやくスケジュールの空白部分が無くなった次第です。
いつものマーティン・ジュザと、この旅に同行してきているルーカス・ジャコブスキ。レヴィとその同行のエリィ・ピションの合計5人で初めて足を踏み入れたメキシコですが、
『暑い』
まずはこの一言ですね。
ジャケットなんてもっての他、Tシャツ一枚が当たり前、それでもまだ暑いのです。
ナッシュビルで春を感じたと思ったのも束の間、一気に常夏の国に来てしまった気分。感覚的には東南アジアの国に来たのと同じです。
スペイン語だらけで何を言ってるのか全く解らないという点でも雰囲気が似ていますね。
いえ、英語の通じなさで言ったら東南アジアより断然です。
例えば、グランプリが同日開催されているマレーシアでは、不便ではあるものの英語を話せば一応コミュニケーションは取れることが多いのですが、メキシコでは全く駄目。アメリカが隣にあるのに、ほとんどの人は全く英語がしゃべれないのです。
日本人から見ると、ちょうど近くて遠いお隣の韓国のようなものなのかもしれません。
空港ですらそんな状態なのですから、もし1人でメキシコに来ていたら早速詰み状態になっていたかもしれません。
ですが母国語フランス語の他に英語、スウェーデン語、スペイン語が話せるレヴィがいれば万事解決。
グループ行でのメリットを享受しつつ、ホテルに到着したところで月曜日の日程は終了です。あとはやることと言えばせいぜい、本場のタコスを味わうことくらい。
火曜日からは自由時間、つまりは観光日です。
この日は市内観光。レヴィの友達のブラジル人プレイヤーも合流して合計6名のパーティーで地下鉄を乗り継いで、丘の上のチャプルテペック城へ。
城のテラスからの遠景を眺めている時に少し頭がクラクラする感覚を味わったのですが、まさかかなりの大事だったと知ったのは2、3時間も後のことでした。
実はこの時、隣の州では大地震が発生していたのでした。
地理的に数百キロ離れている上にメキシコシティは内陸部、2000メートル近くの高地。
しかも周りは全然理解出来ない言葉でしゃべっているので、本当に情報がわからないのです。
昼食で立ち寄った中華料理店のテレビでも何かメキシコの大統領が出てきて記者会見をしているくらいしかわからず、損害を受けて避難作業をしている店舗とその野次馬から、何故こんなに人がいるのかとレヴィが尋ねてようやく理解できたという状態。
ホテルに戻ってからツイッターで安否を確認するツイートをもらって心底驚きました。
この日は文化遺産に指定されている市の中心地、ソカロ広場。
この一帯はかつてテスココ湖という巨大な湖があり、その浮島にアステカ帝国の首都テノチティトランの中央神殿があったらしいのですが、スペイン人の征服時の完全な破壊と以降の街の発展から、湖とかつての面影は完全に無くなり、フォーラム建築の広場に大聖堂と巨大な国旗が掲げられています。
ですが部分的に発掘作業が行われ、その遺構と出土品が博物館として閲覧できるようになっているのです。
ちょうど広場の中心に陣取っている大聖堂の外れあたり、日本人から見ればおそらくアフリカの次くらいに馴染みが薄い文明なだけに興味深かったです。
ほとんどスペイン語の解説で部分的にしか英語の解説が載ってなかったのは残念でしたが。
翌日はこの旅のメインイベント。
世界遺産の1つであり、アステカ文明より更に古い年代の遺跡、太陽と月のピラミッドで有名なテオティワカンに出発です。
事前の下調べでは地下鉄の北端にバスターミナルがあり、そこから30分おきにバスが出ているとのこと。
特に問題もなくバスターミナルに到着して、しばし待つこと10分余りでしょうか。
アメリカにはない日本と同じスタイルのパン屋でコルネっぽいのを見つけたあたりで、レヴィに呼び戻されて慌ててバスに飛び乗ると、バス内で待ち構えている様々な罠。
いきなりお菓子の束を投げつけられたのですがよく見ると10ペソ=80アメリカセントと書かれていて慌てて突き返したり、謎のライブパフォーマンスが展開されているのを無視に努めている内に、『ピラミデ』と書かれた看板にそれらしきものがおぼろげながら見えてきました。
ここからは徒歩、かなり長い道になりますが観光客の列とそれを目当てに集まっている行商の屋台、日差しはかなり強く、慌てて全員で行商から帽子を購入するくらい。
そして日本人の感覚ではただでさえ不自然なくらいに多いのに、輪にかけて多い警察官。
メキシコで一番驚いたのはこの警察官の数で、メキシコシティ市内の至る所、それこそ1ブロック毎の交差点にかならず1人くらいのペースで見かけます。
この光景とそれにかかるコストを考てみて、日本が如何に効率的なインフラを築いているか再確認したのですが、そのメキシコシティの警察官よりも遥かに多い人員がたむろっています。
ここまで多いと反政府ゲリラか何かでもいるのではないのかと心配になってきますが、幸いそういうことや、警察官に絡まれることはなく入り口まで辿り着きました。
昨日ですっかりおなじみになったチケット購入を経て、いよいよ遺跡内部に入る...前に手荷物検査を食らい、私以外は何故か持ち込んだ水のペットボトルを没収、遺跡内部にもたくさんいる行商からちょっとお高い値段で買い直しというコンボを喰らいましたが、それ以外は問題なく。
いや、少しばかりこの行商達がかき鳴らしている犬笛(?)と鳥笛(?)が耳障りですが、通用口と思われる建物を通り抜けてから見える光景に比べれば些細なこと。
ただ広い草原に土台だけになったとはいえ、石造りの建造物が立ち並んでいて、遠景にはピラミッドとしか言いようがない建造物が見えるのです。
最盛期には十万人以上が生活していた都市の遺跡。ほんの一部だけの発掘とはいえ、それでも広大としか言いようのない規模なのです。
そして入り口近くの遺跡を一通り見学し終え、行商の群れを適当に捌きながら、遠くに向かって見えるピラミッドに向けて歩きだし、ゆっくりとそれが近づくにつれその大きさがはっきりと解ってきました。
まだエジプトには行ったことがないのですが、規模ではギザにある3つのピラミッドに近いものがあるのではないでしょうか。
大きい方の太陽のピラミッドは頂上まで登れるとのことなので、長い行列に並んでみましたが、頂上まで行くのになんと時間がかかること。
勾配自体もそれなりにありますが、それ以上に安全の為の交通整理を4合目、7合目あたりの踊り場でしているのが原因です。
結局頂上まで登るのに1時間近くかかりました。
ですがそこからの光景はまさに絶景の一言。
こんな建造物を、河を使った運送もままならない山の中で作った民族。
文字を残していない上に、アステカ人がこの場所を発見した時には既に廃墟となっているので、言うなれば二重に失われた遺構。
実は太陽や月というこの名称もアステカ人が名付けたもので本当のところは定かではないらしいのです。
歴史、というか物語についてつくづく思うのですが、それを知っているということ、実際に見て知っているというのは計り知れない隔たりがあります。
そんなことを、日本では『百聞は一見にしかず』ということわざがあるという説明と一緒に、感想を尋ねられたレヴィに答えると、笑って同意してくれました。
全くもって、世の中には気になる事柄が溢れています。
そしてやはりというか、ここまでやることはチェコでもフランスでも、そして日本でも共通ですね。
より大きな太陽のピラミッドが見渡せるロケーションの月のピラミッドで記念撮影。
そして普段は自分の写真を撮らない私も、この時ばかりはお願いして撮ってもらいました。
この旅の一番の目的を達成し、テキーラと竜舌蘭の自家用酒プルケで乾杯。
某奇妙な冒険に出てきそうな怪しげなお土産も、怪しげな行商からの吹っかけから逃げきり、露店ではなく長屋の店で初めの言い値の3分の1程度で購入できました。
今はこの小旅行から帰還したホテルで迫り来る眠気に抗いながらこの原稿を書いています。
いよいよ旅も終わりに近づいていますが、できれば週末はもう1回くらい良い成績を挙げたいところですね。
ここは土地柄に習って、トラロックとウィツィロポチトリに祈りを捧げることにします。
それではまた次回、今度こそアメリカの何処かでお会いしましょう。
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