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なかしゅー世界一周

なかしゅー世界一周2012・第1回:グランプリ・オースティン

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2012.01.19

なかしゅー世界一周2012・第1回:グランプリ・オースティン

By 中村 修平


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 お話であれば良い結末ではなかったでしょうか。目標とする殿堂入りを果たし、レベル8にも届いた。
 プロツアートロフィーには届きませんでしたが、マジック的にはわりかし文句のないハッピーエンドでしょう。
 全くもって幸せな時間を生きました。
 ここで終われればと思わないでもありません、もちろん終わらせることも自由です。
 そして、そう考える余地が自分にあるというのは、かつての私ではなかったことです。

 アメリカ行きの旅券を取っていた頃はこんなことを考えていました。
 システム変更による年末の混乱を食らっていたのは、主に私のような非アメリカ系のプロプレイヤーと言っていいでしょう。
 だいたいの感覚で、航空券は最低1ヶ月前には用意しておかないといけないのですが、その1ヶ月前になってもプレミアイベントの詳細がほとんどわからない状況なのです。辛うじて解っていたのは、7月頃に行われる世界選手権がインビテーショナルのような様式になるという1点のみでした。
 幸いにして2012年度のプロ報酬は2011年度のレベルを保証するという文言はあり、ある程度の収入は約束されていましたが、実際のところグランプリの賞金割り振りさえ当時はわからなかったのです。

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 そんな中で1月初旬の2つのグランプリ、都合10日ほどのアメリカ行きを決めたのは、私の行動原理。
 やりたいからやるというものからです。

 何事にも束縛されないという意味での自由はありえません。
 人間が社会的生物である以上、なんらかからの自由というのはなんらかに対して自己責任という対価を支払っているのです。
 世捨て人だって世を捨てるということで支払いをしています。

 そのことに対して理解され難い生き方をしているのも、またそれこそが私が支払うべき代償なのは理解していますが、少々それにも疲れたのかも・・・
 倦(あぐ)んできている。というのが一番しっくりくる表現かもしれません。
 状態が解っているならあとはどうしたいかです、
 マジックをやりたいか、
 やりたいならばどうするべきか、どう変えてみるべきか。

 まずは自分だけの責任でに範囲を絞って、これまではできなかったことをやってみよう。
 せっかくの追加ターンなんだからやりたかったはずでやってないことをやってみよう。

 史上最高の円高にこっそりオイルサーチャージも最高値という物理的な要因ももちろんありますが、それは後付け。
 大半は精神的な問題で、「まあ、なんか色々疲れちゃったけどちょっとやり方変えてみてやれるだけやってみるさ」という感じですね。そうこうするうちに気がつけばまたシステム変わってるし。

 とにかく後は野となれ山となれ、失敗すればこれまでと同じくそこまで。
 上手いことできれば、もう追加ターンだと思っていたものが、某有名漫画のようにもうちょっとだけ続くことになるかもしれません。
 ほら、私は三味線を弾くのが上手いらしいので。

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 というわけでお正月気分も全く抜けていないまま向かった本年初のグランプリ、グランプリ・オースティンだったのですが・・・

 いきなり初日最終戦負けての6-3初日落ちという結果をカマしてしまいました。

 たしかにモチベーション的には刻一刻と追い詰められていく年度末ほどには高くはありませんが、それと負けたということを納得しているかは全くの別問題です。
 それ以前に、曲がりなりともリミテッドという得意とするところでの負け。
 一応、新システム移行で5月までに13点の上乗せが必要というタイムリミットもあるのです。

 どうしようもない負け方だったのか、
 リミテッドグランプリ特有のどうしようもないパックだったのか。
 答えはどうなのでしょうか、実は自分でも判別がつきかねています。

 負け方だけを端的に言うと、物凄く理不尽とも言えるものでした。
 なにせ負けた3マッチ中、1つは第2ゲームで決着してしまったのもありますが、全て最終ゲームでマリガンした上で片方の色が出なくて死んでしまったのです。
 とはいえ、介在できる要素がありすぎて自分がベストを尽くしたかどうか、そもそもデッキについてこの構築で合っているのかどうかすら、未だに結論を出せていないのです。

デッキA[MO] [ARENA]
7 《
7 《
3 《平地

-土地(17)-

1 《戦墓のグール
1 《アヴァシンの巡礼者
2 《アヴァシン教の僧侶
1 《アヴァブルックの町長
1 《暗茂みの狼
1 《声無き霊魂
1 《弱者の師
1 《マルコフの上流階級
1 《脳ゾウムシ
2 《灰毛ののけ者
1 《霊捕らえの装置

-クリーチャー(13)-
1 《銀の象眼の短刀
1 《死の重み
1 《帰化
1 《叱責
1 《蜘蛛の掌握
1 《願い事
1 《血統の切断
1 《神聖を汚す者のうめき
1 《堀葬の儀式
1 《死の支配の呪い

-呪文(10)-
デッキB[MO] [ARENA]
8 《平地
7 《
3 《

-土地(18)-

1 《宿命の旅人
1 《ルーデヴィックの実験材料
1 《縫い師の見習い
2 《アヴァシン教の僧侶
1 《礼拝堂の霊
1 《悪鬼の狩人
1 《声無き霊魂
1 《片目のカカシ
1 《弱者の師
2 《縫い合わせのドレイク
1 《邪悪な双子
1 《月鷺
1 《カラスの群れ
1 《霊捕らえの装置

-クリーチャー(16)-
1 《静かな旅立ち
1 《死の重み
1 《熟慮
1 《叱責
1 《血統の切断
1 《堀葬の儀式

-呪文(6)-


 カードプール全体で使用に値するものは上に挙げたものでほぼ全てで、デッキのどちらにしても決して強いとまでは言えない構成です。
 黒緑白は色拘束が厳しい割に終盤の決定力に不足を感じますし、青白タッチ黒は飛行クリーチャーこそ充実していますが、いつ出るかわからない《縫い合わせのドレイク》が2枚も抱えている上にせっかくの黒の強さを半減させてしまっています。

 《縫い合わせのドレイク》をいっそのこと使わないという選択肢もあるにはあるのですが、代わりに入るカードは格段に質が落ちてしまうのが考えどころ。
 これに追加して赤の最強クリーチャー、《護符破りの小悪魔》と、これみよがしに《硫黄の滝》と《収穫の火》だけがあるのでそちらの方向に色を足す。あるにはある選択肢だったのですが、使い回しづらい火力なのが非常に残念で結局見送りました。

 結局、リストにして登録したのは黒緑白バージョンでしたが、青白タッチ黒であればどうだったか、青白タッチ赤であればどうだったろうか・・・
 あるいは色事故のリスクが高いと考えて常に後手を取っていたのですが、もし先手を取っていれば・・・

 そんなことを延々と考えていたのですが、ふと両隣を見てみると、知り合い連中も最終戦で初日通過を懸けて戦っているのが多いこと多いこと。
 特にコンリー・ウッズなどは、《血統の守り手》×2、《死の支配の呪い》、《霊誉の僧兵》を筆頭に軽量なものも含めて優秀クリーチャーと除去しか入っていないデッキで「全勝確実!」なんて言われていたのに、顔を真っ赤にしながら2体目の《血統の守り手》を墓地にやってます。
 まあ、そこから《グール呼びの詠唱》で3回目を着地させて勝っているんですけどね。

 「ウェブ」ことディビット・オチュアは全勝だったものの、ルイス、パウロ、同部屋のベン・スタークなどなど半数以上は討ち死にと、全体を見れば散々たる結果。
 そんなチャネル勢と晩御飯に行けば、必然ヤケ食いモードになるのは避けられません。

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 総勢10名、うち初日落ち6名による貪るバーベキューの宴、後に控えている儀式も大白熱を迎えていましたとさ。

 そんな狂乱の宴も一夜明けて、起床と共に粛々と訪れるのは猛烈な腹痛。
 当たり前といえば当たり前。

 これは彼らと付き合いだした去年から見ることになった日常風景、そう考えてみると変化が無いわけではありませんね。

 重役出勤でグランプリの方に顔を出してみると、マチュピチュ観光の時に一緒になり、話すようになったパット・コックスが、ドラフト1回目の最終戦で唯一残った全勝のオチュアを倒してトップ8まであと1勝としていますし、フィーチャーマッチ席では強豪プレイヤーが固まってしまった7番ポッドではキブラーとレヴィ、ついでにジュザがトップ8に向けて負けられない戦いをしています。

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Lucky (Pod) Number Seven (英語版カバレージより)

 そういえばラファエル・レヴィ。
 フランスの最古参プレイヤーであり、実は私と同い年。
 結構長い付き合いで、ここ4年ほどはお互いが参加している大会は自動スプリットしている間柄です。
 オリヴィエ・ルエルが情熱を無くしてしまった今、ただ一人継続参戦を続けている殿堂プレイヤーでもあります。

 そのレヴィにマジックへの付き合い方を聞いてみるのも良いかな、なんて考えていたら、彼はその後も順調に勝ち進んで、なんと優勝してしまいました。

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レヴィ優勝 (英語版カバレージより)

 結局は自分の意識次第ということ。
 そんなことを言外に言われたような気がしました。

 もっともその後、実際には「今年も俺が払う方かよ」と愚痴られてしまいましたが・・・


 まあ、そんなわけで私の新しいシーズンは幕を明けてしまいました。
 こんな感じでふらふらと世界をさまようことになりそうですが、よろしくお願いします。

 と結んだところで・・・
 実はこの原稿はオースティンからの次の目的地、ベン・スタークとそのルームメイトが住んでいるフロリダの先端、フォートローデルダールへと向かう飛行機の中で書いているのですが。もうかれこれ2時間あまり飛行機の中で待機させられています。
 機長のアナウンスによると、
『サンダーストームで飛行機が離陸できない、5分から2時間くらい待機する予定。』

 ちなみに乗り継ぎ先のヒューストンの次のフライトは2時間後予定。
 さっそくベンと合流できずに家なき子になる可能性が浮上してきたあたりで、逆にテンションが上がってしまうのはどうしてでしょうか。
 思いの外、楽しんじゃっていますね。

 とりあえずはここまでにしたいと思います。
 それではまた次週、世界のどこかで、できれば私がのたれ死にしてないことを祈ってもらえれば助かります。

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