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なかしゅー世界一周
なかしゅー世界一周2011・第13回:グランプリ・プラハ
読み物
木曜マジック・バラエティ
2011.06.30
なかしゅー世界一周2011・第13回:グランプリ・プラハ
By 中村 修平
ウィーンのバスターミナルを出発して4時間ほど。
中継地点の街や、ユーロ内ではもう使われなくなった国境の検問所、あとはそこらじゅうにある巨大風車と菜の花畑が印象に残っています。
後で聞いた話ではバイオマス燃料用として近年に栽培されだしたとの事ですが、思い返してみるとチェコ中で見かけました。
前日からの疲れもそれなりに残っており、しかも早朝だったのでバス内は景色を楽しむのが半分、気がつけば意識を失っていたというのが半分くらい。
国境を越えたあたりから意識が曖昧になり、気がつけば高速の標識にプラハという文字が見かけるようになりました。少し残念といえば残念です。
途中で危うく途中下車に流されそうになりましたが、プラハのバスターミナル駅、フローレンス駅でジュザ達と合流です。
心配と言えば相当に心配だった待ち合わせも、日本語表示可能な軽量ノートPCに、ローミング機能付きの携帯電話、それとプラハでは一般的だった公共の場でのフリーWifiサービスのおかげでつつがなく合流完了。本当に便利な世の中になったものです。
実は駅に着いたときにどこか見覚えがある場所だなと思っていたのですが、連れて行かれた先で納得、前回のプラハ行で立ち寄ったカードゲームショップのすぐ近くでした。
ピルゼンと違ってプレイヤー人口も多く、5月はチェコの年度末で手の空いてるプレイヤーもかなりいます。
何よりもようやく新たなるファイレクシアも発売されて、グランプリに向けてのフルタイムの練習環境が整いました。
ウィーンに滞在していた時も都合3回ほどドラフトをやりましたが、オーストリアはドイツ語圏でカードもドイツ語だったのに対して、チェコは母国語版がないので英語版が流通しているというのも助かります。
基本的にどんな言語の版でも「マジック語」で構成されているのと、雰囲気などからだいたいの理解はできているとはいえ、微妙な部分については、例えば《無感覚の投薬》の対象がクリーチャーのみだったか、アーティファクトも取れるかなんていうのだったり、《死後の一突き》を初見で、しかもテキストが理解できない言語で書かれているのが回ってきたりするのはさすがに厳しいです。
その時は危うく火力呪文と勘違いして取りそうになってしまいました。
基本的にプラハでのマジック修行生活は、
- 昼頃にカードゲームショップに集まってドラフト→
- →2回目はマジックプレイヤー行きつけのスポーツバー、ベイヨーバーに移動
- →このあたりからアルコールが当たり前に入りますが、場合によっては3回目
- →すっかり深夜でまた明日という流れ。
これに週末はグランプリトライアル、国別選手権予選というイベントが絡むといった感じです。
基本的にはジュザにくっついての行動ですが、ジュザが地元の友人と約束、この週末はチェコの国技・アイスホッケーの世界選手権決勝ラウンドの観戦でピルゼンに一端帰った時はジュザの紹介でプラハ在住のマジックプレイヤーの家に泊めてもらったりと、色々お世話になりました。
以下、中でも特にお世話になった人を紹介してみると、
デイビット
フローレンス・バスターミナルまで迎えにきてくれたジュザの友達。
ジュザに紹介された10時間後には彼の家に1人でお邪魔するという、常識的に考えて空恐ろしいほど気まずい展開なのに色々と気を使ってくれた、中身もいい人。金曜日にプラハに到着してから週末中はずっと彼の家に滞在させてもらってました。
いかにもXスポーツ系が好きそうだなと思っていたら、両親がスキーのイベント会社経営で兄が元プロスキーヤーの元コーチという本物でした。ただし車の運転は終始タイムアタック気味。
ペティ
グランプリトライアル、国別選手権予選の裏でやはりドラフトの練習といった具合に週末をデイビット家に滞在してたのですが、そろそろ軽装で1週間が経過し、換えの服もない状態は色々な意味で危険な状態です。
という事でいったんジュザの家に置いてある荷物を回収、補充する為にピルゼンへ戻ったのですが、その時にジュザ経由で紹介してもらったのがきっかけです。
「せっかくチェコに来てるんだから古城巡りツアーに行かないか?」
なんてありがたい申し出に飛びつかない筈がありません。
ジュザとは夕方にプラハ合流で先にピルゼンをバスで発ち、アメリカから日本、ロンドン、そしてチェコに来ていたアレックス・ウェストと一緒にバスターミナルで待ち合わせ。
第一印象はやけに高級そうな車に乗ってるなという程度だったのですが、凄く高級そうな一眼レフを持ってきているのに自分の写真についてはウェブ上では出さないように気を使っているから後で編集するなんて言ってたり、
電話の内容がジャンピングシューズの独占販売権がどうのこうのだったり、
カードを持ちすぎていて運用するんだったら税金対策に店を開こうか考えているとか、
どうもお金持ちっぽいオーラ、いや、うさんくさい何かを醸し出しています。
なにより平日からこんな企画を立ち上げてくれるだなんて普通の人ではとてもできません。
かなり恐る恐る職業について聞いてみると、
IT企業のオーナーだそうです。
なるほど謎は解けました。というかうさんくさいなんて言ってごめんなさい。
それにしてもデイビットといい、チェコ人マジックプレイヤーはハイスペック過ぎですね。
古城巡りツアーはもとより、翌々日もぺティ主催でサバイバルゲームを企画してくれたりと色々とお世話になりっぱなしでした。
トマーシュ
ハプスブルク家のプライベート城、今は武器博物館を観光し、美味しいグラーシュ、シチューのダンペリング添えにデザート、昼間からビールまで入っちゃってすっかり良い気分のままプラハに戻ってジュザ達と合流、再びドラフトという何時もの生活に戻ったのですが、この日からご厄介になったのがトマーシュ・ミロータさん。
つい先日まで3週間のバカンスでシンガポールとタイに行ってきたらしく、選手権予選があった日曜日にジュザと一緒に昼ごはんを食べに行ったのですが、翌週にグランプリまで泊めてもらうこととなるとは。
オランダに本社がある某国際的投資銀行に就職していて、マジック自体はもはや楽しむ程度みたいな付き合い方をしているライフスタイルなのですが、
歳が近いことや、好きな本や趣味について、それと英語のコミュニケーション能力のレベルが近いこともあってすぐに親しくなりました。それも含めてジュザを除くと最もお世話になった人です。
こうやって長期滞在するまで、ヨーロッパの人は一律に英語が喋れると思ってましたが、そういう訳ではないようで、例えばピルゼンだと喋れる人の方がかなりの少数派。
プラハ在住のチェコ人ともなると基本的には英語を喋れるのですが、レベル的には英語圏の小学校低学年程度、ですが自分の能力もちょうどそのくらいなので、むしろお互いに何を伝えようとしている推測しやすくてコミュニケーションが非常に楽です。
よく会話中に二人して「あの単語英語でなんて言うんだっけ」みたいな連想ゲームのようなのをしたものです。
その上でトマーシュの英語は『伝える』という部分について社内で講習を受けているのか、とてもわかりやすくて助かりました。
まあ、家にお邪魔したその夜の内にヨモギの蒸留酒、アブサンパーティーまで行ってしまったのはやりすぎのような気がしないでもないですが...
そんな感じで瞬く間に過ぎてしまったという印象の1週間。
実はマジックの方はというと相当な不振が続いていました。私のリミテッド練習の目安としてドラフト3戦の平均アベレージがどれくらいかで調子を計るというのがあるのですが、週の前半は1.3あたり、つまりほとんどのドラフトを1勝2敗の負け越しという散々たるもの。
新たなるファイレクシアで色が散らばってしまった毒カードが決まって遅くに流れてくることから、ついそのカードを取ってしまっては中途半端な毒デッキを製作して負ける、というのを繰り返していたり、それ以外のアーキタイプをやろうにも練習序盤の出遅れから錬度が劣ったデッキしか組めずにやはり1-2という悪循環。
週の後半でようやく毒は完全に切る、遅めのカードを優先して後手デッキを組む、というような基本戦略を確立したは良いですがこのタイプのドラフトは良くて決勝止まり、最終戦を豪快なレアデッキにレアを引かれてしまう時間的猶予を与えやすくて、実にウィーンの1回目で記録して以来、20回近くのドラフトで一度も3連勝できないままグランプリ・プラハ本戦を迎えてしまいました。(編注:リンク先は英語カバレージ)
当然自信なんてないままの参加、そしてドラフトで自信が無いとなると後は初日のシールド戦で良いパックを引いて折り返すしかありません。
もらったパックはそれほど強い訳でもなく、まあ2敗で2日目へ行けるチャンスはあるかなと言った程度のもの・・・だったはずなのですが、あれよあれよという間に勝つというよりは何故か負けないままに初日全勝。
7 《森》 7 《島》 3 《山》 -土地(17)- 1 《絡み線の壁》 1 《死の頭巾のコブラ》 1 《ヴィリジアンの密使》 1 《合金のマイア》 1 《ヴィダルケンの解剖学者》 1 《粗石の魔道士》 1 《荒廃後家蜘蛛》 1 《エズーリの大部隊》 1 《絡み森の鮟鱇》 1 《翼の接合者》 1 《突き刺しモズ》 1 《オキシダの屑鉄溶かし》 1 《空長魚の群れ》 1 《とどろくタナドン》 1 《ファイレクシアの群れの王》 -クリーチャー(15)- |
1 《皮剥ぎの鞘》 1 《グレムリン地雷》 1 《血吸いの噛み付き》 1 《不純の焼き払い》 1 《大石弓》 1 《水銀の噴出》 1 《決断の手綱》 1 《赤の太陽の頂点》 -呪文(8)- |
その勢いのまま1回目のドラフトでは練習中には縁が無かった《聖別されたスフィンクス》を2パック目で引き当て、同じく2パック目の5手目《勝利の伝令》で色換えをすれば、3パック目初手は《エルズペス・ティレル》というかみ合いっぷりを発揮して久しぶりの3連勝。バイを含む12連勝でトップ8が早々と確定という、やっている当人が一番半信半疑な好成績ぶり。
あまりにこの1週間と違いすぎて、逆に決勝ドラフトの2パック目《平和の徘徊者》と3パック目《クローンの殻》にプラスしてちぐはぐな流れに対しても、むしろ普段はこの程度、と妙に納得しながらドラフトしていた気がします。
しかし思い返してみると決勝ドラフトについては本当に不思議なドラフトでした。
1パック目で白に寄せる感じで6枚のデッキに入るレベルのカード、そして補色として黒と青を1枚程度にとってあり、どちらの色が2パック目に流れてきても、あるいは他の色でも大丈夫という私のドラフト理論の王道を歩めていたはず。
そして2パック目2手目に《黒の太陽の頂点》から黒を確定、流れが再び左廻りとなって上が何をやっているかが懸念の3パック目、2手目にも《皮裂き》、次が《闇の掌握》が流れきており、1パック目で手薄だった白に加えて黒も空いているという、これまた王道パターンの完全に目論見通りな展開だったのですが、取れたカードの質は一部は高いものの数量不足。
準々決勝こそRobert Jurkovicの黒緑感染に対し、《黒の太陽の頂点》もあって勝てましたが、準決勝でOndrej Baudysの赤黒に敗れてしまい3位。
何となくそうではないかと思ってましたが、実際にカバレージで確認すると、やはりドラフト卓に供給されているカードプール全体が弱かった為に卓のプレイヤーのほとんど全員が失敗ドラフトのようなありさまで、私のデッキでも充分に優勝は狙えていました。
後からの付け足しでそう考えてしまうと少し以上に残念でしたが、その当時、こうやって振り返っている今でもグランプリ前の感触を考えれば3位は望外な結果です。
これで今期はプロポイント19点。平均的だった2年前とだいたい同じペースにまで戻ってきました。
最後にトマーシュの弟のマーティン。
実はピルゼンで高校教師をしていて、ピルゼンでドラフトした時なんかにも会う機会があったらしいのですが、ちょうど娘さんが生まれたのでタイミングが合わなかったらしいです。
グランプリの翌日から教え子の女の子達の引率でハンガリーに課外旅行へ向かうとのことで、冗談交じりでうらやましいなんて言ったら、「一緒に来てもいいよ」なんて言われて、少し真面目に検討してしまったり。
グランプリが終わってその夜、ジュザ達はピルゼンに帰っていき、トマーシュと翌朝ハンガリーへ出発のマーティン、そしてマーティンの教え子達とトマーシュ家で再びアブサンパーティ(!)が開催されていたのですが、『マーティンって良い教師なの?』ってのがあっちに何となく理解されてたり、ついでにその返答もマーティンは隠してましたが、なんとなく理解できたりと相当に楽しい一夜でした。
相変わらずの酒の弱さで、かなり早いところで潰れてしまったことが実に悔やまれます。
そんな感じでチェコの人たちのご厄介になりながらの瞬く間の1週間。
3週間前には日本への帰国を指折りして数えていたのに、帰る頃になるともう日本かと思ってしまうものだから現金なものです。
夜のフライトだったので月曜日はふらふらと過去にプラハで訪れた旧市街の名所再訪、そして前回のプラハで一部改装中だった中世の図書館がそのまま残っているストラホフ修道院に足を運んでみると、仕切りで区切られた内側に観光客と思われる一団が入っています。
これはぜひ見たいと勢いこんで、ツアーの詳細を聞いてみると電話予約で最低でも前日からという、6時間後には機上の人になる私には残念なお知らせが。
ですが、また新たな目標ができました。
次はいつになるのかわかりませんが、なんとしてでもまたチェコに戻ってきたいものです。
さて、気がつけば3回にも上ったチェコでの日々も終わり、次回からようやく『先週の』に向けて少し急ぎ足で自分の足跡を辿っていこうと思います。
シンガポール、名古屋、そしてカンザスシティに、そこに加えておそらく日本選手権まで。
ちょうどプレミアイベントシーズンが一段落中で、日本選手権の次は8月下旬のグランプリ・上海というスケジュールなので、そのあたりまでには先週に追いつこうだなんて考えていますが・・・
それはまあ、いつもながらのふらふら具合なので、あくまで予定ということで。
それではまた次回、世界の何処かでお会いしましょう。
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