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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
最終回:リミテッドはエンドレス!
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2011.12.21
最終回:リミテッドはエンドレス!
こんにちは。渡辺です。
長かった2011年も残すところあと2週間。
忘年会のお誘いもそれなりに頂きつつ、年末進行といった感じで過ごしています。
今年は震災など色々あった年ですが、何とか無事に年を越すことができそうですね。
マジック的なイベントは、明後日から名古屋で開催されるThe Finals/The Limits2011がラスト。
僕は残念ながら両イベントとも権利を持っていないので参加はできませんが、2011年の日本マジックを締めくくるイベントとして、是非とも盛り上がってほしいですね。
さてさて今回の内容ですが、今年1年間のリミテッド環境を振り返っていこうと思います。
もうすぐ2011年も終わりですし、今年一年のこの連載をエキスパンションの変わるシーズンごとに区切って振り返っていく感じで、年の瀬のこの時期に今年1年のリミテッド環境がどんなものだったかをおさらいしましょう。
去年の連載でもやった年末企画ですが、今年も同じ要領でやっていきます。
あとはシーズンごとに思い出に残っているイベントについてもちょこちょこ触れていこうかと。
なんだかんだで今年も精力的に活動していたので、色々思い出に残っていることもありますからね。
ではまずは連載の始まった1月当初の環境である『ミラディン包囲戦』から。
1月~4月 ミラディン包囲戦
第1回:7つ集めると願いが叶う? 新セットの攻略法!
第2回:包囲戦7つの分析
第3回:包囲戦クライシス!
第4回:よりぬきパリ~速報!実践編~
第5回:ナベは僅かな勝利の可能性を見つける~グランプリ・パリ シールド編
第6回:ナベの思考がドラフト戦略をおしあげる~グランプリ・パリ ドラフト編
第7回:これはコンボですか?
第8回:アナライジング!~Draft Viewer
第9回:インフィニット・リミテッド
第10回:「黒緑剣」のことなんかぜんぜん好きじゃないんだからねっ!!
第11回:MBS DAYS~ミラディン包囲戦ドラフト点数表 白・青・黒編
第12回:MBS DAYS~ミラディン包囲戦ドラフト点数表 赤・緑・アーティファクト編
第13回:WチャンネルMO
第14回:よんでますよ、ドラフトビュアーさん
第15回:新たなるファイレクシアへ架かる橋
ミラディンの傷跡ブロックの第2セットとしてリリースされたミラディン包囲戦。
セット内容もその名の通り、ミラディンの傷跡では優勢だったミラディン軍に対し、追い詰めていくファイレクシア軍のカードが増え、ほぼ同数となっています。
そしてファイレクシア軍の象徴といえば、やはり「感染」。
この当時の環境のドラフトでも、感染は環境屈指のアーキタイプと言える位置づけでしたね。
《ノーンの僧侶》や《枝モズ》のような傷跡には居なかった白い感染クリーチャーが出たことにより、それまで緑黒で組むことしかできなかった「感染」に白という第3の選択肢を与えてくれました。
他の主要なアーキタイプは「金属術」と「恐竜」の二つ。
この頃の環境は、主にこの3つのアーキタイプをやるのは手堅い選択だったと記憶しています。
この環境で僕が用いた戦略は、人気の感染は避けてできる限り金属術を狙うという戦法でした。
環境初期は多くのプレイヤーが感染の研究をするだろうと思い、それならば競争率の高い感染よりも競争率の低そうな金属術を狙い撃ちするという戦略を組み立てました。
その戦略で挑んだ今年最初のプロツアーであるプロツアー・パリ。
リミテッド部門を5勝1敗と好成績で終えたのは良かったのですが、その後の構築で負けてしまいTOP8には残れず。
初日終了時で好位置につけていたので、2日目で負けた時はかなり悔しかったのを覚えています。
マジックウィークエンド・パリはそのイベント期間中にグランプリも併催するという豪華仕様でした。
イベント中は相当なハードスケジュールでしたが、日数にして4日間ずっと競技マジック漬けだったのはかなり楽しかったです。
来年からはプロツアーがプライベートイベントになるので、こういった催し物はなくなってしまうかもしれないのがちょっと残念ですね。
『包囲戦』環境の思い出はこれくらいで。
次はもちろん第3セットの『新たなるファイレクシア』です。
5月~7月 新たなるファイレクシア
第16回:Φ魂'~「7つの分析」新たなるファイレクシア編
第17回:何取るいろは~「新たなるファイレクシア」ドラフト点数表 白・青・黒編
第18回:何取るいろは~「新たなるファイレクシア」ドラフト点数表 赤・緑・アーティファクト編
第19回:あの日見たドラフトの完成形を僕達はまだ知らない。
第20回:先手カードと後手デッキ
第21回:Meisters; Pick
第22回:LSV & Kaddy
第23回:逆境の第一話~グランプリ・カンザスシティ参戦記 1日目
第24回:逆境の第二話~グランプリ・カンザスシティ参戦記 2日目
『新たなるファイレクシア』といえば、やはりファイレクシア・マナ。
2点のライフを払うことでマナの代わりにできるこの能力は、リミテッドでも強力でした。
《四肢切断》や《変異原性の成長》のような、本来ならそれぞれの色でしかできない芸当も、ファイレクシア・マナからどの色からもプレイされるので、相手の色によってプレイされるカードがある程度読むことができる従来のリミテッドとは一線を画す環境でした。
また前の2つのエキスパンションで存在しなかった青と赤の感染クリーチャーも登場し、今まで色の役割がある程度決まっていた環境から自由度が大幅に上がりましたね。
アーキタイプで有力なのは相変わらず「感染」と「金属術」でしたが、アーキタイプにとらわれなくとも強いデッキを構築することができる自由度の高い環境でした。
この当時でよく思い出に残っているのはグランプリ・カンザスシティ(リンク先は英語カバレージ)。
初日のシールドを2敗スタートしてしまい、同じく2敗しているJuza(マーティン・ジュザ)と「酒でも飲みに行こう」と軽口を交わしていたのですが、その後あれよあれよと4連勝して初日を通過。
2日目のドラフトも全勝してTOP8に入り、決勝ドラフトも強力なデッキを組むことができて順調に決勝まで進み最後の相手はLSV(ルイス・スコット=バルガス)。
事前にお互いのデッキを見せ合った時は「こんなデッキに勝てるわけねーだろ!」と言っていたルイスコおじさんだったのですが、いざ決勝が始まると本気になったルイスコおじさんに情け容赦なくぼこぼこにされました。いじめかこわるい。
とはいえ今期の前半はかなり不調で、当時は「今年はもう駄目かなー」と思っていたところだったので、久しぶりにグランプリ・トップ8に入れたことで何とかモチベーションを維持するきっかけになりました。
もしここでトップ8に入れなかったら、この後のイベントもきっと違った結果になっていたことでしょう。恐らくやる気を無くしてしまい、参加すらしなかったイベントも多々あったと思います。
そういう意味で、カンザスシティは今年のイベントのターニングポイントだったかもしれませんね。
そしてこのグランプリ・カンザスシティが終わると、次の週からM12シーズンに移行します。
7月~9月 基本セット2012
第25回:シールドのメモ帳
第26回:リミテッドセブン~『基本セット2012』 7つの分析
第27回:エムじゅーに!~『基本セット2012』ドラフト点数表 白・青・黒編
第28回:エムじゅーに!~『基本セット2012』ドラフト点数表 赤・緑・その他編
第29回:ナベとコンボとえむじゅうにっ!
第30回:NO.1~グランプリ・上海優勝への軌跡 シールド編
第31回:NO.1~グランプリ・上海優勝への軌跡 ドラフト編
第32回:THE DRAFTM@STER~プロツアー・フィラデルフィア M12ドラフト実践編 その1
第33回:THE DRAFTM@STER~プロツアー・フィラデルフィア M12ドラフト実践編 その2
2011年度の基本セットであるマジック基本セット2012(以下M12)。
今までのように採録という形ではなく、ガラク・ジェイス・チャンドラなどのお馴染みのプレインズウォーカーたちが新しい姿になったことで話題を呼んだセットですが、このセットのリミテッドは想定していたよりもずっと奥の深い環境でした。
本来基本セットのリミテッドというのは、コモンのカードパワーはそれほど高くなく、かつ新しいキーワード能力も存在しないので、だらだらとしたゲーム展開になりやすく、所謂「レアゲー」が顕著な環境なことが多いのです。
ですが今年のM12は違いました。
《薄暮狩りのコウモリ》や《血まみれ角のミノタウルス》といった黒や赤の優秀な狂喜クリーチャー、《嵐前線のペガサス》や《空回りのドレイク》のような青と白の優秀な飛行クリーチャー。
さらに各色に《ガラクの仲間》や《鎧の軍馬》といった低コストで優秀なクリーチャーがいます。
M12は全体的にコモンのクリーチャーの質がかなり高く、ちゃんと組めばコモンの束でプレインズウォーカーやタイタンなどの強力レアに打ち勝つことができたのです。
狂喜を達成できる、あるいは達成されるかどうかで盤面に大きく差が出るので、如何に序盤にダメージを通すか・通さないかが重要な環境でした。
《珊瑚マーフォーク》や《ゴブリンの長槍使い》を普通にデッキに入れるなんて、M11のときでは考えられませんね。
これらのカードを違和感無くデッキに入れるくらい、序盤の1・2ターン目にクリーチャーを展開できるかどうかが重要な環境だったということです。
まぁこれらの常識を逆手に取って、後手を取って《小悪疫》を使うようなコントロールも存在したのですが・・・。
その辺りのことは上に挙げた過去の記事を参照してください。
M12リミテッド環境のイベントで思い出に残っているは、やはりグランプリ・上海ですね。
グランプリ優勝なんてそう簡単にできることでもないのでうれしいのは当然なのですが、去年から当サイトで連載を始めてから、たびたびトップ8入賞はあったものの、優勝まではあと一歩届かずということが多かったので、久々に勝ちきることのできたグランプリ・上海は嬉しさもひとしおでした。
それとこのシーズンでもう一つ思い出に残っていることがあります。
それはプロツアー・フィラデルフィアのフィンケル戦ですね。
僕は本格的にプレミアイベントに参加し始めたのが2007年からなので、それよりも前に活躍していたカイ・ブッティやジョン・フィンケルといった伝説級のプレイヤーと対戦したことありませんでした。
僕が活動し始めた頃には残念ながら既に世代交代が終わっており、ブッティやフィンケルはあまりイベントに来ず、雲の上の存在となっていたんですよね。
いつかどこかで対戦できたらなぁと思っていたのですが、プロツアー・フィラデルフィアのドラフトラウンド最終戦でマッチアップされフィーチャーテーブルに呼ばれた時の心境は今でも覚えています。
「あのフィンケルとマジックできる!」
気分はRPGでラスボスに挑みに行くような感覚でしたね。
結果はフィンケルの事故もあってあっさりと勝ってしまったのですが、それもまたマジック。
あまりデッキが機能しなかったにも関わらず、最後まで紳士的にプレイしていたフィンケルの姿が印象的でした。
機会があれば今度はブッティとも対戦してみたいですね。
というミーハー全開な話はここまでにして、今年最後のリミテッド環境であるイニストラードに移ります。
9月~ イニストラード
第34回:基本セットのストラテジー The Basic
第35回:イニストラードの書架
第36回:Persona 7~『イニストラード』7つの分析
第37回:Draft/Zero~『イニストラード』ドラフト点数表 白・青・黒編
第38回:Draft/Zero~『イニストラード』ドラフト点数表 赤・緑・その他編
第39回:どらふと色シンフォニー~『イニストラード』 リミテッドグランプリの結果を分析!
第40回:廻るシールドデッキ
第41回:コン・ボー
第42回:境界線上のリミテッド~世界選手権 ドラフトレポート前編
第43回:境界線上のリミテッド~世界選手権 ドラフトレポート後編
第44回:ISD日記~ドラフト点数表総点検! 前編
第45回:ISD日記~ドラフト点数表総点検! 後編
現在の最新エキスパンションであるイニストラード。
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マジックの歴史でも類を見ない両面カードのインパクトは相当大きかったですね。
個人的には両面カードのフレイバー・テキストが好きですね。
全体的にダークな雰囲気が漂っていて、世界観とマッチしている中々秀逸なフレイバーになっていると思います。
リミテッド環境については、最近の記事で散々触れているのであまり多くは語りません。
一応ドラフト中に気にしておいたほうが良い点だけ列挙すると、
- 低マナ域はできるだけ確保する
- アーキタイプは常に意識し、アーキタイプによってカードの評価を変える
- 上家二人と下家二人くらいまではピックした両面カードを把握するように
- 余裕があればカットを
こんなところですかね。
上三つは以前の記事でも触れていますし、この環境では基本ともいえることですが、最後のカットに関して少々。
イニストラード環境はかなりのアーキタイプ環境です。
ピック序盤でデッキの核となるカードを集め、中盤から後半にかけて他のプレイヤーは必要のない自分のアーキタイプに必要なカードを取るのが一つのセオリーとなっています。
そういった、自分は必要ないけど他のプレイヤーが必要なカードをカットして、相対的な自分のデッキの強さを上げることも大事です。
特に「発掘」や「《秘密を掘り下げる者》」といったアーキタイプは、他の誰もノーマークだと簡単に全勝できるようなデッキになってしまうことが多々ありますね。
これらのデッキは核となるカードを安く拾ってドラフティングしていくので、その「安く拾う予定」だったカードをカットしてしまえばデッキとしてかなりパワーダウンします。
「発掘」なら《骨までの齧りつき》や《夢のよじれ》を、「《秘密を掘り下げる者》」なら《秘密を掘り下げる者》自体をカットしてしまえばデッキにならなくなりますからね。
とは言ってもカットばかりして自分のデッキが弱くなってしまっては意味がありません。
あくまでも自分のピックに余裕のあるときにする程度で良いでしょう。
この環境で思い出深いものといえば、やはり世界選手権ですね。
来年から形式が変わり、今の形式での世界選手権は実質今年で最後。
結果は皆さんもご存知の通り彌永が個人戦優勝、日本チームが団体戦優勝と日本の活躍が目立ったイベントでした。
僕自身も目標にしていたプロレベル8を達成できて一安心。
ヤソ(八十岡 翔太)やなかしゅー(中村 修平)も同じくレベル8を達成し、なかちか(中島 主税)さんもレベル7達成と、1年を締めくくる総決算のイベントとしては最高の形で終わることができたんじゃないでしょうか。
唯一心残りがあるとすれば、二日目のリミテッドラウンド最終戦のPV(パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ)戦。
リミテッド部門全勝を賭けた対決だったのですが、盤面で分かるミスをしてしまいそのまま負け。
後から検討して、そこで最適なプレイをしても勝てたかどうかは怪しかったのですが、やはりプレイミスが敗因なのは間違いありません。
できれば最後の世界選手権でリミテッド全勝という成績を残したかったのですが、やはりミスしていては駄目。そんな奴に勝利の女神は微笑んではくれません。
次のプロツアー・闇の隆盛では、そういったミスをしないよう心がけたいですね。
さて、これで今年1年の振り返りは終了。
本当に1年間色々なことがありましたね。
師走は一年を振り返るのに丁度良い時期ですし、皆さんも今年あったことを振り返ってみてはどうでしょうか。
そして年内の記事の更新は今回が最後になります。
来年からは週刊連載というという形での寄稿ではなくなりますが、記事自体を書かなくなるわけではありません。
まだはっきりとは決まっていないので多くは語れませんが、来年もこのmtg-jp.comで皆さまとお会いする機会はあるでしょう。
最後に、
この連載が皆さまのリミテッドライフに少しでも貢献できたなら幸いです。
1年間ありがとうございました。それではまたどこかで。
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