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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

第44回:ISD日記?ドラフト点数表総点検! 前編

読み物

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.12.07

第44回:ISD日記~ドラフト点数表総点検! 前編


 こんにちは。渡辺です。

 今年のプレミアイベントの総決算だった世界選手権も終わり、プレイヤーとしてはオフシーズンとなる12月に入りました。
 今までのマジック漬けの生活とは一転して、ゆっくりとした日々を送っています。
 まぁ最近は某映画を見るために、何度も映画館に通っていたりするのですが(笑)

 イニストラード環境ももう大分煮詰まっている時期ですし、何を書こうかなぁと頭を悩ませて、過去の自分の記事を読み直していたときです。
 以前自分の書いたイニストラード・ドラフトの点数表(白青黒編赤緑その他編)が現在の自分の評価と大きく違うことに気づきました。
 以前の点数表は環境の最初期に、環境理解度が不十分な状態で書いたのですが、グランプリや世界選手権を終えた今の環境理解で照らし合わせてみると、各色に今と評価が全然違うカードが多かったのです。

 これは由々しき事態!

 というわけで今回は以前書いた点数表から、グランプリや世界選手権などの経験を経て、評価の大きく変わったカードを紹介していこうと思います。

 構築戦と同じように、カードの評価は日々進化していくもの。
 以前の点数表と見比べてみて、どのように変わったか考えていくのも面白いかもしれません。

 あとは現時点での各色の点数表も載せておきましょう。
 評価基準は前回から変わらずこんな感じです。

点数 基準
10 神カード。見たら取るべし。確定初手。
9 爆弾カード。これ1枚でゲームに勝てるようなカード。初手~2手目。
8 かなり優秀なカード。流れてきてもおかしくないが、初手でも問題ないレベル。初手~3手目。
7 優良カード。是非デッキに入れたいレベル。2~4手目。
6 普通にデッキに入るくらいのカード。3~6手目。
5 ぎりぎりデッキに入るぐらいのカード。5~8手目。
4 できればデッキに入れたくないようなのカード。枚数が足りないときに仕方なく使うレベル。または特殊な条件でのみ使用するカード。7~9手目。
3 サイドボード要員。基本はデッキに入らない。10~12手目。
2 よほどのことがない限りデッキに入れることはないカード。12~14手目。
1 何をしてもデッキに入らないレベル。ほぼ14手目。


 ではまずは白から。


 まず白のトップが《天使の監視者》から《月皇ミケウス》へ。

 《天使の監視者》の場に出たときのインパクトは凄まじいものがありますが、ある程度デッキを人間に寄せなければいけない点で、若干のマイナス修正。

 その点《月皇ミケウス》は白なら問答無用で使えますし、出てくるターンも早いです。
 あとドラフト中に色が合ってない状況で引いてしまってもタッチできるという利点がありますね。
 ただ、ほぼ誤差の範囲内。両方とも文句無しの初手級です。


 コモンなどで評価が大きく変わったのは《宿命の旅人》と《勇壮の時》の2枚。

 《宿命の旅人》は生け贄系のシナジーで使ってもいいですし、単体で使ってもチャンプしつつ1/1飛行になるので、ほぼ必ず1マナ以上の仕事をしてくれます。

 《勇壮の時》は貴重な2マナのコンバットトリック。
 白相手のセオリーとして、相手が3マナ以上土地が立っていたら《叱責》などを警戒するのは当然ですが、逆にそれらに意識が行くので、2マナだとあまり警戒されないのがこのカードのよいところ。
 また、イニストラード・ドラフトはかなりのビート環境なので、絆魂でダメージレースを狂わせることができるのがかなり偉いですね。

 この2枚は白をやるなら是非確保したいという認識になりました。


 逆に評価が下がったのは《修道院のグリフィン》や《絞首台の守部》といった重めのフライヤーたち。

 リミテッドの回避持ちが強いのは確かなのですが、今回の白の戦術は序盤からとにかく展開していくのが一番有効だと感じています。したがって、マナが重くクロックも速くないこれらの評価が当初より格段に落ちました。

 こいつらを取るくらいなら序盤から展開できる《銀筋毛の狐》の方が良いと感じているくらいです。
 それほどイニストラード環境が速い環境だということですね。

 というわけで低マナ域のカードの評価を見直しつつ、新しく付け直した白の点数表がこちらです。

イニストラード点数表・白(改)
点数 カード 変動
10 月皇ミケウス
9 天使の監視者
9 弱者の師
8 空翔ける雪花石の天使
8 安らかに旅立つ者
8 神聖なる報い
8 霊誉の僧兵
8 忌まわしきものの処刑者
8 悪鬼の狩人
7 精鋭の審問官
7 霊廟の護衛
7 アヴァシン教の僧侶
7 信仰の縛め
7 礼拝堂の霊
7 (昼)《スレイベンの歩哨
(夜)《スレイベンの民兵

7 (昼)《修道院の若者
(夜)《不浄の悪鬼
6 教区の勇者
6 声無き霊魂
6 上座の聖戦士
6 深夜の出没
6 叱責
点数 カード 変動
6 幽体の乗り手
6 戦慄の感覚
6 宿命の旅人
6 勇壮の時
6 銀筋毛の狐
5 絞首台の守部 ↓↓
5 大物潰し
5 無私の聖戦士
5 村の鐘鳴らし
5 修道院のグリフィン
5 農民の結集
5 物騒な群衆
4 スレイベンの純血種
4 緊急の除霊
3 邪悪の排除
3 金輪際
3 幻月
3 墓場の浄化
3 幽霊の憑依
2 石のような静寂
2 無形の美徳 ↓↓


 では続いて青。

 青のトップ候補だった《嵐霊》がワンランクダウン。

 強力なフライヤーではあるのですが、やはり5マナという重さがネックです。
 こいつを出すときまでに手札をかなり使っているケースが多く、2/2から3/3ぐらいなことが多いですね。

 それでも《泥棒カササギ》なので決して弱いカードではないのですが、いつでも強い《カラスの群れ》と比べると微妙なタイミングも多く、《カラスの群れ》との差別化を図る意味でのワンランクダウンとなりました。

 逆に上がってきたのは《ルーデヴィックの実験材料》/《ルーデヴィックの嫌悪者》と《精神叫び》。


 どちらも2マナと軽く、余ったマナを有効利用して運用できる良カード。
 《ルーデヴィックの実験材料》は変身すれば速やかにゲームに勝てるのが魅力。

 《精神叫び》は青をやる上で一番重要な「山札を削る」という行為ができるのが良いですね。

 今回の青は墓地もリソースとして使うので、自身をパンプしながら墓地を増やせるのは色の戦略に非常に合っていますね。使うor使われるたびに評価が上がっていって、今では青のトップ集団の一員になりました。


 コモンの方を見て見ると、《縫い師の見習い》《感覚の剥奪》《秘密を掘り下げる者》あたりの評価が上がりましたね。

 《縫い師の見習い》は多くのカードとシナジーを形成できるのと、貴重な2マナ域のクリーチャーとしてワンランクアップ。

 《感覚の剥奪》は相手の序盤の攻勢を抑えてくれるカードとして。
 今回の青は守る戦術なので、このカードは青の戦術にがっちり合っていますね。
 1マナという軽さも高評価。

 《秘密を掘り下げる者》は世界選手権でまつがんが「見たら取る」とまで豪語したカード。
 確かに実際に使ってみると当初の評価よりは大分強いカードでした。

 ただ《秘密を掘り下げる者》はこいつを最大限に運用するために、《秘密を掘り下げる者》とインスタントやソーサリーをかき集めるドラフトになるので、ピックが難しいというのがあります。
 個人的には失敗したときのデッキが取り返しがつかなくなることと、もし他の誰かが《秘密を掘り下げる者》をカットした場合に戦術そのものが崩壊するので、あまり好みの戦術ではありません。
 ただ以前よりは評価が上がったのは間違いないですね。僕は概ねカットする側でしょうが。


 逆に評価の大きく下がったカードは《幽体の飛行》と《スカーブの大巨人》。

 《幽体の飛行》はこれだけをかき集めても戦術が成立しないという点。
サブの戦術としてなら一流ですが、メイン戦術に添えるには若干パワー不足と感じたので評価落ち。
 というか当初が過大評価しすぎでした。

 《スカーブの大巨人》は6マナという重さもさることながら、墓地のクリーチャー2枚コストもかなり厳しいですね。
 確かに出たら強いですが、その出すまでがとんでもなくめんどくさいので、これも評価がかなり下がった1枚です。

 あとは重いカードの評価を下げ、軽いカードの点数を微調整しつつ。
 改めて青の点数表を出すとこんな感じです。

イニストラード点数表・青(改)
点数 カード 変動
9 精神叫び ↑↑
9 カラスの群れ
9 (昼)《ルーデヴィックの実験材料
(夜)《ルーデヴィックの嫌悪者
8 嵐霊
8 大笑いの写し身
8 (昼)《礼儀正しい識者
(夜)《人殺しの粗暴者

8 瀬戸際からの帰還
7 戦場の霊
7 閉所恐怖症
7 月鷺
7 縫い合わせのドレイク
7 静かな旅立ち
7 アンデッドの錬金術師
7 不可視の忍び寄り ↑↑
7 錯乱した助手
6 鏡狂の幻 ↓↓
6 スカーブの殲滅者
6 ランタンの霊魂
6 甲冑のスカーブ
6 禁忌の錬金術
6 その場しのぎのやっかいもの
点数 カード 変動
6 セルホフの密教信者
6 感覚の剥奪
6 縫い師の見習い
6 (昼)《秘密を掘り下げる者
(夜)《昆虫の逸脱者
↑↑
5 瞬唱の魔道士
5 幻影の掌握
5 熟慮
5 雲散霧消
5 要塞ガニ
5 幽体の飛行 ↓↓
4 スカーブの大巨人 ↓↓↓
4 霧の中の喪失
4 好奇心
4 夢のよじれ
4 血まみれの書の呪い
3 恐るべき妄想
3 研究室の偏執狂
3 恐慌盲
3 記憶の旅
2 ルーンの反復
1 屋根の上の嵐


 では次は黒。

 コモンが弱い代わりにレアが強い黒。
 ただいくら強いとは言え、流石に前回は10点を付けすぎました。

 前回10点をつけた3種のうち、《血の贈与の悪魔》と《深淵からの魂刈り》はワンランクダウン。
 どちらも超強力カードなのは間違いないですが、5マナ以上のカードはこの環境ではちょっと重く感じてしまいますね。


 黒で大きく評価の上がったカードは、《チフス鼠》や《戦墓のグール》といった低マナ域のクリーチャーたち。

 ドラフトで黒をやるならレアから入ることが多いので、それらのレアを出すまで戦線を維持する役割の低マナクリーチャーが必要です。

 《チフス鼠》なんかはその役割にはぴったりのカードですね。
 1マナでどんな地上クリーチャーとも相打ちが取れるのはかなりの魅力です

 また、黒にはコモンでまともな2マナ以下のクリーチャーが《歩く死骸》と《チフス鼠》だけなので、低マナ域の確保が難しいのもあります。
 低マナ域が不足しないように、これらのカードはきちんと確保するようにしたいですね。


 逆に評価の下がったカードは《グール起こし》と《死体の突進》。

 《グール起こし》は黒だけで見た場合まともなゾンビが少なく、回収する能力が役に立たないことが多いです。よく、ただの3マナ2/2としてプレイしますね。

 青黒で組めたときは《縫い合わせのドレイク》や《その場しのぎのやっかいもの》といった青のゾンビを回収することができますが、逆に言ってしまうとそれ以外ではかなり使いづらいカードなので、総合的な使いにくさを考慮してワンランクダウン。

 そして《死体の突進》ですが、これはもう「できればデッキに入れたくない」という評価になってしまいました。
 まず下準備として墓地にクリーチャーを送る必要があり、しかもそれのパワーを参照するという制約つき。

 相手の強力クリーチャーを倒すためには、自分の強力なクリーチャーを墓地に落としてないといけないので、相手の除去したいクリーチャーを倒せないなんてことは日常茶飯事です。
 相手の小さいクリーチャーを倒す目的で使うなら別にこのカードである必要はないですし、使っていて首を捻るタイミングがかなり多いカードでした。

 腐っても除去ということで最低限の評価を付けていたのですが、残念ながらあまりに使いにくすぎました。
 これもワンランクダウンです。

 あとは少し過大評価だった《肉切り屋のグール》と《モークラットのバンシー》辺りを下方修正して、その他を微調整した黒の新しい点数表がこちら。

イニストラード点数表・黒(改)
点数 カード 変動
10 (昼)《血統の守り手
(夜)《系統の王

9 血の贈与の悪魔
9 深淵からの魂刈り
9 死の支配の呪い
9 ヴェールのリリアナ
8 スカースダグの高僧
8 忌むべき者の軍団
8 ファルケンラスの貴族
8 血統の切断
7 神聖を汚す者のうめき
7 死の重み
7 (昼)《金切り声のコウモリ
(夜)《忍び寄る吸血鬼

6 肉切り屋のグール
6 モークラットのバンシー
6 堀葬の儀式
6 吸血鬼の侵入者
6 グリセルブランドの信奉者
6 夜の犠牲
6 チフス鼠
6 戦墓のグール
点数 カード 変動
5 歩く死骸
5 グール起こし
5 飢えへの貢ぎ物
5 村の食人者
5 夜の恐怖
5 骸骨の渋面
5 荘園の骸骨
5 マルコフの上流階級
5 グール呼びの詠唱
4 流城の巡回兵
4 腐敗した沼蛇
4 息せぬ群れ
4 死体の突進
4 祭壇の刈り取り
4 苦心の魔女
3 脳ゾウムシ
3 夜の衝突
3 忘却の呪い
2 陰惨な醜さ
2 ぬかるみの大口
2 終わり無き死者の列 ↓↓
1 心なき召喚


 こうして見るとやはり黒はレアが強く、コモンは全体的に弱い印象ですね。
 ドラフトで黒をやるときは、大人しくレアを引いたときにしたほうが無難そうです。



 今回はここまで。

 流石に1回で全色やってしまうとかなりの量になってしまうので、残りの色はまた来週ということで。

 それではまた来週お会いしましょう。

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