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渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
第43回:境界線上のリミテッド?世界選手権 ドラフトレポート後編
読み物
渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
2011.11.30
第43回:境界線上のリミテッド~世界選手権 ドラフトレポート後編
こんにちは。渡辺です。
今回は前回に引き続き、世界選手権の実戦編・後編をやっていきます。
前回が1stドラフトまでだったので、今回は後半の2ndドラフトですね。
前回からの続きなので、前回を見てないという方は前回の分を見てからどうぞ。
早速ドラフトの内容に入りたいところですが、一つだけ補足を。
|
イニストラードのメカニズムである「両面カード」ですが、これらはドラフト中は公開情報として扱われます。
したがって、他のプレイヤーがピックした両面カードはドラフト中に確認することが可能です。
このルールはイニストラードの両面カードから新たに加えられたものなので、まだ馴染みのない方も多いかもしれませんが、「卓に出ている両面カードが、ドラフト中どこで取られたか」を見るのはルール上問題ない行為なのです。
詳しくは「マジック:ザ・ギャザリング(R) イベント規定」の「7.7 ブースター・ドラフトの手順」に記されています。
ただドラフト中はカードを一つの束にしてまとめておかなければいけないので、その両面カードを確認していられるのは次の1ピックの間だけ。
そんな短い時間で卓に出た両面カードがどこで消えたのかを全て記憶するのは困難なので、覚えるのは自分の周りのプレイヤー、上二人と下二人くらいがちょうどいいと思います。
両面カードを取ったプレイヤーは、周りに主張する意味もこめて両面カードをピックしている面もあるので、その主張を見逃さないようにしましょう。
そういった両面カードによる駆け引きも、イニストラード・ドラフトの醍醐味の一つですからね。
その辺りのことも踏まえて、僕の2ndドラフトを見てみてください。
2ndドラフト
1パック目
まずは恒例のインディアンポーカースタイルによる卓の両面カードの確認から。
1stドラフトに続いて、またも上のプレイヤーが《ルーデヴィックの実験材料》/《ルーデヴィックの嫌悪者》を提示。
しかも今回は一つ上のプレイヤーが引いたので、概ね青はできないと考えてよさそうです。
他は対面に座るPV(Paulo Vitor Damo da Rosa)が《夜明けのレインジャー》/《黄昏の捕食者》を引いていてご満悦な顔。うらやましいなー。
ちなみに僕が引いたのは《金切り声のコウモリ》/《忍び寄る吸血鬼》でした。
そんなこんなでドラフトスタート。
どきどきしながらレアを見てみるとそこに佇んでいたのは《金輪際》。
残念ながらお前はお呼びじゃねーから。
残念レアはおいておいてパックの中身をチェック。
正直に言ってあまり強いパックではなく、候補になりそうなのが《縫い合わせのドレイク》《地獄の口の中》と、先ほどの《金切り声のコウモリ》の3種類。
普通に取るならデッキの方向性の見えやすい《縫い合わせのドレイク》なのですが、今回も上が早々に《ルーデヴィックの実験材料》を取ったことにより、この青いコモンの選択肢は消え残りの2枚から選ぶことに。
正直黒はやりたくなかったのと、重くても除去は除去ということで《地獄の口の中》を取ろうとしたのですが、ふと見てみると上上のプレイヤーが初手で《無謀な浮浪者》/《無慈悲な捕食者》をピックしていました!
いくら早く主張した方が有利とはいえ、流石にこれには驚きましたね。
とはいえ下のプレイヤーは上の方針には逆らわないほうが無難。
強力なボムカードならいざ知らず、《地獄の口の中》くらいで上上と喧嘩するのも賢い選択ではないので、ここは上二人に釣られる感じで《金切り声のコウモリ》をピックすることに。
ちなみにこのときに僕はここの一手は捨てて有力アーキタイプである緑白に行こうと考えていました。
上が青、上上が赤なら僕の座っているポジションは絶好の白緑ポジションになり得ますからね。
そして2手目は《旅の準備》。
早速緑白を固定するカードをピック。
一応《礼拝堂の霊》もピック候補だったのですが、ここは受けの広いピックよりも緑白に照準を合わせるピックを選択。
ここで《旅の準備》を取るのはかなり決め打ちに近いのですが、上二人が道を空けてくれているのでここは思い切った選択をしてみることに。
《肉切り屋のグール》を取って黒路線に戻るか、《宿命の旅人》を取って緑白路線に進むか。
僕が選択したのは緑白路線。
ここから無理やり狙ってもいいほど、緑白というアーキタイプはこの環境において強力なアーキタイプなのです。
ちなみにこの巡目で上家が取ったのは《秘密を掘り下げる者》/《昆虫の逸脱者》。
上上の初手《無謀な浮浪者》/《無慈悲な捕食者》といい、上の二人はまつがん(伊藤 敦)と似たドラフトスタイルのプレイヤーのようですね。(→参考)
俄然緑白ができそうな雰囲気です。
4手目は3手目と同じく《宿命の旅人》。
軽量クリーチャーを確保して緑白路線を貫きます。
5手目は《荒れ野の本質》。
緑の強力神話レアをここで確保。
ゲームスピードが速いイニストラード環境では6マナという重さは少々ネックですが、場に出た後の盤面の制圧力はやはり神話レアといったところ。
この巡目で確保できたのは素直に嬉しいですね。
6手目は特に取るものがなく、下に緑を流さない意味を込めて《森林の捜索者》を。
そこから7手目《銀筋毛の狐》、8手目《無私の聖戦士》と取って低マナ域を補充。
1周してきた自分のパックから2枚目の《森林の捜索者》を取って下への緑を絞りつつ、遅めに流れてきたサイドカード用の《帰化》を確保して1パックは目終了。
1パック目ピック内容
1 《金切り声のコウモリ》/《忍び寄る吸血鬼》
2 《旅の準備》
3 《宿命の旅人》
4 《宿命の旅人》
5 《荒れ野の本質》
6 《森林の捜索者》
7 《銀筋毛の狐》
8 《無私の聖戦士》
9 《森林の捜索者》
10 《チフス鼠》
11 《帰化》
12 《恐るべき妄想》
13 《無形の美徳》
14 《記憶の旅》
1パック目は正直に言ってしまうと苦しい内容。
初手の《金切り声のコウモリ》を捨てて緑白路線に走りましたが、現状では取れたクリーチャーの戦闘力が低く、攻めることは難しそうなラインナップ。
ただ黒をやっていても3手目の《肉切り屋のグール》以降まともなカードが来なかったので、まだこっちの方が望みが持てる感じ。というか全体的にパックが弱かったですね。
とりあえず緑白ならどんなに貧弱なクリーチャー陣でも《旅の準備》さえあれば何とかなるので、とりあえずこれから先の《旅の準備》は最優先で取る方向で。
そんな感じで2パック目へ。
2パック目
ピックの前に、卓に出ている両面カードの提示から。
今回のパックでは両面カードの偏りがひどく、卓に4枚もの《苛まれし最下層民》/《猛り狂う狼男》が。これには卓の全員が苦笑い。
ちなみに他の4枚は《エストワルドの村人》/《エストワルドの吠え群れ》と、《村の鉄鍛冶》/《鉄牙》がそれぞれ2枚づつ。流石に被りすぎですな。
ちなみに僕が引いたのは《苛まれし最下層民》でした。
僕の2パック目の初手は《旅の準備》。
緑白をやるなら何枚でも欲しい《旅の準備》の2枚目をここで確保。
同じパックに《カラスの群れ》がありましたが、流石にここから青に切り込むことは不可能なので、大人しく上家にプレゼントしておきます。
2手目は《暗茂みの狼》。
《礼拝堂の霊》と悩みましたが、ここは軽い方を優先。
《旅の準備》のことを考えて、できるだけ低マナ域に寄せたドラフトをしていきます。
3手目は《声無き霊魂》
《エストワルドの村人》/《エストワルドの吠え群れ》との2択でしたが、リミテッドの飛行は偉大です。
4手目は《ただれ皮の猪》。
《スレイベンの歩哨》/《スレイベンの民兵》と悩みましたが、白緑では自分から変身させるギミックが作りづらいので、元のサイズが高いほうを優先しました。
5手目は《黴墓の大怪物》。
流石に7マナは重いのですが、パックの中にこれしか取るものがありませんでした。
まぁこれで勝てたら気持ちよさそうですし、どうせなんで使ってやりますか(笑)。
6手目は《果樹園の霊魂》。
緑の3マナの優秀な回避持ちをここで。
1パック目で下に対して緑を絞っていたのが功を奏したようです。
その後は7手目《勇壮の時》、8手目《ただれ皮の猪》、9手目《上座の聖戦士》と遅い巡目にしては優秀なカードが取れて、なかなか良い感じ。
後は残り4枚で《レインジャーの悪知恵》が流れてきて内心小躍りしながらピック。
《レインジャーの悪知恵》は最近評価の上がってきた1枚で、軽いコンバットトリック+呪禁で相手の除去よけにもなり、かなり使い勝手の良いカード。
当初は+修整値が小さいので毛嫌いしていたのですが、1マナという軽さが相手の計算を狂わせることが多く、使えば使うほど好きになっていきました。
今は緑をやるときはデッキに必ず1枚は欲しいと感じるようになりましたね。
その後はサイド用の《幻月》を取りつつ2パック目は終了。
2パック目ピック内容
1 《旅の準備》
2 《暗茂みの狼》
3 《声無き霊魂》
4 《ただれ皮の猪》
5 《黴墓の大怪物》
6 《果樹園の霊魂》
7 《勇壮の時》
8 《ただれ皮の猪》
9 《上座の聖戦士》
10 《灰口の猟犬》
11 《レインジャーの悪知恵》
12 《幻月》
13 《噛み傷への興奮》
14 《霊の花輪》
かなり収穫のあった2パック目。
2枚目の《旅の準備》に始まり、足りていなかったクリーチャー陣を大幅に補強することができました。何とか形になりそうで一安心。
あとは3パック目で足りないマナ域のクリーチャーを、欲を言えば《捕食》のような除去カードが欲しいところ。
もっと欲を言うと何か爆弾レアが欲しいですね!
では3パック目に移ります。
3パック目
これが最後となる両面カードの提示。
ここで僕が引いたのは《夜明けのレインジャー》/《黄昏の捕食者》。
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最後の最後で強力な両面カードを引き当てることができました。
他のプレイヤーが引いたのでは特にめぼしいものはなく、では3パック目スタートです。
3パック目初手は前述の《夜明けのレインジャー》。
変身後の能力に赤マナが必要なので、使うなら赤マナを用意しなければいけませんが、そのデメリットを差し引いても使う価値のある1枚。文句無しのピックです。
ちなみに同じパックから黒の爆弾カードである《死の支配の呪い》が出ましたが、流石にこの状況ではどうしようもないので流すことに。
実際のゲームで出されないことを願うのみです。
2パック目までの状況なら迷わずに《悪鬼の狩人》なのですが、初手で《夜明けのレインジャー》を取ったこともあり赤をタッチすることはほぼ確定。
なのでどうせ赤を使うなら単体でゲームに勝てるパワーを持った《護符破りの小悪魔》も選択肢としては十分あります。
ですが僕はここで《悪鬼の狩人》を選択しました。
その理由は今までに取ったインスタントとソーサリーの枚数の少なさ。
現状では2枚の《旅の準備》と《レインジャーの悪知恵》《勇壮の時》くらいしかなく、《旅の準備》はフラッシュバックして墓地から消えることを考えると回収できるカードは後述の2枚だけ。
流石にそれだけだと少なすぎますね。
もし他の選択肢が微妙なカードだった話は簡単だったのですが、もう一つの選択肢である《悪鬼の狩人》も十分に強力なカード。
《護符破りの小悪魔》はかなり確かに強力なカードですが、それはちゃんと下準備をしてこそ発揮されるもの。
もし《捕食》のようなカードがあと1枚でもあったら話は違っていたかもしれませんが、ここは危険を冒さず確実に使える優秀な除去持ちクリーチャーを優先することにしました。
3手目は再び《悪鬼の狩人》。
今回は比較になるようなカードはなくすんなりとピック。
懸念されていた除去不足がこれで解決、かなりデッキが引き締まりました。
4手目は《霊廟の護衛》。
1枚で3体分の仕事をするグッドクリーチャー。
この巡目でこれが取れるのはかなり嬉しいですね。
先程の《悪鬼の狩人》2連続といい、上方向の白は大分空いているようです。
5手目は《捕食》。
緑の優秀な除去カードをここで。除去カードは何枚あっても困りません。
一応《夜明けのレインジャー》を使いやすく出来る《断崖の避難所》も候補に挙がりましたが、流石にここは実を優先。
6手目は《アヴァシンの巡礼者》。
緑白をやるなら《旅の準備》の次に欲しいカード。
この環境は序盤の展開がかなり重要なので、先手で手数で圧倒できるor後手番をひっくり返すことのできるこのカードは緑白をやる理由の一つです。
正直諦めていたので、ここで取れたのはかなり大きいですね。
その後は7手目で《ただれ皮の猪》(3枚目)、8手目で《銀筋毛の狐》と取ってクリーチャー陣の補強をし、《とがった三つ叉》や《灰毛ののけ者》といった穴埋め用のカードを取って3パック目は終了。
3パック目ピック内容
1 《夜明けのレインジャー》/《黄昏の捕食者》
2 《悪鬼の狩人》
3 《悪鬼の狩人》
4 《霊廟の護衛》
5 《捕食》
6 《アヴァシンの巡礼者》
7 《ただれ皮の猪》
8 《銀筋毛の狐》
9 《とがった三つ叉》
10 《縫い師の見習い》
11 《灰毛ののけ者》/《爪の群れののけ者》
12 《赤子捕らえ》
13 《古えの遺恨》
14 《茨潰し》
2パック目以上の大収穫となった3パック目。
懸念材料だった除去カードも2枚の《悪鬼の狩人》と《捕食》が取れたことにより解決。
クリーチャー陣も厚めに補強されて、デッキとしてもかなり引き締まった感じに。
ただこのパックで《死の支配の呪い》《護符破りの小悪魔》と流したので、もしかしたら下家方面にとんでもないデッキができている可能性もありますが・・・。
そんなこんなで完成したデッキはこちら。
8 《森》 8 《平地》 1 《山》 -土地(17)- 2 《宿命の旅人》 1 《アヴァシンの巡礼者》 2 《銀筋毛の狐》 1 《暗茂みの狼》 2 《悪鬼の狩人》 1 《声無き霊魂》 1 《果樹園の霊魂》 1 《上座の聖戦士》 1 《夜明けのレインジャー》 3 《ただれ皮の猪》 1 《霊廟の護衛》 1 《荒れ野の本質》 1 《黴墓の大怪物》 -クリーチャー(18)- |
1 《レインジャーの悪知恵》 1 《捕食》 1 《勇壮の時》 2 《旅の準備》 -呪文(5)- |
デッキは緑白タッチ赤のビートダウン。
タッチの赤は《黄昏の捕食者》の能力用に《山》を1枚入れただけです。
実はちょっとデッキ構築を間違えていまして、何だか楽しくなって入れてしまった《黴墓の大怪物》なのですが、流石に重過ぎで、ここの枠は大人しく《灰毛ののけ者》にしておいたほうが良かったと後悔。
実際にここの枠がゲームに与えた影響はなかったので結果としては変わらなかったのですが、構築を間違えているのは紛れもない事実。
いくらデカくてカッコよくて強そうだと思っても、そこをグッと堪えないと駄目でした。
遊びのドラフトならまだしも、ここは世界最高峰のプレイヤーの集まる世界選手権。ロマンより現実を取りましょう。
ただデッキとしては綺麗にまとまっており、かなり強め。
1回目のドラフトと比べても、遜色ない出来に仕上がりました。
この出来ならもう一回3勝も夢ではありません。
ですが結果は2勝1敗。
全勝対決を賭けた最後のPV戦でミスをしてしまい、そのミスが致命的となってしまって負け。
強いプレイヤー相手にミスしてしまっては勝てるわけないですね。
そのPVとの試合は観戦記事になっています。詳しい内容はそちらをご覧ください。
そんなこんなで1回目のドラフトと合わせたドラフトの総合成績は5勝1敗。
できれば全勝して有終の美を飾りたかったところですが、残念ながらそれはならず。
ドラフト全勝という目標は次のプロツアーに持ち越しですね。
ちなみに初日のスタンと合わせて9勝3敗という好成績で2日目を折り返せたのですが、三日目のモダンで大失速してしまい2勝3敗1分という結果に。
最終順位は39位とそれなりでしたが、モダンをもうちょっと頑張っておけばTOP8も見えていただけにかなり残念。
今回はモダンをあまり練習できなかったので、それが直接結果に出てしまいましたね。
ともあれ今の形式での世界選手権はこれで最後。
その世界選手権を最後まで楽しめたので良しとしましょう。
実際そういった意味で最後まで参加していたプレイヤーも多かったですし、皆最後まで笑顔かつ紳士的にプレイしていました。
今回でこのお祭りが終わりだと思うと、少し寂しい気持ちになりますね。
来年からは形式が変わる世界選手権。
世界から選ばれた16人しか出られないトーナメントとなりますが、来期はそれの出場を目指して頑張って行こうと思います。
では今回はこの辺で。
また来週お会いしましょう。
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