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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 世界選手権特集
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ 世界選手権特集
こんにちは!晴れる屋の津村です。
「マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2016」は、アメリカのブライアン・ブラウン=デュイン選手の優勝で幕を閉じました。
世界有数の選手が繰り広げる戦いは見どころ満載で、「ニコニコ生放送」や「イベントカバレージ」を通じて今大会を満喫された方も多かったのではないでしょうか。個人的には「ドラフト・マスター」から学ぶことという記事が印象に残っていますが、この記事では例によってスタンダードを特集していきたいと思います。
現環境の総決算とも言える「世界選手権2016」にて、トッププレイヤーたちはどんなデッキを持ち込んだのでしょうか。まずはデッキ分布からご覧ください。
アーキタイプ | 人数 | 合計成績(勝率) |
---|---|---|
バント・カンパニー | 7 | 12-16 (43%) |
バント人間 | 5 | 8-12 (40%) |
ティムール・現出 | 4 | 9-7 (56%) |
ターボ・エムラクール | 3 | 7-4-1 (64%) |
ジャンド昂揚 | 2 | 5-3 (63%) |
黒緑昂揚 | 1 | 1-3 (25%) |
緑青怒濤覚醒 | 1 | 2-1-1 (67%) |
バント・スピリット | 1 | 3-1 (75%) |
最多人気となったのは、やはり「バント・カンパニー」でした。それに続くは「バント・人間カンパニー」と「ティムール」系統のデッキ2種類。「ティムール」デッキの多さには驚きましたが、「バント・カンパニー」と互角以上に渡り合える点、そして《約束された終末、エムラクール》の入ったデッキに対して速度で勝る点が評価されたのだと思われます。
なお、スタンダードのメタゲームに関しては、フランク・カーステン/Frank Karstenのこちらの記事も非常に参考になりますので、お時間のある方は合わせてご覧いただければと思います。
それでは、ここからは各デッキリストをご覧いただきましょう。
「バント人間カンパニー」
3 《森》 6 《平地》 1 《島》 2 《梢の眺望》 4 《要塞化した村》 3 《大草原の川》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《進化する未開地》 -土地(25)- 3 《スレイベンの検査官》 4 《ラムホルトの平和主義者》 4 《サリアの副官》 2 《白蘭の騎士》 1 《薄暮見の徴募兵》 4 《反射魔道士》 4 《不屈の追跡者》 3 《異端聖戦士、サリア》 -クリーチャー(25)- |
4 《ドロモカの命令》 4 《集合した中隊》 2 《実地研究者、タミヨウ》 -呪文(10)- |
1 《薄暮見の徴募兵》 1 《白蘭の騎士》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《石の宣告》 2 《否認》 2 《一日のやり直し》 2 《悲劇的な傲慢》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
スタンダードラウンドを4勝0敗、モダンラウンドを3勝0敗1分と、構築戦を無敗のまま決勝ラウンドまで駆け上がったブライアン・ブラウン=デュイン選手。決勝ラウンドでも予選ラウンドの勢いそのままに、構築戦無敗で見事に世界王者の座を射止めました。
「バント・人間カンパニー」の強みとしては、「バント・カンパニー」が《ドロモカの命令》を減らしてきたおかげで、以前よりもクリーチャーが生き残りやすく、それに伴い《サリアの副官》と《異端聖戦士、サリア》が真価を発揮しやすいことです。
《異端聖戦士、サリア》はここにきて再評価されてきた1枚で、「バント・カンパニー」でもミラーマッチ用のサイドボードカードとして頻繁に見かけるようになりました。「バント人間カンパニー」はクリーチャータイプを「人間」に統一する関係で《呪文捕らえ》を採用できないこともあり、主戦力としてメインに3枚の形がお馴染みとなっています。
《サリアの副官》と《異端聖戦士、サリア》を筆頭に、生き残りさえすればゲームを掌握できるクリーチャーが多いため、クリーチャー主体のデッキに対しては有利に立ち回ることができますが、その一方で《コジレックの帰還》への耐性が低いのが懸念材料と言えます。
《コジレックの帰還》が入ったデッキに対して、絶えず《ドロモカの命令》を構え続けるのは現実的ではないので、《サリアの副官》で素早くタフネス3以上のクリーチャーを量産してしまうのが一番です。
サイドボード後には《否認》、《一日のやり直し》、《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》で対抗することになりますが、長期戦や「昂揚」、「現出」デッキ、またはその他の雑多なデッキへの耐性と言った意味では従来の「バント・カンパニー」の方が優れているため、「バント人間カンパニー」は「バント・カンパニー」やクリーチャー主体のデッキが多いと予想される場合の切り札と言った立ち位置ではないかと思います。
「バント・カンパニー」
3 《森》 5 《平地》 2 《島》 3 《要塞化した村》 3 《大草原の川》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《伐採地の滝》 4 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《薄暮見の徴募兵》 4 《森の代言者》 2 《首絞め》 2 《無私の霊魂》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 3 《不屈の追跡者》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《大天使アヴァシン》 2 《老いたる深海鬼》 -クリーチャー(27)- |
1 《石の宣告》 1 《ドロモカの命令》 4 《集合した中隊》 1 《実地研究者、タミヨウ》 -呪文(7)- |
2 《異端聖戦士、サリア》 2 《ドロモカの命令》 1 《石の宣告》 1 《否認》 1 《不屈の追跡者》 2 《即時却下》 2 《悲劇的な傲慢》 1 《意思の激突》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
4 《森》 4 《平地》 2 《島》 3 《梢の眺望》 3 《大草原の川》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《伐採地の滝》 4 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 4 《森の代言者》 3 《薄暮見の徴募兵》 2 《無私の霊魂》 4 《反射魔道士》 4 《不屈の追跡者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《呪文捕らえ》 -クリーチャー(25)- |
2 《石の宣告》 2 《ドロモカの命令》 4 《集合した中隊》 1 《オジュタイの命令》 -呪文(9)- |
3 《否認》 2 《無私の霊魂》 1 《ドロモカの命令》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 1 《異端聖戦士、サリア》 2 《過去に学ぶ》 1 《実地研究者、タミヨウ》 2 《大天使アヴァシン》 2 《老いたる深海鬼》 -サイドボード(15)- |
「バント・カンパニー」に始まり「バント・カンパニー」に終わる。環境初期から終始スタンダードシーンを牽引してきた「バント・カンパニー」は、今大会でも当然のように人気を博し、最終的に2名のプレイヤーを決勝ラウンドに送り込みました。
誰もが認めるスタンダードで最高のデッキですが、『異界月』登場後はクリーチャー選択を筆頭にリストが固定化されず、各人の個性やメタゲーム予想が色濃く反映される自由度の高いデッキでもありました。今回の例で言えば、マルシオ選手の《首絞め》や、八十岡選手の《呪文捕らえ》2枚などがそれに該当します。
他にも《老いたる深海鬼》や《実地研究者、タミヨウ》がメインボードに採用されたりと、いくつかの変化が見受けられます。
どちらも展開に左右されやすいという弱点こそあるものの、先手の際の圧倒的な制圧力が魅力のカードです。特に《実地研究者、タミヨウ》は環境のほとんどのデッキに対して強く、一度[+1]能力が機能し始めれば負けるのが困難なほどの物量差を生み出してくれます。ただし、[+1]、[-2]能力とは裏腹に[-7]能力が見た目より遥かに地味なので、基本的には「忠誠度」がいくつであれ[+1]能力と[-2]を使い分ける使用法が良いと思います。
「バント・スピリット」
1 《森》 4 《平地》 4 《島》 4 《梢の眺望》 4 《港町》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《進化する未開地》 -土地(25)- 4 《霊廟の放浪者》 4 《鎖鳴らし》 4 《無私の霊魂》 1 《族樹の精霊、アナフェンザ》 4 《ネベルガストの伝令》 4 《反射魔道士》 4 《呪文捕らえ》 2 《大天使アヴァシン》 -クリーチャー(27)- |
4 《集合した中隊》 2 《オジュタイの命令》 2 《意思の激突》 -呪文(8)- |
1 《霊体の羊飼い》 1 《本質の変転》 1 《石の宣告》 1 《否認》 1 《絹包み》 2 《即時却下》 1 《過去に学ぶ》 1 《悲劇的な傲慢》 1 《意思の激突》 3 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 2 《実地研究者、タミヨウ》 -サイドボード(15)- |
前年度の王者であるセス・マンフィールド/Seth Manfieldは、一風変わった「バント・スピリット」を持ち込み3勝1敗を記録しています。
これまでほとんど露出のなかったデッキではありますが、プロツアー『異界月』 参加者の調整録によく登場していたりと、デッキパワーには定評があります。このデッキの明確なメリットとしては、「瞬速」やインスタント・カードばかりで構成されているので、対戦相手が的確なプレイをするのが難しいことです。
古き良き「クロック・パーミッション」スタイルのデッキであり、なおかつクリーチャーの大多数が飛んでいるので、後述の「ターボ・エムラクール」のような大ぶりなデッキに対して非常に有利なデッキです。
その反面でクリーチャーの線が細く、タフネス1のクリーチャーがほとんどなので、《最後の望み、リリアナ》の入ったデッキを苦手としており、「白単人間」や「バント人間カンパニー」などには力負けすることが多いです。ほぼ毎ターンマナをオープンで返す都合上、《薄暮見の徴募兵》や《ラムホルトの平和主義者》はこのデッキにとって天敵と言えます。
《最後の望み、リリアナ》に対しては《鎖鳴らし》が、クリーチャーデッキに対しては《無私の霊魂》の使い方が鍵となるので、それらの使い方には細心の注意を払いましょう。
「ターボ・エムラクール」
9 《森》 4 《島》 1 《山》 4 《ヤヴィマヤの沿岸》 2 《シヴの浅瀬》 2 《見捨てられた神々の神殿》 -土地(22)- 3 《原初のドルイド》 2 《ヴリンの神童、ジェイス》 3 《約束された終末、エムラクール》 2 《巡礼者の目》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 2 《不憫なグリフ》 3 《老いたる深海鬼》 -クリーチャー(18)- |
4 《発生の器》 3 《ウルヴェンワルド横断》 4 《過去との取り組み》 2 《群れの結集》 4 《コジレックの帰還》 3 《ニッサの巡礼》 -呪文(20)- |
2 《節くれ木のドライアド》 2 《不屈の追跡者》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 1 《絡み草の闇潜み》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 3 《払拭》 2 《侵襲手術》 1 《久遠の闇からの誘引》 1 《爆発的植生》 1 《深海の主、キオーラ》 -サイドボード(15)- |
デッキ名よろしく、《約束された終末、エムラクール》を最速でキャストできる点が強みの「ターボ・エムラクール」。
《約束された終末、エムラクール》の入ったデッキ同士での対戦に強いこのデッキの課題としては、序盤の攻防に疎いところと安定性が低いところでした。それを改善するために、プロツアー以降では《原初のドルイド》が入ったリストが主流になっています。
以前は《節くれ木のドライアド》が採用されていた枠ですが、《原初のドルイド》であれば《森の代言者》などを気兼ねなくブロックすることができますし、もちろん「現出」クリーチャーを素早くキャストすることにも寄与します。
長期戦では他のデッキを寄せ付けないほどに圧倒的な強さを誇るデッキなので、このように序盤の攻防に強くしたり、安定性を上げる工夫は必須だと思います。以前も紹介させていただいたように、環境に《約束された終末、エムラクール》が増えれば増えるほど立ち位置が良くなるデッキなので、「ジャンド昂揚」や「ティムール現出」などが増えた際にぜひともお勧めしたいデッキです。
「今週の一押し~青緑クラッシュ~」
9 《森》 8 《島》 2 《ヤヴィマヤの沿岸》 4 《伐採地の滝》 1 《荒廃した森林》 -土地(24)- 3 《棲み家の防御者》 3 《森の代言者》 1 《約束された終末、エムラクール》 1 《巨森の予見者、ニッサ》 -クリーチャー(8)- |
1 《ウルヴェンワルド横断》 4 《予期》 4 《ニッサの巡礼》 4 《パズルの欠片》 4 《爆発的植生》 1 《面晶体の記録庫》 4 《水の帳の分離》 3 《押し潰す触手》 2 《ニッサの復興》 1 《秘密の解明者、ジェイス》 -呪文(28)- |
3 《節くれ木のドライアド》 1 《終止符のスフィンクス》 1 《絶え間ない飢餓、ウラモグ》 2 《払拭》 1 《空への斉射》 2 《カザンドゥへの撤退》 2 《呪文萎れ》 2 《即時却下》 1 《護法の宝珠》 -サイドボード(15)- |
マナ加速から最速での《押し潰す触手》をもってして、「バント・カンパニー」に立ち向かう「青緑クラッシュ」。最終的には10マナを用意し、《棲み家の防御者》で延々と《押し潰す触手》を使い回すことで、文字通り対戦相手を押し潰します。
このコンボはカウンター呪文やインスタント除去呪文でしか阻害しづらいため、《集合した中隊》の入ったデッキに対しても有利に立ち回ることができます。特にサイドボード後もカウンター呪文が少ない「バント人間カンパニー」は比較的くみしやすいデッキと言えるので、今後「バント人間カンパニー」が増えるのであれば良い選択になると思います。
メインボードの戦略が妨害されづらく強力であることから、サイドボード後にも大きなプランの変更はありませんが、このデッキにとって邪魔になるのはカウンター呪文などのインスタント呪文が多いので、《払拭》の増量は検討してもいいかもしれません。
おわりに
『タルキール龍紀伝』と『マジック・オリジン』がスタンダードで使えるのも、残り1か月を切りました。強力なカードや思い出深いカードがたくさんありますが、個人的には《集合した中隊》が最も印象に残っています。
《集合した中隊》を有効活用するためには一定数以上のクリーチャーが必要なので、デッキ構築に制限がかかってしまいます。それにも関わらずこれほどまでに使用され、なおかつスタンダードを席巻したカードはなかなかに珍しく、すぐに思い浮かぶのは《秘密を掘り下げる者》や《出産の殻》くらいのものです。
僕自身も何度となく《集合した中隊》デッキにボコボコにされたり、クリーチャーが2体出ずに苦心したこともありましたが、とにかくたくさんお世話になりました。これからはモダンでもお世話になると思いますが、その前にスタンダードで思いっきり《集合した中隊》を満喫したいと思います! みなさんもぜひお気に入りのカードを存分に使って、最後までこの環境を楽しんでくださいね。
それでは、また次回の連載で!
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