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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリからWMCQ、世界選手権に向けて
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ グランプリからWMCQ、世界選手権に向けて
こんにちは!晴れる屋の津村です。
今週は先週末に行われた「グランプリ・ロンドン2015」(リンク先は英語カバレージ)の結果を追っていきたいと思います。《ドロモカの命令》がかつてない輝きを放つ最中、結果を残したのはどのようなデッキだったのでしょうか。
まずは、いつものようにトップ8デッキからご覧ください。
「グランプリ・ロンドン2015」トップ8デッキ
- 優勝・「ハンガーバック・アブザン(《搭載歩行機械》アブザン)」
- 準優勝・「ハンガーバック・アブザン」
- 3位・「白緑・大変異」
- 4位・「ジェスカイ」
- 5位・「アブザン・コントロール」
- 6位・「ハンガーバック・アブザン」
- 7位・「赤緑ドラゴン」
- 8位・「ハンガーバック・アブザン」
「アブザン」の大躍進。「アグロ」型と「コントロール」型を合わせれば、トップ8に5名ものプレイヤーを送り込む大暴れっぷり。2日目進出率(参考:Day 2 Metagame of Grand Prix London 2015)でもワンツーフィニッシュを飾っており、これらのデッキが今大会の勝ち組と言って差支えないでしょう。
「アブザン」と聞くと新鮮味のないデッキのように聞こえるかもしれませんが、今回上位を独占した「アブザン」は既存のリストとは一味違います。その実態は後ほどご覧いただきたいと思いますが、その前に簡単にメタゲームの流れをおさらいしておきましょう。
グランプリ・ロンドン2015までのメタゲームの変遷
前回の記事でお伝えしたように、現在のスタンダードでは《ドロモカの命令》が一大旋風を巻き起こしています。「白緑」系のデッキであればほとんどのデッキで採用される傾向にありますが、そんな中でも頭ひとつ抜けた完成度を誇るのが「白緑・大変異」デッキです。
「白緑・大変異」
8 《森》 6 《平地》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《豊潤の神殿》 1 《花咲く砂地》 1 《マナの合流点》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 4 《棲み家の防御者》 4 《羊毛鬣のライオン》 2 《隠れたる龍殺し》 4 《死霧の猛禽》 3 《巨森の予見者、ニッサ》 2 《加護のサテュロス》 2 《クルフィックスの狩猟者》 2 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(27)- |
3 《ドロモカの命令》 3 《勇敢な姿勢》 2 《英雄の導師、アジャニ》 1 《太陽の勇者、エルズペス》 -呪文(9)- |
1 《オレスコスの王、ブリマーズ》 2 《搭載歩行機械》 2 《霊気のほころび》 2 《進化の飛躍》 2 《垂直落下》 1 《自然に帰れ》 1 《ドロモカの命令》 1 《異端の輝き》 2 《悲劇的な傲慢》 1 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
このデッキはプロツアー『マジック・オリジン』後にメキメキと頭角を現してきたデッキで、この度のグランプリ・ロンドン2015でも3位入賞を果たしています。このデッキに勝てるかどうかは今のスタンダードで勝ち上がるための指針のひとつで、「白緑・大変異」に相性の良いデッキ、または「白緑・大変異」を超えるデッキが登場するか否か、というのがグランプリ・ロンドン2015までのメタゲームの流れでした。
実際にグランプリ・ロンドン2015では、多くのプレイヤーがこのデッキを意識していたようで、何名かのプレイヤーは明確なるアンチ「白緑」デッキを持ち込んで結果を残しています。その代表格は、マーティン・ジュザ/Martin Juzaやブラッド・ネルソン/Brad Nelsonといった有名どころが持ち込んだこのデッキです。
「赤緑ドラゴン」
7 《森》 6 《山》 4 《樹木茂る山麓》 4 《奔放の神殿》 1 《マナの合流点》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 4 《爪鳴らしの神秘家》 2 《棲み家の防御者》 4 《死霧の猛禽》 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《雷破の執政》 4 《嵐の息吹のドラゴン》 -クリーチャー(26)- |
3 《乱撃斬》 4 《龍詞の咆哮》 3 《火口の爪》 -呪文(10)- |
2 《棲み家の防御者》 2 《高木の巨人》 1 《引き裂く流弾》 4 《焙り焼き》 2 《破壊的な享楽》 1 《垂直落下》 3 《歓楽者ゼナゴス》 -サイドボード(15)- |
7 《森》 5 《山》 4 《樹木茂る山麓》 4 《奔放の神殿》 2 《マナの合流点》 2 《精霊龍の安息地》 -土地(24)- 4 《エルフの神秘家》 4 《爪鳴らしの神秘家》 3 《棲み家の防御者》 4 《死霧の猛禽》 4 《ゴブリンの熟練扇動者》 4 《雷破の執政》 4 《嵐の息吹のドラゴン》 -クリーチャー(27)- |
2 《マグマのしぶき》 4 《龍詞の咆哮》 2 《火口の爪》 1 《焙り焼き》 -呪文(9)- |
1 《棲み家の防御者》 2 《高木の巨人》 1 《マグマのしぶき》 1 《引き裂く流弾》 3 《焙り焼き》 2 《神秘の痕跡》 1 《垂直落下》 2 《霊気のほころび》 2 《歓楽者ゼナゴス》 -サイドボード(15)- |
「白緑」デッキの隆盛に伴い、トッププレイヤーたちが目を付けたのは《嵐の息吹のドラゴン》でした。「プロテクション(白)」を持つこのドラゴンは、「白緑」系統のデッキに対して抜群の効果を発揮します。
このクリーチャーには《ドロモカの命令》も《勇敢な姿勢》も効かないため、メインデッキではダメージレースを挑むほかありません。サイドボードにこそ《悲劇的な傲慢》、《太陽の勇者、エルズペス》など《嵐の息吹のドラゴン》に対処できるカードは存在しますが、「赤緑ドラゴン」側も《棲み家の防御者》や《精霊龍の安息地》で《嵐の息吹のドラゴン》を再利用できるので、マッチ全体を通して「赤緑ドラゴン」が優勢だと思います。
このデッキは「《ドロモカの命令》に強い」という現在のスタンダードを勝ち抜くための条件をクリアしていますし、ネルソンが11連勝という驚異的な勝率を叩き出していたため、大会途中までは「このデッキこそが次なるソリューション(解決策)か」と期待されていました。
しかしながら、結果として王座は揺るぎませんでした。多くのプレイヤーが「白緑」デッキを倒すために試行錯誤を繰り返すなかで、《ドロモカの命令》の入ったデッキもまた、着実な進化を遂げていたのです。
■「ハンガーバック・アブザン」(《搭載歩行機械》アブザン)
2 《平地》 3 《森》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 3 《コイロスの洞窟》 1 《静寂の神殿》 3 《ラノワールの荒原》 4 《疾病の神殿》 1 《マナの合流点》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(26)- 1 《始まりの木の管理人》 4 《棲み家の防御者》 4 《羊毛鬣のライオン》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 4 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(21)- |
4 《ドロモカの命令》 2 《究極の価格》 4 《アブザンの魔除け》 1 《英雄の破滅》 1 《真面目な訪問者、ソリン》 1 《英雄の導師、アジャニ》 -呪文(13)- |
1 《アラシンの僧侶》 1 《黄金牙、タシグル》 4 《思考囲い》 2 《自傷疵》 1 《異端の輝き》 1 《正義のうねり》 1 《究極の価格》 2 《悲劇的な傲慢》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
2 《平地》 2 《森》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 3 《コイロスの洞窟》 3 《静寂の神殿》 3 《ラノワールの荒原》 3 《疾病の神殿》 1 《マナの合流点》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(26)- 2 《始まりの木の管理人》 4 《羊毛鬣のライオン》 2 《棲み家の防御者》 4 《先頭に立つもの、アナフェンザ》 4 《包囲サイ》 2 《風番いのロック》 4 《搭載歩行機械》 -クリーチャー(22)- |
3 《ドロモカの命令》 3 《究極の価格》 2 《アブザンの魔除け》 2 《英雄の破滅》 2 《真面目な訪問者、ソリン》 -呪文(12)- |
3 《責め苦の伝令》 4 《思考囲い》 1 《霊気のほころび》 1 《ドロモカの命令》 1 《究極の価格》 3 《悲劇的な傲慢》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
今大会で台風の目となったのは、《搭載歩行機械》を入れた「アブザン・アグロ」でした。このデッキが示すように、《搭載歩行機械》も《ドロモカの命令》と同様に、スタンダード環境を定義するほどに使用頻度が高くなっています。
このデッキと「白緑・大変異」との最大の相違点は、《先頭に立つもの、アナフェンザ》が使えることです。
前述の通り《搭載歩行機械》を見かける機会が非常に増えていますが、《先頭に立つもの、アナフェンザ》や《アブザンの魔除け》のような汎用性の高いカードでそれに対処できることは、このデッキならではの強みです。
また、「白緑」系のデッキ対策として白羽の矢が立った《嵐の息吹のドラゴン》に対しても、黒が入っていれば《究極の価格》や《英雄の破滅》で対処することが可能となります。
優勝者の方がトップ8インタビューで、「追加の《真面目な訪問者、ソリン》と《風番いのロック》を入れたい」と仰っていたように、今後ミラーマッチが多発するのであれば、《風番いのロック》はぜひとも採用しておきたい1枚です。
「ワールド・マジック・カップ予選(WMCQ)」に向けた展望
ここにきてさらなる変化を見せるスタンダードシーンですが、今後の展望としては、「アブザン・コントロール」や「青白コントロール」の活躍に期待できるのではないかと思います。その理由としては、下記の二点が挙げられます。
- トップスピードを武器にする「赤単」や「青赤《アーティファクトの魂込め》」が減り、中速のデッキが増えてきた
- 「白緑」系統のデッキに対して《太陽の勇者、エルズペス》が強い
どちらもビートダウンデッキに勝てないことはないので、どちらかというと2の理由が大きいですね。
「アブザン・コントロール」
1 《平地》 4 《森》 4 《吹きさらしの荒野》 4 《砂草原の城塞》 2 《コイロスの洞窟》 4 《静寂の神殿》 2 《ラノワールの荒原》 4 《疾病の神殿》 1 《ヨーグモスの墳墓、アーボーグ》 -土地(26)- 3 《棲み家の防御者》 4 《クルフィックスの狩猟者》 2 《巨森の予見者、ニッサ》 4 《包囲サイ》 1 《龍王ドロモカ》 1 《黄金牙、タシグル》 -クリーチャー(15)- |
4 《思考囲い》 2 《究極の価格》 1 《胆汁病》 4 《アブザンの魔除け》 3 《英雄の破滅》 2 《衰滅》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(19)- |
3 《アラシンの僧侶》 2 《強迫》 1 《霊気のほころび》 2 《ドロモカの命令》 1 《胆汁病》 1 《究極の価格》 2 《骨読み》 1 《対立の終結》 1 《悲劇的な傲慢》 1 《精霊龍、ウギン》 -サイドボード(15)- |
『タルキール覇王譚』がリリースされてから、コントロールの代表格として絶えず活躍を続けている「アブザン・コントロール」。初速の遅さゆえに、環境が速いと2マナの除去を増量する必要がありますが、現在のように環境が少し遅めであれば、その心配も必要なさそうです。先ほどご紹介した「ハンガーバック・アブザン」に対しては《究極の価格》がほとんど効かないため、その枠には再考の余地があると思います。
色マナの厳しさに目をつぶって、《搭載歩行機械》のトークンにも強い《胆汁病》を増量するのが良さそうに思えますが、この辺りは「緑信心タッチ赤」や「赤緑ドラゴン」をどこまで意識するかにも左右されます。個人的には《胆汁病》2枚、《究極の価格》1枚くらいのバランスが良いと思います。
「青白コントロール」
6 《島》 3 《平地》 4 《溢れかえる岸辺》 2 《汚染された三角州》 4 《啓蒙の神殿》 4 《平穏な入り江》 1 《精霊龍の安息地》 2 《魔道士輪の魔力網》 1 《光輝の泉》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(4)- |
4 《意思の激突》 3 《今わの際》 3 《迅速な報い》 2 《予期》 2 《解消》 3 《オジュタイの命令》 2 《卓絶のナーセット》 3 《対立の終結》 4 《時を越えた探索》 2 《太陽の勇者、エルズペス》 1 《精霊龍、ウギン》 -呪文(29)- |
3 《アラシンの僧侶》 1 《真珠湖の古きもの》 2 《天界のほとばしり》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 2 《存在の破棄》 1 《異端の輝き》 1 《対立の終結》 1 《宿命的報復》 -サイドボード(15)- |
こちらは古典的な「青白コントロール」。当然ですが、こういったデッキは環境が遅くなればなるほど、その力を発揮しやすくなります。
勝つまでが長いのは難点ですが、プレイ時間さえきっちり管理できれば、かなり良い選択のひとつだと思います。
《ヴリンの神童、ジェイス》をいつ「変身」させるかは非常に難しいですが、《溢れかえる岸辺》やインスタント呪文で対戦相手の計算を狂わせるタイミングで実行できると理想的です。もちろん、即座に「変身」させてしまい、[-9]能力を狙うのも一考に値します。
《束縛なきテレパス、ジェイス》の[+1]能力と《今わの際》を駆使すればパワー4のクリーチャーまで除去できたりと、色々な小技の隠れたデッキでもあるので、コントロールデッキ好きの方はぜひ一度お試しください!
終わりに
今回のスタンダード・アナライズは以上です。《ドロモカの命令》だけでなく、《搭載歩行機械》の存在感もかなりのものになってきましたね。今よりもさらにビートダウンが少なくなれば、マークが甘くなり「赤単」や「青赤《アーティファクトの魂込め》」デッキの復権もありえると思いますし、虎視眈々と王座を狙う「緑信心タッチ赤」や「ジェスカイ」デッキが優勝を勝ち取る可能性も大いにあると思います。
今週末に迫った「ワールド・マジック・カップ 大阪予選」、来週末に開催される「世界選手権2015」の結果が待ち遠しいですね。「世界選手権2015」には、日本からなべ君(渡辺 雄也)とやまけんさん(山本 賢太郎)が参戦予定です。彼らのデッキ選択と活躍もお見逃しなく!
それでは、また次回の連載で!
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