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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第79回:現実と幻影の狭間で
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2011.11.17
第79回:現実と幻影の狭間で
こんにちはー。
マジック界の千秋楽、世界選手権2011がいよいよ今週末に迫ってまいりました。
ナック(中村 修平)さんの殿堂入りや、大接戦のPoY(年間最優秀選手)レースなど、見所満載の大会となっておりますが、世界各国の強豪がスタンダードラウンドでどんなデッキを使うのかも非常に気になりますよね。
僕のようにカバレージを心待ちにしている方も多いと思うので、今週はスタンダードラウンドをより一層楽しんでいただくために、メタゲーム予想と注目のデッキをご紹介させてもらいます。
まずはメタゲームをチェックしてみましょう。
~MOの結果から見る最新のメタゲーム~
Tier1
- 「青+αクロックパーミッション」
-
「緑白ビートダウン」
-
「青白ビートダウン」
Tier2
大筋はグランプリ・広島の前後とあまり変わりはありません。今まで紹介してきた各デッキの解説は、それぞれのリンクをたどっていただくとして、この中で唯一の新顔である「青+αクロックパーミッション」とは一体どんなデッキなのでしょうか?
このデッキこそが、今年の世界選手権で一大旋風を巻き起こす可能性のある新デッキで、Magic Onlineの世界では、ここ数週間で爆発的に数を増やしてきています。このデッキはかなり前から存在自体はしており、グランプリ・広島においても、流行に詳しい数名のプレイヤーがこのデッキを駆り2日目進出を果たしています。
そんなみなさんが参考にされたと思われるのが、以下のリストです。
「青白《秘密を掘り下げる者》」
10 《島》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 4 《墨蛾の生息地》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《瞬唱の魔道士》 -クリーチャー(8)- |
3 《はらわた撃ち》 4 《思案》 4 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 4 《心理の障壁》 4 《否認》 3 《深夜の出没》 2 《饗宴と飢餓の剣》 2 《殴打頭蓋》 -呪文(30)- |
2 《呪文滑り》 3 《レオニンの裁き人》 2 《幻影の像》 3 《漸増爆弾》 3 《機を見た援軍》 2 《戦争と平和の剣》 -サイドボード(15)- |
そう、「青+αクロックパーミッション」の正体とは、モダンやレガシーなど、環境を問わず活躍する《秘密を掘り下げる者》を軸にした「クロックパーミッション」デッキです。
《秘密を掘り下げる者》は、このデッキのようにソーサリーとインスタントが50%近く搭載されたリストであれば、すぐさま「変身」することが可能で、そして一度「変身」してしまえば、3/2で「飛行」持ちと、とても1マナとは思えない圧倒的な攻撃力を持って対戦相手に襲いかかります。
ここ何年かで最強の1マナ域と言えば、僕の愛する《野生のナカティル》が思い出されますが、《秘密を掘り下げる者》はそれさえ凌ぐ驚異の逸材です。これを豪華12枚ものカウンターを筆頭とした、その他のカードでバックアップしていき、相手にほとんど何もさせずに勝つことが理想の展開になります。
繰り返しになりますが、2ターン目からの3点クロックは脅威と言うほかなく、それを達成できた場合には多くのゲームで勝つことができるでしょう。
普段あまり見慣れない《蒸気の絡みつき》や《心理の障壁》も、「クロックパーミッション」デッキで使うと、これ以上ないほどに高性能なカードに化けます。
特に1マナと軽い《蒸気の絡みつき》は秀逸で、ただ単に相手のクリーチャーを戻してテンポを稼ぐのみならず、必要に応じて自分の《秘密を掘り下げる者》や《瞬唱の魔道士》を除去から守ったりもできます。僕も長い間マジックをやってきましたが、これほどまでに構築シーンで《送還》が強いと感じたのは今回が初めてです。
そしてそして、ほぼ青単色で構成されているにも関わらず、実に様々なことができるのも、このデッキの大きな魅力のひとつ。
本来であれば、青単色と言えば、カウンターかバウンスくらいしか相手に干渉できないのが悩みの種でしたが、現代の青にはこれは当てはまりません。それを可能にしているのが、《はらわた撃ち》や《四肢切断》などの「ファイレクシア・マナ」の力です。
「ファイレクシア・マナ」の存在ゆえに、例え青単色のデッキであろうと、緑単色のデッキであろうと、高性能の除去を搭載することが可能となります。
《はらわた撃ち》は《極楽鳥》、《アヴァシンの巡礼者》を筆頭とするタフネス1キラーで、ミラーマッチの増えてきた今ならば、最高の《秘密を掘り下げる者》対策としても機能します。カウンターがこれだけ多いと、逆に言ってしまえば1ターン目や2ターン目に戦場に出てしまった脅威への対処法は必須となるので、それを無理なく行える《はらわた撃ち》や《四肢切断》は、このデッキにうってつけのカードと言えますね。
ここまでは比較的ポジティブなところを紹介してきましたが、正直に申し上げますと、最初はこのデッキはすぐに消える程度のデッキだと思っていました。
その理由は至極簡単なもので、あまりにも《秘密を掘り下げる者》に依存しすぎているためです。
実際にMOで使ってみたところ、早期のターンにこのクリーチャーを出せた場合の勝率は恐ろしいものがあるのですが、そうでない場合の勝率はひどいものでした。大量に投入されたカウンター呪文も、先ほどべた褒めした《蒸気の絡みつき》も、こちらにクロックがなければ時間稼ぎにすらならず、これだけで相手を完璧にいなすことが難しいのは先週お伝えした通りです。
もう少し分かりやすく言うのなら、早期のターンに《秘密を掘り下げる者》を引いていない場合、普通のコントロールデッキが《聖別されたスフィンクス》を出すようなターンに、このデッキは《秘密を掘り下げる者》をキャストするはめになるわけです。《聖別されたスフィンクス》ですら、そのまま負けてしまうことが多々あるのに、それが《秘密を掘り下げる者》になってしまった日には結果は言わずもがな、ですね。
仮に早いターンで《秘密を掘り下げる者》引けた場合でも、相手に《破滅の刃》などで《秘密を掘り下げる者》を除去されてしまうと結果は同じで、そうなれば、このデッキは《蒸気の絡みつき》や《はらわた撃ち》の入ったちぐはぐなコントロールデッキに成り下がってしまいます。
これは非常に大きな問題で、頼みの綱である他のクロックの《瞬唱の魔道士》や《深夜の出没》も、これだけで20点を削りきるには荷が重い面子と言わざるをえません。
前述のカウンターや除去に加え、《饗宴と飢餓の剣》のバックアップはあるものの、《審判の日》も持たないデッキで、なおかつこんなパーティで、グランプリ・広島後に大流行した「緑白/青白ビートダウン」に立ち向かうなど無謀の一言に尽きます。
しかし「StarCityGames・オープントーナメント」にて、そんなこのデッキの課題を消しさる新しいアプローチが登場しました。それがクリーチャーを増量した「青白イリュージョン」です。
「青白イリュージョン」
10 《島》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(21)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《幻影の熊》 4 《幻影の像》 4 《非実在の王》 4 《瞬唱の魔道士》 1 《マーフォークの物あさり》 -クリーチャー(21)- |
4 《ギタクシア派の調査》 4 《思案》 3 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 3 《四肢切断》 -呪文(18)- |
2 《溶鉄の尾のマスティコア》 2 《はらわた撃ち》 3 《鋼の妨害》 3 《瞬間凍結》 1 《四肢切断》 2 《雲散霧消》 2 《霜のブレス》 -サイドボード(15)- |
このリストは《幻影の熊》や《非実在の王》などの「イリュージョン」絡みのカードをデッキに加えることで、《秘密を掘り下げる者》への依存度を下げています。
3点のクロックで殴りきるには7ターンかかりますし、その間にはとんでもない数の脅威と遭遇することになるでしょうが、クロックがもっともっと大きければ、脅威と向き合う数も、それを対処しなければいけない数も大幅に減少します。
そしてクリーチャーを増量したことで、単純にクロックが上がるだけでなく、《秘密を掘り下げる者》へ飛んでくる除去に対して無理をする必要がなくなりますし、課題であったデッキの安定性が改善されています。
以前であれば《秘密を掘り下げる者》頼みだった1ターン目も、《幻影の熊》が入ることで動ける可能性が広がっていますし、《幻影の熊》→《非実在の王》という動きはどんな相手にも強力です。
残るもう一方の「イリュージョン」クリーチャーである《幻影の像》は、《非実在の王》をコピーして、「呪禁」持ちのアタッカーになるお馴染みのコンボはもちろんのこと、2ターン目に(夜)《昆虫の逸脱者》をコピーすることができれば、僅か2ターン目にして6点もの「飛行」クロックを手に入れられることのできる優秀な2マナ域です。
ちなみにこういった「コピーになる」、または《大笑いの写し身》のような「コピートークンを作成する」系統のカードは、(昼)状態の《秘密を掘り下げる者》をコピーしても、(夜)の面の特性まではコピーしないため、「変身」することができないのにはご注意ください。
これは逆もまたしかりで、(夜)《昆虫の逸脱者》には「変身」能力がないのであまり関係ありませんが、《アヴァブルックの町長》が代表する、どちらの面にも「変身」能力の付いているもの、例えば(夜)《吠え群れの頭目》などをコピーすると、その後どちらかのプレイヤーが何度呪文を唱えようとも、《アヴァブルックの町長》に「変身」してしまうことはありません。
その辺りのルールは、《幻影の像》を使う前にしっかりと確認しておきましょう。
少し脱線しましたが、《幻影の像》は相手のクリーチャーになる展開も多く、特に《ミラディンの十字軍》や《刃砦の英雄》をコピーしたあとで、相手のオリジナルは《蒸気の絡みつき》や《四肢切断》で退場させるのがこのデッキの常套手段です。
サイドボード後に頻繁に目にする《最後のトロール、スラーン》に対しても、たった2マナで対処できる優れもの。
クリーチャーを増量した付加価値は他にもあり、そのおかげで《墨蛾の生息地》が《ムーアランドの憑依地》になったことは、このデッキの強さを大きく底上げした要因のひとつです。
「青白ビートダウン」のように、《清浄の名誉》や《天使の運命》のバックアップがあるわけではないのですが、息切れを防いでくれ、攻撃を継続させられるだけでも十分な強さです。《墨蛾の生息地》とは違い、きちんと「ライフ」を攻めてくれるのも《ムーアランドの憑依地》の特権ですね。
実はこの「青白イリュージョン」は、ローテーション直後に「StarCityGames・オープントーナメント」でトップ4に入り、MO界でも流行の兆しを見せていたデッキです。
しかし当時は、このデッキの天敵と言える《金屑の嵐》と《ケッシグの狼の地》を積んだ「赤緑《ケッシグの狼の地》」の全盛期であり、「青白イリュージョン」デッキはすぐに廃れていきました。
その時のリストでは、《秘密を掘り下げる者》の枠が《幻影のドラゴン》だったので、無限に飛んでくる《破滅の刃》こと《ケッシグの狼の地》に対して手も足も出なかったのですが、ここ数週間で状況は一変しており、現在は「赤緑《ケッシグの狼の地》」はかなり減少傾向にあります。
そんなメタゲームの事情に加え、《幻影のドラゴン》が《秘密を掘り下げる者》になったことも相まって、「青白イリュージョン」は見事にTier1にまで上りつめたというわけです。
ちなみに冒頭で紹介した時には「青+αクロックパーミッション」とご紹介させていただいたのですが、これは《秘密を掘り下げる者》が入ったデッキには様々なバリエーションがあるということを示唆しています。
今現在最もポピュラーなのはこの「青白イリュージョン」型なんですが、それに次ぐ勢力となっているのが「青赤」バージョンです。
「青赤クロックパーミッション」
9 《島》 9 《山》 4 《硫黄の滝》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 3 《流城の貴族》 2 《渋面の溶岩使い》 4 《瞬唱の魔道士》 3 《チャンドラのフェニックス》 -クリーチャー(16)- |
4 《感電破》 4 《思案》 2 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 3 《火葬》 1 《否認》 4 《硫黄の流弾》 -呪文(22)- |
1 《流城の貴族》 1 《ヴァルショクの難民》 2 《躁の蛮人》 2 《鋼の妨害》 4 《電弧の痕跡》 3 《瞬間凍結》 2 《槌のコス》 -サイドボード(15)- |
「青赤」バージョンの特徴は、「青白」よりも前のめりなカード選択にあります。
~赤の強み~
《流城の貴族》は「人間」クリーチャーを多用する「緑白/青白ビートダウン」相手に致命的なクリーチャーになりますし、《チャンドラのフェニックス》は対処されづらい「飛行」クリーチャーとして、優秀なクロックになります。
《チャンドラのフェニックス》を上手く活用しようとすると、デッキ内に一定数の火力呪文を入れる必要性が出てきますが、火力呪文は最後の一押しにももってこいですし、ビートダウンデッキ相手に強いのも評価できます。
「青白イリュージョン」が《はらわた撃ち》や《四肢切断》のように、ライフと引き換えにしなければ除去呪文を使えないのに対し、除去を得意とする赤を2色目に選べば、「ファイレクシア・マナ」に頼る必要もなくなります。
そしてこれくらいまでに「青+αクロックパーミッション」ミラーマッチが増えてきた現状ならば、《渋面の溶岩使い》の増量を検討してもいいでしょう。
《渋面の溶岩使い》が2枚に抑えられているのは、墓地を利用する《瞬唱の魔道士》との兼ね合いだとは思いますが、ミラーマッチで1体でゲームを決めかねないこのクリーチャーは、サイド後に追加を用意してもいいと思います。
「青赤」には、火力の多さを生かして《燃え上がる憤怒の祭殿》を入れたバージョンなどもありますね。今まで何度か紹介している通り、「青黒コントロール」のような《燃え上がる憤怒の祭殿》だけで勝ててしまう相手が存在するので、枠を割く価値は十分にあるでしょう。
この辺りはKJの記事でも触れられているので、「青赤」バージョンを作ってみたい、という方はぜひ参考にしてみてください。
最後を飾るのは、最もマニアックな「青緑」バージョンです。
「青緑クロックパーミッション」
10 《島》 8 《森》 4 《内陸の湾港》 -土地(22)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《アヴァブルックの町長》 4 《幻影の像》 2 《肌変わり》 1 《最後のトロール、スラーン》 -クリーチャー(15)- |
4 《思案》 1 《取り繕い》 1 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 2 《分散》 1 《否認》 3 《雲散霧消》 2 《内にいる獣》 1 《霜のブレス》 4 《緑の太陽の頂点》 -呪文(23)- |
3 《蒼穹の魔道士》 1 《シルヴォクののけ者、メリーラ》 1 《夜明けのレインジャー》 1 《解放の樹》 4 《はらわた撃ち》 2 《漸増爆弾》 1 《霜のブレス》 2 《精神の制御》 -サイドボード(15)- |
「青緑」バージョンは他のものと比べると本当に数が少なく、リストを探すことさえ一苦労でした。とは言え、僕自身も実際に何度か当たったことがあるので、その中で感じたことをいくつか書いていきます。
~緑の強み~
まず最初に思いつくのは、このリストにも採用されている《アヴァブルックの町長》でしょう。
正直こいつは中々「変身」しないのですが、このデッキの主力である《秘密を掘り下げる者》は(昼)(夜)どちらも「人間」なので、《アヴァブルックの町長》の+1/+1能力の恩恵を受けることができます。
さらに先ほど紹介した通り、(夜)《吠え群れの頭目》になった後に《幻影の像》でコピーすれば、《幻影の像》は《アヴァブルックの町長》に戻ることはないので、あっという間に戦場を狼で埋め尽くしてくれます。
そしてこのリストには入っていないものの、個人的に緑を使うならぜひとも4枚採用したいのが《情け知らずのガラク》。
(夜)《吠え群れの頭目》との相性の良さもさることながら、その除去能力がミラーマッチにおいて非常に強力なので、2色目を緑にするなら絶対に入れておきたいですね。
「青白」バージョンだけ圧倒的に数が多いので、その他の色のリストは比較的研究が遅れているように感じられます。白にはマナベースの安定性に加え、《ムーアランドの憑依地》を筆頭とする数々の優良カードがありますが、他の色もカードパワーという面では決して引けをとりません。
そのため、2色目をどの色にするのがいいかは、今後の研究材料と言えます。まずは比較的完成度の高い「青白」から試してみてもいいでしょうが、ノウハウを掴んだ後は、ぜひとも他の色にもチャレンジしてみてください。
~早くもメタられる側に!? 今後の展望~
さてさて、ここまでいくつかの「《秘密を掘り下げる者》」デッキを紹介してきましたが、世の中は早くもミラーマッチ対策に目を向けてきています。そしてそれが色濃く表れたデッキが、すでに結果を残しているのがMOの世界。24時間、いつでもトーナメントが開かれているのは伊達ではありません。
「青白イリュージョン(最新型)」
10 《島》 4 《金属海の沿岸》 3 《氷河の城砦》 3 《ムーアランドの憑依地》 -土地(20)- 4 《秘密を掘り下げる者》 4 《幻影の熊》 4 《非実在の王》 4 《幻影の像》 4 《瞬唱の魔道士》 1 《縫い合わせのドレイク》 -クリーチャー(21)- |
4 《ギタクシア派の調査》 2 《はらわた撃ち》 4 《思案》 3 《蒸気の絡みつき》 4 《マナ漏出》 2 《四肢切断》 -呪文(19)- |
2 《縫い合わせのドレイク》 2 《精神的つまづき》 1 《はらわた撃ち》 2 《雲散霧消》 2 《瞬間凍結》 1 《否認》 1 《四肢切断》 2 《機を見た援軍》 1 《迫撃鞘》 1 《ムーアランドの憑依地》 -サイドボード(15)- |
一見そこまで大きな変化はないように見えるかもしれませんが、最も重要な変更は《縫い合わせのドレイク》の採用です。
これは特にミラーマッチで効果的な1枚で、《四肢切断》以外で対処されない飛行のファッティは、それだけでゲームを決定付けてくれます。相手の(夜)《昆虫の逸脱者》を問答無用で受け止めてくれる3/4というサイズは、安定感抜群。
唯一、相手側の《幻影の像》だけ気になりますが、これは《はらわた撃ち》でも《蒸気の絡みつき》でも対処できますし、もし仮に除去できなくても睨みあいになるだけなので、躊躇せずにキャストできるのも頼もしい限りです。
サイドボードと合わせて4枚のリストをよく見かけますが、ミラーマッチでは墓地にクリーチャーが溜まらない展開も多く、安定して2枚目、3枚目をキャストできるかは少し疑問視してしまいます。そのため、個人的には3枚をお勧めしたいです。
とはいえ、1枚は確実に引きたいことを考えると、4枚でもいいような気もしますが、ここはもう少し検討してまたご報告できればと思います。
このリストにはミラーマッチで切り札となりえるもう1種類のカードが採用されていて、それはサイドボードの《迫撃鞘》です。
ミラーマッチ対策として、《縫い合わせのドレイク》が先行されているため、そこまで多くの数は取れませんが、相手の「イリュージョン」クリーチャーを完封できるだけでなく、《ムーアランドの憑依地》と組み合わせることで、生け贄にするクリーチャーに困ることもありません。
対「緑白/青白ビートダウン」戦でも活躍が期待できるので、これもまた要注目のテクニックと言えるでしょう。
最後に、この系統のデッキの持つ付加価値について説明して、お別れしたいと思います。
~使うだけで効果が? リミテッドスキルの上達~
これはこの記事の本題であるスタンダードとはあまり関係ないのですが、このデッキはリミテッドのスキルアップにもうってつけです。
今週だけで何度となく解説した通り、1ターン目に《秘密を掘り下げる者》が出ればそのまま圧勝してしまうことの多いデッキですが、それ以外の場合は比較的接戦になることが多いです。
そうなってくると、《蒸気の絡みつき》のようなバウンスや、デッキ内にごくわずかしか入っていない《はらわた撃ち》や《四肢切断》の使い方が、ダイレクトに結果に響いてきます。
これらを無計画に撃ち続けるとすぐに息切れを起こしてしまうので、ある程度ダメージ計算の目処が立ってから使うように心掛けたいですね。
手札次第では1ターン目の《極楽鳥》に対して《蒸気の絡みつき》を撃つ展開だってありますし、そういった細かな気配りを常日頃から行えるようになれば、リミテッドの戦闘フェイズ、または除去呪文の使い方の技術も向上してくると思います。
《ギタクシア派の調査》の入ったリストなら計算のしやすさもグッと上がりますし、そういった意味でもこのデッキはマジックの練習をする上でかなり良いデッキだと思います。
なかなかリミテッド戦の勝率が上がらない・・・もしもそんな悩みをお持ちであれば、スタンダードを楽しみながら、ついでにリミテッドのスキルアップも狙えるこのデッキはいかがでしょうか? 僕の個人的なリミテッドのコツは、除去呪文の使い方にあると考えるので、このデッキはきっとあなたのお役に立つと思いますよ!
デッキの解説は以上になります。できるだけ「《秘密を掘り下げる者》」デッキの良さを伝えられるように努めたつもりですが、まだこのデッキの強さに対して半信半疑という方は、Magic Onlineの大会結果(ページ右下)で、MOの結果をチェックしてみてください。
中でも、「《秘密を掘り下げる者》」デッキの強さを象徴しているのは、このトーナメントの結果だと思います。
Constructed Standard Event #3014122 on 11/12/2011 in Daily Events
掲載されている24人中8人、そして全勝5人中4人が《秘密を掘り下げる者》を4枚使用しています。
これは少し出来過ぎではありますが、とにもかくにも、MOをやっていて《秘密を掘り下げる者》を出されない日はないくらいの活躍をしているのが現状です。
これが一過性のもので、たまたまそれが世界選手権の直前にきただけなのか、それともこのデッキのパワーは本物なのか。
過去にも、MOで勝ち続けたデッキがプロツアー本番で強烈にメタられ、こけてしまうというのはよく見られた現象ですが、このデッキの勝ちっぷりは、そういったものを超越しているように感じています。その答えは、今週末の世界選手権で明らかになることでしょう。
「《秘密を掘り下げる者》」デッキ以外にも、先週紹介したコントロールの行く末や、まだ見ぬ新デッキの登場も期待できますし、スタンダードラウンドだけを見ても、カバレージを見るのが楽しみで楽しみで仕方ありませんよね!
みなさんも、お気に入りのプレイヤーや、お気に入りのデッキを使っているプレイヤーをぜひとも一緒に応援しましょう。決勝ラウンドもスタンダードで行われるので、最終日まで目が離せませんよ!
来週は、そんな世界選手権のトップ8デッキを解説していきたいと思っています。
それでは、また来週ー!
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