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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第66回:新カードがもたらした可能性・基本セット2012で強化されたデッキ集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2011.08.18
第66回:新カードがもたらした可能性・基本セット2012で強化されたデッキ集
こんにちはー。
今週から水曜日連載から、木曜日連載に移ることになりました。内容はスタンダードのままなので、今週からもよろしくお願いいたします。
他にもプロツアー・フィラデルフィアのフォーマットがエクステンデッドからモダンに変更になったりと、激動の1週間でしたね。
モダンに関しては、シミチン(清水 直樹)さんが非常にクオリティの高い記事を投稿してくれていたので、新フォーマットに興味のある方は、ぜひそちらをご覧になってください。
今週はローグデッキ特集をしようと思っていたのですが、少し予定を変更して、基本セット2012で強化されたデッキを見ていきたいと思います。アメリカ選手権などを追いかけていたために拾えなかったデッキを、主に記念すべき100回目の開催を迎えた東京の大会「五竜杯」を中心に見ていきます。カバレージも充実しているので、そちらも要注目ですね。
それでは、今週もはりきっていってみましょー!
「赤単ゴブリン」
8 《山》 4 《ぐらつく峰》 4 《乾燥台地》 4 《沸騰する小湖》 -土地(20)- 4 《メムナイト》 4 《ゴブリンの先達》 4 《ゴブリンの付け火屋》 4 《ゴブリンの投火師》 4 《ゴブリンの奇襲隊》 4 《渋面の溶岩使い》 4 《ゴブリンの戦煽り》 -クリーチャー(28)- |
4 《壊滅的な召喚》 4 《稲妻》 4 《ゴブリンの手投げ弾》 -呪文(12)- |
4 《嵐血の狂戦士》 4 《変異原性の成長》 4 《四肢切断》 3 《反逆の印》 -サイドボード(15)- |
「赤単」マスターとして知られる、樽元気さん考案のゴブリンデッキがこちらの「No.1」です。
デッキのスペルの大多数が1マナで占められており、これにより圧倒的なまでの手数で対戦相手を瞬殺することが可能になっています。
実際に僕もMOで2回ほど当たったのですが、負けた試合のうち2回は3キル、1回は4キルされました。
今までだと、仮にこれほど軽いマナ域に寄せた構築をしようとも、3キルは不可能だったのですが、それを可能にしたのは基本セット2012で採録された《ゴブリンの手投げ弾》です。
1マナで5点というありえないほどに高性能なこのカードは、「ゴブリン」デッキならば《稲妻》を超える優秀な火力で、最強のフィニッシュブローになります。
このカードがスタンダードに戻ってきたというのは非常に大きなトピックであり、MOでもそれを受けて「ゴブリン」型の「赤単」が急激に増えています。
このデッキの基本戦略は、攻めて攻めて攻めまくる。ただこれだけです。
相手が少しでももたつけば3~4ターンの間に葬り去ることが可能ですが、仮に除去などで妨害されるようであれば、このデッキの「プランB」である《壊滅的な召喚》+《ゴブリンの奇襲隊》の出番になります。
特に《審判の日》や《黒の太陽の頂点》のような全体除去の返しに有効なコンボなので、対戦相手のデッキにそれらが入っている場合は、そのコンボだけ残して全力で展開し、全体除去を誘うようにプレイしましょう。
サイドボードもその基本戦略を崩すことなく、対戦相手のデッキに合わせて、カードを入れ替える形になります。
《嵐血の狂戦士》と《変異原性の成長》は、このデッキが最も苦手とする全体除去である《紅蓮地獄》対策として機能しますね。
メインから《紅蓮地獄》を搭載しているデッキはほとんどいませんが、サイド後には「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」と「青赤《欠片の双子》」デッキという2つのTier1デッキが使用してくるので、サイドボードでそれに耐性を付けるというのは非常に理にかなっています。
《四肢切断》は「青赤《欠片の双子》」デッキや、「緑白ビートダウン」のようなビートダウンデッキ全般に効く優良除去。いくらこのデッキが速いデッキと言えど、純粋なコンボデッキであり、サイドボードに《紅蓮地獄》を擁する「青赤《欠片の双子》」にスピード勝負を挑むのは得策ではないので、サイド後は相手のコンボを阻害しながら攻めていくプランがいいでしょう。
《反逆の印》は言わずと知れた「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」対策ですね。このマッチアップも、サイド後は《紅蓮地獄》の存在があるがゆえに、クリーチャーをバンバン展開していくことはできません。そこで《反逆の印》で《原始のタイタン》を奪う→《ぐらつく峰》×2で11点という必殺技を用いることで、削らなければならないライフの水準が一気に下がるので、《反逆の印》さえ持っていれば、ゲームの運び方が楽になるというわけですね。
最後に、このデッキにとって最大の天敵と言える《機を見た援軍》について、このデッキを使用してプロツアー予選を抜けたまつがん(伊藤 敦)さんの見解を載せておきます。
「《機を見た援軍》は環境に少ないと思ったからこそこのデッキを使った。だから《機を見た援軍》に対して特別な対策は取っていないし、それを気にしなければいけないようであれば、このデッキを使うべきではない。」
この意見に僕も賛成で、このデッキの売りはその圧倒的な速度にあります。《機を見た援軍》を意識するのであれば、《オキシド峠の英雄》などを入れる必要がありますが、このデッキはそうはせずに、徹底的にマナカーブを下げることで、その他のデッキに対して優位を得ています。《機を見た援軍》を無視してまで手に入れたその奇襲性と手数の多さはこのデッキの大きな武器になるので、《機を見た援軍》を意識するのであれば、まつがんさんの仰るように、別のリストを使用するほうがいいでしょう。
今は強いデッキの種類が多いため、「赤単」だけを強烈にメタるのは難しいこともあり、「赤単」を使うタイミングとしては絶好の機会と言えると思います。環境的にメインから《機を見た援軍》を積んでいるデッキは「Caw-Blade」くらいしかありませんしね。
ですがもし、「赤単」を使いたいけど《機を見た援軍》がどうしても気になる、という方は、《ゴブリンの酋長》や《オキシド峠の英雄》の入った少し重めの「ゴブリン」がお勧めです。
そのリストなら、展開次第ではありますが、《機を見た援軍》1発くらいならなんとかなることもあります。
12 《山》 4 《沸騰する小湖》 4 《乾燥台地》 2 《ぐらつく峰》 -土地(22)- 4 《ゴブリンの先達》 4 《ゴブリンの奇襲隊》 3 《渋面の溶岩使い》 2 《トゲ撃ちの古老》 4 《ゴブリンの戦煽り》 4 《燃えさし運び》 4 《ゴブリンの酋長》 2 《オキシド峠の英雄》 -クリーチャー(27)- |
4 《稲妻》 4 《ゴブリンの手投げ弾》 3 《焼尽の猛火》 -呪文(11)- |
4 《ヴァルショクの難民》 3 《躁の蛮人》 1 《オキシド峠の英雄》 4 《焼却》 1 《焼尽の猛火》 2 《転倒の磁石》 -サイドボード(15)- |
「《出産の殻》」
アメリカ選手権があったりでなかなか紹介できなかったのですが、個人的に早く紹介したくてうずうずしていたのが「《出産の殻》」デッキです。基本セット2012加入以降、オーストラリア選手権優勝や、フランス選手権でのトップ8など、すでにいくつもの輝かしい成績を収めています。
僕がこのデッキを紹介したかった理由は、単純に《出産の殻》が大好きだからというだけではなく、基本セット2012で最も強化されたデッキこそが「《出産の殻》」デッキだと思っているからです。
基本セット2012がリリースされる前は、連載第59回で紹介した「緑黒」バージョンくらいしかいなかったのですが、基本セット2012がMO上で発売されて以来、実に様々なカラーバリエーションが現れ、結果を残すようになっています。
少しリストが多くなってしまうのですが、今回は基本セット2012がどのようにこのデッキを強化したのか、全てのリストに共通するポイントを探っていきたいと思います。その前に連載第59回を読んでいただけると、「《出産の殻》」デッキの動きなどを、より一層理解していただきやすくなると思うので、お時間がある方はぜひそちらも読んでみてください。
4 《島》 2 《森》 2 《山》 4 《銅線の地溝》 3 《怒り狂う山峡》 4 《霧深い雨林》 4 《沸騰する小湖》 1 《ハリマーの深み》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《草茂る胸壁》 2 《呪文滑り》 1 《幻影の像》 4 《詐欺師の総督》 1 《探検家タクタク》 2 《真面目な身代わり》 1 《溶鉄の尾のマスティコア》 1 《酸のスライム》 1 《隠れしウラブラスク》 2 《霜のタイタン》 -クリーチャー(23)- |
3 《思案》 3 《定業》 3 《出産の殻》 4 《欠片の双子》 -呪文(13)- |
1 《呪文滑り》 1 《シルヴォクの模造品》 1 《オキシダの屑鉄溶かし》 1 《強情なベイロス》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《ワームとぐろエンジン》 2 《自然の要求》 4 《紅蓮地獄》 3 《マナ漏出》 -サイドボード(15)- |
5 《森》 4 《島》 3 《沼》 4 《闇滑りの岸》 4 《新緑の地下墓地》 1 《霧深い雨林》 -土地(21)- 4 《極楽鳥》 3 《ラノワールのエルフ》 3 《森のレインジャー》 2 《幻影の像》 1 《呪文滑り》 3 《海門の神官》 1 《詐欺師の総督》 1 《シルヴォクの模造品》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《納墓の総督》 1 《皮裂き》 1 《強情なベイロス》 2 《酸のスライム》 1 《失われた真実のスフィンクス》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《霜のタイタン》 1 《墓所のタイタン》 1 《虐殺のワーム》 1 《囁く者、シェオルドレッド》 -クリーチャー(31)- |
4 《出産の殻》 4 《定業》 -呪文(8)- |
1 《血の求道者》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《強情なベイロス》 1 《皮裂き》 4 《自然の要求》 2 《見栄え損ない》 1 《破滅の刃》 4 《記憶殺し》 -サイドボード(15)- |
4 《森》 2 《島》 1 《平地》 1 《沼》 4 《剃刀境の茂み》 4 《金属海の沿岸》 4 《霧深い雨林》 2 《地盤の際》 -土地(22)- 4 《極楽鳥》 3 《ラノワールのエルフ》 2 《ヴィリジアンの密使》 2 《幻影の像》 3 《海門の神官》 1 《刃の接合者》 1 《シルヴォクの模造品》 2 《ファイレクシアの変形者》 1 《真面目な身代わり》 1 《石角の高官》 1 《強情なベイロス》 2 《酸のスライム》 1 《剃刀のヒポグリフ》 1 《正義の執政官》 1 《太陽のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《大修道士、エリシュ・ノーン》 -クリーチャー(28)- |
4 《出産の殻》 4 《思案》 2 《滞留者ヴェンセール》 -呪文(10)- |
2 《強情なベイロス》 1 《酸のスライム》 1 《正義の執政官》 3 《瞬間凍結》 3 《帰化》 2 《忘却の輪》 3 《記憶殺し》 -サイドボード(15)- |
(お詫び:当初掲載のデッキリストに大幅な乱れがありました。お詫びして訂正いたします。(編集))
基本セット2012の影響を簡単にまとめさせていただきますと、《幻影の像》と《真面目な身代わり》の2枚が加わったことです。
前者は、以前であれば《極楽鳥》と《ラノワールのエルフ》を生け贄に捧げた際に貧弱なクリーチャーにしか繋がらない、という弱点を克服してくれる、このデッキが躍進した最大の理由とも言える強力な1枚です。
そもそも、このデッキは《出産の殻》を2ターン目に出すためにマナクリーチャーを多めに入れる必要があるのですが、しかしながらそれらを生け贄に捧げても弱いクリーチャーしか出ないので戦線を支えきれない、というのはこのデッキが抱えていたジレンマでした。
ですが《幻影の像》さえいれば、もうそんな心配はいりません。マナ加速としての役割を終え、必要のなくなったマナクリーチャーを生け贄に捧げるだけで、戦場にいる最強のクリーチャーが手に入るようになったのです。
《酸のスライム》を持ってきたいけれど、ライブラリーの中にはもう《酸のスライム》がいない。こんな展開も《幻影の像》さえライブラリーに残っていれば解決できますし、本当にこのデッキにぴったりの便利な1枚です。
最後に紹介した「青緑白」バージョンなら《太陽のタイタン》で釣ることも可能ですし、縦横無尽の活躍を見せてくれます。
もう1枚の《真面目な身代わり》は、《出産の殻》デッキのために再録されたと言っても過言ではない、4マナ域の新たなるエースクリーチャー。実は以前の4マナ域は、対戦相手のデッキがコントロールだった場合に有効牌がなかったのですが、《真面目な身代わり》はどんなデッキを相手にしようとも、その名に恥じぬ堅実な仕事っぷりを発揮してくれます。
そのドロー能力のおかげで、《出産の殻》で生け贄に捧げる前に除去されても困ることが少ないですし、デッキの潤滑油としていつでも役に立ってくれる1枚です。
全てのリストに共通するのはこの2枚のみです。「青緑赤」なら《欠片の双子》コンボがあったり、それぞれに長所があるので、多少強引なまとめかただとは自負していますが、たった2種類のカードが加わっただけで、これほどまでに日の目を浴びることになった「《出産の殻》」デッキは今後の注目株と言って差し支えないでしょう。
最後に、これらのリストの中でも最も注目を集めている「青緑白」バージョンについて解説させていただきます。
~Olivier Ruelの残した功績・「青緑白《出産の殻》」~
今回紹介した3つのリストの中で、最も結果を残しているのは最後に紹介した「青緑白」バージョンです。フランス選手権でOlivier Ruelが使用しトップ8に残ったこのリストは、その面白さも相まって瞬く間に世に広がり、結果を残すようになりました。
前述の2枚に加え、3色目に白を選んだこのバージョンでは、さらに《石角の高官》と《正義の執政官》という強力な武器が加わることになります。
特に《石角の高官》と《滞留者ヴェンセール》のコンボは特筆すべき強さであり、対戦相手のデッキがビートダウンだろうとコントロールだろうと、はたまた「青赤《欠片の双子》」デッキであろうとも、対処されなければゲームに負けることはなくなります。そうなってしまえば、そのうちに《出産の殻》だったり《滞留者ヴェンセール》の最終奥義だったりで悠々と勝利することができるでしょう。
このコンボの秀逸な点は、《滞留者ヴェンセール》が単体で強いことです。「緑黒」バージョンにおける《ミミックの大桶》のような立ち位置のカードなのですが、起動にマナがかからないことや、3つの能力全てが強いこともあり、重いだけあって《ミミックの大桶》のほぼ完全な上位互換と言えます。
《石角の高官》は《出産の殻》でサーチすることができますし、《滞留者ヴェンセール》さえ引いてしまえば比較的揃いやすいコンボなのもいいですね。このコンボの存在こそ、「白」を選ぶ最大の理由と言ってもいいでしょう。
《正義の執政官》は、《酸のスライム》とは違い、クリーチャーもプレインズウォーカーも除去できる万能カードです。しかし《出産の殻》がないと死ぬのが困難なので、確定パーツというほどではないですね。
他にもドローサポートとして基本セット2012から《思案》が採用されていますし、「白」バージョンであればサイドボードに《機を見た援軍》を入れることもできます。
ドローサポートに関しては、僕は《定業》の方が好きなので、今現在《思案》を使うのはどうかなと思っているのですが、《定業》がローテーション落ちしたあとのドローサポートを基本セット2012で確保できたのは大きなアドバンテージと言えます。
それとこのリストを紹介した理由として、サイドボードに最近流行りのギミックを搭載していることが挙げられます。
それはサイドボードに4色目の「黒」を足して、《記憶殺し》を入れるというアプローチですね。
「《出産の殻》」デッキの特徴として、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」と「青赤《欠片の双子》」に相性があまりよくないというものがあるので、この「黒」を足すアイディアはそれを緩和できる理想的なサイドボードプランと言えるでしょう。
《瞬間凍結》と合わせて使うことで、より一層の高い勝率が維持できると思うので、みなさんもぜひこのプランを採用してみてください。
最後に、《出産の殻》を入れたコントロールデッキを使用して、見事五竜杯100回大会で準優勝した山川さんのデッキを紹介しておきます。
3 《森》 3 《島》 1 《平地》 4 《金属海の沿岸》 2 《天界の列柱》 4 《剃刀境の茂み》 2 《活発な野生林》 4 《霧深い雨林》 2 《地盤の際》 1 《埋没した廃墟》 -土地(26)- 4 《極楽鳥》 1 《森のレインジャー》 1 《ヴィリジアンの密使》 1 《幻影の像》 4 《海門の神官》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《石角の高官》 1 《強情なベイロス》 2 《酸のスライム》 1 《太陽のタイタン》 -クリーチャー(18)- |
2 《定業》 2 《マナ漏出》 1 《忘却の輪》 2 《出産の殻》 2 《予感》 1 《審判の日》 1 《精神隷属器》 2 《ジェイス・ベレレン》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 2 《造物の学者、ヴェンセール》 -呪文(16)- |
1 《堂々たる撤廃者》 1 《蒼穹の魔道士》 1 《悪斬の天使》 4 《瞬間凍結》 1 《取り消し》 1 《冷静な反論》 1 《忘却の輪》 2 《神聖の力線》 2 《審判の日》 1 《ギデオン・ジュラ》 -サイドボード(15)- |
《予感》や《精神隷属器》など、独自のカード選択が目を引きますね。このデッキは時間の関係で使うことができませんでしたが、《出産の殻》は2枚でも効果的に機能するという、画期的な構築を見せていただきました。
今回紹介したいくつかのデッキリストが良い例ですが、たったひとつのセットが入るだけで、《出産の殻》はこれだけの活躍を見せるようになりました。1種類のクリーチャーが占める比重が大きなこのデッキは、新しいカードが少し増えるだけでも、大幅に強化されるということが、今回の記事で理解してもらえれば幸いです。
もちろん次のセットが出れば、このデッキの強さはさらに増すことでしょう。自分の好きなカードを使って、自分好みの構築ができる。みなさんもぜひ、あなただけの「《出産の殻》」デッキを完成させてみてください。
さて次に紹介するのは、現在のメタゲームが生み出した珍しいデッキです。
ヒントは、「Caw-Blade」、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」、「《出産の殻》」デッキが、「あるひとつの動作」を普通のデッキよりも多くの回数行うことです。
もうすでにお気付きの方も多いかもしれませんが、その答えはこちらになります。
「青赤ライブラリーアウト」
6 《島》 3 《山》 4 《沸騰する小湖》 2 《霧深い雨林》 3 《ハリマーの深み》 2 《地盤の際》 3 《広漠なる変幻地》 -土地(23)- -クリーチャー(0)- |
4 《思案》 4 《定業》 4 《彼方の映像》 4 《紅蓮術士の昇天》 4 《マナ漏出》 4 《乱動への突入》 4 《罠師の引き込み》 3 《紅蓮地獄》 1 《跳ね返りの罠》 4 《書庫の罠》 1 《鞭打ちの罠》 -呪文(37)- |
2 《呪文貫き》 3 《焼却》 4 《瞬間凍結》 1 《紅蓮地獄》 2 《金屑の嵐》 1 《跳ね返りの罠》 1 《ルーン炎の罠》 1 《赤の太陽の頂点》 -サイドボード(15)- |
そうです、さきほど紹介した3つのデッキは、「カードをサーチする」回数が多いのです。フェッチランドはもちろんのこと、《戦隊の鷹》《耕作》や、《原始のタイタン》《出産の殻》など、今をときめくデッキは《書庫の罠》の「罠コスト」を達成する条件である「カードをサーチする」行為を頻繁に行うんですね。
そこを悪用するのが、こちらの「青赤ライブラリーアウト」デッキというわけです。このデッキはサーチを多用するデッキにはめっぽう強い半面で、「赤単ゴブリン」のような全くサーチをしないデッキには相性が悪いです。《紅蓮地獄》のようなカードで若干の耐性は持たせていますが、本当にそれしかないので、ビートダウンに当たってしまうとどうしようもないですね。
しかしサーチをするデッキ相手には相当に相性が良いので、ビートダウンが少ないメタゲームになれば、一気にTier1に躍り出る可能性もあります。
実際に僕も、MOでこの系統のデッキが流行った時期は上記3つのデッキの使用を控えていたくらいです。それほどまでに「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」などでこのデッキに勝つのは難しいので、もしもこのデッキが流行るようであれば、《引き裂かれし永劫、エムラクール》のようなライブラリーに戻るカードで対抗するようにしましょう。
このデッキも基本セット2012から加入した《彼方の映像》で強化されました。以前であれば、ライブラリーを削るという行為は、ゲーム内容に影響を及ぼすことはほとんどありませんでしたが、《彼方の映像》の能力は、このデッキの勝ち手段に大きな付加価値を持たせてくれます。
そして「ブレーキの壊れたデッキビルダー」、らっしゅ君こと高橋純也は、このアーキタイプをさらに昇華させています。
7 《島》 4 《森》 1 《山》 4 《霧深い雨林》 4 《沸騰する小湖》 4 《進化する未開地》 -土地(24)- 4 《面晶体のカニ》 4 《水蓮のコブラ》 -クリーチャー(8)- |
4 《思案》 4 《定業》 4 《彼方の映像》 4 《探検》 4 《乱動への突入》 4 《書庫の罠》 4 《記憶の熟達者、ジェイス》 -呪文(28)- |
4 《強情なベイロス》 2 《聖別されたスフィンクス》 1 《ワームとぐろエンジン》 4 《外科的摘出》 4 《紅蓮地獄》 -サイドボード(15)- |
「ライブラリーアウト」デッキに、《水蓮のコブラ》と《探検》を足した「青緑Turboland」のようなデッキですね。
もちろん基本戦略はライブラリーを狙うのみです。緑のマナ加速を活かし、新戦力である《記憶の熟達者、ジェイス》までをも投入しているのがこのデッキの特徴でしょう。
《精神を刻む者、ジェイス》がそうだったように、《記憶の熟達者、ジェイス》も相手側の《ジェイス・ベレレン》が最大の課題となるのですが、《水蓮のコブラ》はそれを牽制する役割をも果たしてくれます。
上で紹介した「青赤」バージョンと同じく、相手がサーチを多用するデッキなら無条件で相性がいいですし、このデッキはそれに加え《面晶体のカニ》《水蓮のコブラ》が生き残る相手にも相性がよくなっています。
弱点も「青赤」バージョンと同じで、ビートダウンに弱いのですが、緑の力で《強情なベイロス》や《ワームとぐろエンジン》を使えるようになっているので、ここは「青赤」よりも幾分かましになっていますね。
相手がビートダウンデッキの場合は、サイドボード後に、ライブラリーアウトの要素を全て抜いて、ただの「青緑赤Turboland」のような振る舞いができるのを覚えておいてください。
今週の最後を飾るのは、オリジナルデッキをこよなく愛する田中久也さん謹製の「Big Red」です。
「ビッグ・レッド」
14 《山》 1 《島》 4 《沸騰する小湖》 1 《地盤の際》 -土地(20)- 2 《チャンドラのフェニックス》 3 《真面目な身代わり》 3 《業火のタイタン》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《無限に廻るもの、ウラモグ》 -クリーチャー(10)- |
4 《永遠溢れの杯》 4 《太陽の宝球》 2 《稲妻》 3 《噴出の稲妻》 3 《炎の斬りつけ》 4 《テゼレットの計略》 2 《予感》 2 《大地のうねり》 1 《精神隷属器》 1 《赤の太陽の頂点》 2 《燃え立つチャンドラ》 1 《炬火のチャンドラ》 1 《解放された者、カーン》 -呪文(30)- |
3 《紅蓮地獄》 2 《焼却》 1 《跳ね返りの罠》 1 《核への投入》 2 《攻撃的な行動》 1 《殴打頭蓋》 1 《精神隷属器》 3 《槌のコス》 1 《解放された者、カーン》 -サイドボード(15)- |
このデッキは序盤を軽量除去で凌ぎ、《太陽の宝球》や《永遠溢れの杯》でのマナ加速からフィニッシャーを連打して勝利することになります。《真面目な身代わり》はこの手のデッキでもマナ加速として良い働きをしますね。
他にもマナ加速として採用されている《大地のうねり》は驚きの一言に尽きます。《太陽の宝球》経由なら、わずか3ターン目にして《業火のタイタン》などを召喚できる強力なものです。
(編注:当初の内容に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。)
いかにマナ加速が大量に入っているとはいえ、最初は土地が少なすぎるかなという印象を受けたのですが、実際に使ってみると20枚でも十分でした。しかしサイド後にはマナ・アーティファクトが割られることも多いので、そうなると安定して3枚くらいの土地は欲しいため、《チャンドラのフェニックス》は土地にしてもいいかもしれません。
ただこのデッキの顔とも言える《燃え立つチャンドラ》と相性がよかったりもするので、このデッキを使ってみようという方は、初めはこのままのリストを使って徐々に変えていってほしいですね。
あまりデッキの動きとは関係ないのですが、メインから《無限に廻るもの、ウラモグ》が入っているので、さきほど紹介した「ライブアリーアウト」にナチュラルに強いのも良いですね。
繰り返しになりますが、今は本当に強いデッキの数が多いです。しかし今回紹介したデッキの結果が示すように、オリジナルやTier1以外のデッキにも十分にチャンスがあると思います。
僕の記事で、みなさんがお気に入りのデッキを見つけてくれたら嬉しいです。
それでは、また来週ー!
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