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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第59回:新たなる時代の幕開け・《出産の殻》デッキ特集
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2011.06.22
第59回:新たなる時代の幕開け・《出産の殻》デッキ特集
こんにちはー!
今週は先週予告した通り、今密かに話題になっているデッキを紹介させてもらいたいと思います。しかしその前に禁止カードの話題に触れないわけにはいかないので、少しだけその話を。
おそらくみなさんご存じかと思われますが、スタンダードで《石鍛冶の神秘家》と《精神を刻む者、ジェイス》が禁止になりました。実際に禁止カードが発効するのは来月の1日からなので、今月中のリアルの大会では問題なく使うことができます。
この発表には賛否両論あるでしょうが、僕個人としては賛成です。僕は記事を書く関係上、「Decks of the Week」やリアルの大会結果をほとんどチェックしているのですが、「Caw-Blade」の上位入賞率は異常としか言いようのないものでした。
ひどい時はトップ8全てのデッキが「Caw-Blade」なんてこともありましたし、「Caw-Blade」のあまりの多さゆえに、最近では「Decks of the Week」を見ることに辟易としている自分がいたのも事実です。
そもそもメインから《帰化》系のカードが入るというのはあってはならない状況だと思いますし、それが許容される環境であったことが「Caw-Blade」の偉大さを表していると言えるでしょう。
そんな状況に終止符を打ったWizardsの英断はすばらしかったと思います。これからは《原始のタイタン》がまた環境を圧巻するかもしれませんが、「Caw-Blade」の一強時代と比べると、様々なデッキに可能性があるでしょうしね。
今週紹介させていただくデッキもそれにあたるデッキで、環境から《帰化》系のカードが減ることが追い風になるものです。
前置きが長くなってしまいましたが、それではリストをご覧いただきましょう!
「緑黒《出産の殻》」
13 《森》 6 《沼》 4 《新緑の地下墓地》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 2 《ラノワールのエルフ》 3 《ヴィリジアンの密使》 1 《森のレインジャー》 1 《巡礼者の目》 1 《シルヴォクの模造品》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《吸血鬼の夜鷲》 1 《裏切り者グリッサ》 1 《納墓の総督》 1 《バーラ・ゲドの蠍》 1 《皮裂き》 1 《強情なベイロス》 1 《溶鉄の尾のマスティコア》 3 《酸のスライム》 1 《分裂するスライム》 1 《虐殺のワーム》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《囁く者、シェオルドレッド》 -クリーチャー(27)- |
2 《破滅の刃》 2 《喉首狙い》 2 《ミミックの大桶》 4 《出産の殻》 -呪文(10)- |
2 《ヴィリジアンの堕落者》 3 《強情なベイロス》 3 《酸の巣の蜘蛛》 4 《強迫》 1 《蔑み》 2 《破滅の刃》 -サイドボード(15)- |
このデッキはMOでたまたま当たったデッキで、その強さと楽しそうな動きに一目ぼれしてしまい、「Decks of the Week」に載っていたものをコピーするにいたりました。
探すのに少しだけ根気が要るものの、「Decks of the Week」に載っていないデッキはないはずなので、みなさんも気になったデッキがあればぜひ探してみてください。
(編注:現在の最新(6/16)発表分はこちらから。冒頭の文章からのリンクも同様です。過去分は「Activity Archive」から探すか、Magic Onlineページ「What's Happening?」からも最新のトーナメント結果を確認することができます。(いずれも英語))
さて、それでは解説に移りたいと思います。
まず目を引くのは、その1枚差しの多さでしょう。これはこのデッキのキーカードが《出産の殻》であることに起因していて、大多数の1枚差しクリーチャーは「戦場に出たとき」、または「戦場から墓地に落ちたとき」に誘発する能力を持っています。
それらのクリーチャーを状況に合わせてサーチしていき、最終的に《囁く者、シェオルドレッド》に繋げるのが主な戦略となります。
とは言え、これだけ長いデッキリストを見てもいまいちピンとこないと思うので、役割をマナコスト順に解説していきましょう。
~1マナ~
古来より存在する1マナのマナ加速。このデッキだと2ターン目に《出産の殻》や《ミミックの大桶》を出せるので非常に重要です。《出産の殻》の性質上、このカードは早く出せば出すほど真価を発揮しやすいため、最低でも6枚は1マナクリーチャーを入れたいですね。
~2マナ~
これもまたマナ加速の部類に入りますが、これらのクリーチャー陣は1マナのものとは違い、《出産の殻》を早く出すためではなく、《出産の殻》着地後に役立つチョイスになっています。
《ヴィリジアンの密使》が良い例ですが、こいつは死ななければマナ加速の役割を果たさないので、《出産の殻》とのコンボを前提に採用されています。「赤単」系の相手には、除去されてもマナ加速できるナイスブロッカーになりますが、基本的には《出産の殻》の餌で、それ以上でもそれ以下でもないですね。
《森のレインジャー》は《ヴィリジアンの密使》とは違い、確実に土地を供給してくれるマナクリーチャーのような存在です。《出産の殻》がある状況でも、アンタップインの土地が欲しい場合は《ヴィリジアンの密使》ではなく、こちらをサーチすることになります。
~3マナ~
1 《巡礼者の目》、1 《シルヴォクの模造品》、1 《ヴィリジアンの堕落者》、1 《吸血鬼の夜鷲》、1 《裏切り者グリッサ》
ここからは種類が多いので1枚ずつ見ていきましょう。
《巡礼者の目》
3マナの《森のレインジャー》なんですが、《出産の殻》のためにマナ域をずらす必要があるので《森のレインジャー》と分けてあります。《森のレインジャー》とは違い、《ミラディンの十字軍》や《饗宴と飢餓の剣》付きのクリーチャーを止められるというメリットもあります。
インスタントタイミングで起動できる歩く《帰化》ですね。いきなり現れた《饗宴と飢餓の剣》だろうと《欠片の双子》だろうとこれならば大丈夫です。
《石鍛冶の神秘家》に支配されていた環境のマスターピースで、禁止カードの発表前だと確定パーツだったんですが、これからはそうではなくなるでしょう。
《吸血鬼の夜鷲》
ビートダウン系のデッキ相手全般に重宝します。特にこのデッキが苦手としている《ミラディンの十字軍》のダメージを、「絆魂」のおかげで緩和できるのはすばらしいです。《出産の殻》のためにライフを支払う展開が多いので、それを軽減するのにももってこいの1枚ですね。
《裏切り者グリッサ》
無敵の戦闘能力を誇る超人クリーチャー。戦闘で負けることはまずありませんし、破壊されてしまった《出産の殻》を拾えるのは便利ですね。《裏切り者グリッサ》と《ミミックの大桶》があることで、後述の《破滅の刃》と《喉首狙い》も、より劇的な場面を演出しやすくなります。
~4マナ~
1 《納墓の総督》、1 《バーラ・ゲドの蠍》、1 《皮裂き》、1 《強情なベイロス》、1 《溶鉄の尾のマスティコア》
《納墓の総督》
このデッキにおける縁の下の力持ちです。クリーチャー回収能力は《出産の殻》の燃料補給として十分なものですし、ハンデス能力もプレインズウォーカーを筆頭に、除去や《帰化》系のカードを落とせて便利です。
《バーラ・ゲドの蠍》
大変地味なんですが、在りし日の《石鍛冶の神秘家》や、《呪文滑り》を除去するのにうってつけの1枚です。正直なところ、そこまで強いカードではないのですが、これくらいのカードパワーでも「戦場に出たとき」の能力さえ持っていればチャンスがある、という良い見本だと思います。
《皮裂き》
《火炎舌のカヴー》を彷彿とさせるクリーチャー除去で、禁止カードが適用されるこれからはクリーチャーデッキが増えると予想されるので、今後は2枚以上入れてもいいかもしれません。
《強情なベイロス》
「赤単」系に強いだけでなく、こいつがいるおかげで躊躇なく《出産の殻》にライフを注ぎ込むことができます。これまた《皮裂き》同様、今後は増量を検討してもいいでしょう。
こいつは単体でのクロックの高さもさることながら、「《欠片の双子》」コンボを妨害するのにも一役買います。
~5マナ~
《酸のスライム》
間違いなくこのデッキの顔です。4マナからサーチするのは基本的にはこいつになります。固め引きした時の「ランデス戦略」も魅力的ですし、装備品を割れるのも環境にマッチしていましたね。
《石鍛冶の神秘家》の禁止によって多少の弱体化はしてしまったものの、これからもこのデッキを支えていく存在です。
《分裂するスライム》
除去耐性付き生物第1弾。《酸のスライム》は《稲妻》などで簡単に除去されてしまうので、ソーサリータイミングでしか起動できない《出産の殻》がアクティブになるまで生き残れないことが多々ありますが、そんな時は兄貴分の《分裂するスライム》の出番です。こいつを完全に除去できるカードは《未達への旅》くらいのものなので、そのまま殴り勝てることもしばしばあります。特にこれからは環境に《審判の日》が増えそうなので、除去耐性のあるこいつの存在は頼もしいの一言に尽きますね。
~6マナ~
1 《虐殺のワーム》、1 《ワームとぐろエンジン》
《虐殺のワーム》
このデッキの天敵と言える《ミラディンの十字軍》を除去できる優秀なクリーチャー。6マナ圏までくると、ただ強いだけではなく、《ミラディンの十字軍》に耐性があるものが好ましいですね。
第56回の連載で紹介した「緑白ビートダウン」デッキにおける《大修道士、エリシュ・ノーン》のような立ち位置です。
除去耐性付き生物第2弾。《強情なベイロス》と同じく、ライフゲイン能力はこのデッキに必要不可欠なものなので、そういった意味でも重宝します。《ミラディンの十字軍》をブロックできる点や、《出産の殻》で生け贄に捧げた時におまけが残る点も◎。
~7マナ~
1 《囁く者、シェオルドレッド》
所謂このデッキの「ゴール」です。ここまでたどり着いてしまえば逆転されることはほとんどありません。こいつが戦場にいれば、突然「《欠片の双子》」コンボにやられるなんてこともありませんし、見た目以上に効果の大きなラスボス。いかにして効率よく、それでいてちゃんと戦場を支えつつ7マナまで繋げるかが、このデッキを上手く使うポイントです。
~呪文~
ついでなのでクリーチャー以外も見ていきましょう。
自分のやりたいことを追求するだけだと、ただのファンデッキになりがちなので、こういった妨害手段をちゃんと搭載するのは重要です。《裏切り者グリッサ》《ミミックの大桶》と相性がいいので、デッキのやりたいことと全く無関係というわけではないのが嬉しいですね。
2 《ミミックの大桶》
このデッキは23枚の土地に加え、大量のマナクリーチャーが入っているので、どちらかというとマナスクリューよりもマナフラッドに陥る回数が多いです。また、《出産の殻》に極度に依存しているため、それがない場合に相手の戦力と真っ向から立ち向かっていては分が悪いという弱点もあります。
これはその昔「NWO」という《適者生存》を軸に据えたデッキが抱えていた問題、つまるところ《適者生存》を引かない場合にどうするかというものと全く同じなんですが、これを改善するには「常に安定したパフォーマンスを発揮するクリーチャーを増やす」だとか、「《適者生存》に準ずるカード、またはそれをサーチできるカードを入れる」などがあります。
最近の例で言うなら、第34回の連載の「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」における《原始のタイタン》の次に強いカードを探す感覚に似ていますが、《出産の殻》はかなりマニアックな部類のカードなので、残念ながら完全な代用品はありません。スタンダードには《出産の殻》をサーチするカードも《リリアナ・ヴェス》のような重いものしかないです。
しかし《出産の殻》に準ずるカードが《ミミックの大桶》というわけなんです。繰り返しになりますが、このデッキに入っているクリーチャーの大多数が「戦場に出たとき」に誘発する能力を持っているので、どれを「刻印」しても相手にとっては大きな脅威になります。《破滅の刃》《喉首狙い》で相手のクリーチャーを奪うことも可能ですし、もしも《出産の殻》と《ミミックの大桶》が共演しようものなら、一瞬でゲームに勝ててしまいます。
つまりマナフラッドと《出産の殻》を引かない展開、というこのデッキの2つの弱点を埋めてくれる優良カードですね。
4 《出産の殻》
このデッキのキーカードです。「Caw-Blade」のせいで、メインから《帰化》されてしまうという悲しい性を抱えていましたが、今回の禁止カード発表によって、少なくともメインから割られるなんてことはなくなりそうです。
これはこのデッキにとってこれ以上ない追い風で、このデッキがもっと活躍するきっかけになると感じています。
カードに書いてある通り、「ファイレクシア・マナ」のおかげで、ライフを支払えばわずか1マナで起動できるのですが、当然ですが必要最低限のライフを支払うのが理想となります。毎ターン2点を払うと、相手がダメージソースを持っていなくともすぐにライフが尽きてしまいますからね。
《強情なベイロス》は即座にライフゲインできるので勘定に入れていいのですが、《吸血鬼の夜鷲》と《ワームとぐろエンジン》はライフゲインするのにアタックが必要となるので、あまりそれらのライフゲインには頼らないようにプレイしましょう。
メインボードのカード解説は以上です。サイドボードは「Caw-Blade」用のカードが多いので、解説は省略させていただきます。
~プレイングの指針~
このデッキはプレイするのが非常に楽しいデッキなんですが、少しだけ扱いが難しいです。そのため、僕が気付いた点をまとめてみましたのでご覧ください。
1) 《出産の殻》にライフを払うかどうかの計算。
前述の通りこれが一番重要なポイントです。基本的には自分がこのターンに使えるマナと相談するだけなので、使い込めば少ない時間で計算できるようになると思います。
2) 持ってくるクリーチャーをきちんと選別する。
一見簡単そうに見えて、実は結構難しいです。例えば相手のアーティファクトを割りたい場合、2マナのクリーチャーをサクって《ヴィリジアンの堕落者》を出すのか、それとも4マナのクリーチャーをサクって《酸のスライム》を出すのか。それによって次のターンに持ってくることができるクリーチャーの選択肢はどう変化するのか。これも使いこめば慣れてくるので、とにかく練習あるのみですね。
理想の展開は、とにかく《囁く者、シェオルドレッド》にいち早くたどり着くことなので、サクるクリーチャーに悩んだら、重い方をサクって、積極的に大きなクリーチャーを喚ぶようにするといいでしょう。
注意すべき点は、ライブラリーに何マナのクリーチャーがどれだけ残っているかを把握することでしょうか。例えば、もしも4マナ域や5マナ域がライブラリーに残っていないとなると連鎖が止まってしまいますし、ただでクリーチャーを生け贄に捧げただけなんてことになりかねません。
これはデッキ構築の段階から意識すべき点で、どのマナ域にどのような役割のクリーチャーがどれだけいれば、途切れることなく連鎖できるかに留意してデッキを作りましょう。
さて、MOでは早速このデッキの改良がなされ、結果を残していますので、そちらも見てみましょう。
9 《森》 6 《沼》 4 《新緑の地下墓地》 4 《霧深い雨林》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 3 《ラノワールのエルフ》 4 《水蓮のコブラ》 2 《ヴィリジアンの密使》 1 《巡礼者の目》 1 《粗石の魔道士》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《吸血鬼の夜鷲》 1 《納墓の総督》 1 《皮裂き》 1 《強情なベイロス》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《酸のスライム》 1 《分裂するスライム》 1 《虐殺のワーム》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《囁く者、シェオルドレッド》 -クリーチャー(27)- |
1 《通電式キー》 2 《喉首狙い》 1 《破滅の刃》 2 《ミミックの大桶》 4 《出産の殻》 -呪文(10)- |
3 《呪文滑り》 1 《裏切り者グリッサ》 1 《復讐蔦》 3 《強情なベイロス》 1 《酸の巣の蜘蛛》 4 《強迫》 2 《破滅の刃》 -サイドボード(15)- |
最初のリストから変わった主なポイントは《水蓮のコブラ》と、《粗石の魔道士》+《通電式キー》の採用です。
《水蓮のコブラ》はマナフラッドの危険性はさらに増えるものの、《出産の殻》にライフを支払う展開が減りますし、《虐殺のワーム》《ワームとぐろエンジン》《囁く者、シェオルドレッド》などを《出産の殻》なしでも素早くキャストすることが可能となります。《ミミックの大桶》も含めると相当にマナ喰い虫なデッキなので、これは納得の採用と言えます。
しかし土地が23枚だけでは、土地が手札になく、ただの2/1バニラになってしまうこともしばしばあります。そのため、《ヴィリジアンの密使》とは違い任意のタイミングで手札に土地が来る《森のレインジャー》を入れたいですね。《出産の殻》があれば《ヴィリジアンの密使》で何ら問題ないのですが、こういった細かい変更も大切です。
《粗石の魔道士》+《通電式キー》は、《出産の殻》と《ミミックの大桶》を悪用する追加のギミックです。最初見た時は、これ以上《出産の殻》に依存するカードを入れることを疑問視していたのですが、このギミックさえあれば、《粗石の魔道士》をキャストしたターンに、《通電式キー》で《出産の殻》をアンタップして《粗石の魔道士》を生け贄に捧げ、《ファイレクシアの変形者》で《出産の殻》をコピーしてしまえば、《帰化》1枚だけでは対処されなくなります。
つまり《帰化》に弱くなるということはなく、むしろ耐性が付くとさえ言えるわけなんですね。
このギミックのおかげで、ゲーム中における《出産の殻》の使用回数が以前よりも増えていますが、それゆえにライフ管理も大変になっています。どちらのバージョンも非常にテクニカルで難しいですが、その分楽しいので頑張って練習してみてください。
~このデッキの弱点~
最後にこのデッキの弱点を確認していきましょう。
1) 《出産の殻》を引かない状況をどう対処するか。
これは前述の通り《ミミックの大桶》のようなカードを採用して防ぐしかないですね。継続的にアドバンテージを得ることができるプレインズウォーカーに頼るのもひとつの手です。
「プロテクション(黒)(緑)」を持つこれらのカードには常に気を配る必要があります。《ミラディンの十字軍》には《虐殺のワーム》や《ワームとぐろエンジン》で、《饗宴と飢餓の剣》には《酸のスライム》などで対処できますね。
3) 《精神を刻む者、ジェイス》に弱い。
今となっては関係のない話なので申し訳ないのですが、環境を牛耳っていたこのカードはこのデッキにとって致命傷でした。バウンス能力も《渦まく知識》もきついですし、戦闘でなかなか破壊できないので、本当に手を焼きました。
《呪文滑り》でバウンス能力を封じてみたり、《吸血鬼の呪詛術士》や《呪詛の寄生虫》も試しましたし、《精神を刻む者、ジェイス》に強い《聖別されたスフィンクス》までをも投入して対策してみましたが、どれもいまいちでした。
しかし何度か試行錯誤するうちに、ひとつだけ実用レベルのアイディアが浮かんだのです。そんな上記の弱点全てを解決すべく、改良を加えたのがこのリストになります。
10 《森》 7 《島》 4 《霧深い雨林》 3 《新緑の地下墓地》 -土地(24)- 4 《極楽鳥》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《水蓮のコブラ》 2 《森のレインジャー》 1 《呪文滑り》 1 《巡礼者の目》 1 《粗石の魔道士》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 2 《強情なベイロス》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《酸のスライム》 1 《聖別されたスフィンクス》 1 《虐殺のワーム》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《囁く者、シェオルドレッド》 -クリーチャー(27)- |
1 《通電式キー》 4 《出産の殻》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(9)- |
3 《呪文滑り》 1 《復讐蔦》 2 《強情なベイロス》 1 《最後のトロール、スラーン》 2 《酸のスライム》 1 《聖別されたスフィンクス》 4 《四肢切断》 1 《ミミックの大桶》 -サイドボード(15)- |
目には目を、歯には歯を、ジェイスにはジェイスを。《ミラディンの十字軍》も《精神を刻む者、ジェイス》のバウンスで悠々と対処可能です。
・・・とかっこよく書いたのですが、みなさんご存じのように、残念ながら(このデッキにとっては幸運なことに)《精神を刻む者、ジェイス》は《石鍛冶の神秘家》と共に禁止カードになってしまいました。
このデッキに費やした3日間を返してと嘆きたくなるような結果に終わってしまいましたが、《出産の殻》デッキにとって、これらの禁止カード発表は間違いなくプラスに働くのでよしとしましょう。
なぜ禁止発表後にも関わらずこのリストを載せたかと言いますと、この《精神を刻む者、ジェイス》を入れるという発想自体は悪くないと思いますし、今後にも応用がきくからです。
《精神を刻む者、ジェイス》ほどのカードはなかなかありませんが、《野生語りのガラク》や《リリアナ・ヴェス》のような単体で安定したパフォーマンスを発揮するカードを入れることは、これからも検討すべきプランだと思います。
~今後の展望~
最大の課題だった《精神を刻む者、ジェイス》が退場し、《石鍛冶の神秘家》の引退によって環境から《帰化》系のカードが減ることで、このデッキにもチャンスが巡ってくると考えられます。
今後は「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」「《欠片の双子》」デッキがTier1になり、そこに「赤単」「緑白ビートダウン」「青黒/青白コントロール」、そして日本にはあまりいないのですが、「吸血鬼」などが続く形になるでしょう。
そのため環境にクリーチャー除去が増えることになるでしょうが、《獣相のシャーマン》とは違い、《出産の殻》はクリーチャー除去では対処されません。《審判の日》にも《分裂するスライム》や《ワームとぐろエンジン》のようなカードで立ち向かえますし、《納墓の総督》で落とすこともできます。
そしてMOの戦績を見ると、このデッキはビートダウンには強いので、以上の理由から、これからもこのデッキは活躍できると信じています。そんなわけで新環境用のリストがこちらです。
13 《森》 6 《沼》 4 《新緑の地下墓地》 -土地(23)- 4 《極楽鳥》 3 《ラノワールのエルフ》 3 《ヴィリジアンの密使》 1 《呪文滑り》 1 《巡礼者の目》 1 《粗石の魔道士》 1 《吸血鬼の夜鷲》 1 《裏切り者グリッサ》 1 《納墓の総督》 1 《皮裂き》 1 《強情なベイロス》 1 《最後のトロール、スラーン》 1 《ファイレクシアの変形者》 2 《酸のスライム》 1 《分裂するスライム》 1 《虐殺のワーム》 1 《ワームとぐろエンジン》 1 《囁く者、シェオルドレッド》 -クリーチャー(26)- |
1 《通電式キー》 4 《喉首狙い》 2 《ミミックの大桶》 4 《出産の殻》 -呪文(11)- |
1 《呪文滑り》 1 《ヴィリジアンの堕落者》 1 《復讐蔦》 3 《強情なベイロス》 4 《強迫》 2 《破滅の刃》 3 《記憶殺し》 -サイドボード(15)- |
あまり大きな変化はないのですが、とりあえずこんなリストから始めようと思っています。正直に言うと、このデッキはまだまだTier1やTier2のデッキと渡り合うだけの力はないかもしれません。
しかし何度もお伝えしている通り、このデッキは使っていて楽しいですし、たった1枚カードを入れ替えるだけで成績もガラリと変わるので、マジックの本来の楽しみのひとつである「デッキ構築」の魅力を垣間見ることができると思います。まだ誕生して間もないデッキですし、現状のデッキに気に入ったものがない方は、ぜひこのデッキを手に取ってみてください。
「Caw-Blade」に制圧された世の中だったので、少しでも目新しいものを紹介できれば、と思いこのデッキをピックアップしたのですが、禁止カードの影響で需要に見合わない内容になってしまったことをお詫びします。
来週からは新環境のデッキとメタゲームを拾っていくつもりですが、その前にひとつだけ注目のデッキを紹介してお別れしたいと思います。
「今週の一押し」~「Ascension Twin」
7 《島》 6 《山》 4 《沸騰する小湖》 3 《ハリマーの深み》 3 《地盤の際》 -土地(23)- -クリーチャー(0)- |
3 《ギタクシア派の調査》 4 《定業》 4 《噴出の稲妻》 4 《稲妻》 4 《マナ漏出》 4 《先読み》 3 《乱動への突入》 4 《紅蓮術士の昇天》 2 《思い起こし》 3 《テゼレットの計略》 2 《ジェイス・ベレレン》 -呪文(37)- |
4 《詐欺師の総督》 4 《紅蓮地獄》 1 《乱動への突入》 1 《焼却》 1 《四肢切断》 4 《欠片の双子》 -サイドボード(15)- |
メインは普通の「青赤《紅蓮術士の昇天》」デッキでしかないのですが、サイド後には《詐欺師の総督》+《欠片の双子》コンボとのハイブリッドになります。
このリストは禁止カード適用前のものですが、《精神を刻む者、ジェイス》が入っていないのでこのまま新環境に持ち込むことができることから、紹介させていただきました。「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」と「《欠片の双子》」デッキに割り込んで入る余地があるデッキだと思うので、要注目ですよ!
冒頭でも触れましたが、これからはいろんなデッキに可能性があると思っています。
今回紹介した《出産の殻》が良い例ですし、環境初期とも言えるこんな時こそ、いつも以上にデッキ構築に費やした時間が成果に結びつきやすいのではないでしょうか?
それでは、また来週ー!
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