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戦略記事

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

第51回:日本選手権予選特集!?岡山、大阪1次、名古屋1次

読み物

津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ

2011.04.27

第51回:日本選手権予選特集!~岡山、大阪1次、名古屋1次


 こんにちはー!

グランプリ・神戸イベントカバレージ

 みなさん、グランプリ・神戸はいかがでしたか? 目標を達成できた方も、そうでない方も、楽しんでいただけたでしょうか?
 僕は3bye後から1-3と残念な結果でしたが、久しぶりに会った人たちとチームドラフトをしたり、初めてカバレージのお手伝いをさせてもらったりと、負けはしてしまったものの、充実した週末を過ごすことができました。
 カバレージの方は自分で読んでも読みづらいと感じてしまうほどにいまいちで、全然納得がいっていません。何よりも、あれほどすばらしい試合を近くで観戦し、書かせていただいたのにも関わらず、みなさんにそれを伝えることができなかったことだけが心残りです。
 プレイヤーとしてもライターとしてもまだまだ未熟ですが、いつかまた機会があれば、リベンジさせていただきたいと思います。


 さて、グランプリの話はこの辺にして、本題に入りましょう。今週は日本選手権予選特集です。

2011年日本選手権予選

 今年は岡山から始まった日本選手権予選なんですが、今のところすでに3つが終了しています。いつもは海外の大会だったり「Decks of the Week」を追ってばかりなので、今回は日本のメタゲームを探ってみたいと思います。


 まずは意外な結末を迎えた岡山予選を見てみましょう。


4月10日 岡山予選
順位 デッキ
1 青白CawBlade
2 赤単ゴブリン
3 DarkBlade
4 青白赤CawBlade
5 赤単ゴブリン
6 赤単
7 カルドーサレッド
8 白黒《鍛えられた鋼


~全てはここから始まった・「赤単」の復権~

 1位は先週も特集した「Caw-Blade」がさらっていきましたが、この予選で最も注目すべきは「赤単」の多さです。予選通過者の4人の内2人が「ゴブリン」に分類されるリストを使っており、残る二人は、従来の「赤単」と、「カルドーサレッド」という内訳になっています。「赤単」と一口に言っても、実に多様なリストが存在しますね。

 実際にリストをご覧になっていただければ、そのバリエーションの豊富さに驚いていただけるでしょう。

和田 悠幹
日本選手権2011予選・岡山 / 2位[MO] [ARENA]
19 《
4 《ぐらつく峰

-土地(23)-

4 《ゴブリンの先達
4 《トゲ撃ちの古老
4 《ゴブリンの奇襲隊
4 《燃えさし運び
3 《ゴブリンの戦煽り
4 《ゴブリンの酋長

-クリーチャー(23)-
4 《稲妻
4 《噴出の稲妻
4 《よろめきショック
2 《槌のコス

-呪文(14)-
3 《躁の蛮人
4 《電弧の痕跡
3 《漸増爆弾
4 《反逆の印
1 《転倒の磁石

-サイドボード(15)-
土居 史明
日本選手権2011予選・岡山 / 5位[MO] [ARENA]
15 《
4 《ぐらつく峰
4 《沸騰する小湖

-土地(23)-

4 《ゴブリンの先達
4 《トゲ撃ちの古老
4 《巣穴の煽動者
4 《ゴブリンの戦煽り
1 《燃えさし運び
4 《ゴブリンの酋長
3 《オキシド峠の英雄

-クリーチャー(24)-
4 《稲妻
4 《焼尽の猛火
3 《電弧の痕跡
2 《槌のコス

-呪文(13)-
4 《躁の蛮人
1 《オキシド峠の英雄
1 《電弧の痕跡
4 《転倒の磁石
4 《反逆の印
1 《槌のコス

-サイドボード(15)-

 この2つのリストは「ゴブリン」に分類されます。最近までは、あまり「部族」に拘ったリストは見かけませんでしたが、土居さんにいたっては《ゴブリンの戦煽り》まで採用しており、その本気度が伺えます。

 このようなリストはMO上でも結果を残していますし、環境全体の流れとして、「Caw-Blade」や「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」のようなデッキをメタって、クリーチャーデッキへのマークが甘くなったところを、2人は見逃さなかったというわけですね。
 「Caw-Blade」のリストをプロツアー・パリの頃と見比べてみると分かりやすいのですが、最近ではミラーマッチを強く意識して《審判の日》の枚数がどんどん減ってきているので、このようなクリーチャーデッキは以前よりも勝ちやすくなっています。

 個人的には、「赤単」の強さはやはり《槌のコス》にあると思います。
 対戦相手が《審判の日》や《精神を刻む者、ジェイス》をキャストしてきた返しで唱える呪文としては最上級のものなので、3枚はあった方がいいように感じます。

 「ゴブリン」のようにクリーチャーが多いリストならば、土居さんのように《オキシド峠の英雄》でもいいですね。

 「赤単」系のデッキを作る上で大切なことは、これら4マナのカードの枚数をきちんと調整することです。あまり多いと序盤にもたつきますし、少なすぎると《審判の日》や《ギデオン・ジュラ》の前に無力になってしまいます。

 アーキタイプにもよるのですが、個人的には最低でも4枚は採用したいところですね。下の健ちゃん(大森健一朗)のようなオーソドックスな形なら《槌のコス》4枚を、このような「ゴブリン」型なら土居さんの《オキシド峠の英雄》3枚、《槌のコス》2枚というバランスが一番良いと思います。

大森 健一朗
日本選手権2011予選・岡山 / 6位[MO] [ARENA]
12 《
4 《ぐらつく峰
4 《乾燥台地
4 《沸騰する小湖

-土地(24)-

4 《トゲ撃ちの古老
4 《ゴブリンの先達
4 《燃えさし運び
3 《板金鎧の土百足

-クリーチャー(15)-
4 《噴出の稲妻
4 《稲妻
4 《焼尽の猛火
3 《よろめきショック
2 《冒険者の装具
4 《槌のコス

-呪文(21)-
4 《トンネルのイグナス
4 《電弧の痕跡
3 《伝染病の留め金
4 《反逆の印

-サイドボード(15)-

 第45回で紹介した「赤単」のアップデートバージョンです。
 以前と変わったのは《冒険者の装具》が入ったことですね。《戦隊の鷹》と《水蓮のコブラ》が溢れる現在のメタゲームなら、《トゲ撃ちの古老》はただでさえ非常に頼もしい存在なんですが、そこに《冒険者の装具》加われば、相手のデッキが何であろうと、エース級の活躍を見せてくれます。
 特に「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」相手には《冒険者の装具》のクロックは優秀で、《トゲ撃ちの古老》に付けばもちろんのこと、《ゴブリンの先達》や《燃えさし運び》でさえも、数ターンでゲームを終わらせる優秀なクロックになります。

 サイドボードに4枚ずつフル投入された《トンネルのイグナス》と《反逆の印》を見てもらえば分かるように、この「赤単」バージョンは「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」を苦手としています。
 そのため、多少ではありますが、メインからそれを改善しつつ他のマッチアップでも活躍する《冒険者の装具》は非常に良いアイディアですね。

澤出 誠
日本選手権2011予選・岡山 / 7位[MO] [ARENA]
12 《
1 《
4 《沸騰する小湖
3 《激戦の戦域

-土地(20)-

4 《メムナイト
4 《ゴブリンの奇襲隊
4 《ゴブリンの先達
4 《トゲ撃ちの古老
4 《信号の邪魔者
3 《危険なマイア

-クリーチャー(23)-
3 《オパールのモックス
4 《感電破
4 《カルドーサの再誕
3 《壊滅的な召喚
3 《キマイラ的大群

-呪文(17)-
3 《ファイレクシアの破棄者
4 《電弧の痕跡
4 《統一された意思
4 《凶運の彫像

-サイドボード(15)-

 こちらは「カルドーサレッド」と呼ばれる、「ゴブリン」型にアーティファクトを足して、《カルドーサの再誕》を使えるようにした感じのバージョンです。

 メインボードはいたって普通の「カルドーサレッド」なんですが、このリスト最大の特徴はサイドボードにあります。それは《統一された意思》を筆頭とした独自のカードが多めに採用されていることですね。

 《統一された意思》は青マナを生み出せるカードが8枚と、いささか不安を覚える数字ではありますが、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」のような大味なデッキ相手には劇的に効きます。他にも《審判の日》や《ギデオン・ジュラ》のような、「赤単」系のデッキが得てして苦手としているカード全般に効果的なので、検討する余地のあるアプローチと言えます。
 上の3名の方々が《槌のコス》や《オキシド峠の英雄》で長期戦を戦うのに対し、このリストはその部分をカウンターでまかなっているわけですね。

 《凶運の彫像》は「青黒コントロール」系統のクリーチャーが少ないデッキによく刺さります。《ファイレクシアの破棄者》は《精神を刻む者、ジェイス》、《ギデオン・ジュラ》といった憎きプレインズウォーカー全般と、必要であれば《饗宴と飢餓の剣》のような装備品も封じることができるので、「Caw-Blade」相手にもサイドインしてもいいでしょう。

 今まで機会がなく、なかなか紹介できませんでしたが、このデッキはスタンダードの中でも屈指の爆発力を誇ります。2~3ターン目に手札を使いきる展開もあったりと、プレイするのが非常に楽しいので、まだ使ったことのない方はぜひ一度手に取ってみてください。

 続いては大阪予選です。


4月16日 大阪1次予選
順位 デッキ
1 青黒感染コントロール
2 Caw-Blade
3 赤緑ヴァラクート
4 Caw-Blade
5 青緑「集団変身」
6 黒白感染
7 緑青赤ターボランド
8 緑青赤ターボランド
9 Kor-Blade
10 白単アーマー
11 赤緑ヴァラクート
12 赤緑ヴァラクート
13 赤単
14 赤緑ヴァラクート
15 赤緑ヴァラクート
16 Caw-Blade

 大阪1次予選では「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」が5人と圧倒的に勝っています。友人に事情を聞いたところによると、やはり岡山予選の結果は衝撃的だったようで、皆がかなり「赤単」を意識していたそうです。それゆえに5人残った「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」のサイドボードを見てみると、皆がかなりの量の「赤単」対策を入れています。9位の「Kor-Blade」にいたっては、なんとメインに《コーの火歩き》が入っているくらいなので、やはり予選1つと言えど、その影響力は大きいんですね。

 優勝者の「青黒感染コントロール」も、「赤単」のように《ファイレクシアの十字軍》をほぼ除去できないデッキに対してその真価を発揮しますし、彼らの予選突破は、日々の鍛錬はもちろんのことながら、それに加え岡山からのメタゲームの推移をちゃんと読み切った功績とも言えるでしょう。

田島 智博
日本選手権2011予選・大阪1次 / 1位[MO] [ARENA]
3 《
4 《
4 《忍び寄るタール坑
4 《闇滑りの岸
4 《水没した地下墓地
1 《霧深い雨林
1 《新緑の地下墓地
4 《墨蛾の生息地
1 《地盤の際

-土地(26)-

4 《ファイレクシアの十字軍
2 《荒廃のドラゴン、スキジリクス

-クリーチャー(6)-
4 《定業
4 《コジレックの審問
1 《強迫
2 《見栄え損ない
3 《マナ漏出
1 《喉首狙い
1 《破滅の刃
1 《剥奪
2 《伝染病の留め金
1 《冷静な反論
3 《転倒の磁石
4 《精神を刻む者、ジェイス
1 《リリアナ・ヴェス

-呪文(28)-
3 《ファイレクシアの槽母
2 《見栄え損ない
2 《強迫
2 《瞬間凍結
1 《喉首狙い
1 《破滅の刃
2 《漸増爆弾
2 《決断の手綱

-サイドボード(15)-

 前述の通り、このアーキタイプは《ファイレクシアの十字軍》の死にづらさがそのままデッキの強さに直結します。
 「赤単」や「ボロス」が多いのなら、《ファイレクシアの十字軍》をフィニッシャーにする価値は大いにありますが、そうでない場合は、「毒殺」が好きだ、といった特別な理由がない限りは、常に《墓所のタイタン》とどちらにするか比較する必要があります。

 《墓所のタイタン》の長所は、黒い6/6はほとんど除去されない、どんな相手でも2~3回アタックするだけで倒せる、ブロッカーとしての役割も果たす、などがありますが、一方の《ファイレクシアの十字軍》はどうでしょう?
 こちらも2色のプロテクションのおかげで概ね除去されることはないのですが、タフネスが2と低いので、《見栄え損ない》のような除去に引っ掛かるのと、《精神を刻む者、ジェイス》のバウンス能力に耐性がありません。

 さらにネックとなるのは、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」が採用している《草茂る胸壁》の存在です。5回殴れば人が死ぬ《ファイレクシアの十字軍》は非常に優秀なカードではありますが、逆に言えば5回攻撃が通らないと絶対にゲームに勝てないという制限も付きまといます。
 そのため、数回ブロックされるというのは、その他のデッキならあまり気にならないことかもしれませんが、このデッキにとっては事情が異なります。
 そして「5回殴らなければ勝てない」という事実が最も厄介になるのは、《ファイレクシアの十字軍》を引くのが遅れてしまった時です。《墓所のタイタン》が初手にあった場合、6マナのカードなので当然ながら序盤は無駄カード同然ですが、6マナまで耐えればそれだけで勝ててしまうことが多いので、プランを立てやすくなります。初手になかった場合でも、どちらにせよ相手の展開を阻害してゲームを長引かせることが「青黒コントロール」の目的なので、これと言った問題はありません。つまり「いつ引いても強い」、ことこそが《墓所のタイタン》の最大の利点と言っていいでしょう。

 ですが《ファイレクシアの十字軍》は《墓所のタイタン》とは全くの別物です。序盤に引けば相手次第ではそれだけで勝てるというメリットこそありますが、本来ならば「青黒コントロール」の目的であるはずの、「ゲームを長引かせる」というプランには合致していないと言わざるを得ません。今のスタンダードはカードパワーが凄まじいので、盤面を落ち着かせたあと、そこから《ファイレクシアの十字軍》を引くまで耐え凌ぎ、さらにそこから5ターンというのは、悠長すぎると言っても差し支えないでしょう。

 これはおそらくみなさんが思っている以上に大きなデメリットで、僕がこのカード(アーキタイプ)の使用を躊躇っている最大の理由です。繰り返しになりますが、「ボロス」や「赤単」系のデッキが流行っている現状なら、最強のブロッカーにもなる《ファイレクシアの十字軍》はいい選択だと思います。ですがもしそうではない場合は、もしくはそうであっても、使う前にもう一度《墓所のタイタン》と比較してみてください。僕個人の意見としては、今のところ「いつ引いても強い」《墓所のタイタン》が好きですね。

 それとLSVが自身の記事で「ボロス」デッキから《饗宴と飢餓の剣》を抜いてからというもの、「ボロス」デッキにはほとんど《饗宴と飢餓の剣》が入らなくなっていますが、《ファイレクシアの十字軍》が流行るようなら、これを入れるだけで勝率がガラリと変わるのでお勧めです。実際に僕はMOでこのデッキを使っていて、「ボロス」の《饗宴と飢餓の剣》だけで負けたことが何回もあります。

 最後になりますが、マナベースに関して1点だけ。僕は密かにこのアーキタイプをずっと使っているのですが、土地26枚、《定業》4枚でも、無色の土地は4枚が限界だと感じました。このデッキの理想の動きは3ターン目に《ファイレクシアの十字軍》、4ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》ですし、色マナの確保というのは常に付きまとう重要な問題なので、長いラウンドであればあるほど、しっかりと意識してデッキ構築をしましょう。対戦相手に《地盤の際》が入っていた場合、これはいつも以上に重要になります。
 「Caw-Blade」という環境の王者が《地盤の際》を4枚採用している以上、個人的には無色ランドは《墨蛾の生息地》だけでいいように思えます。

 少し手厳しい総評になってしまいましたが、僕がなかなかMOで結果を出せない中で、選手権予選1位という結果を残した田島さんには衝撃と感銘を受けました。
 「感染」デッキがこの先も結果を残せるかどうかは分かりませんが、少なくともこのリスト自体は非常に素晴らしい構成になっているので、もしも「感染」デッキを試してみたいと言う方は、田島さんのリストから始めてみるといいでしょう。

オオタ ユウジ
日本選手権2011予選・大阪1次 / 3位[MO] [ARENA]
12 《
6 《
4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート
1 《怒り狂う山峡
1 《新緑の地下墓地
1 《霧深い雨林
2 《進化する未開地
1 《広漠なる変幻地

-土地(28)-

4 《水蓮のコブラ
2 《ムル・ダヤの巫女
4 《原始のタイタン
2 《業火のタイタン
1 《ゼンディカーの報復者

-クリーチャー(13)-
4 《カルニの心臓の探検
4 《探検
4 《耕作
4 《砕土
3 《召喚の罠

-呪文(19)-
3 《強情なベイロス
4 《酸のスライム
1 《真実の解体者、コジレック
3 《稲妻
3 《紅蓮地獄
1 《召喚の罠

-サイドボード(15)-

 こちらは相変わらずの強さで、「Caw-Blade」に次ぐ勢力を維持している「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」です。

 第49回の連載でお伝えした通り、「Caw-Blade」のような《水蓮のコブラ》を除去できないデッキが上位に増えてきたので、それを加味して《水蓮のコブラ》をメインに搭載したリストが増えてきましたね。
 しかし今の日本のメタを見る限り、「赤単」系のデッキが勢いを取り戻しつつあるので、それらのデッキを意識するなら《草茂る胸壁》の出番です。《水蓮のコブラ》の爆発力にはかなわないものの、火力で死にづらいというのは《草茂る胸壁》にしかないメリットですからね。

 ビートダウン相手にはメインはスピード勝負を挑みますが、サイド後は除去を入れて対戦相手の速度を落とし、こちらの土俵に持ち込む形となっています。

 しかしここで重要なのは《転倒の磁石》を入れるか否かです。
 このリストのように、最近では《原始のタイタン》だけでなく、《業火のタイタン》まで入れたリストが目立ちます。しかしサイドボードに《転倒の磁石》が入っていないリストが、なかなかに多いように感じます。これは《反逆の印》に対して無抵抗になってしまうことを意味します。

 こちらのライフが15以上ある状態で戦場を落ち着かせられたら、《転倒の磁石》がなくてもいいのですが、最近のビートダウンデッキは強いので、そんな状況はほとんどないと言っていいでしょう。
 そうなってくると、相手の攻め手は全て捌いたにも関わらず、《原始のタイタン》や《業火のタイタン》を出せないという、なんとも言えない展開になってしまいます。
 一度《反逆の印》を警戒しだすと、タイタンを出せるのは《カルニの心臓の探検》or《砕土》+《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》が揃って自殺できるようになってからです。それか《召喚の罠》でインスタントタイミングで出すしかないですね。
 僕はそのような展開を嫌うので、サイドのクリーチャー対策は《紅蓮地獄》4枚、《転倒の磁石》3枚にしています。

 それと「Caw-Blade」相手には、序盤の《饗宴と飢餓の剣》が一番の問題なので、《転倒の磁石》はそこでも役に立ちます。《饗宴と飢餓の剣》対策カードの中でも最も軽く、《神聖の力線》対策も兼ねている《自然の要求》が理想ではありますが、サイドボードに枠があるなら、《転倒の磁石》の採用も検討してみてください。

 ミラーマッチは運の要素が強いですが、《トンネルのイグナス》を入れるだけで相当に勝率が上がります。実際に僕はサイドボードに《トンネルのイグナス》を入れている時はミラーマッチでほとんど負けてないです。入れるなら4枚じゃないと意味のないカードなので、枠を取りますが、その分ミラーマッチの勝率が改善されるので、僕は4枚採用をお勧めします。

 《反逆の行動》系統のカードも試したのですが、相手のぶん回りを跳ね返すほどの力がなかったため、そのようなカードに2~4枚枠を割くのはスロットがもったいないと感じたことから、《トンネルのイグナス》を優先しています。

クロダ マサシロ
日本選手権2011予選・大阪1次 / 7位[MO] [ARENA]
5 《
3 《
2 《
3 《銅線の地溝
4 《怒り狂う山峡
2 《ハリマーの深み
4 《霧深い雨林
4 《沸騰する小湖

-土地(27)-

4 《水蓮のコブラ
1 《ムル・ダヤの巫女
1 《最後のトロール、スラーン
4 《業火のタイタン
1 《先駆のゴーレム
1 《ゼンディカーの報復者

-クリーチャー(12)-
4 《定業
4 《稲妻
4 《探検
4 《マナ漏出
4 《精神を刻む者、ジェイス
1 《野生語りのガラク

-呪文(21)-
3 《強情なベイロス
1 《噴出の稲妻
4 《瞬間凍結
4 《紅蓮地獄
1 《剥奪
2 《転倒の磁石

-サイドボード(15)-


 どこの予選に出ても、必ず目にする「青緑赤Turboland」。このデッキも根強い人気と強さを兼ね備えているので、注意が必要です。

 このリストはグランプリ・ダラス2位のものとほとんど同じなんですが、近頃は《乱動への突入》などで大損をしてしまう可能性の増えた《先駆のゴーレム》を減らしたようです。

 《最後のトロール、スラーン》は、青いデッキ相手だけに限らず、「赤単」系のデッキにも壁として重宝します。使用者である黒田さん曰く、サイド後に《強情なベイロス》と両方手札にあっても、「赤単」相手には《最後のトロール、スラーン》から出すほど、壁としての役割は重要だったそうです。少し本来の用途とは違う気もしますが、こういった使い方もあるんですね。

 このデッキは「赤単」系のデッキを苦手としていることもあり、サイドボードにはかなりの枚数対策カードを割いています。今のメタゲームならばそれは必然のように思えるので、みなさんもこのデッキで予選に出る場合は、いつも以上に「赤単」対策を重視しましょう。

津田 栄治
日本選手権2011予選・大阪1次 / 9位[MO] [ARENA]
5 《
4 《平地
4 《天界の列柱
4 《金属海の沿岸
4 《氷河の城砦
1 《沸騰する小湖
4 《地盤の際

-土地(26)-

4 《石鍛冶の神秘家
3 《コーの火歩き
1 《太陽のタイタン

-クリーチャー(8)-
3 《定業
4 《呪文貫き
3 《失脚
1 《糾弾
2 《マナ漏出
1 《剥奪
2 《転倒の磁石
1 《精神壊しの罠
1 《饗宴と飢餓の剣
1 《肉体と精神の剣
2 《ジェイス・ベレレン
3 《精神を刻む者、ジェイス
2 《ギデオン・ジュラ

-呪文(26)-
2 《白騎士
1 《払拭
1 《糾弾
2 《瞬間凍結
2 《否認
2 《神への捧げ物
2 《天界の粛清
3 《審判の日

-サイドボード(15)-

 メタゲームの産物とも言える《コーの火歩き》メインの「Kor-Blade」です。
 岡山予選の結果を受け、思い切って《戦隊の鷹》を抜いてしまい、赤いデッキ相手には単体でも強く、そして除去される心配がないので安心して《饗宴と飢餓の剣》を付けられる《コーの火歩き》を採用する、という大胆な戦略を取っています。

 人伝てに聞いた話ではあるんですが、実際に津田さんは「赤単」系のデッキに予選で当たりまくったようで、この変更が功を奏したと言えるでしょう。《コーの火歩き》はミラーマッチや対「青黒コントロール」戦での脆さが気になりますが、このリストはその他のパーツでそれを補うような形になっていますね。

 具体的には、最近では3枚が主流の《呪文貫き》が4枚採用されていたりだとか、《精神を刻む者、ジェイス》と《ジェイス・ベレレン》が合計5枚投入されていたり、長期戦に強い《太陽のタイタン》がメインから入っていたりといった具合ですね。

 メインボードに《太陽のタイタン》を入れる戦略は今では一般的で、最近ではほとんどのリストにメインから1枚入っています。ただ単に《石鍛冶の神秘家》や《饗宴と飢餓の剣》、そして《地盤の際》を戻すだけでも十分に強力ですが、津田さんのように《ジェイス・ベレレン》を採用すれば、なおさら強さに拍車がかかりますね。

 「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」同様、このミラーマッチも運の要素が高く、グランプリ・神戸の会場でも、何人かの友人が「Caw-Bladeミラーマッチ運ゲーすぎてつまんない」という話をしていました。
 残念ながらこれには同意せざるを得ませんが、先週の記事で紹介したように、グランプリ・ダラスの優勝者はミラーマッチを得意としているようです。これは僕らにはない何かを彼が掴んでいる証拠ですし、何度練習しても、それが分からないようなら、《神への捧げ物》を3枚入れるという強引な手もあります。少なくとも《神への捧げ物》を積んでいないリストは、運ゲーと呼ばれる領域に達してすらいないように思えます。

 どこで大会に出ようとも、ミラーマッチは絶対に多いと思うので、それが苦手だという方は、《神への捧げ物》を多めに採用してみましょう。


4月17日 名古屋1次予選
順位 デッキ
1 白青コントロール
2 緑青赤ターボランド
3 赤単ゴブリン
4 ボロス
5 青黒コントロール
6 Caw-Blade
7 Caw-Blade
8 赤単
9 カルドーサレッド
10 黒青感染
11 赤緑ヴァラクート
12 Caw-Blade
13 青黒コントロール
14 青黒感染コントロール
15 赤単ゴブリン
16 赤黒コントロール

 名古屋1次予選の結果を見ても、赤系のデッキの隆盛が目立ちます。それも手伝ってか、《ファイレクシアの十字軍》を使ったデッキも2つ残っていますね。
 「Caw-Blade」と「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」の少なさが気になりますが、「Caw-Blade」に関しては、予選通過者3名でも少ないと感じてしまうこと自体が、このデッキの強さを物語っていますね。

塩津龍馬
日本選手権2011予選・名古屋1次 / 1位[MO] [ARENA]
5 《
4 《平地
4 《天界の列柱
4 《氷河の城砦
3 《金属海の沿岸
1 《沸騰する小湖
1 《湿地の干潟
4 《地盤の際

-土地(26)-


3 《前兆の壁
1 《ワームとぐろエンジン

-クリーチャー(4)-
4 《定業
3 《呪文貫き
4 《糾弾
3 《マナ漏出
1 《剥奪
3 《伝染病の留め金
2 《転倒の磁石
2 《審判の日
4 《精神を刻む者、ジェイス
2 《ギデオン・ジュラ
2 《滞留者ヴェンセール

-呪文(30)-
2 《コーの火歩き
1 《悪斬の天使
3 《光輝王の昇天
3 《瞬間凍結
2 《存在の破棄
3 《神聖の力線
1 《審判の日

-サイドボード(15)-


 塩津さんが使ったのは第46回の連載で紹介した「青白コントロール」です。グランプリ・神戸の会場で直接お話を伺ったところ、《イシュ・サーの背骨》だけは気に入っていただけなかったようで、不採用になったとのこと。このデッキの一番のチャームポイントだっただけに、残念でなりません・・・。
 デッキの動きはその連載第46回と、KJ(鍛冶友浩)の連載第9回にあるので、そちらをご覧ください。

竹内亮太
日本選手権2011予選・名古屋1次 / 16位[MO] [ARENA]
7 《
3 《
3 《溶岩爪の辺境
4 《竜髑髏の山頂
4 《黒割れの崖
3 《地盤の際

-土地(24)-


2 《巡礼者の目
2 《先駆のゴーレム
4 《業火のタイタン
1 《墓所のタイタン

-クリーチャー(9)-
4 《永遠溢れの杯
2 《太陽の宝球
4 《稲妻
4 《コジレックの審問
2 《強迫
4 《喉首狙い
2 《金屑の嵐
4 《槌のコス
1 《リリアナ・ヴェス

-呪文(27)-
2 《躁の蛮人
3 《ゴブリンの廃墟飛ばし
2 《強迫
1 《破滅の刃
3 《転倒の磁石
4 《記憶殺し

-サイドボード(15)-

 予選通過者の中でも、一際目を引くのがこの「赤黒コントロール」です。ちょうど先週紹介した、「一押し」デッキから青を抜いたようなリストになっています。

 「Caw-Blade」相手には、大量に入った除去でクリーチャーを焼き尽くすか、6枚入っているハンデスで装備品を抜いて対抗します。一度盤面を落ち着かせてしまいさえすれば、後は《槌のコス》や《業火のタイタン》が暴れまわることとなりますね。

 僕なら盲目的に《太陽の宝球》を4枚にしてしまいそうなものですが、それを《巡礼者の目》と2枚ずつにしているところにセンスを感じます。《太陽の宝球》は増殖のないこのデッキだと、やはり4枚は多すぎるという判断でしょうか?

 ちょっと時間の関係でこのデッキは試せなかったのですが、久しぶりに見た「吸血鬼」以外の「赤黒」デッキだったのでご紹介させていただきました。ボードコントロールが好きな方にぜひ使ってもらいたいデッキですね。


 今週のデッキの解説は以上になります。最後に今現在のメタゲームをおさらいしてお別れしたいと思います。


選手権予選のメタゲーム

 まず、どんなデッキで出るにしろ「Caw-Blade」と「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」対策だけは絶対に怠らないようにしましょう。

 「Caw-Blade」には《神への捧げ物》や《転倒の磁石》の装備品対策などを、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」には《記憶殺し》《瞬間凍結》《反逆の印》《トンネルのイグナス》などですね。

 そして次にちゃんとメタるべきデッキは「赤単」系のデッキでしょう。今のところ圧倒的に予選通過者が多いので、《コーの火歩き》のような専用サイドボードを取るも良し、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」にも効く《瞬間凍結》で対策するも良しと、使用者の腕の見せ所ですね。

 逆に「赤単」側としては、あまりにメタられすぎると勝つのが困難なので、今のようにマークが厳しくなってきた時期にはその見極めが大事になってきます。これだけ勝っているということは、そろそろ皆が《コーの火歩き》や《天界の粛清》のようなカードを使い始めてもおかしくないので、《コーの火歩き》1枚で負けた、ということがないよう、《漸増爆弾》なり《危険なマイア》なりできちんと対処しておきましょう。
 もしも「赤単」に対するマークがきつくなるのなら、他のデッキを使うのもひとつの手ですね。


 来週は今週拾いきれなかった、予選通過を果たした面白いデッキを見ていきたいと思います。

 それでは、また来週ー!


2011年日本選手権予選

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