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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第41回:プロツアー・パリ上位デッキ分析:「青白の逆襲」編
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2011.02.16
第41回:プロツアー・パリ上位デッキ分析:「青白の逆襲」編
こんにちはー。
新環境の開幕戦であるプロツアー・パリが終わりました。
プロツアー前にツイッターで、「ミラディン包囲戦」は環境を変えてくれるはず。とつぶやいたのですが、まさかここまで環境が激変するとは思っていませんでした。
本当に書きたい事が多すぎて、どれを書いていいやら...という、ライターとしては嬉しい悩みを抱えるほどにトピックが多かったです。
そんな訳で散々悩みぬいた結果、とりあえず今週はトップ8のデッキリストを見ていきたいと思います。相当に文量が多くなってしまったので、「Caw-Go(青白石鍛冶コントロール)」とそれ以外の2週に分けます。これらのリストを見るだけでも、いかに環境が変わったか分かってもらえるはずです。
と、その前にプロツアーのスタンダードのデッキ分布をご覧ください。
デッキタイプ | 人数 | 割合 |
赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 | 105 | 21.78% |
青黒コントロール | 100 | 20.75% |
Caw-Go(青白石鍛冶コントロール) | 67 | 13.90% |
カルドーサ・レッド(ゴブナイト) | 36 | 7.47% |
ヴァンパイア | 34 | 7.05% |
ボロス(白赤) | 28 | 5.81% |
白単・白緑アーマー(《聖なる秘宝の探索》) | 18 | 3.73% |
赤青緑 | 15 | 3.11% |
青白コントロール | 15 | 3.11% |
緑白ビートダウン | 11 | 2.28% |
《鍛えられた鋼》ビートダウン | 9 | 1.87% |
赤単 | 8 | 1.66% |
黒青緑 | 6 | 1.24% |
エルドラージ・ランプ | 6 | 1.24% |
感染 | 4 | 0.83% |
緑単マナランプ | 4 | 0.83% |
エルフ | 3 | 0.62% |
青赤黒《ボーラスの工作員、テゼレット》 | 3 | 0.62% |
《集団変身》 | 2 | 0.41% |
白単ウィニー | 2 | 0.41% |
同盟者 | 1 | 0.21% |
バントアグロ | 1 | 0.21% |
グリクシス(青黒赤) | 1 | 0.21% |
黒単 | 1 | 0.21% |
ナヤ(赤緑白) | 1 | 0.21% |
赤緑 | 1 | 0.21% |
これが初日のデッキ分布になりますが、これだけを見ても前環境からの変化は捉えにくいかと思います。プレイヤー達はスタンダード10回戦、リミテッド6回戦を経てトップ8を決めるのですが、このデッキ分布を見て、みなさんはどのようなデッキがトップ8に残ったと予想しますか?
これを見た僕は、どうせトップ8も「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」と「青黒コントロール」ばかりなんだろうなぁ。と悲観的な考えを持っていました。
しかし、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったもので、僕の予想は良い意味で裏切られました。リミテッド6回戦を挟んだとはいえ、トップ8には「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」も、純粋な「青黒コントロール」もいなかったんです!
トップ8に残ったデッキ分布は以下の通りです。
- 4 「Caw-Go(青白石鍛冶コントロール)」
- 2 「ボロス」
- 1 「白緑アーマー」
- 1 「青黒赤テゼレット」
このデッキ分布を見て、「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」に関してはまだはっきりとした理由が分かっていないのですが、「青黒コントロール」がトップ8に残れなかった理由に関しては、明確な答えがあります。
それは《石鍛冶の神秘家》と《戦隊の鷹》に他なりません。トップ8に《石鍛冶の神秘家》は22枚、《戦隊の鷹》にいたってはなんと28枚も使用されていました。
以前からこれらのクリーチャーは先手2ターン目に出すことで、青いコントロール相手にはそれだけで相当に有利にゲームを運べる、と紹介してきましたが、「ミラディン包囲戦」の加入によって、この戦略がさらに強化されたんです。
つまるところ《饗宴と飢餓の剣》の登場ですね。
このカードはいわゆる「クロック・パーミッション」と呼ばれるタイプのデッキに入れることでその真価を発揮します。なぜなら、クリーチャーやプレインズウォーカーを展開しながらマナを起こしておく事が出来ますし、ハンデス能力もカウンター呪文と組み合わせることで、他のデッキが使うよりも強力になるからです。
僕が観た試合で、とあるプレイヤーは第1メインフェイズで《精神を刻む者、ジェイス》をプレイ→《饗宴と飢餓の剣》の付いたクリーチャーでアタックし土地が全てアンタップ→第二メインフェイズで《ギデオン・ジュラ》をプレイ、と動いていました。これだけのビッグイニングが5ターン目に訪れるのも、《饗宴と飢餓の剣》あってこそです。
プロテクション(黒)も「青黒コントロール」には劇的に突き刺さります。これが《石鍛冶の神秘家》から直接戦場に出るのでカウンターもできないとなれば、《石鍛冶の神秘家》という必殺技を持っている白いデッキ全般に、「青黒コントロール」で対抗するのは至難の業というわけです。
そして強力な装備品の登場により、《戦隊の鷹》の評価もまた、以前よりも高くなりました。「青黒コントロール」からしてみれば、ただでさえ対処に困る類いのクリーチャーだったのに、それに《饗宴と飢餓の剣》がついてしまうと最早お手上げ状態です。除去も効かない、行動回数にも圧倒的な差がつく、手札も減っていく、となれば逆転するのも困難になります。
以上の理由から、「青黒コントロール」は苦戦を強いられたのではないかと考えています。もしも「青黒コントロール」を使うなら、これからは《漸増爆弾》の採用が必須になるでしょう。
それでは、前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、トップ8のリストを見ていきましょう。
今週は一大旋風を巻き起こした「青白コントロール」を見ていきます。
「ChannelFireball」の「青白石鍛冶コントロール」
5 《島》 4 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 1 《霧深い雨林》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 4 《石鍛冶の神秘家》 -クリーチャー(8)- |
4 《定業》 4 《呪文貫き》 3 《マナ漏出》 1 《剥奪》 1 《冷静な反論》 4 《審判の日》 1 《シルヴォクの生命杖》 1 《饗宴と飢餓の剣》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 3 《ギデオン・ジュラ》 -呪文(26)- |
2 《悪斬の天使》 4 《失脚》 3 《漸増爆弾》 2 《神への捧げ物》 2 《瞬間凍結》 1 《否認》 1 《肉体と精神の剣》 -サイドボード(15)- |
※ 当初掲載しておりましたリストに一部誤りがありました。(メインの《肉体と精神の剣》→《饗宴と飢餓の剣》)
お詫びして訂正いたします。(mtg-jp.com 編集担当)
5 《島》 4 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 1 《乾燥台地》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 4 《石鍛冶の神秘家》 -クリーチャー(8)- |
4 《定業》 4 《呪文貫き》 3 《マナ漏出》 1 《剥奪》 1 《冷静な反論》 4 《審判の日》 1 《シルヴォクの生命杖》 1 《饗宴と飢餓の剣》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 3 《ギデオン・ジュラ》 -呪文(26)- |
1 《悪斬の天使》 4 《失脚》 3 《漸増爆弾》 2 《神への捧げ物》 2 《瞬間凍結》 1 《肉体と精神の剣》 2 《エルズペス・ティレル》 -サイドボード(15)- |
世界最強のチーム、「ChannelFireball」が持ち込んだデッキは最新版の「Caw-Go」でした。「ChannelFireball」勢は「Caw-Blade」と呼んでいましたね。
「Caw-Go」に《石鍛冶の神秘家》《肉体と精神の剣》を入れたデッキは何度か見た事がありましたが、《饗宴と飢餓の剣》の登場により、プロツアートップ8に4人ものプレイヤーを送り込むほどの強さを手に入れました。
たった1枚のカードでそこまで変わるものなのか?とお思いでしょうが、このカードの与えたインパクトは本当に凄まじいの一言に尽きます。
冒頭で紹介したような5ターン目に《精神を刻む者、ジェイス》と《ギデオン・ジュラ》が同時に現れた、なんて展開もありますし、何と言ってもこのカードには1枚でゲームに勝てるほどの性能があります。
少し脱線しますが、『ゲームジャパン』誌で書かせていただいた「ミラディン包囲戦 TOP10」の中で、僕は《饗宴と飢餓の剣》に対し「歴代の剣の中でも最も弱い」という評価を下しました。
これはなぜかと言うと、単体の性能だけで見ると《肉体と精神の剣》の方が強いからです。《火と氷の剣》《光と影の剣》は言わずもがな、ですね。
スタンダードにいないカードの話をしても仕方がないので、もう少し《肉体と精神の剣》との比較を続けましょう。
例えば他の《石鍛冶の神秘家》の入っている「ボロス」や「白単アーマー」を僕が使うのなら、《饗宴と飢餓の剣》よりも《肉体と精神の剣》を優先します。
それらのデッキが《饗宴と飢餓の剣》を使っても、土地がアンタップしたってカウンター呪文を構えられるわけでもないですし、カードパワーの水準が高い今現在の環境では、《強迫》のように手札を見るものならばまだしも、そうでないハンデスにあまり魅力を感じないからです。
《肉体と精神の剣》ならば、ライブラリーを削る関係上4~5発殴るだけで勝てますし、狼トークンでクリーチャーが途切れる心配もありません。まあ仮に4回や5回通ると仮定するとどちらの剣でも大差はないのですが、《審判の日》や《弱者の消耗》を考えた場合、手札を使わずとも、追加のクリーチャーが出る《肉体と精神の剣》の方が上ではないかと考えています。
ですがこのデッキのようにカウンター呪文の入ったアーキータイプにはそれはあてはまりません。《精神を刻む者、ジェイス》や《ギデオン・ジュラ》のように大振りなアクションをしようとも、《饗宴と飢餓の剣》の付いたクリーチャーのアタックさえ通ってしまえば、カウンター呪文用のマナが残せたり、その他のアクションを取る事も可能です。更には、相手の手札が減ると言う事はカウンターしなければならないものが減る事と同意なので、カウンター呪文の温存にも繋がります。
相手の手札が多い状況ならば、より大きな脅威に備えてカウンター呪文や除去を温存する必要がありますが、《饗宴と飢餓の剣》で手札を攻めていればそんな心配も無くなるので、状況管理が楽になるというメリットもありますね。
これはデッキ次第でカードの評価は変えるべき、という良い教訓になるのではないかと思います。カードを選ぶ際には、好みやメタゲームなどで決めるのも悪くはないですが、まずは自分のデッキにちゃんとフィットしているかを見てみるのもいいでしょう。
※
かなーり脱線してしまいましたがデッキの解説に戻ります。
対コントロールには先手ならば100%カウンターされない《石鍛冶の神秘家》、《戦隊の鷹》の2マナコンビのおかげで、すでに十分に強いデッキに仕上がっているのですが、《呪文貫き》を4枚採用することで、「コントロールキラー」というその地位をより確かなものにしています。特に従来の「青黒コントロール」、そして「テゼレットコントロール」系デッキへの勝率は凄まじいものがあるでしょう。
しかし、ただコントロール系のデッキに強いだけでは新環境を生き抜いていけないので、対ビートダウンへの取りこぼしが減るよう《審判の日》をしっかり4枚採用していたり、《戦隊の鷹》と組み合わせることで相当数のターン延命の出来る《シルヴォクの生命杖》を採用していたりと、カード選択に抜け目がないです。
《ギデオン・ジュラ》はビートダウン相手に強いのはもちろんのこと、従来の「青黒コントロール」にも、テゼレット入りの「青黒赤」にも+能力やクリーチャー化能力が有効なので、どんなデッキ相手にも活躍するオールマイティーですね。特に「Caw-Go」のミラーマッチでは+能力を使い続けるだけで相当な時間稼ぎが出来るので、3枚採用も納得です。
サイドボードは、メインボードでコントロールに強くしている分、対ビートダウン用の物が目立ちます。
《失脚》と《糾弾》はどちらがいいか悩ましいですが、《水蓮のコブラ》や《獣相のシャーマン》のようなシステムクリーチャー相手に有効な点を評価されて《失脚》が採用されたのではないかと思います。そのどちらも「青白コントロール」が苦手としているカードですしね。
今回のプロツアーの結果を受け、これからは《神への捧げ物》を3枚に増量してもいいでしょう。下に載せる中田くんのリストに入っている《存在の破棄》との比較ですが、今の環境は割りたいエンチャントが《聖なる秘宝の探索》と《未達への旅》くらいしかなく、前者は最終的にアーティファクトに化けるので、《存在の破棄》の汎用性よりも、インスタントのメリットの方が大きいと思います。ソーサリータイミングで仕掛けると、返しの相手のターンでプレインズウォーカーが通る可能性が増えてしまいますからね。
ただ、これからサイド後の《神への捧げ物》対策として、中田くんのように《太陽のタイタン》を使うのが流行るようなら、《存在の破棄》を優先してもいいでしょう。
そしてTomだけが採用している《エルズペス・ティレル》には要注目です。「吸血鬼」や「ボロス」にも強いカードですが、ミラーマッチでも、対「テゼレットコントロール」戦でも最終奥義の強さが強烈なので、このデッキが増えそうな現段階では、採用を検討すべきカードだと思います。
それと、このデッキはBrad Nelsonが「年間最優秀プレイヤー(PoY)決定戦」でも使っていて、Matignonの操る「青黒赤テゼレットコントロール」を粉砕して見事にPoYを勝ち取っています。
私情になるので書こうかどうか悩んだんですが、Nelsonとは昔MO上でよく喋る仲でした。その頃あいつはまだプロツアー予選に出ているプロを目指すプレイヤーで、「デッキ教えてくれよー。」なんて毎週のように言ってくるおちゃめな青年というイメージでした。そんなNelsonが一昨年くらいから勝ち星を重ね続け、ついにはPoYを取るなんて、個人的には感慨深いものがありました。
実際に会った事は去年のプロツアー・アムステルダムの一度きりしかないのですが、その時に「I'm FFfreak. Do you know who I am ?」って自己紹介されて、知ってるに決まってんだろ!って笑っちゃったのを覚えています。
今となっては、最早雲の上のような存在ですが、これからは彼を目標に、もっともっとマジック上手くなれたらなぁと思います。そして、いちBrad Nelsonファンとして、これからも彼が勝ち続けてくれるのを願っています。
彼がこの記事を読んでくれてるはずもないでしょうが、彼のPoY受賞は僕にとっても大きなニュースだったので、この場を借りて祝辞を述べさせていただきたいと思います。
本当におめでとう、Nelson。
日本勢の「青白石鍛冶コントロール」
5 《平地》 4 《島》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 1 《湿地の干潟》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 4 《戦隊の鷹》 2 《石鍛冶の神秘家》 2 《太陽のタイタン》 -クリーチャー(8)- |
4 《定業》 2 《未達への旅》 2 《広がりゆく海》 1 《剥奪》 1 《乱動への突入》 2 《転倒の磁石》 4 《審判の日》 1 《肉体と精神の剣》 1 《饗宴と飢餓の剣》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 2 《エルズペス・ティレル》 2 《ギデオン・ジュラ》 1 《滞留者ヴェンセール》 -呪文(26)- |
1 《コーの奉納者》 2 《糾弾》 4 《光輝王の昇天》 2 《存在の破棄》 2 《広がりゆく海》 1 《漸増爆弾》 3 《神聖の力線》 -サイドボード(15)- |
トップ8に残った日本勢2人が使用したのも「Caw-Go」に分類されるものでした。まずは中田くんのリストから見ていきましょう。
こちらは「ChannelFireball」勢が使ったものと非常に良く似ていますね。《未達への旅》《広がりゆく海》の採用など、いくつかの相違点があるんですが、最も大きな違いは《石鍛冶の神秘家》の枚数と、《マナ漏出》の有無でしょう。
《石鍛冶の神秘家》は対青いコントロール戦において、積極的にマリガンする動機になりえます。特にメインボードでは装備品を割るカードが無いので、なおさらその傾向は強くなります。
まるで一昔前の王者だった「フェアリー」が、ミラーマッチでは《苦花》か《思考囲い》が来るまでマリガンしていたかのように、このデッキでは《石鍛冶の神秘家》《戦隊の鷹》が来るまでマリガンしてもいいくらいに、これらのカードの強さ、そして対処の難しさは際立っています。
そのため、「ChannelFireball」勢のようなリストと対戦する場合は、あちらがそれらを8枚採用しているのに対し、こちらは6枚しかないので、少しだけ序盤の攻防で不利になっています。
《マナ漏出》があれば、こちらが先手の場合なら2ターン目の《石鍛冶の神秘家》《戦隊の鷹》を防げるのですが、それすらもないので序盤の脆さは少し気になります。これに関しては、リストがばれるまではどちらにせよ相手は《マナ漏出》を警戒してくるので、プロツアーのトップ8のような場面でない限りは関係ないでしょうけどね。
ここまではこのデッキの短所ばかりを解説してきましたが、それらを考慮しても、このデッキの持つ中盤戦以降の強さは特筆に値します。《石鍛冶の神秘家》の少なさをフォローする《転倒の磁石》は、ミラーマッチに限らず「白単・白緑アーマー」戦でも重宝しますし、先程お伝えした通りミラーマッチでの強さが約束されている《エルズペス・ティレル》をメインから取っているのも大きな武器となります。さらには海外勢がサイドボードに用意している《神への捧げ物》も《太陽のタイタン》で無効化できます。もしも中田君が、海外勢も《太陽のタイタン》を使ってくる事を見越して、《神への捧げ物》ではなく《存在の破棄》を採用していたのなら、彼の構築能力には脱帽の一言です。
《未達への旅》《広がりゆく海》《乱動への突入》《転倒の磁石》を入れる事で、このデッキが得意とする長期戦へ持ち込みやすいように工夫されているのも素晴らしいと思います。
《石鍛冶の神秘家》の枚数と《マナ漏出》を入れるべきかどうかは、もう少し検討しなければはっきりとした答えは出せません。しかしながら少なくともこのプロツアーの段階では、「『青白コントロール』にはほぼ間違いなく《マナ漏出》が入っている」という常識を覆した中田君のアイディアは素晴らしいものだったと言えるでしょう。
サイドボードは「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」対策に少し多めに枠を割いていますね。《神聖の力線》と追加の《広がりゆく海》がそれにあたります。僕はどのデッキで大会に出るにしろ「赤緑《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」対策を怠ることはしないので、この戦略には大賛成です。《神聖の力線》は「青黒コントロール」のハンデス対策にもなりますしね。
残念ながらBen Stark相手に多少の運の無さもあり0-3で敗れてはしまいましたが、デッキの構成は良かったと思います。《マナ漏出》無しのこの形のまま変更を加えるとすれば、これからは「Caw-Blade」が増えそうな事を考慮して、《太陽のタイタン》2枚を、ミラーマッチに置いて最も重要な《石鍛冶の神秘家》2枚に、《エルズペス・ティレル》か《滞留者ヴェンセール》1枚を4枚目の《精神を刻む者、ジェイス》にしたいですね。
予選ラウンドを9-0-1と無敗で駆け抜けたこのデッキは、日本勢が持ち込んだデッキの中でも、最高級のものだったと個人的に思います。中田君は社会人で多忙とのことですが、そんな中でもこのレベルのデッキを作りあげ、プロツアーで結果を残したという事実は、多くの人に希望を与えたのではないでしょうか。
4 《平地》 3 《島》 4 《天界の列柱》 4 《氷河の城砦》 4 《金属海の沿岸》 1 《乾燥台地》 1 《沸騰する小湖》 4 《地盤の際》 -土地(25)- 4 《闘争の学び手》 4 《石鍛冶の神秘家》 3 《ミラディンの十字軍》 -クリーチャー(11)- |
4 《定業》 4 《失脚》 3 《呪文貫き》 4 《マナ漏出》 2 《未達への旅》 2 《肉体と精神の剣》 1 《饗宴と飢餓の剣》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(24)- |
4 《戦隊の鷹》 2 《海門の神官》 1 《コーの奉納者》 2 《悪斬の天使》 3 《漸増爆弾》 1 《天界の粛清》 1 《瞬間凍結》 1 《屈折の罠》 -サイドボード(15)- |
トップ8には「青白コントロール」に分類出来るデッキが4つありますが、石村君のリストはその中で最も個性の強いリストに仕上がっています。
《闘争の学び手》《石鍛冶の神秘家》《ミラディンの十字軍》というクリーチャー陣を見れば一目瞭然なんですが、このデッキは「青白コントロール」でも「Caw-Blade」でもなく、「クロック・パーミッション」なんです。その証拠に、他の3人全員がメインに4枚採用している《審判の日》を、石村君はサイドにすら取っていません。
現在のコントロール過多の環境を読み切り、メインのクリーチャー除去は最低限の6枚に抑えて、その代わりに対コントロールに強くなるように、《マナ漏出》に加え《呪文貫き》までをもメインから採用しているんです。この思想は「ChannelFireball」勢とほぼ同じですね。石村君は他のリストと比べて「剣」の枚数がメインに3枚と多くなっているので、これだけでも《石鍛冶の神秘家》をめぐる攻防で多少有利になります。
対ビートダウンに関しては、サイドボードにも《審判の日》を取っていないので、他の青白デッキとは違い、《失脚》《未達への旅》《漸増爆弾》などで牽制して殴り合う事になります。
決勝ラウンドでいきなりVincentの操る「ボロス」とマッチアップされた石村君なのですが、善戦空しく惜しくも2-3で敗れてしまいました。まだこのデッキを使った事がないので一概には言えませんが、準々決勝の試合を観た感じだと、《悪斬の天使》の増量を検討してもいいでしょう。せっかくメインボードで対コントロールに強く出来ている分、サイドボードにもう少しビートダウン専用カードを割いてもいいように見えますね。
Ben Stark曰くミラーマッチでも《悪斬の天使》は強いようなので、もしかするとこれからはメインから積んでもいいかもしれません。
形は違えど、「コントロールに強く」という発想は日本勢の2人も、「ChannelFireball」勢も同じだったようですね。それぞれがそれぞれの答えをプロツアーに持ち込み、結果を残したことは素直に称賛に値すると思います。
今回に限って言えば、日本勢は決して海外に劣ってなかたっと胸を張っていいでしょう。これからも、彼らのように、次の世代が活躍する事を期待しています。
今週はここまでです。プロツアーの結果としては、今のところ完成度という意味で「Caw-Blade」が一歩抜きん出ている状況と言ってもいいでしょう。
しかしその他のデッキも、きちんとしたリストが出来れば、「Caw-Blade」に十分対抗する事が出来ると思います。今回は圧倒的な強さで下剋上を果たした「青白コントロール」ですが、これからは追われる立場にあります。いよいよ「ミラディン包囲戦」がMOに入る来週以降も、王座をしっかりと守れるのかに要注目ですね。
来週はトップ8に残ったその他のデッキを見ていきたいと思います。「青白コントロール」以外のデッキリストを見れば、より一層環境への理解度が高まると思うので、次週もお見逃しなく。
それでは、また来週~!
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