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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
第37回:主要デッキおさらいと最新動向
読み物
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
2011.01.12
第37回:主要デッキおさらいと最新動向
明けましておめでとうございます。連載を継続させていただけることになったので、今年もよろしくお願いいたします。
~変わらないメタゲーム~
相も変わらず「赤緑ヴァラクート」「青黒コントロール」が圧倒的に多く、その2つとはかなり数に開きがありますが、次いで「青白コントロール」「白単アーマー」(緑白ヴァージョン含む)が多いようなメタゲームです。
注目すべき点としては、ビートダウンデッキの数が驚くほどに減少した事が挙げられます。
「赤緑ヴァラクート」「青黒コントロール」は、ビートダウン側が少しでももたついてしまうと勝てないほどにデッキパワーと安定性が高く、「青白コントロール」なんかはビートダウンデッキを狩るために存在するようなデッキなので、それらが幅を利かす現在の環境下では、ビートダウンデッキの肩身は狭くなる一方です。
ビートダウンの長所である、「どんなデッキを相手にしてもプレイングのブレのない、一貫性のあるデッキ」は、環境初期ではベストな選択肢となりえますが、今のように環境の固まってきた状況では、勝つために何かしらの工夫が必要になってくると思います。
以上の理由でビートダウンデッキがほとんど死滅したことを受け、上位陣のデッキにも多少ではありますが変化がありました。今週はその変化を追っていきましょう。
「赤緑ヴァラクート」
12 《山》 5 《森》 1 《怒り狂う山峡》 4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 4 《広漠なる変幻地》 2 《進化する未開地》 -土地(28)- 3 《ムル・ダヤの巫女》 4 《原始のタイタン》 2 《ゼンディカーの報復者》 -クリーチャー(9)- |
4 《探検》 4 《カルニの心臓の探検》 3 《紅蓮地獄》 4 《耕作》 4 《砕土》 4 《召喚の罠》 -呪文(23)- |
4 《強情なベイロス》 2 《ワームとぐろエンジン》 3 《ガイアの復讐者》 3 《稲妻》 2 《帰化》 1 《紅蓮地獄》 -サイドボード(15)- |
「赤緑ヴァラクート」デッキの変更点は要約すると二点のみです。ひとつ目は《召喚の罠》の増量で、もう一点は次のリストで紹介します。
最初の変更点である《召喚の罠》の増加は、同系、対青系のコントロールに圧倒的に強いので、現在のメタゲームなら自然の成り行きと言えるでしょう。
いまだに2枚のリストもたまに見かけますが、最近ではほとんどの人がメインから3枚~4枚の採用を徹底しています。あまりにも青系のデッキが多いので、メインから《ガイアの復讐者》や《槌のコス》を入れているリストもよく目にします。
11 《山》 6 《森》 2 《霧深い雨林》 4 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》 3 《広漠なる変幻地》 2 《進化する未開地》 -土地(28)- 4 《水蓮のコブラ》 2 《酸のスライム》 4 《原始のタイタン》 3 《ゼンディカーの報復者》 -クリーチャー(13)- |
1 《稲妻》 3 《探検》 4 《カルニの心臓の探検》 4 《耕作》 3 《砕土》 4 《召喚の罠》 -呪文(19)- |
3 《ガイアの復讐者》 2 《稲妻》 1 《自然の要求》 4 《紅蓮地獄》 3 《転倒の磁石》 2 《裏切りの本能》 -サイドボード(15)- |
こちらがふたつ目の変更点である、《水蓮のコブラ》を採用したリストです。
同系、対青系コントロール戦で優秀なマナ加速となるので、ビートダウンの減った今現在では、以前よりも採用されたリストが増えてきました。ここでも当然のように《召喚の罠》が4枚使用されており、それも含め、《水蓮のコブラ》は青系のコントロールデッキからすれば、カウンターでは対処しづらい脅威という意味で非常にいい働きを期待できるでしょう。
そして同系戦でのインパクトも特筆すべき点ですね。近頃では《稲妻》などの除去カードの枚数が最低限の0枚~4枚に抑えられている事も手伝って、ゲームを決めかねないこの蛇が生き残る可能性はかなり高くなっています。これが意味するところ、こちらの方が対戦相手よりも先に《原始のタイタン》《召喚の罠》《ゼンディカーの報復者》へアクセス出来る可能性が高くなるため、《水蓮のコブラ》を採用しているというだけで、序盤のマナ加速ゲーを大きくリード出来ると言う訳なんです。
同系戦では、4~5ターン目に6マナの出ないハンドはマリガンした方がいいくらいに、シビアに初手を吟味する必要があるので、手札の枚数の減ってしまったマリガン後でも、6マナへの到達を早めてくれる《水蓮のコブラ》はかなりのやり手です。
環境的に除去の全体数の少なくなった今なら、採用を検討するべき1枚だと思います。
もし僕がこのリストに手を加えるとしたら、《水蓮のコブラ》と相性の良い《ムル・ダヤの巫女》をぜひ入れたいので、《酸のスライム》2枚をサイドに落とすと思います。
1枚だけの《稲妻》も中途半端に感じられるので、《ムル・ダヤの巫女》やら4枚目の《探検》にしたいですね。
それと《水蓮のコブラ》のおかげで、3ターン目に4マナを揃える事が容易になっているので、サイドボードに《槌のコス》の採用を検討してもいいでしょう。
「青黒コントロール」
4 《島》 3 《沼》 4 《忍び寄るタール坑》 4 《闇滑りの岸》 4 《水没した地下墓地》 1 《霧深い雨林》 1 《新緑の地下墓地》 1 《惑いの迷路》 4 《地盤の際》 -土地(26)- 3 《吸血鬼の夜鷲》 3 《墓所のタイタン》 -クリーチャー(6)- |
4 《定業》 4 《コジレックの審問》 3 《見栄え損ない》 3 《マナ漏出》 3 《広がりゆく海》 2 《破滅の刃》 1 《冷静な反論》 2 《記憶殺し》 1 《弱者の消耗》 1 《ジェイス・ベレレン》 4 《精神を刻む者、ジェイス》 -呪文(28)- |
2 《ワームとぐろエンジン》 2 《強迫》 2 《漸増爆弾》 2 《瞬間凍結》 1 《マナ漏出》 1 《破滅の刃》 1 《広がりゆく海》 1 《記憶殺し》 1 《精神壊しの罠》 1 《弱者の消耗》 1 《ジェイス・ベレレン》 -サイドボード(15)- |
お次は昨年末に世界選手権を席巻した「青黒コントロール」の紹介です。冒頭でも触れた通り、「赤緑ヴァラクート」とこのデッキは、他のデッキと比べて「Decks of the Week」に載っている数が圧倒的に多いです。
それほどまでに安定性の高く、強力なデッキなので、年末からあまり大きなリストの変化はありませんでしたが、ここ何週間かの結果を見ると、メインに《吸血鬼の夜鷲》が採用されているものが増えたように思えます。
第36回の連載でもお伝えしたように、このカードは同系戦において重要な役割を果たすので、その回数の多い今のメタゲームでは納得のいく変更ですね。
ついでに《吸血鬼の夜鷲》をメインに入れる付加効果として、サイドボードのスロットが空く事が挙げられます。Tier1のデッキは限定されてきましたが、そうは言っても「ボロス」などのデッキに当たらないわけではもちろん無いので、サイドボードの枠が空くと言う事の意味は、思った以上に大きなものです。
実際に普通の「青黒コントロール」では枠がないため入れる事の叶わない《ワームとぐろエンジン》がサイドに入っていますし、このように特定のデッキ対策に追加で2~3枚の枠が取れるのは有意義な事ですよね。
リスト自体も、現在のメタゲームでは有効な1枚である《記憶殺し》のメイン採用など、かなり完成度の高い仕上がりになっていますが、《マナ漏出》を3枚にしているのだけはいただけません。
《見栄え損ない》か《記憶殺し》1枚を4枚目の《マナ漏出》にするといいでしょう。
「青白コントロール」
4 《島》 3 《平地》 4 《天界の列柱》 4 《金属海の沿岸》 4 《氷河の城砦》 1 《霧深い雨林》 1 《乾燥台地》 1 《惑いの迷路》 4 《地盤の際》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《定業》 2 《糾弾》 4 《マナ漏出》 4 《広がりゆく海》 3 《未達への旅》 3 《光輝王の昇天》 2 《取り消し》 4 《審判の日》 3 《ジェイス・ベレレン》 3 《精神を刻む者、ジェイス》 1 《エルズペス・ティレル》 1 《ギデオン・ジュラ》 -呪文(34)- |
2 《呪文貫き》 2 《天界の粛清》 2 《瞬間凍結》 1 《存在の破棄》 3 《神聖の力線》 2 《精神壊しの罠》 1 《決断の手綱》 2 《エルズペス・ティレル》 -サイドボード(15)- |
Tier1の中でリストを見るのが1番楽しみなのは「青白コントロール」でしょう。
《戦隊の鷹》が入っていたり、《占いフクロウ》が入っていたりと、その種類の多さには驚かされます。
「青黒コントロール」との比較をすると、「青黒」が環境最高のフィニッシャーとも言える《墓所のタイタン》を擁するのに対し、「青白」には《ギデオン・ジュラ》《エルズペス・ティレル》などの強力なプレインズウォーカーがあります。どちらのデッキにも軽くて優秀な除去はありますが、白の除去は《糾弾》や《未達への旅》と、《復讐蔦》に強い構成になっていますね。
更に「赤緑ヴァラクート」「青黒コントロール」への優秀なサイドボードとして《神聖の力線》が取れるのも、「青黒」にはない「青白」の魅力のひとつです。
「青白」と「青黒」のどちらがいいか一概には言えませんが、MOほどリアルではビートダウンが少ないとは思えないので、そうなってくると「青白コントロール」を選ぶ選択肢も十分にあると思います。「青黒コントロール」も決してビートダウンに弱くはないのですが、やはり《審判の日》擁する「青白コントロール」の方が、単純なビートダウン耐性は高いでしょうからね。
「白単アーマー」
17 《平地》 4 《湿地の干潟》 -土地(21)- 4 《メムナイト》 4 《羽ばたき飛行機械》 4 《きらめく鷹》 3 《コーの決闘者》 4 《コーの装具役》 4 《コーの空漁師》 4 《戦隊の鷹》 4 《石鍛冶の神秘家》 -クリーチャー(31)- |
4 《聖なる秘宝の探索》 2 《肉体と精神の剣》 2 《アージェンタムの鎧》 -呪文(8)- |
4 《コーの火歩き》 3 《白騎士》 4 《真心の光を放つ者》 4 《光輝王の昇天》 -サイドボード(15)- |
Finals2010を制した「白単アーマー」なんですが、MOではデッキの安さもあってか、いまだに数が多いです。このデッキの問題点は、このデッキの爆発力がすごい事は誰もが知っていますが、それゆえに皆がサイドに積んでいる《帰化》系のカードに著しく弱いことでした。
しかし「赤緑ヴァラクート」「青黒コントロール」「青白コントロール」の三すくみ状態という事もあり、多くのデッキがこのデッキへの注意を怠っているので、再びチャンスが巡ってきたのだと思います。
これからもこのような状況が続くようであれば、このデッキがTier1に返り咲くのも遠くはないでしょうね。
「エルフ」
12 《森》 4 《巨森、オラン=リーフ》 4 《新緑の地下墓地》 -土地(20)- 4 《東屋のエルフ》 4 《ラノワールのエルフ》 4 《ジョラーガの樹語り》 4 《ジョラーガの戦呼び》 4 《獣相のシャーマン》 4 《森のレインジャー》 4 《エルフの大ドルイド》 2 《背教の主導者、エズーリ》 4 《復讐蔦》 -クリーチャー(34)- |
3 《エルドラージの碑》 3 《起源の波》 -呪文(6)- |
4 《強情なベイロス》 3 《酸のスライム》 4 《破滅の刃》 3 《記憶殺し》 1 《沼》 -サイドボード(15)- |
こちらは久しく見かけなかった「エルフ」デッキです。
「青黒コントロール」「青白コントロール」の両者に《復讐蔦》が強い事に目を付け、じわじわと勢力を伸ばしてきました。
どちらのコントロールデッキも《審判の日》《弱者の消耗》という全体除去を擁しているので、それを意識してか土地を20枚まで増量し、《起源の波》を採用しています。《森のレインジャー》はそれを考えての投入でしょうし、よく練り込まれたいいリストだと思います。
《復讐蔦》と《起源の波》で青系のコントロールデッキには善戦できるものの、このデッキの問題点は対「赤緑ヴァラクート」への勝率の悪さでした。
以前のこのデッキは、「赤緑ヴァラクート」に速度で対抗するしかなかったのですが、サイド後の《紅蓮地獄》も考えるとそれは非常に難しいと言わざるを得ませんでした。
しかしこのリストは黒を足して《記憶殺し》で《原始のタイタン》を抜いてしまうという、新しい戦略を取っています。黒マナの不安定さも含め、これがどれほど有効なものかは測りかねますが、面白いアプローチと言えるでしょう。
近頃では安定して「Decks of the Week」に登場するようになった「エルフ」デッキ。これからの動向にも要注目です。
今週はメタゲームのおさらいという少し物足りない内容になってしまいましたが、来週からは年末年始に行われた世界各国のトーナメントから、面白いデッキをピックアップしたいきたいと思います。
それと、年末にお試しで始めた公式連動企画なんですが、体調を崩した事もあり、一時お休みさせていただく事になりました。
多くのコメントをいただいたり、多くの人にリンクを張ってもらったりしていただいたので、何とか続けたかったのですが、まずは体が第一と言う事で、苦渋の決断となりました。
みなさんの意見を聞かせて頂けたことで、僕の中でプレイング面や記事の面で変化もありましたし、この場を借りて、お礼を申し上げたいと思います。本当にありがとうございました。
それでは、今週はこの辺りで。今年もよろしくお願いします。
また来週ー!
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