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Savor the Flavor
銀の牢獄
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銀の牢獄
Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki / Translation-supervised by Yohei Mori
2012年1月18日
前回、我々はソリン、イニストラードの全吸血鬼の始祖の孫がいかにしてアヴァシンと呼ばれる天使を創造することになったかを見た。
今日、我々はまさしくその天使に何が起こったのかを発見し、そして彼女の失踪の原因となったカードを見ることになる。だがそこに至る前に、我々はイニストラードの歴史へと飛び込む必要がある。
デーモン類の物語
ソリン・マルコフと彼の祖父エドガーの時代よりも前、イニストラードの吸血鬼種族が存在する以前でさえ、イニストラードの人々はデーモンを怖れていた。存在を明白にしたこれら悪魔的クリーチャーはわずかで、そのため一部の人々は、デーモン達は神話的な存在か死に絶えて久しいと信じていた。だが他の者は、邪悪なデーモンの落とし子の伝説は真実であると知っており、彼らはデーモン達が帰還する時を恐れていた。
《貪欲なる悪魔》/《強欲の大悪魔》 アート:Igor Kieryluk
エドガー・マルコフは、シルゲンガーと呼ばれる悪魔のような存在の刺激が重要な要素となってイニストラードに吸血者達を創造した。シルゲンガーは当時イニストラード地表に存在する数少ないデーモンの一体であり、その出現とともに、彼は同類の先駆者的な存在となった。エドガーは吸血の呪いを孫のソリンへと与え、ソリンに潜んでいたプレインズウォーカーの灯を目覚めさせた。そして後に、エドガーの行動は間接的に、世界へのデーモン達の復活を導いた。
今やプレインズウォーカーとして、ソリンは数十年を生き、旅をし、吸血性の飢えを満たし、そして数十年は数世紀へと引き延ばされた。イニストラードに帰還し、吸血鬼と他の超自然的怪物達がイニストラードの生命への脅威となっている様を目にした時、ソリンは行動に移った。彼は人類の守護者として大天使アヴァシンを創造し、吸血鬼と人間の両方に、この世界で生きていく方法を与えた。
そしてアヴァシンは彼女の仕事を、熱意をもって務めた。
アヴァシンの出征
大天使アヴァシンと彼女の天使の群れは、人類に害を成すであろうそれらに対抗すべく剣をとった。彼らは聖なる熱情を持って吸血鬼を狩り、それが刺激となってソリンは同胞から一族に対する裏切り者の烙印を押された。天使達は、荒野に接する街を圧倒しようと迫っていた狼男の吠え群れを打ち負かした。彼女らは難破船やこの次元の古の荘園に徘徊していた悪意ある幽霊を消滅させた。彼女らは不浄なグール達を貫く光で焼いた。彼女らは邪悪な次元を浄化することは決してできなかったが、ソリンの創造物はその仕事を行った。
《高まる献身》 アート:Daniel Ljunggren |
人類は再び栄えることができた。アヴァシン教会は大天使の周囲に成長し、彼女への信仰は肉に飢えた怪物達をかわす助けとなった。次元の力の均衡は人類を支持する側に傾いた。
このことがどんな邪悪をもたらすのか、予見できた者は誰もいなかった。
デーモンと悪魔の所業
次元の超自然的悪鬼の後退は、空間をあけ、イニストラードの地獄の軍勢が出現する好機となった。大昔のシルゲンガーのように、デーモン達とその従僕である悪戯な小悪魔達が遥かに大規模な数で、彼らの存在を知らしめ始めた。
アート:James Paick |
アヴァシンはそれぞれのデーモンを一騎打ちで相手し、1体また1体と彼らを打ち負かした。彼女はすぐに新たなデーモンが出現することを発見し、布告を発した。「破壊し得ぬ物は縛られるであろう」。そして彼女はデーモン類を束縛するべく銀の首輪を鋳造した。それによって彼らは手繰り寄せられ、収監された。銀の首輪はアヴァシンの象徴となり、聖なるシンボルはアヴァシン教会の僧侶と聖戦士達によって伝えられた。
獄庫
一体また一体、アヴァシンと彼女の天使の群れはデーモン達を捕え、彼らを獄庫と呼ばれるようになる銀の巨塊に封じた。イニストラードの銀の月の破片と言われ、獄庫は崖の先端とその下の海を見渡す高都市スレイベンの大聖堂の中庭に鎮座している。伝説は、それとアヴァシンは同じ夜に初めて姿を現し、その銀塊はイニストラードにおいてアヴァシン自身の次に最も聖なる力を持つ物体であり続けていると語っている。
アート:Eric Deschamps |
然るべき呪文と儀式によって、アヴァシンと彼女の天使の群れは獄庫へと邪悪なクリーチャー達を吸い寄せた。彼女は獄庫へと非常に多くのデーモン達を閉じ込めたため、残ったのは極少数だけだった。デーモンを崇拝するスカースダグ教団以外が安堵したことに、デーモンと小悪魔達の大部分は人類の生活から去った。
デーモンのグリセルブランド、彼の種の中で最も強大かつ捕えられたことのない1体が、前代未聞な程に図々しくも異様な行動に出たのは、ほんの少し昔のことだった。彼は満月の夜、獄庫そのものの上に立ち、アヴァシンへと戦いを挑んだ。
アヴァシンとグリセルブランドは数日間にわたって戦った。それを見ていたのはアヴァシンの従者、月皇ミケウスと彼が最も信頼する司教達のみであった。ついに、死に物狂いの努力で、アヴァシンは残された力全てを使用し、グリセルブランドを獄庫へと追い込んだ。最後の行動としてグリセルブランドは彼の槍を放ち、大天使の心臓を貫いた。すると束縛の呪文が跳ね返り、アヴァシン自身も獄庫へと吸い込まれた。
イニストラード最強のデーモンは今や巨大な銀塊に収められた。人類を守護する教会の要、大天使アヴァシンと共に。「破壊し得ぬ物は縛られるであろう」、彼女自身の術の言葉が彼女を閉じ込めた。
光の衰退
アヴァシンはいなくなった。月皇はよろめいた。教会本部は一般民衆へと何を伝えるべきか、アヴァシンの幽閉を秘密とすべきかどうか悩んだ。数日、数週間が過ぎ、信仰に従ずる者達がその影響を感じた。聖なる防護魔法が失敗し、アヴァシンへの祈りに返答がされなくなった。アヴァシンの天使の群れは数を減らし、次第に稀な存在となっていった。アヴァシンが世界を見捨てたという噂が盛んに語られ、四州全てに信仰の危機を招いた。かつてアヴァシンの力によって退けられた邪悪なクリーチャーは聖なる力の不在を察知し、より大胆に、より飢えるようになった。人類の守護者が彼女自身の銀の器に捕らわれ、イニストラードの人々は今、夜に棲むクリーチャー達へとさらされて取り残されている。
アート:Ryan Pancoast |
今、パズルは1つになった。昨年秋、君達はイニストラードとアヴァシンに基盤をなすその信仰について学んだ。君達は彼女の、首輪の形状をしたシンボルについて、銀の重要性について、そしていかにしてか彼女が失踪してしまったことを学んだ。先週、君達はソリンの役割について、そしていかにして彼が吸血者としての祖から導かれ、自身の同類から世界を守るべくアヴァシンを創造することになったかを学んだ。今や君達はパズルの次のピースを知っている。獄庫、今や大天使を包み込む牢獄、それが捕食性の邪悪達の繁栄をその次元へと許している。来たる物語はもっとあるが、今は闇の隆盛のカードについて語るために一息入れよう。
ああ、そうだ。獄庫は闇の隆盛のカードだ。
カードの姿の獄庫
我々はイニストラードの歴史において獄庫がどんな役割を演じたのかを見てきた。では実際にそれを見てみよう。
獄庫はクリーチャーを飲み込み、時のない永遠の中に閉じ込める伝説のアーティファクトだ。つまり閉じ込められたクリーチャーは自身の行いについて考えることができる。3マナで、それは早い段階に出現し、戦場へと長い影を投げかける。
獄庫は無慈悲な牢獄であり、味方も敵もその銀の巨塊の中に収める。ただ1マナだけで君は自身のクリーチャーをその中にしまい込むことができる、たぶん除去呪文、もしくは致死的な戦闘から守るために。獄庫は君のクリーチャーを追放経由で持ち去るので、彼らは決して墓地に触れてはいない。つまり君はまた「死亡」による誘発を防ぐことができる、とりわけイニストラード・ブロックに関係のある能力を。君は獄庫を、対戦相手が「陰鬱」能力で優位に立つのを防ぐために、もしくは《イニストラードの君主、ソリン》の最終奥義を妨害するために使用できるかもしれない。
もし自身の獄庫をこじ開ける手段を持っているのなら、君は戦場へとクリーチャー達を強襲させることができる。君はまるで最新式の《隠れ家》のように、獄庫にクリーチャーを蓄えることができる。対戦相手の持ち物を《審判の日》で消し去りつつ、君の所の連中をまだその中に安全に仕舞いこんでおくという意図で。神秘的であろうとなかろうと、銀のがっしりした塊の解放手順が必要とする全てはアーティファクトを破壊する手段だ。だから君は単純に君の獄庫を《帰化》して、自己追放を全て元通りにし、下僕全員を解放する。それとももしかしたら君は《躁の蛮人》でスタックを使用したちょっと利口なトリックを行うだろうか? 獄庫を対象とした蛮人の「戦場に出た時」誘発に対応して、マナを支払って蛮人を獄庫に入れる。そしてそれが戻ってきたとき、二回目の蛮人の誘発能力で対戦相手の剣なり何なりを吹き飛ばすのだ。
《獄庫》 アート:Jaime Jones |
より手っ取り早いやり方だってある。獄庫は伝説なので、君はもう1枚の獄庫を唱えるだけでいい。月の塊を二つに割り、両方を吹き飛ばして君のクリーチャー全てを解放する。
だがもちろん、獄庫の大元の目的は友好的なクリーチャー達を閉じ込めるというものではない。対戦相手が召喚すると言い張っているあの恐ろしい、邪悪な獣達全てを隠匿してしまうというものだ。より大きなコストが必要ではあるが、獄庫はその機能を持っている。7マナで、君はアヴァシンがかつて行ったように獄庫を使用することができる、君の敵が操る恐ろしいそれらのデーモン、小悪魔、吸血鬼、ゾンビ、そしてブラッシュワグを封じるために。一度7マナに達したなら、君はその手に連射可能な《光明の大砲》を得る。毎ターン1人を柵の向こう側にやってしまえる、収容者に飢えた銀のアルカトラズを(訳注:アメリカ、サンフランシスコ湾の島。1963年まで連邦刑務所がおかれ、脱獄は不可能と言われていた)。対戦において《粉砕》等が不浄な囚人達を自由にしてしまう危険から安全を保つためにマナを残しておきつつ、盤面のコントロールを徐々に握るために獄庫を武器として使用するのだ。
新たな不死メカニズムを持つクリーチャー達とやり合う時、獄庫はとても役に立つことに注意。その能力で、怪物達はかつての姿よりも強くなって死から戻ってくる。獄庫はそれら情け容赦のない獣達を直ちに追放してしまう。まるでアヴァシンの布告、「破壊し得ぬ物は縛られるであろう」そのままに。
死の魔術師の次なる動向
ストーリーライン好きの皆、今日私はこれにて去るが、その前に最後の一考を。アヴァシンに挑戦し、彼女を獄庫へと引きずりこんだデーモンは? 世界の希望である天使を盗み、その世界のいたる所へと効果的に新たな暗黒の時代の鐘を鳴らしているのは? 彼の名はグリセルブランド、そして彼はスカースダグ教団に信奉されている(例として、《グリセルブランドの信奉者》がある)古よりの強大なデーモン。だが我々は彼の名を聞いたことがなかっただろうか、別の状況でも同様に? 彼は......?
《Demonic Tutor》 アート:Scott Chou |
ああその通りだ。グリセルブランドは、リリアナ・ヴェスが魂を引き渡した4体3体のデーモン・ロードの一体だ。彼はリリアナの悪魔的債権者の一体で、もし彼女が自身の厄介な魂を取り戻したいと望んでいるのなら、彼は彼女の行く道にいる。彼はリリアナがイニストラードへと狩り立てに、そして理想的には殺すためにやって来た理由であるデーモンだ。彼女がグリセルブランドを発見し、殺害することができない理由を今我々は既に知った。そのデーモンは、次元の最も聖なる都市、スレイベン大聖堂の内なる聖域にある、月の銀の巨塊の中に隠されてしまった。そこは城壁、聖戦士、そして教会の上層部の注意深い秘密によって防護されているのだ。
死の魔術師はどうするつもりだろうか?
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