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リリアナの任務

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リリアナの任務

Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki / Translation-Supervised by Yohei Mori

2011年8月31日


 かつて、リリアナ・ヴェスは問題を抱えていた。

 今やその問題は解決した。

 これは、いかにしてリリアナがその問題を片づけたかという話である。


アート:Karl Kopinski

 件の問題というのは、彼女の魂の所有権を主張していた、コソフェッドという名の強大なデーモンであった。コソフェッドはもう3体の他のアークデーモン達とともに、リリアナと契約を結んだ。曰く、甲は乙に永続的な屍霊術の力と寿命を与える。乙は甲に魂を引き渡す、というものである。リリアナは現在のところ100歳を越えており、彼女の前に立つ者には誰でも破滅を浴びせる死の魔術師として怖れられている。彼女は間違いなく取りきめのメリットを享受している。加えて、デーモンから与えられた若さのおかげで、彼女は無慈悲で野心的な屍霊術師の外見を上手く保持してきた。素晴らしい。


リリアナ・ヴェス》 アート:Terese Nielsen

 だがその時は全くの無害に見えた代価、一つのやっかいで小さな使用済みの魂が今や彼女にのしかかっている。契約条件は彼女の肌に直接刻まれており、負債と、恩を受けている暗黒の存在を絶えず彼女へと思い出させている。時折、特に彼女が強力な魔術を唱える時には、彼女の最も貴重な所有物を手放した瞬間を思い出させるかのように、燐光性の刺青、秘術的な渦模様、ぎざぎざのルーンとしてその契約が彼女の肌へと現れる。


Demonic Tutor》 アート:Scott Chou

 それゆえに、彼女は死をもたらす自身の手で問題をどうにかしようと決心した。四体のデーモン債権者の一体、コソフェッドはミス・ヴェスを味方として呼びだした時、リリアナは契約から逃れ始められるかもしれない方法を発見した。彼女はとある古の地下墓地を探す任務に赴いた。強大なアーティファクト、鎖のヴェールを手に入れるために。その過程で彼女は野生的な粗暴者《野生語りのガラク》と衝突し、多元宇宙の果てまでも彼女を追いかけてくる容赦のない敵を作ることになってしまった。だがリリアナはまた鎖のヴェールの残忍な効力を学び、ガラクを打ち負かすのに使用し、弱った彼へとある種の暗黒の呪いを与えて去っていった。


プレインズウォーカー・コミック「ハンターとヴェール」第三部より アート:Alex Horley-Orlandelli

 切望した鎖のヴェールを持って主人であるコソフェッドの下へと戻った時、彼女は機会を得た。ヴェールを使った結果何か起ころうとも、彼女の前に立ちふさがる障害を取り除く方が重要だった。もし彼女の魂が彼女自身のものでない理由の一つがコソフェッドであるなら、彼は死ぬべきである。残りのデーモンの君主も順番に。

 彼女は全ての力を奮い起こし、ヴェールから更なる力を得て、デーモンのコソフェッドを破った......


 プレインズウォーカー・コミック「ヴェールの呪い」第三部より アート:Mark Texeira

 だが契約の刻印は消えはしなかった。彼女はうろたえた。

 問題ない。彼女は今や鎖のヴェールを手にしている。魅惑的で、もしかしたら破滅的な味方を。そして彼女は若さと力を保ったままだ。彼女の目的は変わらない。魂を取り戻すことだ。

 三体のデーモンの君主はまだ残っている。

 それが彼女をイニストラードへと導いた。

リリアナの次の一歩


Vincent Proceによるコンセプト・アート

 イニストラードの世界はリリアナによく似合った。生まれつきの奴隷と異様なほど強大な戦士達だけからなる宴会のように、そこにはアンデッドがうようよしている。そして世界は闇に覆われている。大気はほとんど常に肌寒い霧に喜ばしく隠され、空には天使の姿はほとんど見られない(あの忌々しい翼の者達はリリアナに無駄足を踏ませるので大嫌いだった)。そして他の何よりも、イニストラード独特の雰囲気は彼女になじんだ。


ヴェールのリリアナ》 アート:Steve Argyle

 リリアナが鎖のヴェールを手に入れて以来、特に彼女がそれを使って主であるデーモンの一体を殺して以来、彼女は生まれ変わったようだ。あるいは以前よりももっと暗い道を選んでいるかのようだ。明らかに彼女はより多くの危険を背負っている。デーモンを積極的に探し求める者は誰でも危険と親しくなる。彼女のわずかな仲間全てに忘れられたとしても、彼女の人生は自身の目的へ狙いを定めた矢となった。ヴェールの未知の力を使用して目的へと進むために、彼女はより大きな危険へと自身を押しやるかもしれない。だが彼女はそれを楽しんでやっている。

 彼女の人生の新たな段階を表す、イニストラードのカードを見てみる時がやって来た。《ヴェールのリリアナ》。

ヴェールのリリアナ

 吸血鬼《ソリン・マルコフ》が基本セット2012でリリアナの場所に押し入っているが、彼女は黙らせられるのを拒否した。リリアナらしい流儀で、彼女はイニストラードの扉を壊して自身のためにいくらかのスポットライトを奪った。

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 リリアナは小奇麗な3マナの新たな姿で登場している。《ジェイス・ベレレン》の他にはただ一人の3マナ・プレインズウォーカーだ。初登場のときのジェイスと同じく、忠誠度3というところまで似ている。つまり彼女がトーナメント・シーンに登場する道を見つけるということもあるかもしれない。我々は、中核となるプレインズウォーカーのキャラクターがスポットライトへと向かう道を見つけ(《復讐のアジャニ》がよい例》、そしてただ復讐とともに帰ってくるために少しの間姿を消すことが(例として、基本セット2012はアジャニを呼び物とはしていない)好きだ。5人のうち、リリアナは多分傍観者でいることを最も楽しんでいなかったキャラクターであり、彼女はオリジナル5人の中で新たな姿を得た最後の一人だ。だからこそ今度は確実に、彼女の影響力を発揮する番だ。

 リリアナの忠誠度を上げる最初の能力は、全員にカードを捨てさせる。彼女を呼び出した者である君にも強いるのは少々過酷に見えるかもしれない。だがイニストラードにおいては、墓地は道具として使用することができ、カードを捨てる能力は強力なアドバンテージとなりうる。巨大なアンデッドの下僕......となりうる存在......を投げ捨て、蘇生呪文を用意する。ゾンビ化した忌まわしきもの達を組み立てる元になる新鮮な屍の巣を築く。君の墓の大きさを増して、満タンになった墓地に依存する効果を最大にする。もしくはフラッシュバック呪文を捨てることによって奇術を行う......フラッシュバックが帰ってくることは言ったっけ? 手札から唱えなくとも、呪文は同じように機能する。リリアナの忠誠度を増やす能力は微妙かもしれない。だがそれは幽霊のはびこる世界において、賢いデッキ構築に値するだろう。


リリアナの愛撫》 アート:Steve Argyle

 リリアナの二番目の能力は全くもって《残酷な布告》だ。適切な時に生け贄を強要することができる協力者がいるのは――もし君が好むなら、彼女を召喚したそのターンに――冷酷なほどに強力となりうる。リリアナはコントロール戦略によく合うだろう。対戦相手のリソースを減らす。他の除去呪文や手札破壊と合わせて君の対戦相手の戦場をまっさらに、そして手札をほぼ空にしてしまうことができる。もしくは彼女はクリーチャーデッキのために援護射撃をくれるかもしれない。対戦相手が場を整える前に切り込みを入れて、君の道に立ちふさがるブロッカーを排除するのを手伝ってくれる。自分自身を守ることのできるプレインズウォーカー・カードはしばしば強力であることを証明する。見ての通りリリアナは「布告」能力によって長い間待つことができるだろう。そしてしばらくの間君は+1能力で彼女を持ち上げ、次の「布告」を放つ準備をさせてあげる。

 ......もしくは破壊的な最終奥義のために彼女を温存する。想像してみよう、もし君の対戦相手が《ヴェールのリリアナ》をコントロールしていて、+1能力を彼女に毎ターン使わせて君にも手札を捨てさせていたら、君はどうプレイする? 君はおそらく手札にある重要なカードは全てを戦場へ出し、ミス・ヴェスで捨てるための然程重要でないカードを手札にとっておくだろう。だがリリアナが皆にカードを捨てさせるほどに、彼女は-6能力へと近づく。自分の場を構築するというまさにその行為を罰する。


プレインズウォーカー・コミック「ハンターとヴェール」第三部より アート:Alex Horley-Orlandelli

 《ヴェールのリリアナ》の最終奥義を使い、君の対戦相手が熱心に働いて唱えたものの半分をずたずたに裂く。相手の所有物を真ん中から分断し、苦痛に満ちた選択を迫る。どちらの半分をキープし、どちらの半分をリリアナに「取られる」かを。《ジェイス・ベレレン》の滅多に起動しない-10最終奥義とはかけ離れて、《ヴェールのリリアナ》のとても手を伸ばしやすい-6能力は気づかないうちに準備され、やがて確実に君の敵を危機へと押しやってくれるだろう。

 デーモンを屠るための武器を手に入れて、リリアナは帰ってきた。今や彼女が必要としているのは、その現在の住処だ。

グリセルブランド

 もし君が先週の「プレインズウォーカーのためのイニストラード案内」序説部分をチェックしたなら、グリセルブランドという名前の囁きを聞いているかもしれない。グリセルブランドは多くのことを指す。強大なデーモンの君主であり、スカースダグとして知られる秘密結社に崇拝される対象である。大天使アヴァシンと同時期に姿を消した現在行方不明の存在。

 同時にグリセルブランドはとある別のものでもある。彼はリリアナの4......ではなく3体のデーモンの主のうちの一体であり、4...ではなく3体の、リリアナとの契約に従って彼女の魂と献身を自由にできると主張しているデーモンである。

 リリアナのイニストラード次元訪問はただ楽しみとゲームのためだけではない。彼女は破壊の任務についているのだ。自分の魂を取り戻す任務に。彼女はただ標的の居場所を必要としている。そして見つけるためなら、必要とあらば彼女はこの世界を逆さまにもしてしまうだろう。


Adam Paquetteによるコンセプト・アート

呪われたハンター

 だがこの物語のもう一つの断片はないのだろうか? リリアナがヴェールによって呪いをかけた、そびえ立つような、脳筋の自然魔道士については? 彼女の行く所ならどこまでも追ってくる粗暴者は? ここイニストラード次元まで彼女を追跡することすら可能なハンターの感覚を持つ男は? 彼については?


プレインズウォーカー・コミック「ヴェールの呪い」第一部より アート:Steve Prescott

 これについては「変身するガラク」で語ろう。そして来週、もう一度イニストラード・プレビューで会おう!

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