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スタンダードの多様性
スタンダードの多様性
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年8月12日
皆さんこんにちは! プロツアー『異界月』が終わり、リリアナがギデオンと協力してエムラクールと彼女の軍勢である現出クリーチャーを倒すという以上の結末は、我々の描けた中でも最高のものでした。我々はこの物語をカードで表すために多くの取り組みをしてきましたが、全てがその通りになるとは思いませんでした。
連続した2つ目のプロツアーで、そのイベントまでに《集合した中隊》を倒せるものはいないのではないかと考えられてきました。それが間違いであることは証明されましたが、《集合した中隊》がスタンダードを支配していない、もしくはこのフォーマットが停滞し始めたときにまた支配することがないとは言えません。
多様性の意味
人々が初期のイベントで《集合した中隊》の多さに憤慨していたのはもっともですが、しかしながら我々にとっては、「スタンダードが1~3種しかデッキがない状態ではない」ことが大事なのです。我々はプレイヤーがセットの中にある彼らの好きなことに惹かれて、それをスタンダードで競技レベルのデッキとして使うことができるように、可能性のある選択肢を幅広く提供したいと考えています。我々はひとつひとつすべてを成功させることはできませんが、可能な限り多くを成功させるべく最善を尽くしています。
我々がマクロのレベルでセットのテーマ以上に目指していることは、アグロ/ミッドレンジ/コンボとランプ/コントロール/撹乱アグロのバケツに当てはまるデッキが多くあるようにすることです。この考えはアグロはミッドレンジに負け、ミッドレンジはコンボとランプに負け、コンボとランプはコントロールに負けて、と全てが円になっているというものです。
これは健全なメタゲームを単純化したものであり、実際にその全てが揃っているのをスタンダードで頻繁に見かけるわけではありません。それでも、我々はこれらのバケツのそれぞれに強力なデッキの選択肢があることを目指しています。
現在のスタンダード環境ではこれら全てのバケツにデッキがありますが、それらのデッキが常に人々が求めるものであったり、競技的であったりするわけではありません。アグレッシブなデッキはプロツアーで結果を残せず、私は時間の経過による変化に注目しています。多くの人々は《集合した中隊》、リリアナ、《コジレックの帰還》と現出クリーチャーを恐れているかもしれませんが、それとは関係なくこの数字は今一つです。今後数週間で人々が自分のデッキを競技レベルに変化させる方法を思いつく可能性もあります(トム・ロス/Tom Ross、期待していますよ)。
たくさんのコントロール・デッキが見かけられましたが、最近のコントロール・デッキは基本的に打ち消し呪文を大量には使わず、人々はそれらをミッドレンジと同じバケツに入れています。私は白黒やスゥルタイのデッキがそのプレイの方法に基づいて間違いなくコントロールであると主張しますが、より打ち消し呪文が多いコントロール・デッキがこのフォーマットにあってほしいと願っています。私が受け取るコントロール・デッキに関する苦情で最も多いのは、コントロール・デッキには《対抗呪文》が必要である、もしくは《神の怒り》が必要であるという2つです。
私はスタンダードでの打ち消し呪文主体のコントロール・デッキの問題は4マナの全体除去があればいくらか軽減されると信じていますが、より問題なのは青に十分な強さのカード・ドローがないこと、そしてコントロール・デッキを咎めるカードが大量にありすぎることだと思います。《集合した中隊》とエルドラージを唱えたときの誘発型能力が代表的ですが、他にも《大天使アヴァシン》のような強力な瞬速持ちカードやがあり、それらが何かを唱えるまでマナを残しておけることの恩恵が打ち消し呪文を積んだコントロール・デッキを減らしました。《集合した中隊》はもうすぐ去り、打ち消し呪文デッキのへの圧力は減るはずで、そして『カラデシュ』でこのフォーマットを大きく変える大量のカードが加えられます。
4マナの見て見ぬふりをしている問題
我々は去年ぐらいに、もう4マナの《神の怒り》のバリエーションをスタンダードで印刷しないようにしたことで多くの批判を受けました。私はほとんど常にこれの影響に関する苦情を受け取っていますが、これを成し遂げたことに関して本当に満足しています。みんなが同じ4マナの全体除去をプレイするのではなく、以下のカードが現在さまざまなトップメタのデッキでプレイされています。
これらのパワー・レベルがある程度近く有効な状況が異なるので、メタゲームによってデッキにどれを使うかの選択し、デッキを最適化する方法は重要です。《衰滅》は原則的には純粋なコントロールデッキにおいて最も強力ですが、黒マナとこれを生き延びるクリーチャーを排除する単体除去が必要です。《悲劇的な傲慢》はパーマネントがいくつか残ることの恩恵を受けるために十分な種類のパーマネントを盤面に持つ計画を立てていると素晴らしい効果を発揮します。《次元の激高》は勝ち手段として機能し、《罪人への急襲》の追放は大きなアドバンテージですが、少なくともその恩恵を全て受けるには昂揚を達成しなければいけません。《コジレックの帰還》は墓地から誘発できるように最もデッキ構築に要求されるものが多いのですが、「タダ」で打てる全体5点はかなり強力です。私はもっと伝統的なコントロール・デッキが現れてほしいと願っていますが、そうなるにはもっと時間がかかると確信しています。
高いレベルでの多様性があることはアーキタイプだけでなくカードの選択でも重要です。スタンダードで最も強力な効果を得る最良の方法として、アドバンテージを得るためにデッキの構築に条件をつけることは重要です。無条件で最大限に発揮される効果が最強でスタンダードに《神の怒り》があったなら、デッキ構築の決断において多様性が失われると私は考えています。
4マナの《神の怒り》があることはデッキ内の軽い単体除去の数が減り、アグロとのゲームが4ターン目に「ラス持ってるか持ってないか」で決まるようになることを意味しています。ミッドレンジや他のコントロールに対しても書いてある通りの効果を発揮し、両方のプレイヤーに対して相手に打ち勝つための興味深い選択に関してできることが少なくなります。
同じように我々がスタンダードで《対抗呪文》よりも《取り消し》におまけをつけたものを推し続けている理由は、スタンダードだけが強力な打ち消し呪文の余地を持っているからです。ええ、強力といえるものです。打ち消し呪文が軽くなるほど積まれる数は多くなります。《神の怒り》とは違い、打ち消し呪文が軽くてフォーマットの残りと比べて十分に強力であれば、打ち消し呪文20枚と少しの除去を使うデッキは可能です。《対抗呪文》が《破滅の刃》と違うところは、《対抗呪文》はなんでも止められるところです。打ち消されない呪文がなければ、多くのカードがプレイできないでしょう。
人々が3マナを払って何か追加のアドバンテージを得ていると仮定するならば、それでも構いません。我々は複数の3マナ打ち消し呪文を印刷することができ、そしてそれら全てを効果的に運用することはとても困難です。例えば《吸収》と《蝕み》、《解消》が同じスタンダード環境に存在するとしましょう――私はそれら全ての12枚を運用するデッキがないほうに賭けます。しかしそれらは4~6枚使われるかもしれず、そして私はどういった比率で使われるかはについては自信はありません。
同時に、我々はコストが軽くて打ち消せるものが限られている打ち消し呪文か、コストがもっと重くて効果の大きなものを印刷するようになり、それらをどうやって最大化するかという大きなデッキ構築上の決断が存在します。私は《本質の散乱》と《否認》をどれだけ採用するかは、単に《対抗呪文》を4積みするよりもはるかに興味深いとことだと思います。
我々はメタゲームの中で生存可能な何枚かの打ち消し呪文を積んだ真のコントロール・デッキを求めています。例としてデビッド・シュナイアー/David Schnayerのプロツアー『異界月』のデッキを見てみましょう。
2 《平地》 3 《島》 3 《沼》 4 《大草原の川》 4 《乱脈な気孔》 3 《窪み渓谷》 3 《ウェストヴェイルの修道院》 1 《魔道士輪の魔力網》 4 《進化する未開地》 -土地(27)- 4 《ヴリンの神童、ジェイス》 -クリーチャー(4)- |
3 《石の宣告》 3 《精神背信》 2 《苦い真理》 1 《苦渋の破棄》 3 《偏った幸運》 2 《衰滅》 2 《オジュタイの命令》 1 《シルムガルの命令》 2 《罪人への急襲》 3 《意思の激突》 3 《荒野の確保》 2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 2 《死の宿敵、ソリン》 -呪文(30)- |
1 《龍王シルムガル》 2 《約束された終末、エムラクール》 2 《払拭》 2 《否認》 1 《石の宣告》 1 《究極の価格》 1 《苦渋の破棄》 1 《知恵の拝借》 1 《衰滅》 1 《即時却下》 1 《罪人への急襲》 1 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン》 -サイドボード(15)- |
これをコントロール・デッキではないと言うのは難しいでしょう――メインデッキに6枚の打ち消し呪文を使い、全体除去と大量の単体除去とドロー呪文を積んでいます。メタゲームの大部分に対して強く、しかしいくつかの明確な弱点を持っているので、我々はこれらのようなデッキがスタンダードに存在することを求めています。このデッキはアグレッシブなデッキと多くのゲームを行いますが、ゲームが《ヴリンの神童、ジェイス》やプレインズウォーカーによって制圧される前に終わらせようとするオール・インの赤単デッキに苦戦します。
赤の問題
我々が過去6か月の間に多く受けたもう1つの批判が赤単デッキに関するものです。これらのデッキは競技レベルの強さを維持するのに間違いなく苦労していて、我々はスタンダードに《焼夷流》を加えましたが、直球の赤単でプロツアーに出ることを決断したのはたった1人だけでした。
約1年前、我々が赤のカラー・パイと赤いカードのデベロップの方法で新しいことをたくさん試していると私が言ったのを覚えているでしょうか。我々は赤がほとんど赤単のアグレッシブなデッキばかりであることに飽きており、そしてこの色のカラー・パイを少し広げたいと考えました。そのときに、我々は構築フォーマットに影響を与えるために《紅蓮術師のゴーグル》、《炎呼び、チャンドラ》、《集団的抵抗》、《コジレックの帰還》、《苦しめる声》、《マグマの洞察力》のようカードを作りましたが、アグレッシブなデッキが想定よりもはるかに落ち込んでしまいました。
火力の問題点の1つは、打ち消し呪文と同じように、プレイヤーが自分たちのデッキの《稲妻の一撃》や《溶岩の撃ち込み》の空間をすぐに使いきらないことです。我々は《アタルカの命令》の強さをとても深刻に考えていて、『マジック・オリジン』がスタンダードに加えられ、結果的に我々は直接プレイヤーに打てる火力を印刷しすぎないように注意することにしました。後から考えると、ここで必要だったのは、火力を最大量にするための赤緑のアグレッシブなデッキが現れないようにするには十分だったかもしれませんが、我々は《集合した中隊》デッキがそれらと同じぐらい強いこと、そして赤単デッキのような戦略を実際に咎めることを想定していませんでした。
このフォーマットは我々にとって教訓となり、そして我々は将来の赤いアグレッシブなデッキでどれぐらい、そしてどこにカードを分散させれば良いかについてのより良い考えを得たと私は考えていて、そしてそれはもうすぐ『カラデシュ』で見られるでしょう。赤いアグロ・デッキがすぐにプロツアー上位のデッキ・リストに戻ってくるかどうかはわかりませんが、私はこの1年で赤が得た追加の領域には大いに満足していて、そして赤は将来に行うべき多くの興味深いものを持っていると考えています。
今週はここまでです。再来週は『異界月』スタンダードのフューチャー・フューチャー・リーグのデッキリストをご紹介します。
それではまたお会いしましょう。
サムより (@samstod)
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