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なぜ爆弾レアは存在するのか
なぜ爆弾レアは存在するのか
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年6月10日
熟練リミテッド・プレイヤーからもっともよく耳にする不満の1つが、爆弾レアによるいら立ちです。1枚のカードに負けてしまうのは腹が立つかもしれませんが、リミテッドを楽しくバランスの取れたものにするために重要な部分です。除去を「大物」のために温存するようになる圧力を生み出すので、単体でゲームに勝てる十分な強さを持つカードの存在は重要です。もし全てのクリーチャーのパワーがだいたい同じなら、除去やコンバット・トリックを使うときの戦略よりもただ2対1交換を取っていくことのほうがはるかに重要になります。
このような大きく派手なカードはよく構築フォーマットでも見かけられ、構築フォーマット向けのカードがリミテッドでも強いことはよいことです。《鋭い突端》、《石の宣告》、《棲み家の防御者》のような爆弾レアではない構築のトップレアであるカードは多く存在します――しかし我々は《大天使アヴァシン》、《現実を砕くもの》、《雷口のヘルカイト》ようなカードも作れる必要があり、それらはその性質そのものによって両方のフォーマットで爆弾レアになります。
『基本セット2014』のようないくつかのセットは、十分な数の爆弾レアがないことに悩まされていました。同時に、優秀なアグロ戦略の不在にも悩まされていました。結果としてそのフォーマットでの最良の戦略は、多くの1対1除去呪文と何枚かのドロー呪文をプレイすることでした。どんなリミテッド環境においてもこの種のデッキが存在することは完璧に良いことですが、全てのデッキが同じ戦略を用いるなら良くなくなります。全てのデッキが何度も2対1を取ることにだけ焦点を当てた場合、強いプレイヤー同士のゲームは基本的にどちらが土地を多く引くかで決まってしまいます。目指すべき目標は、低い技術レベルでのゲームのランダム性を上げ、高い技術レベルでのゲームのランダム性を少なくすることです。この目標は、そうした傾向で傷つけられます。
爆弾レアがあれば、『基本セット2014』の悩まされていたもう1つの問題である、色の不均衡も緩和できます。青は『基本セット2014』でぶっちぎりの最強色であり、他の色をやることの動機になる十分な数の爆弾レアがありませんでした。もしある色――例えば赤――が他よりも弱い場合、人々はドラフトをその色から始めることは普通しないでしょう。
しかしながら《シヴ山のドラゴン》を剥いたなら、平均的に弱いデッキができてしまうかもしれなくても、その色をやろうとするかもしれません。《シヴ山のドラゴン》から始めた場合、その「平均的」なことが曲がることになります。相対的に弱い赤をやる場合、《シヴ山のドラゴン》のようなカードが平均よりも多く回ってくることになります――それは不均衡を補う助けになります。バランスの面で問題があったとしても、爆弾レアはそれがない場合よりもそのフォーマットの多様性を保ちます。
何枚ぐらい?
さて、私は爆弾レアがマジックのリミテッドの生態系にとって良いものであると証明しました(と思います)が、あなたは「何枚ぐらいそういうのをセットに入れるの?」と思うかもしれません。我々の標準的な目標は、3分の1のパックに爆弾レアが入っていて、それらはかなり色のバランスが取れたものにすることです。特定の神話レアは特定のレアの半分の頻度でしか出現しないので、私はそのセットに入っているレアの枚数よりもパックに注目しています――爆弾神話レアはレアの半分しかこの割合に寄与しないことになります。また我々は『イニストラードを覆う影』や『次元の混乱』のような、1パックから2枚以上レアが出ることがあるセットも制作し、そのようなセットでも同じ割合を維持しようとしました。
さて、この3分の1という数字は適当に見えますが、そんなことはありません。ドラフトでは3パック、シールドでは6パックを開けるので、(平均で)ドラフトだと1枚、シールドだと2枚の爆弾レアが出てきます。我々は何度も(『運命再編』のように)上記の割合を上回りすぎた結果、人々がそのフォーマットに爆弾レアが多すぎると不満を言っているのを見てきました。爆弾レアが十分にないセットは、よりレベルの高いプレイヤーに好まれる傾向(特に自分より弱いプレイヤーと対戦するとき)にありますが、そのセットはカジュアル寄りなプレイヤーにあまりプレイされない傾向にあります。適切な数の爆弾レアがあることはリミテッド環境をより全体的にプレイされるものにする傾向にある――この古い格言はある部分では真実です。
また、この爆弾レアの目安は破れないものではありません――全く違います。我々が爆弾レアと呼ぶものの基準のレベルは《マハモティ・ジン》です。これは確かに強力なカードですが、対戦相手がこれをプレイしてきても無理ゲーだとは感じさせません。高いパワーと回避能力を持ち、これに対する答えがなければゲームが終わってしまいますが、攻撃することやゲームが終わるまでに切り札をプレイすることを止めるわけではありません。これより強い、リミテッドでゲームを終わらせるできる爆弾レアはそれなりにありますが、とても腹が立つレアによってリミテッドのゲームが決まり続ける場合、基本的に我々はトーンを落とす方法を探そうとします――もしくは少なくともそれらのレアを、構築フォーマットでの強さを維持しつつリミテッドでは弱くする方法を探します。
爆弾が間違った場合
私は爆弾レアがマジックにとって良いものであると思っていますが、リミテッド環境を明らかに悪化させた爆弾レアは過去のいたるところに存在します。個人的には爆弾レアというものは、本当に興味深い中マナ域のもので活用すればゲームに勝てるもの(《永遠の見守り》や《魂を飲み込むもの》)であるか、それが出てくる前に対戦相手が勝つことができるかそれに対処できるぐらい十分に遅いもの(《高位調停者、アルハマレット》や《辺境地の巨人》)である場合に最も機能すると思います。爆弾レアが何のシナジーもなしにゲームを支配する低マナ域であったり、もしくはマナ・カーブの上のほうにあって「このターンに対処できなければ負け」であるときは問題です。
上記のカードは確実に構築向けのカードでありながら、リミテッドを悪化させるラインよりも上にあります。そのうちいくつかは後からの変更によるもの――リミテッドのプレイテストの後――で、またいくつかは単純にそれをプレイする我々のテストの規模が過小評価をしていたからです(我々は各カードが発売後どうなるかを完全にシミュレートできるわけではありません)。どちらの場合でも、我々はそれと同じぐらいどうしようもないカードをもう作らないよう努力します。
《群れネズミ》は2ターン目に出た場合――そしてまた5ターン目に出されて構えられた場合――の対処方法の少なさから『ラヴニカへの回帰』の年にプレイヤーの怒りを買ったことで有名です。そして、いったんこれが戦場に出てしまうと、反撃の手段や「詰まらせる」チャンスは多くはありませんでした。大体毎ターン《群れネズミ》を作るだけですぐに対戦相手を圧倒してしまいました。
私は一部の人達がこれが最も強力なレアだと言っているのを聞いたことがありますが、彼らは明らかに《梅澤の十手》と対峙したことがないのでしょう――最初の攻撃の後ほぼ対処不可能なだけでなく、そのフォーマットの中にそれを取り除く手段がほとんどなかったのですから。ええ、《かまどの神》はいいのですが、《摩滅》を相手の1枚の十手だけのために使うなら、恐らく嫌な時間を過ごしていたでしょう。そしてこれがこれらの爆弾レアの帳尻を合わせる上で大きな部分です。我々は十分な数の対処方法を、少なくともやりこんでいるプレイヤーが絶望を感じないぐらいには用意するべきなのです。
爆弾レアの狙いは、一方的なゲームを作ることではありません。少なくとも、常に一方的になるようにすることではありません。対戦相手が《シヴ山のドラゴン》を唱えてきたときに対処手段を持っていなくて、2ターンで死んでしまうことはあるでしょう。しかしながら、《シヴ山のドラゴン》はそれこそ倒すのが難しいカードではありません。《稲妻の一撃》などではこれは倒せませんが、我々は《一口の草毒》や《爆発の衝撃》のような超効率的というわけではない重い除去を、全てのデッキが爆弾レアに対処できるカードを持てるよう各セットに収録しています。それらをシールドでサイドボードから入れるか、もしくは少なくともドラフトの中盤でそれらをピックしておくかの選択をしなければなりませんが、存在はしています。
突き詰めると、人々が相手の爆弾レアに対する手段を持てるように、用途の違う十分な数の除去――常に効果的ではないとしても――をセットに入れることにしています。除去を温存するかテンポを取るために目前のカードに使うかの選択をする必要はあるかもしれませんが、除去は存在するのです。
今週はここまでです。来週は開発部の黒歴史・パート4をお送りします。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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