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Latest Developments -デベロップ最先端-
モダンを想う
モダンを想う
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年6月3日
今回の「Latest Developments」では、モダンについてと、皆さんにこのフォーマットがどう動いているか、そして将来どうなっていくかについてお話ししようと思います。
モダンの現状
何週間か前、私はスタンダードの現状についての記事を書きました。モダンの現状について同じように総合的に話せるとは考えていませんが、私の尺度で話すことはでき、現在はそれにうってつけの時です。(いくらか)最近の禁止改定により、我々は(《先駆ける者、ナヒリ》を使い、それらのデッキの中には青をプレイしていなものさえある)コントロール・デッキと、親和やZooなどの多くの優れたアグロ・デッキの選択肢と、たくさんのコンボとミッドレンジがある環境を獲得しました。マーフォークは部族デッキとして存在感を発揮し、トロンは依然としてトップ・メタのデッキであり、そして人々はエルドラージさえもプレイしています(3か月前よりも適正な割合ですが)。
《欠片の双子》が禁止されたとき、エルドラージ・デッキがこのフォーマットに与えた巨大な影響により、その禁止を評価することは困難でした。もし《欠片の双子》を禁止しなかったなら、少なくともエルドラージ・デッキのいくつかに対してそれなりに対抗できたでしょうが、健全な環境になったとは思いません。多くの人々が《欠片の双子》の解禁を望んでいるのは知っていますが、私はそうしないほうが良いと考えています。依然として開発部が目をつけているカードは何枚かありますが、それらに問題があることはまだ証明されていません。全体として、モダンは(少なくとも私の意見では)何年もの間望んでいたところに来ています。このフォーマットが人気を得ること、そして人々がここに何があるかを探索することにはしばらく時間がかかることを我々は知っていますが、私はモダンが「スタンダード・プラス」や「レガシー・ライト」ではない独自の位置に落ち着いたと思います。
モダンのプロツアーがなくなったことは、全体的に見てモダンにとって良いことだと私は思います。プロツアーはそのフォーマットを解明しようとする傾向にあるものです。スタンダードの新しいセットがそのフォーマット全体にもたらす新しいカードは大きな割合を占めますが、モダンにもたらす割合はフォーマットの大きさから見て相対的にごくわずかです。理想的な世界では、新しいプロツアーがとても新鮮になるよう十分な数のカードがモダンに加えられますが、(残念ながら)プレイされ方までは加えられません。モダンはスタンダードのように常に変化し続けるフォーマットではありません。いくつかの新しいデッキだけが毎年のプロツアーのトップ8になるのではありません。それらは新しい作りをしているのでしょうが、恐らく毎年モダンを大きく変えることはありません。
そして私はそれでいいと思います。開発部としては、毎年モダンの形が変化することを望んでいません。もしあなたが常に変化するフォーマットを求めているなら、スタンダードがあります。モダンは変化がゆっくりで、ついて行くために多くのことをする必要がないことを人々が楽しむフォーマットであると、少なくとも私はそう信じています。そして私は、少なくとも見通しの立つ将来においては、その方法でとどまるほうが良いと思っています。
スタンダードはどのようにモダンに影響を与えるべきか
モダンの目標は、スタンダードのセットが出るたびに変化を続けながらも、スタンダードよりもゆっくりとした割合であることです。我々はモダンを、スタンダードのデッキがローテーションしたときに、人々が自分のデッキにモダン向けの必需品を加えて改良することでプレイ可能なフォーマットにしたいと思っています。例えば、あなたがスタンダードの白単人間を本当に好きなら、同じデッキをモダンでプレイでき、より強力な土地と、《教区の勇者》と除去に《流刑への道》を足すことができます。他のデッキ、2年前のスタンダードの黒単信心のようなデッキは、競技レベルではないかもしれませんが、毎週優勝することを想定しなければフライデー・ナイト・マジック水準の力は今でもあります。
このようなことを起こすために、我々はモダンで勝負できる十分な強さのカードを印刷し続ける必要があります。我々はモダン最強のカードを圧倒しえたり、太刀打ちできるようなカードを多く印刷しようとはしませんが、メタゲームの変化に適応できたりデッキを機能させる新しい選択肢になるカードは印刷しようとします。
この1年半を振り返ってみると、禁止する必要があった探査カード(詳細は後述します)を無視しても、モダンに影響を与えたスタンダードのカードはたくさんあり、《僧院の速槍》、《強大化》、《ゲトの裏切り者、カリタス》、《コラガンの命令》、《ヴリンの神童、ジェイス》、《僧院の導師》、《精霊龍、ウギン》、《ピア・ナラーとキラン・ナラー》、《先駆ける者、ナヒリ》、《集合した中隊》、《無謀な奇襲隊》などが見かけられました。これらのカードは《金属モックス》、《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》、《瞬唱の魔道士》ほどの影響はないかもしれませんが、モダンの完成度を高め新鮮さと面白さを保つことに大きな役割を果たしました。全体として、これは我々がモダンでやりたいことです――スタンダードのトップのカードの一部を取り上げつつも、そのカードの独自性を保ち、時間をかけてゆっくりと進化することです。
《ピア・ナラーとキラン・ナラー》(エントリーセット版) アート:Tyler Jacobson |
じゃあ、完全にモダン用のカードは印刷できるの?
私が人々からたくさん尋ねられたことの1つに、スタンダードを通さずにモダンで使えるカードを印刷した製品を印刷できるのかというものがあります。《対抗呪文》や《意志の力》や《不毛の大地》、他にも人々がモダンをもっと楽しくするだろうと思っているカードを収録するための場所です。
ええ、我々はそれらのカードが助けになるかどうかの議論をすることはできますが、その製品自体は現在のモダンのための計画にはありません。これらの例は極端なものであり、私はモダンをもっと面白くするカード――『オンスロート』のサイクリング土地のような――があると信じていますが、また私はモダンにカードを追加する現在の方法が、我々がモダンをもっと楽しくすると思うものを選んで追加しようとするよりも良いものであるとも信じています。近い将来の間は、モダンで使えるカードはスタンダードを通してのみ追加されます。
これの1つ目の理由として、我々はスタンダードのカードで実際に大規模なプレイテストをしているので、それらが理論上どれぐらい強いかについてとてもよく把握していているのですが、これはまた先ほど書いたスタンダードのデッキがローテーションした時にモダンのデッキにするという目標も達成していることがあります。
2つ目の理由は、我々は意図的にモダンを揺るがすセットを発売しようとは思っておらず、そうすると人々の経験は楽しさを失うか、もしくは新しいカードやデッキを追いかけることを強制してしまうことになります。私はこれがモダンをプレイする人々の大部分が期待していることではないと思います。我々はしばらくくの間これをレガシーでやってみて、そしてその結果は素晴らしいとはいえないものだったと私は思います――具体的には《真の名の宿敵》を考えてみてください。これは我々がレガシー向けに作ったカードが想定以上に強かった場合に起こったことです。《狼狽の嵐》や《漁る軟泥》、《断片無き工作員》のようなカードを加え、それらが多分機能した一方で、我々はそれらを『統率者』や『プレインチェイス』よりももっと1対1のテストをするセットに収録できました。
スタンダードのセットから来た、モダンで使われるようになったカードは、おそらく我々の想定よりも少し強力でした。我々はカードを特定のパワー・レベルに収めようとし、いくらかはそれより強く、またいくらかは弱くなります。我々がモダンに影響を与えるレベルのカードを狙い始めた場合、想定よりも強いカードができてしまったときには、おそらく大きく落胆してしまうでしょう。
このフォーマットで最強のデッキが何であるかを示したいと思う開発部の人間は一人もいません。我々があるデッキやカードがやりすぎであると考えた場合は何かを禁止しますが、次に最強のデッキになるのがなにか分かっていたなら、そのデッキからも禁止を出すでしょう。その目的は、人々が幅広い事柄から選択できるように、トップメタのデッキを多くして、デッキのピラミッドの頂点をできるだけ平たくすることです。
さて、我々は結果的にモダンの楽しさを損なうものを印刷しようとしますが、それは決して故意ではありません。エルドラージの冬を見てください。我々は《ウギンの目》と《エルドラージの寺院》が欠色とうまく機能するだろうという基本的なアイデアを持っていました。我々は正直なところ、《空中生成エルドラージ》がプロツアーのトップ8に姿を現すとは思っていませんでした。我々はそれらのカードのために欠色をメカニズムとして選んだのではありませんが、またこれらのカードが理由で使わなかったのでもありませんでした。そして正直に言うと、『戦乱のゼンディカー』が出たころには、いくつかのかなり堅実な2番手集団のデッキとともに、物事はとてもおもしろそうに見えていました。
問題は『ゲートウォッチの誓い』と無色マナ・カードとともにやってきました。《難題の予見者》、《エルドラージのミミック》、《現実を砕くもの》のようなカードの追加がエルドラージ・デッキを過剰なものにしてしまいました。エルドラージはプロツアー『ゲートウォッチの誓い』とプロツアー予選、グランプリを支配しました。我々は急いで禁止を行いましたが、これらのようなことが起きたときに我々はそれを好みませんでした。
このセットを売るためにエルドラージを超強力にしたという多くの陰謀論がささやかれましたが、それらは真実とまるでかけ離れたものでした。我々が行いたいことはインパクトのあるカードを作ることですが、それはまっとうな方法でのことです。セットが発売されたときにメタゲームを完全に破壊してしまうことは我々にとってとても悪いことで、決して狙って行うことではありません。我々は新しい物事を導入したいのであって、最新セットのカードがなければ他のすべてがプレイできないようにしたいのではありません。これはローテーションのないフォーマットにとって非常に悪い道のりで、絶え間ないカードパワーのインフレを引き起こし物事の楽しさを急激に損ないます。
この状況においてそれを振り返ってみて、我々がこのデッキがどれくらい支配的になるか分かっていたなら、我々はどうしていたか、を解き明かそうとすることは興味深いことでした。我々は無色マナ・カードを作らないようにできたかもしれませんが、私はこれらが『戦乱のゼンディカー』ブロックのエルドラージ・カードの中で最もクールなものだったと実際に思っています。先に《ウギンの目》か《エルドラージの寺院》を禁止できたかもしれませんが、人々はかなり不満になったと思います。
私はこのエルドラージの冬が、数か月の間自分のデッキが圧倒されたの見ていた人々と、急いでカードを手に入れたのに禁止されただけだった人々の両方にとって不愉快だったと思います。これは不幸なことですが、このような不愉快さは頻繁に起こりすぎないかぎりは、モダンのようなフォーマットにおいて受容できるものだと思います。このようなことが年に1回起これば、それは我々の行いを再評価し、何かを修正するべき時になるでしょう。実際には、私はこの過程はとてもよく機能していると思います。モダンはこれまでになく健全で、そして私はこれが我々がしばらく行ってきた戦略によって保たれることを望んでいて、我々はこのフォーマットが依然として健全であることを保証できます。
今週はここまでです。来週はマジックのデベロップのさらなるお話をしようと思います。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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