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両面カードのデベロップ
両面カードのデベロップ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年5月6日
プロツアーから2週間経ち、私は『イニストラードを覆う影』がどのようにスタンダードに影響を与えたかを見て、とても満足しています。最初の1~2週間のスタンダードの結果がバント・カンパニーと白ウィニーで覆い尽くされていたことを見てかなりナーバスになっていたのは確かです。私はこのプロツアーのプレイヤー達がバント・カンパニーの弱点を突いたり、もしくはより大きなプレイでそれを乗り越えるいくつかの新しく革新的なデッキを考え出してくれたことに深く感謝しています。
前回のFFLの記事で取り上げたように、我々はこのフォーマットのプレイヤーの多くができたことを分かっており、それらが浮かび上がってくるのをみて満足しています。さて、これはこのメタゲームが完璧だとか、あるいは時間が経っても新鮮さを失わないということではありませんが、最初の2週間のスタンダードのイベントの結果よりはずっと健全に見えます。
私が構築フォーマットで見続けても飽きが来ないものの1つが、『イニストラードを覆う影』の全ての両面カードです。グループとして、私は両面カードがこのセットを紹介するもっともよい仕事をしていると考えていて、これらは2ブロック制と早くなったローテーションがスタンダードでやろうとしていることの背景で、「イニストラードとはこういうものだ」というものを実際に重視しています。
これはアヴァシンがプレイで見かけられるだけではありません。《氷の中の存在》、《薄暮見の徴募兵》、《ウェストヴェイルの修道院》、《町のゴシップ屋》のようなカードは構築フォーマットで見かけうる幅広いデザインを際だたせることに対して良い仕事をしています。今回の「Latest Developments -デベロップ最先端-」では、どのようにして我々が両面カードをこうしたか、そして我々がそれら取り組むにあたってたどってきたものについて少しお話ししようと思います。
構築向けの両面カード
私がセットに取り組むとき、そのそれぞれは私が「ブラックホール」と考えている要素を持っています。これはそのセットの既知の未知であり、そこから手に入れたいものはわかっていてもそれを得るためには正確にどれぐらいの作業量が必要か極めて不明瞭な場所です。そのセットの残りの部分と比較して、我々はこの部分が他の部分よりも時間がかかることを知っています。例えば『タルキール龍紀伝』では、それはドラゴンとそれに関連するものを機能させることであり、『ゲートウォッチの誓い』では無色マナシンボルのカードでした。
『イニストラードを覆う影』の場合、部族はかなりよく知られていて、マッドネスも複雑ですがこのセットに入った支援するカードが何かを我々は知っており、昂揚は構築向けにとてもうまく準備されたメカニズムでした。今回両面カードを適正にするためには多くの手間がかかることを我々は分かっていました――我々はアヴァシンのようなカードを構築で目立させたいと考えていて、そして多くの調整箇所を持つカードがある場合には、それら全てを適正にするのは困難だからです。
さて、過去に構築級の両面カードを作ることに成功しているのでこんなことを言うのは変に思われるかもしれませんが、全体として我々は今回もっと良い仕事をしたいと思っています。初代『イニストラード』での多くは機能したと思いますが、しかし両面カードにスタンダードだけで目立つだけではなく、それをもっと楽しくすることができる楽しく興味深いデザイン空間があることを表すことについて最高の仕事をしてはいませんでした。
《ラムホルトの平和主義者》 アート:Ryan Pancoast |
今回両面カードを作るときに重要だったのは、片面だけで完成しないだけでなく、楽しいプレイ・パターンを持ったカードを作ることでした。《氷の中の存在》を氷カウンターを4つ乗せた状態で戦場に出して、それが「解凍」されるかのように1ターンごとに1個づつ減っていき、現れて世界の上で咆哮し、ホラー以外をバウンスするようにもできます。それはすごいことですが、それではこれをプレイする人々のデッキ構築上の決断や、「変身するかしないか」をかけてもう1枚呪文をトップデッキしようとする瞬間の楽しさをもたらすことはないでしょう。
要するに、もしこれらの両面カードが待機のようなメカニズムによって扱われるなら、私はこのセットのリソースとして失敗していると思います。我々はただ強いだけでなく楽しいカードを作り出すために、これらを噛み砕き両面においてたくさんの調整を行う必要がありました。
例えばアヴァシンを見てみると、彼女は確かにとても強力なカードですが、それだけではなくこのブロックの重要な物語を伝えてくれます。ここ数年間のマジックの主要な目標の1つは、「Magic Story -未踏世界の物語-」のページよりも広い場所で物語を描く方法を見つけることでした。我々は伝説のクリーチャーをクールにすることや物語の瞬間をカード上で表すことについてかなりうまくやれていますが、両面カードは実際にアヴァシンのイニストラードの守護者としての面と、彼女が狂気に囚われその「邪悪」な面を表す能力を我々にもたらしました。私は彼女が対戦相手のクリーチャーだけを殺さない部分を本当に楽しんでいます――彼女の潜在的な欠点を持たせるために、我々は通常行っている利点だけがあるカードにすることを避けました――なぜならそれが彼女の物語上の行いだからです。
物理的懸念
両面カードはマジックに多くの楽しさをもたらしますが、代償がないわけではありません。そこには我々が全てのセットにこれらを入れない理由――多くの楽しく興味深いデザインが可能になる一方で、ドラフトと構築フォーマットの両方での代償があります。ドラフトをするときに卓の他の人達に両面カードが見えてしまうだけでなく、チェックリスト・カードや適切な不透明スリーブ、そしてカードを何度もひっくり返す物理的な操作の心配をする必要があります。
以前に書いたとおり、デザインのかなりの期間中我々は1パックに2枚の両面カードを入れようとしていました。我々がそれにこだわらなかった最大の理由の1つは、ドラフトでそれらを公開する物理的な要素と、それらに対する依存度がリミテッドで増大することでした。例えば、両方の『イニストラード』で我々は、両面カードが嫌いな人がリミテッドや構築フォーマットのデッキでデッキを強くすることを諦めることなくそれらを無視できるように、両面カードの狼男率を多くしています。我々は両面カードに頼らない選択肢があるようにしたいと考えたのです。両面カードが本当に好きな人と、何度もそれをひっくり返すのが好きな人は、狼男に引き寄せられます。その多くはできるだけ多くの人々を可能な限り満足させようとしました。
狼男以外の両面カードをデザインするとき、重要なのは変身することによるゲーム・プレイの面白さを最大限にし、扱いにくさを最小限にすることでした。たとえば《氷の中の存在》は変身したときホラー以外をバウンスすることとその7/8というサイズはゲームに大きな影響を与えるでしょう。《ウェストヴェイルの修道院》は変身に多くの手間がかかりますが、実際にゲームを終わらせるのに十分な大きさを持ったクリーチャーが出てきます。我々はほとんどの両面カードにそれが実際に変身したときの興奮を最大限になるように、これらのような大きな変身を求めました。
これは我々がそうしないと機能しないようないくつかの両面カードのデザインを避けないといけないという意味ではありませんが、最終的に変身回数が多すぎるようになったでしょう。狼男は変身を繰り返しますが――それが彼らの性質だからです――しかしそれだけです。我々はイニストラードの他の変身には一方通行のものをとても多くしたいと考えました。これはいくらかデザイン空間を制限し、そのいくらかは多分とても楽しいものですが、私は正しい決断だと思います。これにより最も楽しいことが維持され、扱いにくさの面で最も有用なレベルを把握することができました。
こんな両面カードの土地を思い浮かべてみてください。
〈蘇る森〉
土地
{T}:あなたのマナ・プールに{G}を加える。[カード名]を変身させる。
〈伐採された森〉
土地
{T}:あなたのマナ・プールに{R}を加える。[カード名]を変身させる。
バランスはとれているでしょうか? よく分かりません。これは『ベータ版』のデュアルランドにちょっと近すぎますが、デッキの構築を1ターン目に{G}を使って2ターン目に{R}を使うようにする必要があるということでもあります。しかしながらそれはこのカードの本当の問題点ではありません――物理的な操作を何度も必要とし、普通に使っていても絶えずひっくり返すだけでなく、次のターンにも準備しなければならないことにあります。2ターン目に{R}が必要なら、正しい面にするため1ターン目にタップするようにします。もしくは、唱えられる緑のカードがあっても3ターン目に{R}が要るのでそうするべきではないかもしれません。
両面2色土地をセットに入れたいと思った時点でこれをデザインする可能性はありますが(確かにこれらの土地はある意味フェッチランドを超えたアドバンテージを持ち、かなりの煩わしさも持っています)、私はそうする唯一の方法はこれを使うことによる物理的な面倒くささをプレイして、副次的にクールだったり楽しくする方法を見つけたときだけだと思います。
今週はここまでです。来週は『イニストラードを覆う影』に関する質問のいくつかにお答えしようと思います。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
(編訳より:本記事は今週から毎週月曜日に掲載いたします。)
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