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Latest Developments -デベロップ最先端-
長年の問題
長年の問題
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年6月19日
先日、私は記事のネタになるアイデアを募集しました。そのうちの1つにこんなものにがありました。
@samstod Standing development challenges. The big questions you guys are currently trying to resolve.
— Jeff Cunningham (@WJC83) 2015, 5月 23
samstod:
もうすぐネタの決まってない「Latest Developments」があるので、何か聞きたいことはありませんかな? 過程に関する話なら何でも結構ですぞ?Jeff Cunningham:
@samstod デベロップの長年の問題について。お前らが最近何とかしようとししているデカい問題。
これは素晴らしいテーマだと私は思います。とりわけ、我々はついにブロック構造の刷新でとんでもない大成功を収め、新たなものにたどり着いたところですし。今回のこの記事では、マジック開発部のデザインとデベロップに関わる巨大な未解決問題と、我々がそれに取り組むためにしたこと、いくつかの考えについてお話ししようと思います。
2つのブロックの世界
我々は3つのセットのブロック+基本セットの世界を作るのがとても得意でしたが、その工程を大きく変更しました。そしてそれを繰り返す必要があるという事実から、我々は長年の課題の多くを抱えることになりました。幸運にも、繰り返しはマジック開発部が行う最良の物事の1つです。多分何でも最初から上手くはいきませんが、時間が経てば我々は正解にたどり着くことができると確信しています。
我々はこのローテーションに関する変更を、開発の内部で実際に影響を及ぼすかなり前に発表しました。『タルキール覇王譚』の発売前に、人々が自分のカードをいつまで使えるか知っているようにしてほしかったからです。我々がかなり未来の仕事をしているとは言っても、1年ぐらい先のことでしかありません。我々は現実世界のスタンダードを次の年のセットのFFLでバランスを取るために使っています。そしてまさに今、『タルキール覇王譚』がローテーションした後の、『Tears』入りの本当の3ブロック制スタンダードを初めて体験しているところです。
我々は2ブロック制スタンダードを面白くし続ける理論の作成に多くの時間を費やしましたが、今はまた新しい理論を作り直さなければなりません。この変更によって、我々は次の年のスタンダードに影響を与える指針として基本セット(もしくは春の大型か小型セット)を手軽に使うということができなくなりました。例えば、我々は《鋼の監視者》を『基本セット2011』に入れることや、M10土地と《遥か見》を『基本セット2013』を入れるなど、それらのブロックですべきことをするための手段を持たせ、しかしローテーションで落ちるものがあるようにするようにしました。また我々は、前年のブロックのシナジーが強すぎたり、新しいブロックのエキサイティングさを損なうリスクがある場合、かなり抑えた対策カードを基本セットに入れることができました。
今や事態はさらに複雑になっています。こんなローテーションを思い浮かべてみてください。
以前のスタンダード
今後のスタンダード
我々はセットA-BにセットE-Fの種となるカードを入れなければならないのですが、しかしそのセットのデベロップとデザインの時間はC-DからEかFを見るよりも遠く、正確な試みができません。我々は種となるカードが強すぎるリスクを背負うか、種となるカードが入れられなくなってEとFに多すぎる材料を入れるかしなければならなくなります。CとDに、AとBの対策カードを入れた場合、それらのカードはE-FやG-Hのテーマを阻害しないものでなければなりません。そして我々は理論的にはAとBのテーマとEとFのテーマをいくらか重ねたいので、それは困難です。
このリストの他の問題の多くと同じように、2ブロック制を機能させるために必然的に起こることの理論的な洗い出しにかなりの時間を費やしてきましたし、それらの問題を解決するためのアイデアはいくつかありますが、それらが現実世界で機能するかどうかを我々が知るまでには少し時間がかかります。私はスタンダードの多様性と面白さを保てると確信していますが、常に改善の余地は存在するものです。
複雑さを計る
我々が基本セットの存在する世界から離れるにあたって、大きな疑問がわき上がりました。どうやってゲームの複雑さを管理すればいいのでしょうか? 我々は新規プレイヤーのための良い出発点がなくなるようにはしたくないのですが、いくらかの複雑さがプレイヤーを夢中にさせるために良いことも分かっています。このバランスを取ることは難しく、そしてそれを見つけ出すことがこれから数年のデベロップの第一目標です。
しかしながら、過剰な複雑さを取り除くことは新規プレイヤーの獲得のためだけではありません。全てのプレイヤーにとっての障壁が存在しますが、その障壁には高低があります。私は全てのカードが最小のフォントで書かれたセットを作ることは可能であり、それを好むプレイヤーもいると確信しています。ただ、全体の中ではほんのわずかな数だと思います。この限界を越えてしまったことで新世界秩序が制定され、マジックにとって素晴らしい結果を導きました。新・新世界秩序を行う必要があるほど困っていませんが、我々はしっかりと、行く先を管理することに熱心にならなければいけません。
なぜ新世界秩序が必要だったかというと、『時のらせん』はコモンの単語数が26.55あり、『未来予知』はさらに多くなって29.87でした。メカニズムの数により多くの問題がありますが、コモンの単語数はセットの複雑さを図る手段として合理的な手段です。『基本セット2010』と新世界秩序は多くの物事を押し下げ、そのコモンの単語数はわずか10.35しかありません。単語は我々に多くの良いことをしてくれましたが、良いドラフト環境を作るのに26.55語も必要ではありませんでした――『イニストラード』では17.3で、カード1枚あたり平均9増えて複雑さが増し、このゲームがその分学習しづらくなりました。私は『時のらせん』が『イニストラード』よりも平均53%も楽しいとは思いません。同時に、『基本セット2010』は『イニストラード』よりも楽しさが劣りますが、多分73%も劣っていないので、我々は最も効率的な単語数だけを追求することはできません。我々はゲームが楽しく、しかしほとんどの人々が何がしたいかを理解できる、ちょうど良い地点を見つける必要があります。
伝統的に、基本セットの単語数は10から14の範囲ですが、年々じわじわと増えて、『基本セット2015』では19を越えました。通常のエキスパンションは17から18の範囲ですが、『タルキール覇王譚』は19を越え、そして『タルキール龍紀伝』では21に手が届くところまで来ました。その理由のいくつかは局地的な現象によるものです――このブロックの根底となる変異はとても単語数が多いメカニズムなのです。しかし、同時に理由のいくらかはここ数年のセットのデザインがより熱心なものになっているからです。熱心なことはいいことですが、その熱心さは現実世界の手間が増えます――その手間の一部はセットの文をとても長くしてしまいます。
私は1年の大型セットの平均が、基本セットを含めても全体で15単語ぐらいまで下がるとは想定していません。しかし我々は各セットで新規プレイヤーが可能な限り取っつきやすくするために何をするべきかを解き明かし、同時に既存のプレイヤーがセットに求めるゲーム・プレイを提供しようと試みています。
赤のカラー・パイ
これは大きな問題です。赤は構築デッキのトップメタの一角を占めていますが、それらはほとんど同じことをしています。軽量クリーチャーで攻撃して本体に火力を打ちます。もしくは中量級のクリーチャーで攻撃して本体に火力を打ちます。この問題の一部は赤の強さの多くが本体に火力を打つことであり、他のものではないということです。時間をかけて、我々は赤が色としてできることを減らし、《石の雨》や《Wheel of Fortune》のようなカードを取り除き、それを埋め合わせるようなものは......追加してきませんでした。果敢が常磐木能力になったことは助けになります。これはクリーチャーにつけられる、速攻や先制攻撃よりも扱いやすい能力です。威迫も威嚇よりずっと楽しい回避能力として多くの仕事をします。
《Wheel of Fortune》 アート:John Matson |
我々は赤のカードを引くものとして《衝動的な行動》や《前哨地の包囲》、《紅蓮の達人チャンドラ》などを実験してきました。これはうまくいき、将来もっと見かけるようになります。この能力は赤のミッドレンジをさらに可能としますが、依然として赤はかなり一次元的な色です。
赤い除去の大きな問題は黒よりも強さに欠けることです......プレイヤーに打てるところ以外はですが。そして全ての火力をプレイヤーに打つようにはできないので、我々は最終的にアグレッシブなデッキに適したカードを作ろうとしますが、その除去がプレイヤーに打てないとプレイされない、という点で大変なバランス取りをすることになりました。同時に、我々は全体的にクリーチャーのタフネスを徐々に上げてきており、その結果それらに対処するために《焙り焼き》のようなカードが作られましたが、これはものすごく満足がいくものというわけではありませんでした。
我々はいくつか試してみたいプランを持っていて、赤を「ウィニーと火力だけの色」から遠ざけ、他の色も同様に時間をかけて変化させるバランス調整をしようとしています。もしあなたが20年前の私に、「黒は《暗黒の儀式》なしでもやっていける」と言ったなら、当時の私はあなたの正気を疑うでしょうが、全ての黒いカードは1ターン目の《暗黒の儀式》ができてもバランスが取れている必要があります。我々は火力を取り除こうとしているのではありませんが、赤の強さを火力に全部費やす必要がないように、より多くの物事を見つけたいと思っています。
呪禁
呪禁はキーワード能力として多くの問題を抱えています。新しい常磐木能力を作るときの課題の1つであり、呪禁が『基本セット2012』であったときにもあった課題が、最初の1~2年はその能力を使いすぎてしまうということです。一度そのメカニズムを定量化し、それを使う簡単な方法を持ってしまうと、それを持ったカードを作る障壁は低くなります。そしてカードが適正なラインにあっても、それがあるべきところに行くために変更する必要がある場合、慣れてしまう可能性が高くなります。《不可視の忍び寄り》、《聖トラフトの霊》、《鷺群れのシガルダ》のように、間違いなく必要以上に強力なカードがあった『イニストラード』ブロックは、最大の違反者でした。
《鷺群れのシガルダ》 アート:Chris Rahn |
呪禁は正しく使われればとても良いものです。私は呪禁が《レインジャーの悪知恵》のようなカードで使われたり、大きくて間抜けなクリーチャーに使われれば素晴らしく、それらを目立たせるものだと考えています――対戦相手がそれに対処する良い方法がない場合に限りますが。効果的な回避能力を持ったクリーチャーにつくと、楽しさを大きく損なってしまいます。
開発部内では時々呪禁を抹殺して被覆に戻してしまおうという話が挙がりますが、私は呪禁にはたくさんいいところがあると思います――呪禁を持たせるクリーチャーを、より精査する必要があるだけなのです。また我々は条件付きの呪禁についてもたくさん実験しています――被覆では上手く機能しないものです。例えば「アンタップ状態である限りの呪禁」はデッキにそのクリーチャーを対処する方法を与え、プレイヤーにそれとやり取りをする方法を与えます。
こう言ってしまうのは嫌いなのですが、果敢と威迫、多分占術も来年あたりまでは過剰に使われるでしょう......我々がこれらの能力の異なる環境での強さを把握し、現実世界のトーナメントでの実際の影響を見るまでは。我々はそれらの効果の適正な数字を得ようとしますが、ほとんどの場合必然的に少し高いか低いかになり、現実世界でどれぐらいプレイされるかを見て、それらを適応させることができます。また一度、我々がその能力を持ったカードを作る経験を積んだならば、それらを楽しくするもっと良い部分を見つけることができるようになります。
今週はここまでです。来週は『マジック・オリジン』のプレビューをお届けします!
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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