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私のマジック・オリジン・ストーリー
私のマジック・オリジン・ストーリー
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年6月5日
他の多くのプレイヤーたちのように、私とマジックの最初の出会いは中学の時、友達の1人が夏休み後にボーイスカウトから持ってきた時のことでした。それは1994年の秋で、『リバイスド』が発売されたばかりでした。私は最初のスターターから出た2枚のレア(当時はレアが2枚しか入っていませんでした)――《シヴ山のドラゴン》と《極楽鳥》を今でも覚えています。それらに加えて《Taiga》を早いうちに引き、今日の《龍王アタルカ》に到るまで、マナ加速から大好きなドラゴンを出すという道に進んだのです。
私は他の『リバイスド』から始めたたくさんのプレイヤーたちと話しました。それについての1つの持論があります。『リバイズド』は簡単に手に入るようになった最初のセットであると言ってよく、そして多くの人がその夏にマジックを覚え、学校に戻って新しい対戦相手を見つけたと私は信じています。このときに始めた人々の多くは、長年のガチプレイヤーにはならなかったか、もしくはマジックに戻ってくるまで10年以上経ったかもしれませんが、30代前半の人にとって『リバイスド』は大きな出発点だったと考えています。
《シヴ山のドラゴン》 アート:Donato Giancola |
今や20年以上も経っていますが、マジックを始めた年の雰囲気は私がマジックを作る時の決断に大きな影響を与えています。なぜならば、私は最初に見つけたゲームと同じぐらい素晴らしいものを作りたいと思っているからです。デザインとデベロップの両方が直面している課題の1つは、20年目のプレイヤーと20日目のプレイヤーのニーズのバランスを取ることです。メカニズムについて議論するとき、新しい提案が90年代半ばのものからどのように派生しているか?という議論に、我々はすぐに陥ってしまいます。しかし現実的には、最近のプレイヤーのどれだけが当時からプレイしているでしょうか? 我々はただ複雑さだけを増すことはできません。我々は、ある時点で物事を逆戻りすることや、古いものを改善しただけかもしれない新しいメカニズムを試すことをする必要があります。
発見の重要性
このことを振り返ってみて、私は発見の過程が私を最もマジックに引き込み、そして長い間続けさせたと思いました。1000枚以下のカードしかなかった私の始めた頃には考えがたいことでしたが、少なからぬ人がマジックを習得しただけでなく、理解さえもできたように思えます。フリーマーケットや地元のコミック・ストアへ行くたびに、私やその友達の誰もが見たことのないカードを持って帰ってくるという成果を得ることができました。
マジック以前の私のゲームの経験のほとんどは大部分がファミコンの類であり、そこには多くの発見がありましたが、それは仲間うちだけの話だったように感じられました。私は1-2の最後の土管を越えてワープゾーンにいく方法を学べましたが、恐らく自分だけではいつになっても見つけることはできなかったでしょう。誰かがそれについて教えてくれなければ、それを見つける方法はほとんどなかったのです。
マジックの素晴らしいところは、ビデオゲームとは違って、ほとんど無数に思える発見があるところでした。初期のマジックはほとんどインターネットで語られることもなく、様々な雑誌のマジックを取り扱うクオリティは......まあ、決して華やかなものではありませんでした。《チャネル》《火の玉》《Black Lotus》や《巨大戦車》《不可視》について読むことはできましたが、それは私が実行できるようなものではありませんでした。私は自分の持っているカードでなんとか間に合わせ、それらのカードをよく読まなければなりませんでしたが、ある2つの組み合わせで何か大きなものを得られると気づいたのです。
私が自分で発見した2つの最初のコンボは《キノコザウルス》+《破滅のロッド》と、《アトランティスの王》+《幻影の地》でした。これらは大したことがないように思えるかもしれませんが、私にとってはこれらは目をみはるようなものだったのです。一見お互いに何もしないようなカードを使って、それぞれのパーツの合計よりも大きなものにできるということは天啓といえるものでした。
デザインとデベロップのどちらも発見の重要性を理解しています。私は我々の多くが自分がマジックを始めた頃と同じような雰囲気を再び作り出そうとしていると考えています。これはつまり、発見されるべきところに物事を置き、プレイヤーがそれを見つけられるようにパンくずをまいておくということです。我々が本当に思いもよらない相互作用の多くは、多くのカードのデザインをしていると自然に起こります。しかし我々はしばしば、相互作用のない2枚のカードが満足行く重なりを持つように調整を加えます。このことは、自分で何かを見つけられる様々な物事への道にプレイヤーを案内し、今までに見たことのない物事を見つけたときに自分が冴えていると感じさせる助けになります。
ルール
これを振り返ってみると、現在我々が持っている『デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ』のようなマジックを教える手段は、1994年にあったものよりもっと良いものです。私はルールブックを読もうとしてわけが分からなくなり、必然的に最もルールに詳しい仲間に教わることになったのを覚えています。カードのテンプレートはどう見てもばらばらで、私の最初期のマジックのゲームは、デザイナーがプレイされるように意図したものになんとなく似ているだけのものになっていました。
《巨大化》 アート:Matt Cavotta |
例えば《凍てつく影》は、『リバイスド』では《巨大化》と違って「ターン終了時まで」と書いてありませんでした。なので私たちはそれが永続的な効果だと考えました。同時に、これをプレイして次のターンに巨大なクリーチャーにできることがおかしいと考えたので、我々は能力を1ターンに1回しか使えないように決めました。このことはカードを実際に存在するものとは大きく違ったものにしてしまいました。同じように《賦活》も全然意味が分からないので、我々はアンタップする能力を「同じターンに2回攻撃できる」ように決めました。これは《大地の怒り》と使うととても強力でした。しかし、なぜかこの理論をさらに進めて、《セラの天使》が1ターンに5回攻撃して対戦相手を殺すということはありませんでした。ついに我々はそのルールがどのように機能するかを正しく学んだとき、それは大きな天啓となりました。そして最終的に我々のマジックに対する見方が大きく変わったのです。
それはもう過去の話で、プレイヤーがルールを学んだ後に正しくできるかどうかというのは意味がないと言ってしまうのは簡単です。まあ、私の意見は違います――ルールを学ぶという手間はかかりますが、皆がゲームの進化の同じ水準にいて、その経験が可能な限りデザイナーの意図に近いものであるようにすることは重要です。2つのグループが大きく異なるルールでプレイしていたら、後日彼らが一緒にプレイするのはかなり難しくなります。
これはつまり、我々はいくつかのルールの相互作用の微妙な部分についての会議や議論に多くの時間を費やし、それらをゲームで解決する最良の手段と、カードとメカニズムの両方から曖昧さを取り除く最良の手段を見つけ出そうとすることに多くの時間を費やしているということです。例えば、「Mファイル・『タルキール龍紀伝』編・パート1と「「パート2」で《体躯の縮小》が(安いコストで)-5/ー0修整からクリーチャーを0/2にするように変更されたことに言及しました。その理由は、圧倒と組み合わせると混乱することと、プレイするときになんだかややこしくなりやすそうな雰囲気がしたからでした。実際、皆がその状況の答えを完全に分かっていたわけではありませんでした。我々はルール・マネージャーのマット・タバック/Matt Tabakと協議して、急いでこのカードの違うテンプレートを探しました。
私は複数の人から「その相互作用がどう複雑なのか分からない」というメッセージを受け取りました。その中には、2/2が-5/-0されるとパワーが(圧倒の計算上)「-3」になることに気づかない人もいました。これはルールを知らない人を軽視しているということではなく、まさしく我々が可能なかぎり避けようとしている類の事柄です。これは100%直感的だとは言えず、我々の目標は物事を(可能な限り)論理的方法で展開することだからです。
未来への取り組み
開発部のマジックに対する中心的な価値観の1つは、「我々はマジックの世話役である」ということです。これは大事なことです。我々はただ給料のために働くだけではなく、マジックを深く気にかけているからこそ働いているのです。我々はマジックを自分自身のため、友達のため、そしてこのゲームを愛する全ての人々のためにより良いものにしたいと思っています。これはつまり情熱的になり、我々が長期的に見てこのゲームを健全なものにすると信じる難しい決断を行うということです。我々の目標はいずれ開発部やウィザーズを去るときに、それが来週であろうと20年後であろうと、可能な限りマジックをさらに良い状況にしていくことです。そのときの私たちのために、マジックをより良くしておきたいのです。
今週はここまでです。来週は『タルキール覇王譚』ブロックをデベロップ視点から振り返ってみようと思います。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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