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Latest Developments -デベロップ最先端-
定番効果
定番効果
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年5月29日
デザインとデベロップをしている間、我々は定番効果について多く話をします。これらはほぼ全てのセットで、ほとんどの場合使う効果のことです――打ち消し呪文、火力、マナ・クリーチャー、カードを引く効果、そしてクリーチャー除去などです。長年にわたり、我々は多くの時間をかけて一連の定番効果を洗練し、スタンダードでのその正しい強さについての考えを変化させてきました。
我々は各スタンダード環境がお互いに異なる雰囲気になり、新しいセットが単純なカードパワーのインフレ以外で影響を与える機会を持つようにしたいと思っています。各セットのカードはその前のセットと同じぐらいの強さにしたいのですが、プレイヤーの行なう特定の事柄はメタゲームの環境によって強くなったり弱くなったりします。そのため、我々は古いフォーマットに影響を与えつつ、同時にスタンダードでセットが発売された時に楽しく新しい雰囲気のカードを作ることができます。
我々の持っている手口の中で最も基本的な手段は、これらの定番効果の多くにそのセットのメカニズムを付け加えることです。例えばサイクリングが新しいセットのメカニズムだとします。《取り消し》、《ショック》、《葉光らせ》、《霊感》や《殺害》に「サイクリング{2}」をつけた、スタンダードを変えるであろう妥当なカードを作るのはかなり簡単なことです。
《取り消し》 アート:Slawomir Maniak |
しかしながら、これらの定番効果にキーワード能力を貼り付けてはい出来上がり、とは行きません。デベロップはセットの中のそのメカニズムについてと、そのキーワード能力の新しくて分かりやすい展開方法について考えるのに多くの時間をかけます。我々がメカニズムを公開するときの目標は、例えば『ラヴニカへの回帰』の超過の場合、それをつけて最も面白いカードを見つけ、それらをそのセットでなければ作れないようなカードにすることです。それらのカードをその時・その場所でなければ存在できないと感じさせられるようになればなるほど、他のものと正しく異なった雰囲気のセットを作ることができるようになり、カードに独自性を持たせられるようになります。
サイクリングを再録しなければならなくなったとき、私は《星の嵐》よりも《めった切り》のほうを好みます。この好みは単にパワー・レベルの問題だけでなく、《めった切り》ほうがずっと面白い効果だからです。これはメタゲームの中で独特の存在になり、その結果我々はその次の年のブロックの新しいメカニズムと定番効果の組み合わせ方をもっと自由に決められます。
定番変化
あなたがある程度の期間マジックをプレイしているなら、年月をかけて定番効果の多くが頻度が変化していることに気づくかもしれません。これは、スタンダードでプレイされるカードのマナ域を広くすることによって、カードを多様化させる戦略の一環です。5マナ以上のカードをプレイするだけで即座にゲームに勝ってしまうという時期もありました。現在では、《精霊龍、ウギン》や《龍王アタルカ》のようなカードを普通に唱えて出すことを構築のトップメタのデッキでも見られるようになりました。確かにこれらは強力ですが、それらが戦場に出た後であっても倒すことができうるカードです。同時に、制約のない全体除去が、4マナの《神の怒り》から「5マナでおまけ付き」に変わったことで、アグレッシブなデッキが「手札を使い切って4ターン目に《神の怒り》があるかどうか」だけで対戦が決まらないバランスにすることが可能になりました。これにより、双方がやり取りのあるゲームができるようになります。
プレイヤーから言われる最もよくあるリクエストの1つは、彼らのお気に入りの象徴的な定番カードをスタンダードに戻してほしいというものです――例えば《対抗呪文》、《稲妻》、《審判の日》、《破滅の刃》のようなカードです。これらの多くはプレイして楽しいカードですが、その理由の大部分はこれらのカードはその定番効果の最強のバージョンであり、強いカードをプレイするのは楽しいからです。スタンダードを、そしてマジックをデベロップするということは基本的に、これらの強力なバージョンのカードをいつ控えて、より多くの多様性を保つかを考える、ということです。私はスタンダードで《対抗呪文》をプレイすることを本当に楽しんだと思いますし、また幅広い種類の打ち消し呪文の中からどれを使うかの決断も本当に楽しみます。どれが今週適正なバージョンのカードがどれか、もしくはどのカードが相手の使うカードを出し抜くためにプレイできるか、と考え出すことが私は好きです。
《対抗呪文》の問題点の1つは、お分かりのようにそれが我々がスタンダードに求めるものよりも少し強いことです。もし小数点以下のマナを使えるなら、《対抗呪文》は2.5から2.75マナでしょう――2マナよりも3マナに近いのですが、そこまではいきません。選択肢の1つは小数点を切り捨てて、より強力なカードをセットに入れることです。ある意味では、これは人々を満足させます。基本的に、人々はスタンダードで《対抗呪文》をプレイできることによって興奮すると思いますが、それには多くの問題がついてきます。その1つは、(《シルムガルの嘲笑》の強さが証明したように)《対抗呪文》がスタンダードでは少し強すぎることです。またこれにより、我々は様々なカードや、多様なメタゲーム、そしてプレイ経験を作り出すことが困難になります。《対抗呪文》のようなカードをスタンダードに作ってしまうと、ドロー・ゴーのようなタイプのデッキを作ろうとしない限り、他の打ち消し呪文を作る多くの余地を失うでしょう。そして我々はそのようなデッキを作ることはしません。
その代わりに、我々はスタンダードでの打ち消し呪文の基準を《取り消し》+何か、もしくは2マナで効果の狭い打ち消し呪文のデザインを考えるか選ぶようにしました――これらはあるものに対しては無力ですが、依然としてとても有用です。そうすることによって、我々はあらゆるスタンダードの組み合わせで見かけることができる様々なカードの範囲を広げることができます。
さて、ではこの2つの選択肢を比べてみましょう。
どの打ち消し呪文が理論的に正しい打ち消し呪文なのかは明確な答えがなく、それは素晴らしいことだと私は思います。《シルムガルの嘲笑》は強力ですが、デッキに多くのクリーチャーを入れることを要求され、しかもそれらはドラゴンでなければなりません。代わりに《解消》を使うこともできますが、コストの面で大きく劣ります。《軽蔑的な一撃》は2ターン目にはほとんど使い物になりませんが、コントロール・デッキがゲーム中盤のカードをプレイしながら構えることができます。他のデッキは、《軽蔑的な一撃》が多くのデッキに4枚入っているなら《軽蔑的な一撃》をかわすために軽いクリーチャーだけをプレイするか、他の方法で打ち消し呪文をかわすクリーチャーを使うことができます。
この多種多様なカードの提供はデッキ作成に本当に大きな恩恵をもたらし、デッキ作成がチェックを入れるだけの作業になることを回避します。
火力を抑制する
打ち消し呪文だけがこのようなパターンに陥るわけではありません。除去、特に火力はすぐに限界量に達してしまいます。1枚目の強力な火力呪文はかなりいいのですが、3枚目になるとそれぞれを合計したよりも強くなってしまいます。
上の例と同じような比較をしてみるとどうなるでしょう。
《稲妻》の問題点は、右のカードがスタンダードでプレイされるのを見なくなるだけではなく、それらの多くを印刷しづらくなることです。あるデッキは《稲妻》4枚だけを除去として使う(なんだかんだ言ってもこれはモダンで大定番のカードの1枚です)かもしれませんが、多くのデッキが脅威的に早く火力圏内に到達するためにこれと《稲妻の一撃》、《かき立てる炎》も使うでしょう。恐らく「ライフいくつ? 13? よし、射程圏内だな」の《火炎破》時代にはなりませんが、それでも今のスタンダードよりは速くなるでしょう。
ある点を超えると、スタンダードの火力の総量は過剰になり、我々は釣り合いを取るために弱い火力を印刷しなければならなくなります。プレイヤーは《稲妻》をプレイするでしょうが、もっと微妙で、私が楽しいと信じているデッキを組むときの決断を犠牲にしています。あなたは直球で効果的な《稲妻の一撃》か、小さいクリーチャーと闘うための《乱撃斬》のどちらをプレイしますか? 《龍詞の咆哮》を機能させるための十分な数のドラゴンを入れるか、それとも墓地から戻ってくるカードがあったときのために《マグマのしぶき》をプレイしますか?
打ち消し呪文の例と同じように、幅広い呪文があり、明らかに他よりも優れたものがないことは、デッキを作るときの決断と、特定の環境のための適切な決定を行なうことでプレイヤーが他を出し抜くことを可能にします。
幅広い拡散
ここ数年の全体的な我々の狙いは、定番効果の呪文のマナ・コストを拡散させることです。我々はより大きなスタンダードの多様性を望んでそれらを拡散し、私はそれが全体的に起こっていると信じています。デッキにはどの定番効果を入れるかの実際の選択肢があります。あなたと友達はそれぞれのデッキで違う火力呪文をプレイできて、そしてどちらも正解になりうるのです。
我々がデザイン空間をもっと注意して掘り進むことと、何が機能して何が機能しないかを決めることには、いくらか産みの苦しみがあるかもしれません。この広い範囲の呪文のデベロップと、スタンダードに影響を与えるデザインをもっと得る方法を考え続けることで、どの最強のバージョンの定番効果がある環境よりも、どのバージョンをプレイするかによって定義される環境を多く見ることになると、私は考えています。
今週はここまでです。来週は私の「オリジン」のお話をしようと思います。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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