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炎跡のフェニックス
炎跡のフェニックス
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2015年1月2日
怒濤の勢いでやってきた『運命再編』のプレビュー、その第1週も残りわずかとなりました。今回私は皆さんに相当エキサイトしてもらえるであろうカードを用意しました。伝統的に、私のプレビュー・カードはトーナメントに影響を与えるだろうと我々が信じているカードにしています。しかしそれと同時に、カラーパイや常に進化し続ける我々がカードを作り出す方法を強調するようなものを選んでいます。今回もその例に漏れるものではありません。それでは《炎跡のフェニックス》をご覧ください。
灰の中より
伝統的に、赤は高いパワーを持っている一方、構築級のカードであっても目立った穴があるものです。強力な一方で脆いウィニー、バーン、ドラゴンなど、様々なところでそのような傾向にあります。これは《神々の憤怒》のようなカードを推して、赤により深みを持たせることで時間をかけて取り組んでいる問題です。少なくとも、我々は赤のアグレッシブなデッキが最終的に陥りがちな、グラスキャノン(訳注:攻撃力は高いが防御力の低いものを指すゲーム用語)――最初の数ターンで勝つか、そうでなければダメージを押し通すのに十分なパワーを持っていないか――になることを少なくしたいと思っています。
我々がますます研究を進めている赤の領域には、フェニックスで使用できる空間があります。黒は伝統的にクリーチャーを墓地から戻す色ですが、赤にはフェニックスで得られる伝統的でフレーバーあふれる多くの先例があり、全体除去から復帰する優れた手段を与えてくれます。この狙いは、赤いデッキに素早く対戦相手のライフを減らすことに頼る選択肢だけでなく、時間をかけて対戦相手を削りきる選択肢を持たせることです。マジックをより面白くし、最初の3ターンだけが全てにならないようにするのです。
フェニックスは同時に、赤に基本的に足りないものを提供します――強力で軽い飛行クリーチャーです。我々が最初に印刷した構築向けの軽いフェニックスは《チャンドラのフェニックス》で、すぐにスタンダードとキューブの両方で頭角を現しました。これは《炎跡のフェニックス》のモデルになりましたが、特徴は異なっています。対戦相手を焼くのではなく、我々はティムールが常に意識しているものを求めることにしました――パワー4以上を得ることです。
4になるためには
これはティムールのカードなので、そのポテンシャルを最大限に活かす方法はパワー4以上のクリーチャーを得ることであり、理想的には全体除去を打たれた後にそうすることです。幸運なことに、スタンダードのティムールにはそのための選択肢がかなりの数あります。
これらのクリーチャーは強力な一方で、除去耐性は高くありません――《炎跡のフェニックス》が輝くところとは別の分野にいます。これらは除去にかなり弱いのですが(《凶暴な拳刃》のためにマナをたくさん残してある場合以外はですが)、その一撃はとても強烈です。同じようにこれらは、《炎跡のフェニックス》が最も秀でた分野である全体除去に対して弱いのです。《炎跡のフェニックス》を3ターン目にプレイして《凶暴な拳刃》を4ターン目にプレイするのは簡単です。対戦相手が《対立の終結》を唱えてきた場合、返しの5ターン目に《嵐の息吹のドラゴン》を唱えて次のターンに《炎跡のフェニックス》を戻してくるか、《凶暴な拳刃》を唱えて速攻を与え、さらに《炎跡のフェニックス》と一緒に攻撃して6点与えることもできます。多くの《炎跡のフェニックス》が墓地にあれば、これらのターンはさらに影響力のあるものになるでしょう。
さて、元が大きくないクリーチャーをプレイしている場合でも、スタンダードには《炎跡のフェニックス》でアドバンテージを得る方法がたくさんあります。例えば『テーロス』ブロックのカードを使って、他のクリーチャーをパワー4にすることができます。
スタンダードに多くの速攻クリーチャーがあることを踏まえ、それらを《炎跡のフェニックス》と組み合わせれば、赤いデッキが緑の大型クリーチャーや《包囲サイ》に立ち向かう十二分な手段を得ることができます。
フェニックスの使い方
最近のスタンダードの赤単デッキは超高速の電撃戦仕様で、私はマナ・カーブの少し上の方には何らかの余地があると考えています。《炎跡のフェニックス》は《ゴブリンの熟練扇動者》の持つ爆発的ダメージはたたき出せないかもしれませんが、《思考囲い》、《英雄の破滅》、《残忍な切断》などのスタンダードでプレイされている除去の大多数に対してはるかに高い耐性を持つことで打点の不足を補っています。これは《ゴブリンの熟練扇動者》をブロックできませんが、あなたとあなたの赤い対戦相手が呪文でクリーチャーを除去しあっていけば、実際にフェニックスで先に勝つことも可能です。
このカードの主目的の1つは、2ターン目《森の女人像》からの3ターン目《クルフィックスの狩猟者》や《世界を喰らう者、ポルクラノス》に勝つ手段を赤いデッキに与えることです。これはただ力づくで突破するのではなく、空から飛び越えてこれらのブロッカーを出し抜くことが可能です。もしあなたのデッキに既にクリーチャーをパワー4にするカードが入っているなら、《炎跡のフェニックス》が置かれたときにゲームを素早く終わらせることができることに気づくかもしれません。
《炎跡のフェニックス》(や似たようなカード)を作ることにおける我々の望みは、(アブザン・ミッドレンジのような)飛行クリーチャーがあまり多くないデッキが支配的になったときに、赤いデッキに構成を変化させるいくつかの選択肢を与えることです。現在は大抵《ゴブリンの熟練扇動者》を使うことが多くのデッキにおいて正解ですが、《炎跡のフェニックス》のようなカードがあることは、そのカードを補うことやメタゲームが《炎跡のフェニックス》を必要とした場合にそれと入れ替えることを可能にします。このようなカードは、定着しているデッキの構成を常に変化させることを可能にしてメタゲームの流動性を大きくし、そしてスタンダードの新鮮さを保つチャンスを増大させます。
《炎跡のフェニックス》の(もっと目立たない)他の使い道は、楽しさと利益を得るために自然に戻ってくる性質を利用することです。赤はここ数年に渡って多くの「ルーター」(カードを引いて捨てる)能力を得始めており、《炎跡のフェニックス》をそのエサとして使うことができます。《苦しめる声》のようなカードがそうです。捨てられた《炎跡のフェニックス》はパワー4のクリーチャーをプレイするだけで戻ってきます。我々は以前に「目立たない」黒、青、緑のセルフ・ミル・デッキを完成させました。今度は赤にそれの仲間入りをするチャンスがあります。
《炎跡のフェニックス》を実際に使ってみる
さて、ここまでは《炎跡のフェニックス》が理論上できることをお話ししたので、ここからは実際にできることを見ていきましょう。《炎跡のフェニックス》は間違いなくフューチャー・フューチャー・リーグで重要な役割を果たしました。下記のリストはこれが使われたデッキの数例です。
23 《山》 -土地(23)- 4 《火飲みのサテュロス》 4 《激情のゴブリン》 4 《国境地帯の匪賊》 4 《戦名を望む者》 3 《灰雲のフェニックス》 4 《炎跡のフェニックス》 2 《蔵破り》 -クリーチャー(25)- |
4 《稲妻の一撃》 3 《灼熱の血》 3 《かき立てる炎》 2 《龍語りのサルカン》 -呪文(12)- |
まず最初は我々が持っていた赤のアグレッシブなデッキの基本形で、《炎跡のフェニックス》がこの戦略の中でどのようにプレイされるかを見るために調整されています。
しかし、我々は新しいカードを既存の型に当てはめるためだけに作ろうとはしません。我々は同時に、これらを現実世界で上手く機能しないかもしれないデッキで試して、その結果を見たいと思っています。機能するかどうかしばらく試してみたデッキの1つに、ビッグ・レッドがありました。基本的に、赤単コントロールはここ数年のトーナメントの主なデッキではありませんでした。赤のミッドレンジ戦略とカードを引くカードの増加は、上手くいけば《燎原の火》や《罠の橋》のようなカードを必要とせずに、ビッグ・レッドを存在できるところまで持っていけるでしょう。
25 《山》 -土地(25)- 4 《大歓楽の幻霊》 2 《灰雲のフェニックス》 2 《嵐の息吹のドラゴン》 2 《シャンダラーの魂》 4 《炎跡のフェニックス》 -クリーチャー(14)- |
4 《火口の爪》 4 《稲妻の一撃》 2 《灼熱の血》 2 《苦しめる声》 1 《宿命的火災》 2 《紅蓮の達人チャンドラ》 3 《龍語りのサルカン》 3 《前哨地の包囲》 -呪文(21)- |
このデッキは《炎跡のフェニックス》をダメージ・レースの手段として試していますが、序盤のクリーチャーと火力で止めを刺すだけではありませんでした。
イアン・デューク/Ian Dukeによる別の興味深い取り組みは、《炎跡のフェニックス》の墓地から戻ってくる能力をより多く活用することを目的としていました。
8 《山》 6 《島》 4 《シヴの浅瀬》 4 《急流の崖》 3 《天啓の神殿》 -土地(25)- 4 《魔心のキマイラ》 4 《炎跡のフェニックス》 -クリーチャー(8)- |
3 《モーギスの悪意》 3 《頑固な否認》 4 《稲妻の一撃》 4 《テイガムの策謀》 4 《苦しめる声》 1 《マグマの噴流》 3 《神々の憤怒》 3 《蒸気占い》 2 《時間への侵入》 -呪文(27)- |
このデッキは《蒸気占い》、《苦しめる声》、《テイガムの策謀》のようなカードを用いて《炎跡のフェニックス》を何枚か墓地に送り、それからこれらを墓地から戻して相手を攻撃し始めるために《魔心のキマイラ》を唱えるのが特徴です。
来週は『運命再編』のデベロップについてもう少し深く、そのデベロップ・チームについてのいくつかの物語をお話ししようと思います。
ではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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